都市銀行 (特定取引勘定設置銀行5行)

 都市銀行の平成19年度決算をみると、資金運用益は、預貸金利回り差が改善したこと等から、増益となった。経常利益は、役務取引等収支の減益、その他業務費用、貸出金償却およびその他の経常費用の増加等から、減益となった。また、当期純利益も子会社株式を減損処理した銀行があったことから大幅な減益となった。
 業容面(末残)をみると、資金調達では、預金が前年度末比1.3%増、資金運用では、貸出金が同2.1%増となった。

損益状況

資金運用益
 資金運用益 資金運用益は、3兆5,845億円(前年度比762億円、2.2%増)と増益となった。内訳をみると、国内業務部門においては、貸出金利回りの改善により貸出金利息が増加したこと等から、3兆2,555億円(同741億円、2.3%増)と増益となり、国際業務部門においては、サブプライム住宅ローン問題の影響を受けて、8月以降、米国の短期金利が低下し預金利息が減少したこと等から、3,289億円(同21億円、0.6%増)と増益となった。
(国内業務部門)
 資金運用収益をみると、貸出金残高(平残)は減少(前年度比2.0%減)したものの、利回りが上昇(同0.28%ポイント上昇)したことから、貸出金利息は、3兆2,449億円(同4,123億円、14.6%増)と増加した。また、19年2月の日本銀行の金融政策決定会合において無担保コールレートが年度を通じて0.5%前後で維持されたことから、コールローン利息が515億円(同303億円、142.7%増)と増加し、全体では4兆3,231億円(同5,510億円、14.6%増)と増加した。
 資金調達費用をみると、預金利息は、預金残高(平残)は微増(前年度比0.4%増)であったものの、19年2月の日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利の上昇により5,457億円(同3,077億円、129.3%増)と大幅に増加した。また、譲渡性預金利息およびコールマネー利息も、利回りの上昇により1,046億円(同576億円、122.3%増)、896億円(同544億円、154.6%増)といずれも増加した。この結果、全体では1兆675億円(同4,769億円、80.7%増)と増加した。
 以上の結果、国内業務部門における資金運用益は3兆2,555億円(前年度比741億円、2.3%増)と増益となった。
(国際業務部門)
 資金運用収益をみると、貸出金利息は、利回りは低下(前年度比0.05%ポイント低下)したものの、貸出金残高(平残)が増加(同10.3%増)したことから、1兆4,374億円(同1,220億円、9.3%増)と増加した。また、有価証券利息配当金は、利回りは低下(同0.12%ポイント低下)したものの、外国証券残高(平残)が増加(同5.9%増)したことから8,743億円(同262億円、3.1%増)と増加し、その他の受入利息も3,389億円(同662億円、24.3%増)と増加した。一方、コールローン利息は452億円(同206億円、31.3%減)と減少した。この結果、全体では3兆2,289億円(同1,851億円、6.1%増)となった。
 資金調達費用をみると、預金利息は、預金残高(平残)は増加(前年度比1.7%増)したものの、8月以降の米国の短期金利下落の影響等により利回りが低下したことから1兆2,120億円(同702億円、5.5%減)と減少した。また、その他の支払利息が4,191億円(同1,391億円、49.6%増)、借用金利息が3,737億円(同370億円、11.0%増)、譲渡性預金利息が1,780億円(同71億円、4.2%増)とそれぞれ増加した。この結果、全体では2兆8,999億円(同1,830億円、6.7%増)と増加した。
 以上の結果、国際業務部門における資金運用益は3,289億円(前年度比21億円、0.6%増)と増益となった。
役務取引等収益・費用
 サブプライム住宅ローン問題の影響による市場の混乱等に伴い、下期に個人向け投資信託・年金保険の販売手数料が減少したことや、私募債発行手数料等の法人向け取引に係る手数料も減少したこと等から、全体の収益超過額は1兆1,148億円(前年度比1,184億円、9.6%減)と減少した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、円高による通貨スワップ取引損益等の改善等により国際業務部門において1兆663億円(前年度比6,945億円、186.8%増)と増加したこと等から、全体の収益超過額は1兆978億円(同7,068億円、180.8%増)と増加した。
その他業務収益・費用
 国債等関係損益は、サブプライム住宅ローン問題の影響による証券化関連損失を計上したものの、8月以降、長期金利が低下したこと等により国債等の売却益が増加したことから、収益超過額は1,170億円と前年度の損失超過から収益超過に転じた(前年度は851億円の損失超過)。一方、円高による通貨スワップ取引の損失計上(特定取引収益との科目間の損益の入り繰り)等により外国為替売買損益の損失超過額は2,696億円と前年度の収益超過から損失超過に転じた(前年度は4,298億円の収益超過)。以上の結果、その他業務収支全体の損失超過額は2,471億円と前年度の収益超過から損失超過に転じた(前年度は3,204億円の収益超過)。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益をみると、株式の積極的な売却を行い株式売却益を上積みした銀行があったものの、サブプライム住宅ローン問題の影響により株価が大幅に下落したことに伴い、保有株式の償却のほかノンバンク関連会社株式を減損処理した銀行があったこと等から、損失超過額は233億円と前年度の収益超過から損失超過に転じた(前年度は375億円の収益超過)。
 貸出金償却は一部の貸出先の業況悪化等から4,704億円(前年度比2,182億円、86.5%増)と増加した。一方、貸倒引当金戻入益を計上した銀行が多かったことから、貸倒引当金繰入額全体は321億円(同651億円、67.0%減)と減少した。
 その他の経常費用は、サブプライム住宅ローン問題を契機として海外ABCPプログラム関連損失を計上した銀行があったこと等から、4,732億円(同1,939億円、69.4%増)と増加した。
 以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は8,069億円(前年度は4,457億円)と増加した。
営業経費
 営業経費は、人件費が8,877億円(前年度比160億円、1.8%増)と増加したほか、内外コンプライアンス体制の強化や成長事業領域へ経費投入をしたこと等により物件費が1兆8,404億円(同1,046億円、6.0%増)と増加し、税金も1,679億円(同69億円、4.3%増)と増加したことから、全体では2兆8,960億円(同1,276億円、4.6%増)となった。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は、資金運用収益や特定取引収益の増加等により11兆4,742億円(前年度比1兆3,108億円、12.9%増)となったものの、経常費用は、資金調達費用、その他業務費用およびその他経常費用の増加等により9兆6,150億円(同1兆7,019億円、21.5%増)となり、経常利益は1兆8,592億円(同3,911億円、17.4%減)と減益となった(増益3行、減益3行)。また、特別利益は3,792億円(同1,321億円、25.8%減)となり、特別損失は、子会社のサブプライム関連損失の処理に伴い、一部の銀行で子会社株式を減損処理したこと等により5,413億円(同4,180億円、338.8%増)となったことから、税引前当期純利益は1兆6,971億円(同9,412億円、35.7%減)と減益となった。さらに、繰越欠損金による控除が行われたことから法人税、住民税及び事業税は306億円(同97億円、24.1%減)となったほか、引続き繰越欠損金に係る繰延税金資産が減少したこと等から法人税等調整額(税金費用)が5,638億円(同627億円、12.5%増)となった結果、当期純利益は1兆1,027億円(同9,942億円、47.4%減)と減益となった(増益1行、減益4行、当期純損失1行)。
 なお、業務純益は2兆7,079億円(前年度比469億円、1.7%減)と減益となった(増益3行、減益3行)。国内業務粗利益は4兆2,511億円(同887億円、2.1%増)、国際業務粗利益は1兆3,178億円(同90億円、0.7%増)となった。

