〔以下は、都市銀行6行(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)44行、信託銀行7行(三菱UFJ信託、みずほ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、中央三井アセット信託、りそな信託)、新生銀行、あおぞら銀行の123行ベースで算出、分析したものである。〕

経理基準の主な変更等

 

  1. 「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号平成19年3月30日)が平成20年度から適用されたことに伴い、従来、通常の賃貸借取引として費用処理されていた所有権移転外ファイナンス・リース取引については、原則としてオンバランス処理することとされた。借手のリース資産は、「有形固定資産」または「無形固定資産」中のリース資産に、リース債務は、「その他負債」中のリース債務に計上している。なお、連結貸借対照表における貸手のリース債権及びリース投資資産は、「リース債権及びリース投資資産」に計上している。ただし、金額的に重要性がない銀行は「その他資産」に含めて表示している。
  2. 「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い(実務対応報告第25号平成20年10月28日)が公表され、時価の概念の明確化が図られたことを踏まえ、当期末においては、「有価証券」中の変動利付国債等を市場価格に代えて経営者の合理的な見積りにもとづく合理的に算定された価額をもって、評価している銀行がある。
  3. 「債券の保有目的区分の変更に関する当面の取扱い」(実務対応報告第26号平成20年12月5日)が公表日から適用されたことに伴い、「想定し得なかった市場環境の著しい変化によって流動性が極端に低下したことなどから、保有する債券を公正な評価額である時価で売却することが困難な期間が相当程度生じているような稀な場合」に該当し、「満期保有目的の債券」の定義および要件を満たす一部の債券について、「その他有価証券」から「満期保有目的の債券」に保有目的区分を変更した銀行がある。

 

概況

 (以下は、銀行単体の決算を取りまとめたものである。)
 全国銀行123行の平成20年度決算をみると、資金運用益は、国内業務部門では減益となったものの、金融危機による米欧政策金利の引き下げを主因に国際業務部門で大幅な増益となったことから、8兆7,037億円(前年度比1,116億円、1.3%増)と、前年度に引続き増益となった。また、各種手数料等の受払収支を示す役務取引等収支は、投資信託販売手数料が大幅に減少したことから、1兆6,896億円(同3,198億円、15.9%減)と、減益となった。
 経常利益は、以上に加えて、金融危機による市場の混乱により株式等関係損益、国債等関係損益が大幅な損失超過となったほか、国内景気の悪化により建設業・不動産業を中心に与信関係費用が大幅に増加したことから、1兆6,096億円の赤字(前年度は3兆4,497億円の黒字)と6年ぶりに赤字に転じた。
 当期純利益は、以上の結果、1兆9,956億円(注)の赤字(前年度は2兆1,246億円の黒字)と5年ぶりに赤字に転じた。

(注)
預金保険機構から足利銀行に実施された金銭贈与2,566億円を除いて集計。

   なお、参考までに業務純益をみると、国債等関係損益が大幅な損失超過となったこと等から、3兆4,953億円(前年度比1兆5,128億円、30.2%減)と大幅な減益となった。 業容面(末残)は、預金が前年度末比で2.0%の増加、貸出金は同4.5%の増加、有価証券は同3.8%の増加となった。

 

 

