1.当中間期決算の背景

(1)当中間期中の経理基準の変更

平成18年5月1日に会社法が施行されたこと等を受け、当中間期において多くの経理基準が変更されているが、そのうち主なものは以下に記載のとおりである。

  1. 「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(企業会計基準第5号)および「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」(企業会計基準適用指針第8号)が当中間期から適用になったこと、ならびに「銀行法施行規則」(昭和57年大蔵省令第10号)別紙様式が改正されたことから、貸借対照表等の表示について以下の点が変更されている。
    • 企業結合における支払対価と被取得企業から取得した資産および引受けた負債に配分された純額との差額等については、「のれん」または「負ののれん」として表示。
    • 「資本の部」は「純資産の部」とし、株主資本、評価・換算差額等および新株予約権に区分して表示。
    • 「新株式払込金」「自己株式払込金」は、払込期日に資本金への振り替えがされることになったこと等により「新株式申込証拠金」「自己株式申込証拠金」として表示。
    • 「利益剰余金」に内訳表示していた「任意積立金」「中間未処分利益」は、「その他利益剰余金」の「任意積立金」および「繰越利益剰余金」として表示。
    • 純額で繰延ヘッジ損失(または繰延ヘッジ利益)として「その他資産」(または「その他負債」)に含めて計上していたヘッジ手段に係る損益(または評価差額)は、税効果額を控除のうえ評価・換算差額等の「繰延ヘッジ損益」として相殺して表示。
    • 「株式等評価差額金」は、「その他有価証券評価差額金」として表示。
    • 「その他負債」に含めていた新株予約権は、純資産の部に独立して表示。
    • 「動産不動産」は、「有形固定資産」「無形固定資産」または「その他資産」に区分して表示。
    • 「その他資産」に含めていたソフトウェアは、「無形固定資産」に含めて表示。

    また、連結財務諸表においては、以下の点についても変更がされている。

    • 資産の部に計上していた「連結調整勘定」は、「無形固定資産」中の「のれん」に含めて表示。
    • 「少数株主持分」は「純資産の部」に含めて表示。
    • 連結調整勘定の償却については「その他経常費用」から「営業経費」で計上する扱いに変更。
  2. 「株主資本等変動計算書に関する会計基準」(企業会計基準第6号)および「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第9号)が会社法施行日以後終了する中間会計期間から適用されることになったことから、当中間期から中間株主資本等変動計算書を作成している。
  3. 「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(企業会計基準委員会実務対応報告第19号)が当中間期から適用になったことから、社債発行費を資産として計上する場合には、従来の発行後3年以内(商法施行規則第39条)の均等償却に替えて社債の償還期間にわたり利息法(または定額法)により償却する扱いに変更されている。 (平成18年3月期の貸借対照表に計上した社債発行費は、経過措置に基づき従前の処理が継続されている。)
  4. 「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)が一部改正されたことから、社債の貸借対照表価額については、従来の額面から、償却原価法(定額法または利息法)に基づいて算定された価額により計上する扱いに変更されている。 (平成18年3月期の貸借対照表に計上した社債発行差金は、経過措置に基づき従前の均等償却を行うとともに未償却残高を社債価額から控除している。)
  5. 「役員賞与に関する会計基準」(企業会計基準第4号)が当中間期から適用になったことから、役員賞与は費用処理に統一された。これにより、利益処分による支給時の未処分利益減額の扱いを従来選択しており、当中間期から費用処理している場合は、当中間期に帰属する額を役員賞与引当金として計上している。
  6. その他「ストックオプション」「企業結合」「事業分離」等に係る会計基準等が当中間期から適用になったことから、これに該当する取引がある場合には、これらに従った会計処理がされている。

担当:加藤

(2)当中間期中の金融情勢等

平成18年度中間期の金融情勢をみると、短期金利については、18年3月から日本銀行が無担保コールレート(オーバーナイト物)を概ねゼロ%で推移するよう促すとしていたことから、概ね0%近傍で推移していたが、7月の日本銀行の金融政策決定会合で金融市場調節の方針が変更された後は、同レートは0.25%程度で推移した。一方、長期金利については、日本銀行の金融政策の先行きや米国の長期金利の動向などから、1.8%~2.0%程度で推移したが、8月以降、国内の追加利上げ観測の後退や米国の長期金利低下などから低下し、9月末には1.6%台後半となった。

株価は、18年度上期初は、国内の景況感や企業収益の改善などを受けて堅調に推移し、日経平均株価は17,000円を上回った。しかし、5月から6月中旬にかけては、米国の物価上昇・景気減速懸念から米国の株式市況が下落したことなどを受け、一時、日経平均株価は14,000円台前半まで下落した。その後は、中東などの不安定な国際情勢などを受け一時的な下落はあったものの、第1四半期の良好な企業業績や米国の利上げ休止などから回復し、当中間期末の日経平均株価は、16,127円58銭と前年度末(17,059円66銭)比で932円08銭安となった(前中間期末13,574円30銭)。

