信託銀行 (特定取引勘定設置銀行6行)

信託銀行の平成15年度決算をみると、信託報酬は減少(前年度比76億円、2.0%減)したものの、役務取引等収支が増加(同387億円、26.5%増)となったこと等から、業務純益は6,447億円(同359億円、5.9%増)と4年連続の増益となった。また、株式等関係損益が918億円の収益超過となったこと等から、経常利益は4,766億円の黒字となり、当期純利益も3,539億円の黒字となり、前年度の赤字から黒字に転じた。

業容面をみると、銀行勘定における預金は8年ぶりで減少(前年度末比0.6%減)した。信託勘定については、貸付信託が11年連続で減少(同28.4%減)となったが、包括信託の増加(同28.0%増)等により、全体では増加(同4.6%増)した。また、貸出金は、銀行勘定では増加(同0.3%)したものの、信託勘定では減少(同27.3%減)となった。

損益状況

信託報酬
財産管理部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託以外の信託)においては、有価証券の信託の残高が増加(前年度比4兆5,518億円、16.7%増)したほか、金銭債権の信託の残高が増加(同2兆1,478億円、16.7%増)したものの、長期金融部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託)において、貸付信託の残高が減少(同2兆1,247億円、28.4%減)したほか、金銭信託の残高が減少(同1兆2,391億円、同1.4%減)したこと等から、信託報酬全体では、3,733億円(同76億円、2.0%減)と、前年度に引続き減少した。
資金運用益
資金運用収益、資金調達費用ともに減少したが、前者の減少額が後者のそれを上回ったことから、資金運用益は、5,019億円(前年度比288億円、5.4%減)と減益となった。

国内業務部門

資金運用収益を見ると、貸出金残高(平残)が減少(前年度比2.9%減)したほか、貸出金利回りが低下(同0.06%ポイント低下)したことから、貸出金利息は3,858億円(同313億円、7.5%減)と減少した。また、有価証券利回りが低下(同0.08%ポイント低下)したことから、有価証券利息配当金は950億円(同228億円、19.3%減)と減少した。この結果、全体では5,000億円(同532億円、9.6%減)と減少した。

資金調達費用を見ると、預金残高(平残)は増加(前年度比4.4%増)したものの、預金利回りが低下(同0.06%ポイント低下)したことから、預金利息は729億円(同146億円、16.7%減)と減少したほか、信託勘定借残高(平残)の減少(同17.0%減)に伴う信託勘定借利息の減少を主因にその他の支払利息が300億円(同108億円、26.6%減)と減少した。この結果、全体では1,456億円(同338億円、18.8%減)と減少した。

以上の結果、資金運用収益の減少額が資金調達費用のそれを上回ったことから、国内業務部門における資金運用益は3,544億円(前年度比194億円、5.2%減)と減益となった。

国際業務部門

資金運用収益を見ると、貸出金利息が海外業務の縮小に伴う貸出金の圧縮と円高の影響から残高(平残)が減少(前年度比21.4%減)したことや、海外金利水準の低下から貸出金利回りが低下(同0.79%ポイント低下)したことから、貸出金利息は393億円(同279億円、41.5%減)と減少した。また、有価証券利回りが低下(同0.87%ポイント低下)したことから、有価証券利息配当金は2,217億円(同287億円、11.5%減)と減少した。この結果、資金運用収益全体では、2,923億円(同954億円、24.6%減)となった。

資金調達費用を見ると、海外金利水準の低下等から預金利回りが低下(前年度比0.54%ポイント低下)したことに加え、円高の影響等から預金残高(平残)が減少(同21.9%減)したことから、預金利息が356億円(同276億円、43.7%減)と大幅に減少したほか、コールマネー利息は67億円(同33億円、33.2%減)、金利スワップ支払利息は7億円(同537億円、98.7%減)と減少した。この結果、資金調達費用全体では、1,448億円(同861億円、37.3%減)となった。

以上の結果、全体では、資金運用収益の減少額が資金調達費用のそれを上回ったことから、国際業務部門における資金運用益は1,475億円(前年度比94億円、6.0%減)と減益となった。

