〔以下は、都市銀行6行(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)46行、信託銀行7行(三菱UFJ信託、みずほ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、三井アセット信託、りそな信託)、新生銀行、あおぞら銀行の125行ベースで算出、分析したものである。〕

経理基準の主な変更等

平成18年5月1日に会社法が施行されたこと等を受け、本年度において多くの経理基準が変更されているが、そのうち主なものは以下に記載のとおりである。

  1. 「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(企業会計基準第5号)および「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針」(企業会計基準適用指針第8号)が本年度から適用になったこと、ならびに「銀行法施行規則」(昭和57年大蔵省令第10号)別紙様式が改正されたことから、貸借対照表等の表示について以下の点が変更されている。
    • 企業結合における支払対価と被取得企業から取得した資産および引受けた負債に配分された純額との差額等については、「のれん」または「負ののれん」として表示。
    • 「資本の部」は「純資産の部」とし、株主資本、評価・換算差額等および新株予約権に区分して表示。
    • 「新株式払込金」「自己株式払込金」は、払込期日に資本金への振り替えがされることになったこと等により「新株式申込証拠金」「自己株式申込証拠金」として表示。
    • 「利益剰余金」に内訳表示していた「任意積立金」「当期未処分利益」は、「その他利益剰余金」の「任意積立金」および「繰越利益剰余金」として表示。
    • 純額で資産(または負債)の「繰延ヘッジ損失」(または「繰延ヘッジ利益」)として計上していたヘッジ手段に係る損益(または評価差額)は、税効果額を控除のうえ評価・換算差額等の「繰延ヘッジ損益」として相殺して表示。
    • 「株式等評価差額金」は、「その他有価証券評価差額金」として表示。
    • 「新株予約権」を、純資産の部に独立して表示。
    • 「動産不動産」は、「有形固定資産」「無形固定資産」または「その他の資産」に区分して表示。
    • 「その他の資産」に含めていたソフトウェアは、「無形固定資産」中の「ソフトウェア」として表示。
    また、連結財務諸表においては、以下の点についても変更がされている。
    • 資産の部に計上していた「連結調整勘定」は、「無形固定資産」中の「のれん」に含めて表示。
    • 「少数株主持分」は「純資産の部」に含めて表示。
    • 連結調整勘定の償却については、「その他経常費用」から「営業経費」で計上する扱いに変更。
  2. 「株主資本等変動計算書に関する会計基準」(企業会計基準第6号)および「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第9号)が会社法施行日以後終了する事業年度から適用されることになったことから、本年度から株主資本等変動計算書を作成している。
  3. 「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(企業会計基準委員会実務対応報告第19号)が本年度から適用になったことから、社債発行費を資産として計上する場合には、従来の発行後3年以内(旧商法施行規則第39条)の均等償却に替えて社債の償還期間にわたり利息法(または定額法)により償却する扱いに変更されている。
    (平成18年3月期の貸借対照表に計上した社債発行費は、経過措置に基づき従前の処理が継続されている。)
  4. 「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)が一部改正されたことから、社債の貸借対照表価額については、従来の額面から、償却原価法(定額法または利息法)に基づいて算定された価額により計上する扱いに変更されている。
    (平成18年3月期の貸借対照表に計上した社債発行差金は、経過措置に基づき従前の均等償却を行うとともに未償却残高を社債価額から控除している。)
  5. 「役員賞与に関する会計基準」(企業会計基準第4号)が本年度から適用になったことから、役員賞与は費用処理に統一された。これにより、利益処分による支給時の未処分利益減額の扱いを従来選択しており、本年度から費用処理している場合は、本年度に帰属する額を役員賞与引当金として計上している。
  6. その他「ストックオプション」「企業結合」「事業分離」等に係る会計基準等が本年度から適用になったことから、これに該当する取引がある場合には、これらに従った会計処理がされている。