 

利回り・利鞘

(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.28%ポイント上昇して1.87%、有価証券利回りは同0.11%ポイント上昇して1.04%、コールローン等利回りは同0.30%ポイント上昇して1.05%といずれも上昇したことから、資金運用利回り全体では、同0.22%ポイント上昇して、1.52%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.14%ポイント上昇して0.27%、コールマネー等利回りは同0.32%ポイント上昇して0.76%となり、経費率は同0.05%ポイント上昇して0.96%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.22%ポイント上昇して、1.21%となった。なお、資金調達利回りは、同0.17%ポイント上昇して、0.37%となった。
 以上の結果、国内業務部門における総資金利鞘(資金運用利回り-資金調達原価)は前年度比変わらず0.31%、うち、経費部分を除いた総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は同0.05%ポイント上昇して1.15%となった。
(国際業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.05%ポイント低下して5.02%、有価証券利回りは同0.12%ポイント低下して4.15%、コールローン利回りは同0.24%ポイント低下して4.77%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.21%ポイント低下して4.39%となった。
 資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比0.26%ポイント低下して3.43%、コールマネー利回りは同0.48%ポイント低下して4.47%となった。一方、借用金利息の利回りは同0.20%ポイント上昇して4.77%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.10%ポイント低下して3.84%となった。
 以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.11%ポイント縮小して0.55%となった。