また、当中間期末の外国為替相場(スポットレート)は、1米ドル=118円05銭となり、前年度末(117円47銭)比で58銭の円安となった(前中間期末113円28銭)。

担当:小暮

図1 国内主要金利の推移

図2 海外主要金利等の推移

2.概況

(以下は、銀行単体ベースでとりまとめたものである。)

全国銀行126行の平成18年度中間期決算をみると、資金運用益(算式は後掲(注)参照)は、資金運用収益、資金調達費用ともに増加したものの、費用が収益を上回って増加したため、4兆1,987億円(前中間期比1,536億円、3.5%減)と、減益となった。なお、業務純益は、役務取引等利益や特定取引利益が増益となったものの、資金運用益の減益や、国債等債券関係損益が損失超過からその他業務収支が大幅な減益となったことから、2兆5,579億円(同5,064億円、16.5%減)と、大幅な減益となった。

経常利益は、不良債権処理が進展し個別貸倒引当金純繰入額等が大幅に減少したものの、業務純益が大幅な減益となったことから、2兆2,343億円(同517億円、2.3%減)と、若干の減益となった。

中間純利益は、経常利益の減益に加えて貸倒引当金の戻し益等による特別利益が減少したものの、一部銀行の繰延税金資産計上により法人税等調整額(税金費用)が減少したことから、2兆976億円(同257億円、1.2%減)と、小幅な減益となった。
業容面では、預金は期中0.5%減、貸出金は同1.1%増となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、4兆1,987億円(前中間期比1,536億円、3.5%減)と、前中間期同様、減益となった。資金運用収益は、6兆1,538億円(同5,306億円、9.4%増)と増加したものの、資金調達費用が、1兆9,551億円(同6,842億円、53.8%増)と、資金運用収益を上回って増加したことによる。
内訳をみると、国内業務部門では、前中間期に比べ、貸出金利回りの低下から貸出金利息が減少したものの、有価証券利回りの上昇により有価証券利息配当金が増加し、資金運用収益も増加したが、日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利上昇により資金調達費用が資金運用収益を上回って増加したことから、減益となった。
また、国際業務部門では、米国の短期金利上昇の影響等から、資金調達費用が資金運用収益を上回って増加したことから、同じく減益となった。
役務取引等収益・費用
役務取引等収益・費用は、投資信託や年金保険等の販売、シンジケートローンの組成や証券化・M&A等のアレンジメント業務に関する手数料収入の増加から、その収益超過額は1兆377億円(前中間期比475億円、4.8%増)と増加したが、増益額は前中間期の3分の1程度にとどまった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、通貨スワップ取引損益の改善から、その収益超過額が1,950億円(前中間期比1,322億円、210.8%増)と大幅な増益となった。
その他業務収益・費用
外国為替売買損益は、通貨スワップ取引に係るカバー取引の影響等から収益超過額が縮小し、また、金利環境から国債等債券売却損が増加して国債等債券関係損益が損失超過(1,008億円の損失超過)に転じ、金融派生商品損益の損失超過額も増加したことから、その他業務収益・費用全体の収益超過額は、1,068億円(前中間期比4,977億円、82.3%減)と、大幅な減益となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益は、2,370億円の収益超過となったが、これは前中間期と概ね同水準である。一方、引当金等は、一般貸倒引当金が若干の取崩しとなったことに加え、不良債権処理の進展により、個別貸倒引当金繰入額、貸出金償却および債権売却損がいずれも減少した。この結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は、2,549億円に止まり、前中間期に比べて3,935億円減少した。
信託報酬
信託報酬は、1,887億円(前中間期比83億円、4.6%増)となった。
営業経費
営業経費は、経営全般にわたる合理化・効率化を引続き進めたことから、3兆2,375億円(前中間期比180億円、0.6%減)と、前中間期に比べて微減となった。
経常利益・中間純利益
以上の結果、経常収益は9兆940億円(前中間期比4,323億円、5.0%増)、経常費用は6兆8,596億円(同4,840億円、7.6%増)となり、経常利益は2兆2,343億円(同517億円、2.3%減)と、若干の減益となった(増益70行、黒字転換4行、減益44行、損失8行)。減益となった背景には、不良債権処分損は減少したものの、資金運用益の減益に加えて、国債等債券関係損益が金利環境から損失超過となったことが大きい。
中間純利益は、貸倒引当金の戻し益等による特別利益は前中間期に比べて減少したものの、一部銀行の繰延税金資産計上により法人税等調整額(税金費用)が前中間期を大きく下回る3,395億円であったこと等から、2兆976億円(前中間期比257億円、1.2%減)と小幅な減益となった(増益73行、黒字転換4行、減益41行、純損失8行)。
参考までに業務純益をみると、2兆5,579億円(前中間期比5,064億円、16.5%減)と大幅な減益となった。この背景には、前述のとおり、資金運用益の減益に加えて、国債等債券関係損益が金利環境から損失超過となったことが大きい。

