地方銀行 (特定取引勘定設置銀行12行)

 地方銀行の平成19年度決算をみると、資金運用益は、資金運用収益および資金調達費用がともに増加したものの、貸出金の伸び等もあって、前者の増加額が後者のそれを上回ったため、3年連続で増益となった。
 経常利益は、役務取引等収支の減益のほか、国債等債券償却および株式等償却の増加等から、前年度比2,541億円減益の8,937億円となった。当期純利益については、貸倒引当金戻入益の減少等により、同2,318億円減益の5,106億円となった。
 業容面(末残)をみると、預金は前年度末比1.1%増、貸出金は同2.6%増となった。

  • 本分析は、預金保険法第102条第1項第3号措置の認定を受けた特別危機管理銀行1行を含んでいる。

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、3兆3,291億円(前年度比390億円、1.2%増)となり、増益となった。
 資金運用収益をみると、貸出金利息は、貸出金の伸びや利回りの上昇から3兆1,400億円(前年度比3,011億円、10.6%増)と増加したほか、19年2月の日本銀行の金融政策決定会合において無担保コールレートが年度を通じて0.5%前後で維持されたことから、コールローン利息も585億円(同254億円、76.9%増)と大幅に増加した。この結果、資金運用収益全体では、4兆2,047億円(同3,353億円、8.7%増)となった。
 次に、資金調達費用をみると、19年2月の日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利の上昇等から、預金利息が5,916億円(前年度比2,904億円、96.4%増)と大幅に増加したほか、譲渡性預金利息も318億円(同205億円、183.0%増)と増加した。この結果、資金調達費用全体では、8,756億円(同2,962億円、51.1%増)と大幅な増加となった。
役務取引等収益・費用
 サブプライム住宅ローン問題の影響による市場の混乱等に伴い、投資信託等の販売手数料等が減少したことにより、その他の役務収支の収益超過額が減少したことから、収益超過額は4,873億円(前年度比389億円、7.4%減)となった。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、商品有価証券収益が減少したことから、収益超過額は152億円(前年度比4億円、2.3%減)となった。
その他業務収益・費用
 国債等債券償却の増加を主因として、国債等債券関係損益の損失超過額が拡大するとともに、金融派生商品損益の損失超過額も拡大したことから、損失超過額は、1,196億円(前年度比1,119億円増)と大幅な増加となった。
その他経常収益・費用
 一般貸倒引当金純繰入額は増加したものの、個別貸倒引当金純繰入額が減少したことから、貸倒引当金繰入額は3,329億円(前年度比80億円、2.3%減)と減少した。また、貸出金償却も1,391億円(同15億円、1.1%減)と減少したものの、サブプライム住宅ローン問題の影響により株価が大幅に下落したことに伴い、株式等関係損益が844億円(同662億円、43.9%減)と収益超過額が大幅に縮小した。この結果、その他経常収支の損失超過額は4,322億円(前年度は3,459億円の損失超過)となった。
営業経費
 人件費および物件費がともに増加したため、2兆3,869億円(前年度比554億円、2.4%増)となった。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は5兆5,522億円(前年度比4,189億円、8.2%増)、経常費用は4兆6,585億円(同6,730億円、16.9%増)となり、経常利益は8,937億円(同2,541億円、22.1%減)と減益となった(増益20行、減益41行、経常損失3行)。当期純利益は、経常利益が減益となったことに加え、貸倒引当金戻入益の減少等により特別利益が減少したこと等から、5,106億円(同2,318億円、31.2%減)と減益となった(増益17行、減益45行、当期純損失2行)。
 なお、業務純益は、1兆3,276億円(前年度比2,044億円、13.3%減)と減益となった(増益23行、減益39行、赤字2行)。また、国内業務粗利益は3兆6,970億円(同80億円、0.2%減)となり、国際業務粗利益は177億円(同1,037億円、85.4%減)となった。

 

利回り・利鞘(国内業務部門)

 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.17%ポイント上昇して2.17%、有価証券利回りは同0.06%ポイント上昇して1.28%、コールローン等利回りは同0.19%ポイント上昇して0.68%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.13%ポイント上昇して1.85%となった。
 一方、資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.15%ポイント上昇して0.26%、コールマネー等利回りは同0.22%ポイント上昇して1.05%となった。また、経費率は、前年度比変わらず1.18%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.15%ポイント上昇して1.44%となった。
 以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.02%ポイント低下して0.41%となった。

 

資金調達

 預金は、流動性預金は減少したものの、定期性預金が増加したことから、末残で196兆1,176億円(前年度末比2兆568億円、1.1%増)となった。また、平残では192兆4,057億円(前年度比3兆9,324億円、2.1%増)となった。
 譲渡性預金は、末残で4兆8,986億円(前年度末比2,149億円、4.6%増)となった。また、平残では5兆8,117億円(前年度比7,383億円、14.6%増)となった。

 

資金運用

 貸出金は、国内業務部門において企業向け貸出および住宅ローン等が増加したことから、末残で148兆5,467億円(前年度末比3兆8,059億円、2.6%増)となった。また、平残では144兆3,142億円(前年度比3兆5,101億円、2.5%増)となった。
 銀行勘定のリスク管理債権についてみると、破綻先債権額は3,108億円(前年度末比244億円、8.5%増)となり、延滞債権額は3兆6,594億円(同2,000億円、5.2%減)、3カ月以上延滞債権額は466億円(同71億円、13.3%減)、貸出条件緩和債権額は1兆4,590億円(同552億円、3.6%減)となった。この結果、銀行勘定のリスク管理債権全体では、5兆4,760億円(同2,375億円、4.2%減)となり、貸出金総額に占める割合は、前年度末に比べて0.26%ポイント低下して、3.69%となった。
 なお、金融再生法第7条に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容(信託勘定の計数は除く。)は、破産更生債権及びこれらに準じる債権は1兆811億円(前年度末比1,022億円、8.6%減)、危険債権は2兆9,427億円(同767億円、2.5%減)、要管理債権額は1兆5,056億円(同624億円、4.0%減)、正常債権は146兆3,625億円(同3兆9,389億円、2.8%増)となった。
 有価証券は、国債および株式等が減少したことから、末残で56兆9,553億円(前年度末比3兆6,226億円、6.0%減)となった。また、平残では57兆8,006億円(前年度比3,232億円、0.6%減)となった。

 

自己資本

 資本金は、期中に2行で増資、7行で転換社債型新株予約権付社債の転換等が行われたことから、2兆6,173億円(前年度末比692億円、2.7%増)となった。また、年度末株価の大幅な下落により、その他有価証券評価差額金が、1兆511億円(同1兆4,218億円、57.5%減)と大幅に減少したことから、純資産の部合計は、11兆7,182億円となった。

 

[担当:福田]