概況

(以下は、銀行単体の決算をとりまとめたものである。)
全国銀行125行の平成18年度決算をみると、資金運用益は、国際業務部門における減益を主因として、8兆4,882億円(前年度比2,569億円、2.9%減)と、減益に転じた。また、各種手数料等の受払収支を示す役務取引等利益は、2兆2,218億円(同937億円、4.4%増)と、増益となった。
経常利益は、以上に加えて、外国為替売買益の減少等からその他業務収支が減益となり、株式等関係収支も大幅に減少したこと等から、4兆3,115億円(前年度比4,385億円、9.2%減)と、減益に転じた。
当期純利益は、以上に加えて、貸倒引当金の戻入益の減少等により特別利益が大幅に減少したこと等から、3兆3,985億円(前年度比8,048億円、19.1%減)と、減益に転じた。
なお、参考までに業務純益をみると、5兆4,429億円(前年度比2,681億円、4.7%減)と、減益となった。これは、先述のその他業務収支の減益等によるものである。
業容面(末残)は、預金が前年度末比で1.6%の増加、貸出金は同1.8%の増加、有価証券は同3.7%の減少となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、8兆4,882億円(前年度比2,569億円、2.9%減)と、減益に転じた。
資金運用収益は、13兆204億円(前年度比1兆4,111億円、12.2%増)と増加した。国内業務部門では、利回りの上昇から、貸出金利息、有価証券利息配当金とも増加し、全体でも前年度比5.4%増加した。また、国際業務部門では、貸出金利息が、残高の増加と、米国短期金利上昇の影響等により増加し、有価証券利息配当金も残高(平残)は減少したが利回りの上昇により増加し、全体では同31.8%増加した。
資金調達費用は、4兆5,323億円(前年度比1兆6,681億円、58.2%増)と大幅に増加した。国内業務部門では、預金利息が残高(平残)の減少にもかかわらず、日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利の上昇により大幅に増加し、譲渡性預金利息やコールマネー利息も同様に大幅に増加したことから、全体では前年度比97.1%増加した。一方、国際業務部門では、米国短期金利上昇の影響は、長短金利のフラット化によって、調達側により現れたため、預金利息、譲渡性預金利息などの大幅な増加の結果、全体で同48.1%増加した。
資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では前年度比1,008億円(1.3%)、国際業務部門では同1,562億円(22.7%)それぞれ減少したことから、全体で減益となった。ただし、国内業務部門は、前年度の有価証券利息配当金に特殊要因(一部都市銀行における再生専門子会社からの清算配当の受入)があった影響を除けばほぼ横這いで、実質減益であったのは国際業務部門である。
役務取引等収益・費用
各種手数料等の受払収支をみると、為替手数料収支は前年度比減少したものの、その他の役務収支が、法人関係ではストラクチャードファイナンス等に係る手数料等の増加、また、個人関係では投資信託の販売手数料等が増加したことから増加し、全体の収益超過額は2兆2,218億円(前年度比937億円、4.4%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、通貨スワップ取引損益等の改善等により国際業務部門において増加し、全体の収益超過額は4,561億円(前年度比3,401億円、293.2%増)と、大幅な増加となった。
その他業務収益・費用
下期において、長期金利が上期と比較して低下したこと等から、国債等関係損益の損失超過額は減少した。一方で、通貨スワップ取引に係るカバー取引の影響等により外国為替売買損益の収益超過額が減少し、債券先物取引等デリバティブの評価損の発生等から金融派生商品損益が損失超過に転じたことから、全体の収益超過額は3,575億円(前年度比4,029億円、53.0%減)と、大幅な減少となった。
信託報酬
信託報酬は、3,762億円(前年度比87億円、2.2%減)となった。
その他経常収益・費用
貸出金償却および債権売却損等の「その他の経常費用」はいずれも減少した。一方、ノンバンクの業績悪化等に伴い、株式等償却を実施した銀行があったこと等から、株式等関係損益は、前年度比3,794億円、57.3%の減少となった。また、一般貸倒引当金純繰入額は減少したものの、個別貸倒引当金純繰入額が増加したこと等から、貸倒引当金繰入額は7,120億円(前年度比270億円、3.9%増)となった。それらの結果、全体の損失超過額は1兆714億円となり、前年度に比べて損失が拡大した(前年度は8,587億円の損失超過)。
営業経費
物件費、税金は増加したが、人件費の減少により6兆5,167億円(前年度比89億円、0.1%減)と減少した。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は19兆1,799億円(前年度比1兆1,537億円、6.4%増)、経常費用は14兆8,683億円(同1兆5,922億円、12.0%増)となり、経常利益は4兆3,115億円(同4,385億円、9.2%減)と減益に転じた(増益64行、減益48行、黒字転換5行、経常損失8行)。当期純利益は、経常利益が減益となったことに加え、貸倒引当金戻入益の大幅な減少による特別利益の減少、「法人税、住民税及び事業税」が前年度比1,960億円増の4,968億円となったこと等から、3兆3,985億円(同8,048億円、19.1%減)と、減益に転じた(増益64行、減益47行、黒字転換5行、当期純損失9行)。
なお、参考までに業務純益をみると、資金運用益の減益やその他業務収支の悪化等から、5兆4,429億円(前年度比2,681億円、4.7%減)と減益となった(増益58行、減益65行、黒字転換1行、赤字1行)。 

利回り・利鞘(国内業務部門)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.09%ポイント上昇して1.79%、有価証券利回りは同0.16%ポイント上昇して1.12%、コールローン等利回りは同0.25%ポイント上昇して0.68%となった。以上に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは、同0.09%ポイント上昇して1.51%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.09%ポイント上昇して0.14%(預金利回りは0.12%)、コールマネー等利回りは同0.31%ポイント上昇して0.51%となった。また、人件費率・物件費率がともに上昇したことから、経費率は同0.05%ポイント上昇して1.09%となった。以上に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は同0.16%ポイント上昇して1.18%となった。

