地方銀行 (特定取引勘定設置銀行12行)

地方銀行の平成15年度決算をみると、資金運用益は、金利水準の低下により、資金運用収益および資金調達費用がともに減少したものの、前者の減少額が後者のそれを上回ったため、前年度比1.3%の減少となった。

経常利益は、個別貸倒引当金純繰入額および貸出金償却がともに大幅に増加したこと等から3年連続の赤字(1,070億円の赤字)となったが、前年度(1,525億円の赤字)と比べ、赤字幅は縮小した。また、当期純利益は、4年連続の赤字(6,575億円の赤字)となり、前年度(2,088億円の赤字)と比べ、赤字幅は拡大した。
なお、業容面をみると、預金はほぼ横ばい、貸出金は微減となった。

  • 以下の分析は、預金保険法第102条第1項第3号措置の認定を受けた特別危機管理銀行1行を含んでいる。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆2,763億円(前年度比429億円、1.3%減)となり、7年連続の減益となった。

資金運用収益をみると、貸出金利息は、金利水準の低下等から2兆8,318億円(前年度比713億円、2.5%減)と減少した。また、有価証券利息配当金も、金利水準の低下から6,832億円(同288億円、4.0%減)と減少した。この結果、資金運用収益全体では、3兆5,555億円(同1,148億円、3.1%減)となった。

次に資金調達費用をみると、預金利息が、金利水準の低下から1,111億円(前年度比402億円、26.6%減)となったこと等から、資金調達費用全体では、2,792億円(同718億円、20.5%減)となった。

役務取引等収益・費用
国内業務部門において、投信・保険商品販売関連手数料の増加等によりその他の役務収支の収益超過額が増加したことから、収益超過額は3,891億円(前年度比318億円、8.9%増)となった。
特定取引収益・費用
特定取引収益が増加したことから、収益超過額は86億円(前年度比13億円、16.9%増)となった。
その他業務収益・費用
金融派生商品の収益超過額は増加したものの、市場金利の上昇に伴い国債等債券売却損が増加したことを主因に、国債等債券関係損益が前年度の収益超過(886億円)から71億円の損失超過に転じたこと等から、その他業務収益・費用は、532億円(前年度比595億円、52.8%減)の収益超過となった。
その他経常収益・費用
個別貸倒引当金純繰入額が8,835億円(前年度比2,562億円、40.8%増)、貸出金償却が4,657億円(同1,590億円、51.9%増)といずれも大幅に増加した一方、一般貸倒引当金繰入額が1,068億円(前年度比295億円、21.6%減)と減少した。また、株式等償却費用が大幅に減少したことを主因に、株式等関係損益が前年度の損失超過(4,518億円)から963億円の収益超過に転じた。この結果、その他経常収益・費用全体では、1兆4,707億円の損失超過となったが、損失超過額は前年度(1兆5,253億円)に比べ減少した。
営業経費
人件費等が減少したことから、2兆3,663億円(前年度比597億円、2.5%減)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は4兆6,511億円(前年度比109億円、0.2%増)、経常費用は4兆7,580億円(同346億円、0.7%減)となり、経常利益は1,070億円の赤字(前年度1,525億円の赤字)と3年連続の赤字となったが、赤字額は減少した(増益39行、黒字転換15行、減益6行、経常損失4行)。当期純利益は、繰延税金資産の取崩し等により法人税等調整額が大幅に増加したこと等から、6,575億円の赤字(前年度2,088億円の赤字)と4年連続の赤字となり、赤字額は大幅に増大した(増益40行、黒字転換15行、減益4行、当期純損失5行)。ただし、預金保険法第102条第1項第3号措置の認定を受けた特別危機管理銀行1行を除く63行ベースでみると、経常利益は4,926億円の黒字、当期純利益は1,254億円の黒字となる。

業務純益は、経費が人件費を中心に減少したこと等から1兆3,400億円(前年度比337億円、2.6%増)となった(増益38行、黒字転換3行、減益21行、赤字2行)。また、国内業務粗利益は3兆5,087億円(同725億円、2.0%減)となり、国際業務粗利益は2,219億円(同346億円、18.5%増)となった。

利回り・利鞘(国内業務)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.03%ポイント低下して2.12%、有価証券利回りは同0.15%ポイント低下して1.09%、コールローン等利回りは同0.0002%ポイント低下して0.02%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.07%ポイント低下して1.75%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.01%ポイント低下して0.05%、コールマネー等利回りは同0.01%ポイント上昇して1.13%となった。また、経費率は、人件費率が低下したこと等から同0.04%ポイント低下して1.23%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.07%ポイント低下して1.30%となった。

以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.008%ポイント拡大して0.45%となった。

資金調達

預金は、流動性預金は増加したものの、定期性預金が減少したこと等から、末残で182兆8,634億円(前年度末比1,654億円、0.1%減)となった。また、平残では180兆7,802億円(前年度比2兆4,965億円、1.4%増)となった。

譲渡性預金は、末残で3兆4,304億円(前年度末比2,081億円、6.5%増)となった。また、平残では3兆7,448億円(前年度比4,839億円、14.8%増)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門において住宅ローンは増加したものの、企業向け貸出が引き続き低迷したほか、国際業務部門においても減少したことから、末残で135兆3,253億円(前年度末比1兆912億円、0.8%減)となった。また、平残は133兆9,506億円(前年度比3,782億円、0.3%増)となった。

リスク管理債権についてみると、破綻先債権額は、銀行勘定で5,831億円(前年度末比3,474億円、37.3%減)、信託勘定で5億円(同5億円、48.2%減)となり、延滞債権額は、銀行勘定で5兆5,449億円(同2,944億円、5.0%減)、信託勘定で48億円(同103億円、67.8%減)、3カ月以上延滞債権額は、銀行勘定で786億円(同243億円、23.6%減)、信託勘定で100万円(同2億円、99.4%減)、貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で3兆871億円(同5,681億円、15.5%減)、信託勘定で22億円(同27億円、54.6%減)となった。この結果、リスク管理債権全体では、銀行勘定で9兆2,939億円(同1兆2,342億円、11.7%減)、信託勘定で76億円(同137億円、64.2%減)となった。

なお、金融再生法に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準じる債権は1兆9,762億円(前年度末比5,253億円、21.0%減)、危険債権は4兆3,653億円(同1,829億円、4.0%減)、要管理債権額は3兆608億円(同5,852億円、16.1%減)、正常債権は128兆8,454億円(同446億円、0.0%減)となった(信託勘定の計数は除く)。

有価証券は、地方債が減少したものの、国債、株式および外国証券が増加したことから、52兆4,236億円(前年度末比3兆1,610億円、6.4%増)となった。また、平残は50兆6,139億円(前年度比3兆715億円、6.5%増)となった。

自己資本

資本金は、期中に1行で増資、1行で減資、8行で転換社債型新株予約権付社債の転換等が行われたことから、2兆3,239億円(前年度末比999億円、4.1%減)となった。

資本勘定全体では、株式等評価差額金が1兆3,535億円(同7,302億円、117.2%増)と増加したこと等から、9兆5,423億円(同2,471億円、2.7%増)となった。

担当:今津