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、8兆7,037億円(前年度比1,116億円、1.3%増)と、前年度に引続き増益となった。
 資金運用収益は、13兆2,295億円(前年度比1兆1,022億円、7.7%減)と減少した。国内業務部門では、金融危機による大企業のコマーシャル・ペーパー(CP)や社債発行の急減による貸出金への振り替わりを受けて、貸出金残高は増加したものの、利回りの低下により有価証券利息が減少したこと等から、全体では前年度比0.3%の増加にとどまった。また、国際業務部門では、金融危機による米欧政策金利の引き下げにより有価証券利息、預け金利息および貸出金利息が大幅に減少したこと等から、全体では同26.2%の減少となった。
 資金調達費用は、4兆5,257億円(前年度比1兆2,138億円、21.1%減)と減少した。国内業務部門では、10月および12月の日本銀行の金融政策の変更に伴う調達金利の低下要因はあったものの、個人の定期性預金への選好の高まり等による預金利息の増加を主因に、全体では前年度比5.5%の増加となった。一方、国際業務部門では、米欧政策金利の引き下げにより、預金利息が半減したほか、その他の支払利息や譲渡性預金利息も大幅に減少したことから、全体では同35.4%の減少となった。
 資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では前年度比866億円(1.1%)減少したものの、国際業務部門では同1,905億円(34.4%)増加したことから、全体では増益となった。
役務取引等収益・費用
 各種手数料等の受払収支をみると、金融危機による市場環境の悪化により、個人向け投資信託販売手数料が大幅に減少したほか、年金保険販売も減少したこと、また、為替手数料収支も前年度比減少したこと等から、全体の収益超過額は1兆6,896億円(前年度比3,198億円、15.9%減)となった。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、外貨調達に係る通貨スワップ取引関係費用が増加したこと等などから、国際業務部門において収益超過額が大幅に減少した結果、全体の収益超過額は5,116億円(前年度比6,368億円、55.4%減)となった。
その他業務収益・費用
 通貨スワップ取引に見合う外貨建資産における為替差損益の改善等により、外国為替売買損益は収益超過に転じたものの、国債等関係損益は金融危機による市場の混乱を要因として、投資信託等国内外の償却が増加した結果、大幅な損失超過となったことから、全体の損失超過額は6,526億円となった(前年度は4,169億円の損失超過)。
信託報酬
 信託報酬は、時価ベースの受託資産残高が減少したこと等から、3,146億円(前年度比586億円、15.7%減)となった。
その他経常収益・費用
 金融危機による景気の悪化により、貸倒引当金繰入額(前年度比1兆1,208億円増)および貸出金償却(同7,500億円増)が大幅に増加したほか、株価の大幅な下落により株式等償却が増加(同1兆3,723億円増)したこと等から、その他経常収支の損失超過額は5兆2,417億円となり、前年度に比べて大幅に増加した(前年度は1兆5,184億円の損失超過)。
営業経費
 職員数の増加(前年度比3.0%増)や期待運用収益の減少による退職給付費用の増加等、人件費を中心とする増加により、6兆9,348億円(前年度比1,967億円、2.9%増)と増加した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は18兆9,478億円(前年度比2兆2,173億円、10.5%減)、経常費用は20兆5,574億円(同2兆8,420億円、16.0%増)となり、経常利益は1兆6,096億円の赤字(前年度は3兆4,497億円の黒字)と6年ぶりに赤字に転じた(増益1行、減益53行、黒字転換4行、経常損失65行)。当期純利益は、繰延税金資産の増加により法人税等調整額(税金費用)は半減したものの、経常利益が赤字となったこと等から、1兆9,956億円の赤字(前年度は2兆1,246億円の黒字)と5年ぶりに赤字に転じた(増益6行、減益49行、黒字転換5行、当期純損失63行)。
 なお、参考までに業務純益をみると、国債等関係損益が大幅な損失超過となったほか、役務取引等収支の収益超過額の減少や一般貸倒引当金繰入額の増加等により、3兆4,953億円(前年度比1兆5,128億円、30.2%減)と大幅な減益となった(増益13行、減益88行、黒字転換2行、赤字20行)。

 

利回り・利鞘(国内業務部門)

 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.03%ポイント低下して1.98%、有価証券利回りは同0.08%ポイント低下して1.12%、コールローン等利回りは同0.02%ポイント上昇して0.96%となった。以上に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは、同0.03%ポイント低下して1.65%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.01%ポイント上昇して0.31%(預金利回りは0.29%)、コールマネー等利回りは同0.07%ポイント低下して0.75%となった。また、経費率は前年度比変わらず1.11%となった。以上に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は前年度比変わらず1.37%となった。
 以上のように、資金運用利回りが低下したことから、総資金利鞘は前年度比0.03%ポイント縮小して0.28%となった。なお、預貸金利鞘は、貸出金利回りが低下し、預金債券等原価は上昇したことから、前年度比0.05%ポイント縮小して0.56%となった。

 

資金調達

 預金は、国内業務部門では、個人の選好により定期性預金が増加したこと等から、全体でも増加した。一方、国際業務部門では、米欧政策金利の引き下げにより定期性預金を中心に減少したことから、全体でも減少した。この結果、末残では576兆3,524億円(前年度末比11兆781億円、2.0%増)となった。また、平残では558兆2,165億円(前年度比6兆3,482億円、1.2%増)となった。
 譲渡性預金は、末残では、国際業務部門における増加を主因に35兆4,364億円(前年度末比1兆8,912億円、5.6%増)となり、平残では、国内業務部門における増加を主因に36兆5,777億円(前年度比2兆2,445億円、6.5%増)となった。
 債券は、末残では4兆4,731億円(前年度末比1兆4,307億円、24.2%減)となり、平残では5兆3,912億円(前年度比1兆614億円、16.4%減)となった。

