信託銀行 (特定取引勘定設置銀行5行)

 信託銀行の平成19年度決算をみると、資金運用益、役務取引等収支、および、特定取引収支が減少したこと等から、業務純益は6,053億円(前年度比871億円、12.6%減)と減益となった。経常利益は、サブプライム住宅ローン問題の影響等を受けた金融市場の混乱の結果、株式等関係損益がマイナスとなったほか、その他の経常費用の大幅な増加等から、5,038億円(同1,627億円、24.4%減)と減益となった。また、当期純利益は、特別利益は増加したものの、法人税、住民税及び事業税の増加等から、3,655億円(同1,268億円、25.8%減)と減益となった。
 業容面(末残)をみると、預金は増加(前年度末比2.8%増)した。信託勘定については、貸付信託が減少したものの、投資信託、包括信託、年金信託が増加し、全体では増加(同8.9%増)した。また、貸出金は、銀行勘定では微増(同0.1%増)、信託勘定では減少(3.6%減)した。

損益状況

信託報酬
 信託報酬は3,602億円(前年度比37億円、1.0%減)と減少した。
 このうち、財産管理部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託以外の信託)においては、投資信託の残高(前年度末比15.7%増)、包括信託の残高(同28.4%増)が増加し、関係の信託報酬は増加した。一方、長期金融部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託)においては、貸付信託の残高が引き続き減少(同39.1%減)し、関係の信託報酬が減少したことなどから、信託報酬全体では前年度比1.0%減の減少となった。
資金運用益
 資金運用収益、資金調達費用ともに増加したが、調達費用の増加額が運用収益の増加額を上回り、資金運用益は4,847億円(前年度比452億円、8.5%減)と減益となった。
 このうち、資金運用収益は1兆524億円(前年度比1,131億円、12.0%増)と増加した。国内業務部門では貸出金の残高(平残)が減少したものの、その利回りが上昇したため、貸出金利息が増加したこと等から、全体では同7.8%増と増加した。また、国際業務部門では、有価証券の残高(平残)およびその利回りが増加したことから有価証券利息配当金が増加したほか、金利スワップ受入利息が増加したこと等から、全体では同24.1%増と増加した。
 一方、資金調達費用は5,676億円(前年度比1,583億円、38.7%増)と増加した。国内業務部門では、19年2月の日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利の上昇により預金利息・譲渡性預金利息が増加し、全体では同67.8%増と大幅に増加した。また、国際業務部門では、預金の残高(平残)およびその利回りの減少により、預金利息などが大幅に減少したものの、金利スワップ支払利息が増加したことから、全体では同24.5%増と増加した。
 以上の結果、資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では4,322億円(前年度比544億円、11.2%減)と減益となり、一方、国際業務部門では525億円(同93億円、21.4%増)と増益となった。これにより、全体では同8.5%減と減益となった。
役務取引等収益・費用
 各種手数料等の受払収支をみると、為替手数料収支は前年度比3.4%増と増加したものの、投資信託の販売や不動産仲介業務等の減少により、その他の役務収支が同13.1%減と減少したことから、全体の収益超過額は2,887億円(前年度比431億円、13.0%減)となった。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国際業務部門においては92億円の損失超過となったものの、国内業務部門においては前年度に引き続き収益超過(282億円)となった。その結果、全体としては190億円(前年度比103億円、35.1%減)の収益超過となった。
その他業務収益・費用
 金融派生商品損益は、前年度に引き続き損失超過となったものの、外国為替売買損益が84億円の収益超過および国債等債券関係損益が471億円の収益超過となったことから、全体では144億円の収益超過に転じた(前年度は47億円の損失超過)。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益は、サブプライム住宅ローン問題による影響を受けて、海外で保有しているCLO(ローン担保証券)のエクイティ部分の減損などにより、株式等償却が増加したことから、36億円の損失超過に転じた。また、貸出金償却は187億円(前年度比26億円、16.4%増)と増加し、一般貸倒引当金は純繰入れとなったものの、個別貸倒引当金が純取崩しとなったことから、貸倒引当金繰入額は2億円(同741億円、99.8%減)と減少した。また、その他の経常費用は、サブプライム住宅ローン問題による金融市場の混乱の影響を受けて、海外の資産担保証券に係る売却損・償却等により、1,082億円(同720億円、199.2%増)と大幅に増加した。
 以上の結果、全体では1,052億円の損失超過となった(前年度は471億円の損失超過)。
営業経費
 税金、物件費のほか、人員増強等により人件費が大幅に増加したことから、営業経費は5,579億円(前年度比215億円、4.0%増)と増加した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益が増加(前年度比1,224億円、6.3%増)した以上に、経常費用が増加(同2,851億円、22.1%増)したことから、経常利益は5,038億円(同1,627億円、24.4%減)と減益となった(増益2行、減益5行)。また、当期純利益は、貸倒引当金戻入益(433億円)を主因として特別利益が増加(同391億円、107.5%増)したものの、法人税、住民税及び事業税が増加(同175億円、26.0%増)したこと等から、3,655億円(同1,268億円、25.8%減)と減益となった(増益3行、減益4行)。
 なお、業務純益は、6,053億円(前年度比871億円、12.6%減)と減益となった(増益3行、減益4行)。また、国内業務粗利益は1兆1,321億円(同804億円、6.6%減)、国際業務粗利益は351億円(同26億円、7.0%減)となった。