以上のように、資金運用利回り、資金調達原価ともに上昇したが、資金調達原価の上昇が資金運用利回りの上昇を上回ったことから、総資金利鞘は前年度比0.07%ポイント縮小して0.33%となった。なお、預貸金利鞘は、同0.04%ポイント縮小して0.56%となった。

資金調達

預金は、国内業務部門では、年度中、定期性預金の増加から、全体でも増加した。一方、国際業務部門では、外貨預金は減少したが、定期性預金を中心に増加し、全体でも増加した。この結果、末残では557兆5,584億円(前年度末比8兆9,210億円、1.6%増)となった。また、平残では544兆910億円(前年度比6兆8,321億円、1.2%減)となった。

譲渡性預金は、国際業務部門では増加したが、国内業務部門では減少し、末残では30兆6,102億円(前年度末比6,994億円、2.2%減)となり、平残では33兆7,327億円(前年度比1兆624億円、3.3%増)となった。

債券は、末残では6兆9,258億円(前年度末比1兆8,340億円、20.9%減)となり、平残では7兆7,322億円(前年度比1兆6,243億円、17.4%減)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門では、企業向け貸出は横這いであったが、住宅ローンを中心とする個人向け貸出が堅調に推移したことから増加した。また、国際業務部門でも前年度に引続き増加したことから、貸出金全体では、末残で435兆8,615億円(前年度末比7兆7,990億円、1.8%増)となった。また、平残では429兆9,195億円(前年度比3兆9,995億円、0.9%増)となった。

ここで、不良債権の状況として、銀行勘定のリスク管理債権額をみると、破綻先債権額は5,531億円(前年度末比527億円、8.7%減)、延滞債権額は7兆2,739億円(同4,096億円、5.3%減)、3カ月以上延滞債権額は1,228億円(同79億円、6.0%減)、貸出条件緩和債権額は3兆6,765億円(同8,647億円、19.0%減)であった。この結果、リスク管理債権額の総額は、11兆6,264億円(同1兆3,349億円、10.3%減)となり、貸出金総額に占める比率も同0.36%ポイント低下して2.67%となった。

また、金融再生法第7条に基づき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆432億円(前年度末比2,722億円、11.8%減)、危険債権が6兆41億円(同2,758億円、4.4%減)、要管理債権が3兆7,996億円(同8,315億円、18.0%減)、正常債権が459兆3,166億円(同17兆2,382億円、3.9%増)であった。

有価証券は、年度中、外国証券等が増加したが、国債の減少により、末残で199兆6,184億円(前年度末比7兆6,929億円、3.7%減)となった。また、平残では193兆7,572億円(前年度比15兆4,360億円、7.4%減)となった。

自己資本

当期中、地方銀行2行、第二地銀協地銀5行、信託銀行1行が増資を、また、地方銀行12行、第二地銀協地銀3行、信託銀行2行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われた。この結果、資本金は9兆2,789億円(前年度末比1,199億円、1.3%増)となった。また、純資産の部合計では、40兆348億円となった。

担当:世良

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
参考 経常利益の業態別内訳 (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益84,882
(△2,569)
35,083
(△2,852)
32,901
(114)
10,650
(△7)
5,299
(255)
役務取引等収支22,218
(937)
12,332
(281)
5,262
(380)
1,031
(107)
3,318
(142)
特定取引収支4,561
(3,401)
3,910
(3,194)
156
(51)

(-)
292
(233)
その他業務収支3,575
(△4,029)
3,204
(△3,534)
△77
(△300)
△89
(27)
△47
(△281)
その他経常収支△10,714
(△2,127)
△4,457
(△993)
△3,455
(127)
△2,672
(△1,399)
△471
(130)
信託報酬3,762
(△87)
117
(△45)
6
(△2)

(-)
3,639
(△40)
営業経費65,167
(△89)
27,684
(109)
23,314
(△97)
7,543
(70)
5,364
(△231)
経常利益43,115
(△4,385)
22,503
(△4,058)
11,478
(468)
1,377
(△1,342)
6,666
(669)
当期純利益33,985
(△8,048)
20,970
(△5,102)
7,425
(△862)
265
(△1,304)
4,923
(766)
参考:業務純益54,429
(△2,681)
27,548
(△2,450)
15,320
(78)
3,782
(△439)
6,924
(212)
  • 上段は平成18年度計数、下段( )内は対前年度増減額。なお、紀陽銀行と和歌山銀行の合併に伴い、地方銀行と地方銀行IIの対前年度増減額は、遡及調整して算出した。