 

資金調達

 預金は、末残でみると、国内業務部門では235兆6,718億円(前年度末比2兆5,167億円、1.1%増)と増加し、国際業務部門も35兆416億円(同8,738億円、2.6%増)と増加したことから、全体では270兆7,135億円(同3兆3,904億円、1.3%増)と増加した。内訳を見ると、当座預金は20兆2,372億円(同3兆2,089億円、13.7%減)、普通預金は124兆2,596億円(同1兆1,889億円、0.9%減)、外貨預金は9兆9,682億円(同745億円、0.7%減)と減少したものの、定期預金は100兆2,050億円(同7兆195億円、7.5%増)と増加した。
 平残でみると、国内業務部門では227兆8,630億円(前年度比9,050億円、0.4%増)と増加し、国際業務部門も35兆3,530億円(同5,791億円、1.7%増)と増加したことから、全体では263兆2,159億円(同1兆4,842億円、0.6%増)と増加した。
 譲渡性預金は、末残では20兆4,091億円(前年度末比1兆7,446億円、9.3%増)と増加した。一方、平残は20兆8,109億円(前年度比7,448億円、3.5%減)と減少した。

 

資金運用

 貸出金は、末残でみると、国内業務部門では、企業向け貸出や中小企業等向け貸出が減少したこと等から、180兆4,516億円(前年度末比7,517億円、0.4%減)と減少した。一方、国際業務部門では、32兆4,463億円(同5兆1,587億円、18.9%増)と引き続き増加した。この結果、貸出金全体の末残は212兆8,979億円(同4兆4,069億円、2.1%増)と増加した。一方、平残は207兆6,111億円(前年度比1兆777億円、0.5%減)と減少した。
 銀行勘定のリスク管理債権については、破綻先債権額が1,274億円(前年度末比103億円、8.8%増)、延滞債権額が1兆6,937億円(同1,606億円、8.7%減)、3カ月以上延滞債権額が511億円(同53億円、9.4%減)、貸出条件緩和債権額が1兆3,893億円(同397億円、2.8%減)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は3兆2,616億円(同1,954億円、5.7%減)となり、貸出金総額に占める比率は前年度比0.13%ポイント低下して、1.53%となった。
 金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が3,928億円(前年度末比358億円、10.0%増)、危険債権が1兆5,565億円(同1,670億円、9.7%減)、要管理債権が1兆4,405億円(同450億円、3.0%減)、正常債権が238兆2,628億円(同4兆290億円、1.7%増)となった。
 有価証券は、末残でみると、外国証券(前年度末比1兆3,546億円、6.5%増)が増加したものの、年度末株価の大幅な下落や子会社・関連会社株式等の減損処理により株式(同4兆7,530億円、24.4%減)が大幅に減少したこと等から、全体では、94兆6,490億円(同7兆7,016億円、7.5%減)となった。平残でも、95兆19億円(前年度比6兆2,860億円、6.2%減)と減少した。

 

自己資本

 資本金は3兆7,328億円(前年度末比横ばい)となり、資本剰余金は5兆6,857億円(同57億円、0.1%増)となった。また、利益剰余金は4兆115億円(同3,774億円、8.6%減)となった。
 以上のほか、年度末株価の大幅な下落により、その他有価証券評価差額金が1兆2,689億円(前年度末比3兆1,077億円、71.0%減)と大幅に減少したこと等から、純資産の部合計は15兆2,735億円(同3兆1,104億円、16.9%減)となった。なお、当期純利益1兆1,027億円に対し、持株会社への剰余金の配当は1兆4,964億円(利益準備金の繰入400億円を含む)となった。

 

[担当:竹内]