なお、全国銀行の業態別の損益状況は表のとおりである。

利回り・利鞘(国内業務部門)
資金運用利回りをみると、貸出金利回りは、底打ちしたものの前中間期比では0.05%ポイント低下して1.72%、一方、有価証券利回りは、同0.10%ポイント上昇して1.05%、コールローン等利回りは、同0.17%ポイント上昇して0.56%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.02%ポイント低下して1.44%となった。
一方で、資金調達費用をみると、預金債券等利回りは同0.03%ポイント上昇して0.09%、コールマネー等利回りは0.15%ポイント上昇して0.38%、経費率は横這いの1.06%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.06%ポイント上昇して1.10%となった。
以上の結果、預貸金利鞘は、同0.08%ポイント縮小して0.57%に、また、総資金利鞘も、同0.08%ポイント縮小して0.34%となった。

資金調達

預金は、期中、国内業務部門では、個人預金が増加したものの、一般法人預金および公金預金が減少したことから、全体では減少(0.9%減)となった。一方、国際業務部門は、増加(5.0%増)となった。この結果、預金全体では、末残で545兆9,938億円(前期末比2兆6,435億円、0.5%減)と、減少した。

譲渡性預金は、末残で31兆5,865億円(同2,770億円、0.9%増)となった。
債券は、末残で7兆6,091億円(同1兆1,507億円、13.1%減)となった。

資金運用

貸出金は、期中、国内業務部門では、企業向け貸出は横這いであったが、住宅ローン等の個人向け貸出は増加(0.4%増)となった。また、国際業務部門も増加(11.6%増)した。この結果、貸出金全体では、432兆7,876億円(前期末比4兆7,251億円、1.1%増)となった。
有価証券は、期中、外国証券を除き、国債、株式などがいずれも減少し、全体では201兆102億円(同6兆3,012億円、3.0%減)となった。
リスク管理債権(銀行勘定の単体ベース)の残高をみると、破綻先債権額は6,260億円(前期末比202億円、3.3%増)、延滞債権額は7兆2,253億円(同4,582億円、6.0%減)、3カ月以上延滞債権額は1,488億円(同181億円、13.9%増)、貸出条件緩和債権額は3兆9,858億円(同5,555億円、12.2%減)となった。この結果、リスク管理債権額の総額は、11兆9,860億円(同9,754億円、7.5%減)となり、貸出金総額に占める割合は、前期末に比べて0.26%ポイント低下して、2.77%となった。

また、金融再生法第7条に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆1,682億円(前期末比1,471億円、6.4%減)、危険債権が5兆9,264億円(同3,536億円、5.6%減)、要管理債権が4兆1,084億円(同5,227億円、11.3%減)と、いずれも減少した。なお、正常債権は449兆3,092億円(同7兆2,308億円、1.6%増)と、増加した。
資本金は、9兆2,062億円(同472億円、0.5%増)となり、会社法改正により新たに設けられた純資産の部合計は、37兆3,963億円となった(参考:前期末の資本の部合計は37兆3,058億円)。なお、利益水準が高いにもかかわらず純資産の部合計が伸びていない要因には、都市銀行グループにおける公的資金の返済等に伴う親会社への剰余金の配当等が挙げられる。
なお、参考までに繰延税金資産の残高を見ると、3兆2,337億円(前期末比1,107億円、3.5%増)となった。

担当:増田

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務純益=資金運用益+役務取引等収支+特定取引収支+その他業務収支+信託報酬-一般貸倒引当金繰入額-債券費-経費-金銭の信託運用見合費用
  • 国内業務=国内店の円建取引
  • 国際業務=国内店の外貨建取引+海外店の取引(円建対非居住者取引とオフショア勘定は国際業務に含む)

図3 全国銀行の経常利益・資金運用益の推移

表 経常利益の業態別内訳 (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益41,987
(△1,536)
17,109
(△2,154)
16,367
(171)
5,371
(67)
2,659
(444)
役務取引等収支10,377
(475)
5,757
(171)
2,566
(204)
474
(75)
1,456
(12)
特定取引収支1,950
(1,322)
1,584
(1,136)
75
(22)

(-)
169
(172)
その他業務収支1,068
(△4,977)
1,302
(△3,396)
△242
(△694)
△105
(△224)
△188
(△672)
その他経常収支△2,549
(3,935)
△194
(2,783)
△1,555
(850)
△1,133
(△352)
137
(559)
信託報酬1,887
(83)
52
(△30)
4
(△1)

(-)
1,832
(114)
営業経費32,375
(△180)
13,466
(△106)
11,684
(△105)
3,819
(21)
2,768
(△35)
経常利益22,343
(△517)
12,142
(△1,384)
5,530
(659)
787
(△455)
3,296
(664)
中間純利益20,976
(△257)
13,510
(△410)
3,490
(△181)
349
(△411)
2,680
(642)
(参考)業務純益25,579
(△5,064)
12,449
(△4,982)
7,533
(221)
1,912
(△191)
3,249
(△34)
注.
上段は平成18年度中間期計数、下段( )内は対前中間期比増減額。なお、りそな銀行と奈良銀行の合併に伴い、都市銀行と地方銀行IIの対前中間期比増減額は、遡及調整をして算出した。