 

利回り・利鞘

(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.29%ポイント上昇して1.54%、有価証券利回りは同0.23%ポイント低下して1.54%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.10%ポイント上昇して1.46%となった。
 資金調達利回りをみると、預金債券等利回りは前年度比0.21%ポイント上昇して0.49%、譲渡性預金利回りは同0.37%ポイント上昇して0.68%となった。この結果、資金調達利回り(資金調達費用/資金調達勘定平残)全体では、同0.22%ポイント上昇して0.55%となった。
 以上の結果、資金調達利回りの上昇が資金運用利回りの上昇を上回ったことから、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.12%ポイント縮小して0.91%となった。
(国際業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.10%ポイント低下して4.41%、有価証券利回りは同0.53%ポイント上昇して4.60%、預け金利回りは同0.81%ポイント低下して2.71%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.29%ポイント上昇して4.24%となった。
 資金調達利回りをみると、預金利回りが前年度比0.34%ポイント低下して4.05%、譲渡性預金利回りは同0.03%ポイント上昇して5.26%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.28%ポイント上昇して3.58%となった。
 以上の結果、資金調達利回りの上昇幅と資金運用利回りの上昇幅がほぼ等しくなったことから、総資金粗利鞘は、前年度と同じ0.66%となった。

 

資金調達等

 預金は、末残でみると、国際業務部門(前年度末比2,338億円、9.7%減)は減少したものの、国内業務部門(同1兆2,086億円、3.8%増)は増加したことから、全体では35兆1,869億円(同9,748億円、2.8%増)と増加した。平残では34兆2,278億円(前年度比7,068億円、2.1%増)となった。
 譲渡性預金は、末残では5兆9,218億円(前年度末比6,860億円、13.1%増)、平残では5兆5,191億円(前年度比3,439億円、6.6%増)となった。
 また、信託勘定借は、末残では3兆9,367億円(前年度末比9,585億円、19.6%減)、平残では4兆6,098億円(前年度比7,775億円、14.4%減)となった。
 信託勘定をみると、新規の取扱停止等に伴い、前年度に引き続き貸付信託が減少(前年度末比39.1%減)したものの、投資信託(同15.7%増)、包括信託(同28.4%増)、金銭信託(合同運用指定金銭信託、単独運用指定金銭信託および特定金銭信託)(同5.8%増)、年金信託(同1.7%増)は増加した。なお、有価証券の信託(同4.5%減)は減少した。この結果、信託勘定の負債合計額は、373兆1,432億円(同30兆4,830億円、8.9%増)と前年度に引き続き増加した。

 

資金運用等

 貸出金は、末残でみると、国内業務部門(前年度末比0.1%増)、国際業務部門(同0.4%増)ともに増加し、全体では32兆2,932億円(同392億円、0.1%増)となった。また、平残では31兆3,190億円(前年度比3,483億円、1.1%減)と減少となった。
 一方、信託勘定(末残)をみると、貸出金は、3兆9,473億円(前年度末比1,491億円、3.6%減)と減少した。
 ここで、不良債権の状況として、リスク管理債権の残高についてみると、延滞債権額は、銀行勘定で1,267億円(前年度末比944億円、42.7%減)、信託勘定で339億円(同125億円、58.4%増)となった。貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で2,171億円(同353億円、14.0%減)、信託勘定で121億円(同186億円、60.5%減)とともに減少した。このほか、破綻先債権額は、銀行勘定、信託勘定ともに減少した。リスク管理債権の総額は、銀行勘定で3,574億円(同1,334億円、27.2%減)、信託勘定で463億円(同64億円、12.1%減)とともに減少した(信託勘定については、いずれも元本補填契約のある信託勘定の計数)。なお、銀行勘定のリスク管理債権額の貸出金総額に占める比率は、同0.41%ポイント低下して1.11%となった。
 また、金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容(銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が567億円(前年度末比39億円、7.5%増)、危険債権が1,136億円(同1,007億円、47.0%減)となった。要管理債権は2,192億円(同352億円、13.8%減)と減少した。また、正常債権は33兆3,031億円(同232億円、0.1%減)となった。
 有価証券については、銀行勘定の末残では、国債(前年度末比5.1%増)は増加したものの、株式(同24.9%減)等が減少したことから、全体では18兆5,253億円(同2,840億円、1.5%減)となった(平残では17兆6,474億円、前年度比5,710億円、3.3%増)。一方、信託勘定の末残では、国債、地方債、社債などで、いずれも増加したことから、全体では98兆6,607億円(前年度末比5兆9,990億円、6.5%増)となった。

 

自己資本

 資本金は、期中に1行で増資、2行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われたことから、1兆2,892億円(前年度末比210億円、1.7%増)となった。
 資本剰余金は8,349億円(前年度末比970億円、10.4%減)と減少したが、利益剰余金は1兆3,058億円(同313億円、2.5%増)となった。以上のほか、その他有価証券評価差額金の評価益が2,718億円(同7,806億円、74.2%減)と大幅に減少したこと等から、純資産の部合計では3兆6,719億円となった。

[担当:三澤]