信託銀行 (特定取引勘定設置銀行5行)

信託銀行の平成18年度決算をみると、信託報酬が減少し、一般貸倒引当金が増加したものの、資金運用益、役務取引等収支が増加したこと等から、業務純益は6,924億円(前年度比212億円、3.2%増)と増益となった。経常利益は、株式等関係損益は減益となったが、その他の経常費用の大幅な減少等から、6,666億円(同669億円、11.2%増)と増益となった。また、当期純利益は、特別利益は減少したが、法人税等調整額(税金費用)の大幅な減少等から、4,923億円(同766億円、18.4%増)と増益となった。

業容面(末残)をみると、預金は増加(前年度末比3.0%増)した。信託勘定については、貸付信託が減少したものの、投資信託や年金信託等が増加し、全体では増加(同12.2%増)した。また、貸出金は、銀行勘定(同1.6%増)、信託勘定(19.3%増)ともに増加した。

損益状況

信託報酬

信託報酬は3,639億円(前年度比40億円、1.1%減)と減少した。
このうち、長期金融部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託)においては、貸付信託の残高が引き続き減少(前年度末比29.9%減)し、関係の信託報酬は減少した。一方、財産管理部門(上記以外の信託)においては、投資信託の残高(同18.6%増)や年金信託の残高(同9.6%増)が増加し、関係の信託報酬は増加したが、信託報酬全体では前年度比1.1%減と減少となった。

資金運用益

資金運用収益、資金調達費用ともに増加したが、運用収益の増加額が調達費用の増加額を上回り、資金運用益は5,299億円(前年度比255億円、5.1%増)と増益となった。

このうち、資金運用収益は9,392億円(前年度比1,338億円、16.6%増)と増加した。国内業務部門では日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利の上昇に伴い、貸出金利回りが上昇したことから貸出金利息が増加した。加えて、償還金もあって、有価証券利息配当金が大幅に増加したことから、全体では同18.3%増と増加した。また、国際業務部門では、米国金利上昇の影響等から貸出金利息、預け金利息ともに増加したこと等から、全体では同14.0%増と増加した。

一方、資金調達費用は4,093億円(前年度比1,083億円、36.0%増)と増加した。国内業務部門では、金利の上昇に伴い、預金利息や借入金利息が増加し、全体では同58.4%増と大幅に増加した。また、国際業務部門では、米国金利上昇の影響等から、預金利息などが大幅に増加し、全体でも同26.0%増と増加した。

以上の結果、資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では4,867億円(前年度比422億円、9.5%増)と増益となり、一方、国際業務部門では432億円(同167億円、27.8%減)と減益となった。これにより、全体では同5.1%増と増益となった。

役務取引等収益・費用
各種手数料等の受払収支をみると、為替手数料収支は前年度比0.6%増と微増であったが、投資信託の販売や不動産仲介業務等が伸びたことから、その他の役務収支が同4.5%増と増加し、全体の収益超過額は3,318億円(前年度比142億円、4.5%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国際業務部門においては85億円の損失超過に転じたものの、国内業務部門において一部銀行の収益が大幅に伸びて、377億円の収益超過に転じた。その結果、全体としては292億円(前年度比233億円、391.3%増)の収益超過となった。
その他業務収益・費用
外国為替売買損益が154億円の収益超過となった一方、国債等債券関係損益は、107億円の損失超過となり、また、金融派生商品損益も損失超過に転じたことから、全体でも47億円の損失超過に転じた(前年度は234億円の収益超過)。
その他経常収益・費用

株式等関係損益は、株式等売却益が減少し、471億円の収益超過となった。また、貸出金償却は160億円(前年度比296億円、64.9%減)と減少したが、一般貸倒引当金および個別貸倒引当金がいずれも純繰入れとなり、貸倒引当金繰入額は742億円(同509億円、217.5%増)と大幅に増加した。一方、債権売却損などのその他の経常費用は488億円(同1,378億円、73.8%減)と大幅に減少した。

以上の結果、全体では471億円の損失超過となった(前年度は601億円の損失超過)。

営業経費
事務委託費を中心に物件費が増加したが、退職給付関係費用が、期待運用収益の増加によりマイナスとなった銀行があったこと等から人件費が大幅に減少し、営業経費は5,364億円(前年度比231億円、4.1%減)と減少した。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益が増加(前年度比302億円、1.6%増)し、経常費用が減少(同367億円、2.8%減)したことから、経常利益は6,666億円(同669億円、11.2%増)と増益となった(増益6行、減益1行)。また、当期純利益は、特別利益が減少(同683億円、65.3%減)する一方で、法人税等調整額(税金費用)が大幅に減少(同933億円、41.9%減)したこと等から、4,923億円(同766億円、18.4%増)と増益となった(増益5行、減益2行)。
なお、業務純益は、6,924億円(前年度比212億円、3.2%増)と増益となった(増益6行、減益1行)。また、国内業務粗利益は1兆2,125億円(同611億円、5.3%増)、国際業務粗利益は377億円(同302億円、44.5%減)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.17%ポイント上昇して1.25%、有価証券利回りは同0.44%ポイント上昇して1.77%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.24%ポイント上昇して1.36%となった。
資金調達利回りをみると、預金債券等利回りは前年度比0.13%ポイント上昇して0.28%、譲渡性預金利回りは同0.28%ポイント上昇して0.31%となった。この結果、資金調達利回り(資金調達費用/資金調達勘定平残)全体では、同0.13%ポイント上昇して0.33%となった。