役務取引等収益・費用
投信・保険商品販売関連手数料の増加からその他の役務収支の収益超過額が増加したことから、全体の収益超過額は1,846億円(前年度比387億円、26.5%増)となった。
特定取引収益・費用
特定取引収益が増加し、特定取引費用が減少したことから、全体の収益超過額は189億円(前年度比44億円、30.4%増)となった。
その他業務収益・費用
国債等関係損益の収益超過額が大幅に減少したことから、全体の収益超過額は1,009億円(前年度比220億円、17.9%減)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株式市況の回復により、株式等償却や株式等売却損が大幅に減少したこと等から、収益超過額は918億円と前年度の損失超過から収益超過に転じた(前年度6,407億円の損失超過)。
また、引き続き不良債権処理を進めたことから、個別貸倒引当金純繰入額が958億円(前年度比101億円、9.6%減)と減少した。また、一般貸倒引当金の戻入れがあったほか、貸出金償却が866億円(同935億円、51.9%減)と減少した。
以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は1,198億円の損失超過と前年度(1兆767億円の損失超過)に比べ損失超過額が大幅に減少した。
営業経費
物件費が3,059億円(前年度比27億円、0.9%増)と増加したものの、人件費が2,582億円(同57億円、2.2%減)、税金が190億円(同11億円、5.2%減)と減少したことから、営業経費全体では5,832億円(同41億円、0.7%減)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は1兆9,201億円(前年度比583億円、2.9%減)、経常費用は1兆4,434億円(同1兆41億円、41.0%減)となり、経常利益は4,766億円(前年度4,691億円の赤字)と、前年度の赤字から黒字に転じた(増益2行、黒字転換5行、減益1行)。また、特別損失が788億円(前年度比641億円、44.9%減)あったものの、貸倒引当金の戻入れ益や東京都外形標準課税訴訟の和解に伴う事業税の還付金等および厚生年金基金の代行返上益等により特別利益が1,317億円(同384億円、41.2%増)と増加したこと等から、税引前当期純利益は5,295億円となり、法人税等調整額が2,006億円となった(減益要因)にもかかわらず、当期純利益は、3,539億円の黒字(前年度4,316億円の赤字)と、前年度の赤字から黒字に転じた(増益1行、黒字転換6行、減益1行)。
業務純益は、役務取引等収支の改善等から、6,447億円(前年度比359億円、5.9%増)となった(増益7行、減益1行)。また、国内業務粗利益は9,489億円(同581億円、5.8%減)、国際業務粗利益は2,309億円(同425億円、22.5%増)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りを見ると、貸出金利回りは前年度比0.06%ポイント低下して1.37%、有価証券利回りは同0.08%ポイント低下して0.82%、コールローン等利回りは同0.01%ポイント上昇して0.22%となった。この結果、資金運用利回りは、同0.06%ポイント低下して1.12%となった。
資金調達利回りを見ると、預金債券等利回りは前年度比0.05%ポイント低下して0.21%、コールマネー等利回りは、同0.11%ポイント低下して0.64%となった。この結果、資金調達利回り(資金調達費用/資金調達勘定平残)では、同0.06%ポイント低下して0.32%となった。

以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比横ばいの0.80%となった。

国際業務部門

資金運用利回りを見ると、貸出金利回りは前年度比0.79%ポイント低下して2.30%、有価証券利回りは同0.87%ポイント低下して3.43%、コールローン利回りは同0.72%ポイント低下して1.29%となった。この結果、資金運用利回りは、同0.98%ポイント低下して2.79%となった。
資金調達利回りを見ると、預金利回りが前年度比0.54%ポイント低下して1.40%、譲渡性預金利回りは同0.84%ポイント上昇して3.32%、コールマネー利回りは同0.71%ポイント低下して1.30%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.88%ポイント低下して1.37%となった。

以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.09%ポイント縮小して1.43%となった。

資金調達

預金は、末残でみると、国内部門で増加(前年度末比1.1%増)したものの、海外業務の縮小等により国際部門で減少(同19.3%減)したことから、全体では34兆3,160億円(同2,118億円、0.6%減)と8年ぶりの減少となった。一方、平残は、国際部門で減少(前年度比21.9%減)したものの、国内部門で増加(同4.4%増)したことから、全体では34兆866億円(同6,253億円、1.9%増)となった。

譲渡性預金は、末残では3兆9,441億円(前年度末比337億円、0.8%減)、平残では3兆8,881億円(前年度比5,881億円、13.1%減)となった。また、信託勘定借は、末残では7兆765億円(前年度末比865億円、1.2%減)、平残では、6兆9,002億円(前年度比1兆4,147億円、17.0%減)となった。

