〔以下は、都市銀行6行(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)45行、信託銀行7行(三菱UFJ信託、みずほ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、中央三井アセット信託、りそな信託)、新生銀行、あおぞら銀行の124行ベースで算出、分析したものである。〕

経理基準の主な変更等

 

  1. 日本公認会計士協会「監査・保証実務委員会報告第42号『租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労金等に関する監査上の取扱い』」(平成19年4月13日付)により、役員退職慰労金に係る会計処理の取扱い、負債計上を中止した項目に係る引当金の扱い等について整理され、平成19年度から適用された(平成18年度末からの早期適用も可)。これを適用した銀行では、「役員退職慰労引当金」や一定の条件により負債計上を中止した預金について預金者からの払戻に備えるための引当金が計上されている。
  2. 証券取引法等の一部を改正する法律(=金融商品取引法)等の施行(平成19年9月30日)に伴い、銀行法施行規則別紙様式が改正され、「金融先物取引責任準備金」および「証券取引責任準備金」を「金融商品取引責任準備金」とする変更が行われた。

 

概況

 (以下は、銀行単体の決算をとりまとめたものである。)
 全国銀行124行の平成19年度決算をみると、資金運用益は、収益、費用ともに増加となったものの、収益が費用を上回って増加したことから、8兆5,921億円(前年度比1,039億円、1.2%増)と、増益に転じた。また、各種手数料等の受払収支を示す役務取引等収支は、2兆94億円(同2,124億円、9.6%減)と、減益に転じた。
 経常利益は、以上に加えて、貸出金償却や株式等償却が増加したこと等から、3兆4,497億円(前年度比8,618億円、20.0%減)と、減益となった。
 当期純利益は、以上に加えて、一部銀行の特別損失の大幅な増加等により、2兆1,246億円(前年度比1兆2,738億円、37.5%減)と、減益となった。
 なお、参考までに業務純益をみると、5兆81億円(前年度比4,348億円、8.0%減)と、減益となった。これは、役務取引等収支の減益や営業経費の増加等によるものである。
 業容面(末残)は、預金が前年度末比で1.4%の増加、貸出金は同2.3%の増加、有価証券は同6.0%の減少となった。

 

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、8兆5,921億円(前年度比1,039億円、1.2%増)と、増益に転じた。
 資金運用収益は、14兆3,316億円(前年度比1兆3,112億円、10.1%増)と増加した。国内業務部門では、利回りの上昇から、貸出金利息、有価証券利息配当金とも増加し、全体でも前年度比12.2%増加した。また、国際業務部門では、貸出金利息、有価証券利息配当金とも残高(平残)の増加による影響が利回り低下による影響を上回ったことから、全体では同7.0%増加した。
 資金調達費用は、5兆7,396億円(前年度比1兆2,073億円、26.6%増)と大幅に増加した。国内業務部門では、預金利息、譲渡性預金利息、コールマネー利息ともに残高(平残)の増加と平成19年2月の日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利の上昇により大幅に増加したことから、全体では前年度比87.5%増加した。一方、国際業務部門では、8月以降の米国短期金利下落の影響等により利回りが低下したことから預金利息が減少したものの、その他支払利息の増加等の結果、全体では同7.5%増加した。
 資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では前年度比817億円(1.0%)、国際業務部門では同214億円(4.0%)それぞれ増加したことから、全体で増益となった。
役務取引等収益・費用
 各種手数料等の受払収支をみると、サブプライム住宅ローン問題の影響による市場の混乱等により、個人向け投資信託・年金保険の販売手数料が減少したこと、また、為替手数料収支も前年度比減少したこと等から、全体の収益超過額は2兆94億円(前年度比2,124億円、9.6%減)となった。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、通貨スワップ取引損益等の改善等により国際業務部門において増加し、全体の収益超過額は1兆1,484億円(前年度比6,923億円、151.8%増)と、大幅な増益となった。
その他業務収益・費用
 国債等関係損益は長期金利の低下等による売却益の増加により前年度比改善した。一方、通貨スワップ取引に係るカバー取引の影響等により外国為替売買損益が損失超過に転じたこと等から、全体の損失超過額は4,169億円と損失超過に転じた(前年度は3,574億円の収益超過)。
信託報酬
 信託報酬は、3,733億円(前年度比29億円、0.8%減)となった。
その他経常収益・費用
 個別貸倒引当金純繰入額は減少したものの、一般貸倒引当金への純繰入額と貸出金償却が増加したこと、また、米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発した世界的な信用収縮・株価下落等による株式等償却が前年度比1,650億円増加したこと等に伴い、その他経常収支の損失超過額は1兆5,184億円となり、前年度に比べて損失が拡大した(前年度は1兆714億円の損失超過)。
営業経費
 物件費を中心とする増加により、6兆7,381億円(前年度比2,214億円、3.4%増)と増加した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は21兆1,652億円(前年度比1兆9,853億円、10.4%増)、経常費用は17兆7,154億円(同2兆8,471億円、19.1%増)となり、経常利益は3兆4,497億円(同8,618億円、20.0%減)と減益に転じた(増益29行、減益77行、黒字転換4行、経常損失14行)。当期純利益は、経常利益が減益となったことに加え、特別損失の大幅な増加等から、2兆1,246億円(同1兆2,738億円、37.5%減)と、減益に転じた(増益25行、減益81行、黒字転換4行、当期純損失14行)。
 なお、参考までに業務純益をみると、役務取引等収支の減少に加え、営業経費の増加等により、5兆81億円(前年度比4,348億円、8.0%減)と減益となった(増益41行、減益78行、黒字転換1行、赤字4行)。

