地方銀行 (特定取引勘定設置銀行12行)

地方銀行の平成18年度決算をみると、資金運用益は、資金運用収益および資金調達費用がともに増加したものの、貸出金の伸び等もあって、前者の増加額が後者のそれを上回ったため、2年連続で増益となった。

経常利益は、役務取引等収支の増益や、貸出金償却の減少等から、前年度比468億円増益の1兆1,478億円となった。一方、当期純利益については、貸倒引当金戻入益の減少等により、同862億円減益の7,425億円にとどまった。
業容面(末残)をみると、預金は前年度末比2.3%増、貸出金は同2.8%増となった。

  • 本分析は、預金保険法第102条第1項第3号措置の認定を受けた特別危機管理銀行1行を含んでいる。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆2,901億円(前年度比114億円、0.3%増)となり、増益となった。

資金運用収益をみると、貸出金利息は、貸出金の伸びや利回りの上昇から2兆8,389億円(前年度比1,096億円、4.0%増)と増加したほか、有価証券利息配当金も、利回りの上昇等から9,214億円(同743億円、8.8%増)と増加した。
この結果、資金運用収益全体では、3兆8,694億円(同2,045億円、5.6%増)となった。

次に、資金調達費用をみると、日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利の上昇等から、預金利息が3,012億円(前年度比1,554億円、106.6%増)、コールマネー利息が507億円(同168億円、49.6%増)と大幅に増加した。この結果、資金調達費用全体では、5,793億円(同1,930億円、50.0%増)と大幅な増加となった。

役務取引等収益・費用
投資信託等の販売手数料等の増加により、その他の役務収支の収益超過額が増加したことから、収益超過額は5,262億円(前年度比380億円、7.8%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益が増加したことから、収益超過額は156億円(前年度比51億円、49.0%増)となった。
その他業務収益・費用
金利上昇等から国債等債券関係損益の損失超過額が拡大し、また、金融派生商品損益も損失超過に転じたことから、その他業務収支全体では、77億円の損失超過に転じた(前年度は223億円の収益超過)。
その他経常収益・費用
一般貸倒引当金は純取崩しとなったが、個別貸倒引当金純繰入額が増加したことから、貸倒引当金繰入額は3,409億円(前年度比68億円、2.0%増)となった。また、株式等関係損益が1,506億円(同134億円、8.2%減)と収益超過額が減少したものの、貸出金償却が1,405億円(同522億円、27.1%減)と減少した結果、その他経常収支は3,455億円の損失超過となったが、損失超過額は前年度比127億円減少した。
営業経費
物件費が増加したものの、人件費が減少したため、2兆3,314億円(前年度比97億円、0.4%減)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は5兆1,333億円(前年度比2,529億円、5.2%増)、経常費用は3兆9,854億円(同2,061億円、5.5%増)となり、経常利益は1兆1,478億円(同468億円、4.2%増)と増益となった(増益35行、減益24行、黒字転換4行、経常損失1行)。当期純利益は、経常利益が増益となったものの、貸倒引当金戻入益の減少等により特別利益が減少したこと等から、7,425億円(同862億円、10.4%減)と減益となった(増益32行、減益27行、黒字転換4行、当期純損失1行)。
なお、業務純益は、1兆5,320億円(前年度比78億円、0.5%増)と増益に転じた(増益31行、減益32行、黒字転換1行)。また、国内業務粗利益は3兆7,051億円(同613億円、1.7%増)となり、国際業務粗利益は1,214億円(同362億円、23.0%減)となった。

利回り・利鞘(国内業務)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.02%ポイント上昇して2.00%、有価証券利回りは同0.11%ポイント上昇して1.22%、コールローン等利回りは同0.37%ポイント上昇して0.49%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.06%ポイント上昇して1.72%となった。

一方、資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.08%ポイント上昇して0.11%、コールマネー等利回りは同0.31%ポイント上昇して0.83%となった。また、経費率は、人件費率が低下したこと等から同0.01%ポイント低下して1.18%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.07%ポイント上昇して1.29%となった。

以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.01%ポイント低下して0.43%となった。

資金調達

預金は、流動性預金が増加したことに加え、定期性預金も増加に転じたことから、末残で194兆608億円(前年度末比4兆4,184億円、2.3%増)となった。また、平残では188兆4,733億円(前年度比1兆7,501億円、0.9%増)となった。

譲渡性預金は、末残で4兆6,837億円(前年度末比5,747億円、14.0%増)、平残では5兆734億円(前年度比3,863億円、8.2%増)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門において企業向け貸出および住宅ローン等が増加したことから、末残で144兆7,408億円(前年度末比3兆9,608億円、2.8%増)となった。また、平残では140兆8,041億円(前年度比3兆6,461億円、2.7%増)となった。

銀行勘定のリスク管理債権についてみると、破綻先債権額は2,864億円(前年度末比302億円、9.5%減)となり、延滞債権額は3兆8,594億円(同2,018億円、5.0%減)、3カ月以上延滞債権額は537億円(同66億円、14.0%増)、貸出条件緩和債権額は1兆5,139億円(同3,411億円、18.4%減)となった。この結果、銀行勘定のリスク管理債権全体では、5兆7,135億円(同5,665億円、9.0%減)となり、貸出金総額に占める割合は、前年度末に比べて0.51%ポイント低下して、3.95%となった。

なお、金融再生法第7条に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容(信託勘定の計数は除く)は、破産更生債権及びこれらに準じる債権は1兆1,833億円(前年度末比862億円、6.8%減)、危険債権は3兆193億円(同1,977億円、6.1%減)、要管理債権額は1兆5,677億円(同2,932億円、15.8%減)、正常債権は142兆4,240億円(同5兆730億円、3.7%増)となった。

有価証券は、内外の市場金利上昇を懸念し、国債や外国証券等が減少したことから、末残で60兆5,779億円(前年度末比1兆3,131億円、2.1%減)となった。一方、平残では58兆1,237億円(前年度比4,898億円、0.8%増)となった。

自己資本

資本金は、当期中に2行で増資が、また、12行で転換社債型新株予約権付社債の転換等が行われたことから、2兆5,481億円(前年度末比699億円、2.8%増)となった。また、その他有価証券評価差額金が2兆4,729億円(同2,517億円、11.3%増)と評価益となり、純資産の部合計では、12兆7,478億円となった。

担当:昆