信託勘定を見ると、金銭信託(合同運用指定金銭信託、単独運用指定金銭信託および特定金銭信託)は86兆9,727億円(前年度比1兆2,391億円、1.4%減)と減少したほか、年金信託は34兆7,354億円(同1,267億円、0.4%減)と減少した。また、貸付信託は5兆3,436億円(同2兆1,247億円、28.4%減)と大幅に減少した。一方で、有価証券の信託は31兆8,242億円(同4兆5,518億円、16.7%増)と増加したほか、投資信託は49兆3,659億円(同4兆888億円、9.0%増)と増加した。この結果、信託勘定の負債合計額は、256兆9,908億円(同11兆4,021億円、4.6%増)と前年度に引続き増加した。

資金運用

貸出金は、国内部門をみると、末残では、29兆6,900億円(前年度末比5,107億円、1.8%増)と増加したものの、平残では、28兆6,457億円(前年度比8,441億円、2.9%減)と減少した。また、国際部門をみると、末残では、1兆5,714億円(前年度末比4,078億円、20.6%減)、平残では、1兆7,056億円(前年度比4,636億円、21.4%減)とともに大幅に減少した。この結果、貸出金全体では、末残では、31兆2,614億円(前年度末比1,028億円、0.3%増)と微増となったものの、平残では、30兆3,512億円(前年度比1兆3,077億円、4.1%減)と減少した。また、信託勘定(末残)をみても、貸出金は、5兆8,037億円(前年度末比2兆1,782億円、27.3%減)と大幅に減少した。

リスク管理債権の残高について見ると、破綻先債権額は、銀行勘定で802億円(前年度末比214億円、21.0%減)、信託勘定で196億円(同183億円、48.2%減)とともに減少した。また、延滞債権額は、銀行勘定で7,346億円(同716億円、8.9%減)、信託勘定で651億円(同184億円、22.0%減)とともに減少した。3ヵ月以上延滞債権額は、銀行勘定で20億円(同51億円、71.1%減)、信託勘定で28億円(同33億円、54.1%減)、貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で6,098億円(同7,180億円、54.1%減)、信託勘定で1,171億円(同706億円、37.6%減)となった。以上の結果、リスク管理債権の総額は、銀行勘定で1兆4,268億円(同8,160億円、36.4%減)、信託勘定で2,047億円(同1,106億円、35.1%減)となった(信託勘定については、いずれも元本補填契約のある信託勘定の計数)。

なお、金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容(銀行勘定)は、それぞれ破産更生債権が1,592億円(前年度末比922億円、36.7%減)、危険債権が6,671億円(同71億円、1.1%減)、要管理債権額が6,159億円(同7,263億円、54.1%減)といずれも減少した。また、正常債権額が31兆1,070億円(同6,888億円、2.3%増)であった。

有価証券は、銀行勘定では、末残では、国債(前年度末比2,925億円、4.5%増)、株式(同3,813億円、12.6%増)と増加したことから、全体の末残は18兆1,839億円(同7,828億円、4.5%増)となった(平残では18兆90億円、前年度比9,289億円、4.9%減)。一方、信託勘定では、株式(前年度末比7兆3,878億円、29.0%減)、投資信託有価証券(同9兆3,581億円、85.4%減)、投資信託外国投資(同2兆3,974億円、86.5%減)など軒並み減少したことから、全体の末残は59兆7,684億円(同5兆4,016億円、8.3%減)となった。

預け金は、銀行勘定では、末残で2兆8,102億円(前年度末比6,620億円、19.1%減)となった(平残では1兆2,819億円、前年度比470億円、3.5%減)。一方、信託勘定では、7兆5,471億円(前年度末比1兆3,945億円、22.7%増)となった。

自己資本

資本金は、期中に1行で増資、2行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われたことから、1兆5,463億円(前年度末比64億円、0.4%増)となった。

資本剰余金は7,268億円(前年度末比2,824億円、28.0%減)となったが、利益剰余金は、当期純利益が前年度の赤字から黒字に転じたこと等から、前年度の194億円のマイナスから5,955億円のプラスに転じた。以上のほか、株式等評価差額金が前年度の2,769億円の評価損から3,033億円の評価益に転じたこと等から、資本勘定全体では3兆1,386億円(同8,935億円、39.8%増)となった。

担当:大山