 

資金運用

 貸出金は、国内業務部門では、金融危機による大企業のCPや社債発行の急減による振り替わり、および中小企業の信用保証協会の緊急保証制度の利用等から増加した。また、国際業務部門では、米欧金融機関における信用収縮の影響によりシンジケートローンが増加したこと等から、貸出金全体では、末残で465兆9,970億円(前年度末比20兆214億円、4.5%増)となった。また、平残では451兆112億円(前年度比17兆2,896億円、4.0%増)となった。
 ここで、不良債権の状況として、銀行勘定のリスク管理債権額をみると、破綻先債権額は1兆5,646億円(前年度末比9,554億円、156.8%増)、延滞債権額は7兆8,218億円(同1兆64億円、14.8%増)、3カ月以上延滞債権額は1,697億円(同603億円、55.1%増)、貸出条件緩和債権額は1兆9,460億円(同1兆5,804億円、44.8%減)であった。この結果、リスク管理債権額の総額は、11兆5,023億円(同4,416億円、4.0%増)となったものの、貸出金総額に占める比率は同0.01%ポイント低下して2.47%となった。
 また、金融再生法第7条にもとづき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が3兆3,748億円(前年度末比1兆3,789億円、69.1%増)、危険債権が6兆3,723億円(同7,078億円、12.5%増)、要管理債権が2兆1,177億円(同1兆5,196億円、41.8%減)、正常債権が485兆8,265億円(同16兆7,229億円、3.6%増)であった。
 有価証券は、株価の大幅な下落による減損等の影響により株式は減少したものの、国債が大幅に増加したことから、末残で194兆8,133億円(前年度末比7兆1,168億円、3.8%増)となった。また、平残では190兆5,233億円(前年度比2兆1,317億円、1.1%増)となった。

 

自己資本

 当期中、都市銀行1行、地方銀行4行、第二地銀協地銀8行、信託銀行1行が増資を、地方銀行2行、第二地銀協地銀2行が減資を行った。また、地方銀行4行で転換社債型新株予約権付社債等の転換が行われた。この結果、資本金は9兆6,921億円(前年度末比3,098億円、3.3%増)となった。また、純資産の部合計では、その他有価証券評価差額金が1兆8,852億円の評価差損(前年度末は2兆4,597億円の評価差益)となったこと等から、28兆9,676億円となった。

 

[担当:竹内]

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
(参考)経常利益の内訳(業態別)  (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益87,037
(1,116)
37,576
(1,732)
33,467
(175)
9,985
(△479)
4,591
(△256)
役務取引等収支16,896
(△3,198)
10,152
(△995)
4,000
(△873)
687
(△247)
1,913
(△974)
特定取引収支5,116
(△6,368)
5,146
(△5,832)
130
(△22)

(-)
△416
(△605)
その他業務収支△6,526
(△2,358)
△274
(2,197)
△3,390
(△2,194)
△2,742
(△2,489)
1,456
(1,312)
その他経常収支△52,417
(△37,233)
△28,848
(△20,779)
△11,027
(△6,705)
△4,745
(△3,102)
△4,814
(△3,762)
信託報酬3,146
(△586)
93
(△31)
7
(△0)

(-)
3,047
(△555)
営業経費69,348
(1,967)
29,908
(948)
24,527
(659)
7,695
(47)
5,950
(371)
経常利益△16,096
(△50,593)
△6,064
(△24,656)
△1,341
(△10,278)
△4,510
(△6,365)
△173
(△5,211)
当期純利益△19,956
(△41,202)
△11,056
(△22,083)
△699
(△5,805)
△3,755
(△4,645)
△423
(△4,078)
参考:業務純益34,953
(△15,128)
21,765
(△5,314)
9,957
(△3,320)
28
(△3,606)
5,131
(△922)
(注1)
上段は平成20年度計数、下段( )内は対前年度増減額。
(注2)
「当期純利益」は、預金保険機構から足利銀行に実施された金銭贈与2,566億円を除いて集計。