 

利回り・利鞘(国内業務部門)

 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.22%ポイント上昇して2.01%、有価証券利回りは同0.08%ポイント上昇して1.20%、コールローン等利回りは同0.26%ポイント上昇して0.94%となった。以上に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは、同0.17%ポイント上昇して1.68%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.16%ポイント上昇して0.30%(預金利回りは0.27%)、コールマネー等利回りは同0.31%ポイント上昇して0.82%となった。また、経費率は前年度と同じ1.09%であった。以上に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は同0.18%ポイント上昇して1.36%となった。
 以上のように、資金運用利回り、資金調達原価ともに上昇したが、資金調達原価の上昇が資金運用利回りの上昇を上回ったことから、総資金利鞘は前年度比0.01%ポイント縮小して0.32%となった。なお、預貸金利鞘は、貸出金利回りの上昇が預金債券等原価の上昇を上回ったことから前年度比0.06%ポイント上昇して0.62%となった。

 

資金調達

 預金は、国内業務部門では、年度中、定期性預金の増加から、全体でも増加した。一方、国際業務部門では、外貨預金は減少したが、定期性預金を中心に増加し、全体でも増加した。この結果、末残では565兆2,743億円(前年度末比7兆7,159億円、1.4%増)となった。また、平残では551兆8,683億円(前年度比7兆7,773億円、1.4%増)となった。
 譲渡性預金は、国内業務部門では増加したが、国際業務部門では減少し、末残では33兆5,452億円(前年度末比2兆9,350億円、9.6%増)となり、平残では34兆3,332億円(前年度比6,005億円、1.8%増)となった。
 債券は、末残では5兆9,038億円(前年度末比1兆220億円、14.8%減)となり、平残では6兆4,526億円(前年度比1兆2,796億円、16.5%減)となった。

 

資金運用

 貸出金は、国内業務部門では、企業向け貸出が若干増加したほか、住宅ローンを中心に個人向け貸出が堅調に推移したことから増加した。また、国際業務部門でもシンジケートローン等が増加したことから、貸出金全体では、末残で445兆9,756億円(前年度末比10兆1,141億円、2.3%増)となった。また、平残では433兆7,215億円(前年度比3兆8,020億円、0.9%増)となった。
 ここで、不良債権の状況として、銀行勘定のリスク管理債権額をみると、破綻先債権額は6,091億円(前年度末比560億円、10.1%増)、延滞債権額は6兆8,155億円(同4,584億円、6.3%減)、3カ月以上延滞債権額は1,094億円(同134億円、10.9%減)、貸出条件緩和債権額は3兆5,264億円(同1,504億円、4.1%減)であった。この結果、リスク管理債権額の総額は、11兆607億円(同5,657億円、4.9%減)となり、貸出金総額に占める比率も同0.19%ポイント低下して2.48%となった。
 また、金融再生法第7条に基づき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が1兆9,959億円(前年度末比472億円、2.3%減)、危険債権が5兆6,645億円(同3,396億円、5.7%減)、要管理債権が3兆6,374億円(同1,625億円、4.3%減)、正常債権が469兆1,036億円(同9兆7,873億円、2.1%増)であった。
 有価証券は、株式を中心に減少し、末残で187兆6,964億円(前年度末比11兆9,220億円、6.0%減)となった。また、平残では188兆3,916億円(前年度比5兆3,656億円、2.8%減)となった。

 

自己資本

 当期中、地方銀行2行、第二地銀協地銀4行、信託銀行1行、その他1行が増資を、第二地銀協地銀2行が減資を行った。また、地方銀行7行、第二地銀協地銀2行、信託銀行1行で転換社債型新株予約権付社債等の転換が行われた。この結果、資本金は9兆3,823億円(前年度末比1,034億円、1.1%増)となった。また、純資産の部合計では、34兆8,338億円となった。

 

[担当:遠藤]

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
(参考)経常利益の内訳(業態別)  (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益85,921
(1,039)
35,845
(762)
33,291
(390)
10,464
(△186)
4,847
(△452)
役務取引等収支20,094
(△2,124)
11,148
(△1,184)
4,873
(△389)
934
(△97)
2,887
(△431)
特定取引収支11,484
(6,923)
10,978
(7,068)
152
(△4)

(-)
190
(△103)
その他業務収支△4,169
(△7,743)
△2,471
(△5,675)
△1,196
(△1,119)
△253
(△164)
144
(191)
その他経常収支△15,184
(△4,470)
△8,069
(△3,612)
△4,322
(△867)
△1,643
(1,030)
△1,052
(△581)
信託報酬3,733
(△29)
123
(6)
8
(1)

(-)
3,602
(△37)
営業経費67,381
(2,214)
28,960
(1,276)
23,869
(554)
7,648
(105)
5,579
(215)
経常利益34,497
(△8,618)
18,592
(△3,911)
8,937
(△2,541)
1,854
(477)
5,038
(△1,627)
当期純利益21,246
(△12,738)
11,027
(△9,942)
5,106
(△2,318)
890
(625)
3,655
(△1,268)
参考:業務純益50,081
(△4,348)
27,079
(△469)
13,276
(△2,044)
3,634
(△148)
6,053
(△871)
  • 上段は平成19年度計数、下段( )内は対前年度増減額。