以上の結果、資金運用利回りの上昇が資金調達利回りの上昇を上回ったことから、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.11%ポイント拡大して1.03%となった。

国際業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.99%ポイント上昇して4.51%、有価証券利回りは同0.75%ポイント上昇して4.07%、預け金利回りは同0.60%ポイント上昇して3.51%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.69%ポイント上昇して3.96%となった。
資金調達利回りをみると、預金利回りが前年度比1.08%ポイント上昇して、4.39%、譲渡性預金利回りは同1.19%ポイント上昇して5.23%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.83%ポイント上昇して3.30%となった。

以上の結果、資金調達利回りの上昇が資金運用利回りの上昇を上回ったことから、総資金粗利鞘は、前年度比0.14%ポイント縮小して0.66%となった。

資金調達

預金は、末残でみると、国内業務部門(前年度末比9,155億円、3.0%増)、国際業務部門(同672億円、2.9%増)がともに増加し、全体では34兆2,121億円(同9,826億円、3.0%増)と増加した。一方、平残では33兆5,210億円(前年度比1兆1,877億円、3.4%減)となった。
譲渡性預金は、末残では5兆2,358億円(前年度末比4,343億円、9.0%増)、平残では5兆1,752億円(前年度比6,046億円、13.2%増)となった。
また、信託勘定借は、末残では4兆8,952億円(前年度末比9,158億円、15.8%減)、平残では5兆3,873億円(前年度比1兆7,343億円、24.4%減)となった。

信託勘定をみると、貸付信託は新規の取扱停止等に伴い、減少(前年度末比29.9%減)したものの、金銭信託(合同運用指定金銭信託、単独運用指定金銭信託および特定金銭信託)が増加(同10.1%増)したほか、投資信託(同18.6%増)、年金信託(同9.6%増)、包括信託(同9.4%増)、有価証券の信託(同 8.2%増)等が増加した。この結果、信託勘定の負債合計額は、342兆6,602億円(同37兆2,718億円、12.2%増)と前年度に引き続き増加した。

資金運用等

貸出金は、末残でみると、国内業務部門(前年度末比1,553億円、0.5%増)、国際業務部門(同3,669億円、21.4%増)ともに増加し、全体では32兆2,540億円(同5,222億円、1.6%増)となった。一方、平残では31兆6,673億円(前年度比8,254億円、2.5%減)と減少となった。

一方、信託勘定(末残)をみると、貸出金は、4兆964億円(前年度末比6,618億円、19.3%増)と増加した。
ここで、不良債権の状況として、リスク管理債権の残高についてみると、延滞債権額は、銀行勘定で2,211億円(前年度末比543億円、32.5%増)、信託勘定で214億円(同56億円、35.2%増)となり、貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で2,525億円(同568億円、18.4%減)、信託勘定で307億円(同36億円、10.6%減)となった。このほか、破綻先債権額、3カ月以上延滞債権額は銀行勘定、信託勘定ともに減少したことから、リスク管理債権の総額は、銀行勘定で4,908億円(同86億円、1.7%減)、信託勘定で527億円(同18億円、3.4%減)となった(信託勘定については、いずれも元本補填契約のある信託勘定の計数)。なお、銀行勘定のリスク管理債権額の貸出金総額に占める比率は、同0.05%ポイント低下して1.52%となった。

また、金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容(銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が527億円(前年度末比35億円、7.2%増)、危険債権が2,143億円(同638億円、42.4%増)と増加し、要管理債権が2,544億円(同572億円、18.4%減)と減少した。また、正常債権は33兆3,263億円(同7,831億円、2.4%増)となった。

有価証券については、銀行勘定の末残では、国債(前年度末比14.2%増)や株式(同2.8%増)が増加したことから、全体では18兆8,093億円(同1兆3,033億円、7.4%増)となった(平残では17兆764億円、前年度比1兆1,865億円、6.5%減)。一方、信託勘定の末残では、国債や社債など、いずれも増加したことから、全体では92兆6,617億円(前年度末比13兆4,652億円、17.0%増)となった。

自己資本

資本金は、期中に2行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われたほか、1行で増資が行われたことから、1兆2,682億円(前年度末比20億円、0.2%増)となった。

資本剰余金は9,319億円(前年度末比485億円、4.9%減)と減少したが、利益剰余金は1兆2,745億円(同3,560億円、38.8%増)となった。以上のほか、その他有価証券評価差額金の評価益が1兆524億円(同1,737億円、19.8%増)と増加したこと等から、純資産の部合計では4兆4,740億円となった。

担当:石井