都市銀行(特定取引勘定設置銀行5行)

 都市銀行の平成21年度決算をみると、資金運用益は、国内業務部門において減益となったものの、国際業務部門においては大幅な増益となったことから、全体では増益となった。経常利益は、株式等償却や与信関係費用が大幅に減少し、その他経常収支が大幅に改善したこと等から、全体では赤字から黒字に転じた。また、当期純利益も、経常利益が黒字に転じたこと等から、赤字から黒字に転じた。
 業容面(末残)をみると、資金調達では、預金が前年度末比1.9%増、資金運用では、貸出金が同7.4%減となった。

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、3兆8,474億円(前年度比896億円、2.4%増)と増益となった。内訳をみると、国内業務部門においては、前年度の政策金利の引き下げ等の影響により、利回りが低水準で推移したことに伴い、貸出金利息や有価証券利息配当金が減少したこと等から、3兆935億円(同1,680億円、5.2%減)と減益となった。また、国際業務部門においては、前年度の米欧の政策金利の引き下げ等の影響により、利回りが低水準で推移したことに伴い、費用が収益を上回って減少し、総資金粗利鞘が拡大したことから、7,539億円(同2,576億円、51.9%増)と大幅な増益となった。
(国内業務部門)
 資金運用収益をみると、貸出金利息は、利回りが低水準で推移したほか、コマーシャル・ペーパー(CP)・社債市場における発行環境が改善したこと等に伴い、貸出金残高(平残)が減少したことから、2兆8,606億円(前年度比4,087億円、12.5%減)と減少した。また、有価証券利息配当金は、国債の増加を主因として有価証券残高(平残)は増加したものの、利回りが低水準で推移したことから、6,548億円(同738億円、10.1%減)と減少したほか、コールローン利息が496億円(同111億円、18.3%減)と減少した結果、全体では3兆7,771億円(同5,504億円、12.7%減)と減少した。
 資金調達費用をみると、預金および譲渡性預金残高(平残)は増加したものの、利回りが低水準で推移したことから、預金利息は3,418億円(前年度比2,044億円、37.4%減)、譲渡性預金利息は562億円(同633億円、52.9%減)と大幅に減少した。また、金利スワップ支払利息が51億円(同490億円、90.5%減)と減少したこと等から、全体では6,836億円(同3,824億円、35.9%減)と減少した。
 以上の結果、国内業務部門における資金運用益は3兆935億円(同1,680億円、5.2%減)と減益となった。
(国際業務部門)
 資金運用収益をみると、金利スワップ受入利息は2,218億円(前年度比1,466億円、195.0%増)と大幅に増加したものの、利回りが低水準で推移したことを主因として、貸出金利息が6,677億円(同5,912億円、47.0%減)、預け金利息が570億円(同1,689億円、74.8%減)と大幅に減少したほか、その他の受入利息も997億円(同1,389億円、58.2%減)と減少した。この結果、全体では1兆4,811億円(同9,191億円、38.3%減)と減少した。
 資金調達費用をみると、預金利息は、利回りが低水準で推移したことを主因として、1,593億円(前年度比4,524億円、74.0%減)と大幅に減少した。また、借用金利息は、残高(平残)が減少したこと等から、3,092億円(同824億円、21.0%減)と減少し、その他の支払利息も552億円(同2,642億円、82.7%減)と減少した結果、全体では7,272億円(同1兆1,767億円、61.8%減)と大幅に減少した。
 以上の結果、国際業務部門における資金運用益は、7,539億円(同2,576億円、51.9%増)と大幅な増益となった。
役務取引等収益・費用
 国際業務部門においては、融資関連手数料等が増加したことから、役務取引等収支の収益超過額は増加した。一方、国内業務部門においては、株価の上昇を受けて投資信託等の販売は回復基調にあるものの、その他の役務収支の収益超過額は減少したほか、為替手数料収支の収益超過額も減少した。この結果、全体の収益超過額は1兆円(前年度比143億円、1.4%減)と減少した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国内業務部門において収益超過額が減少し、国際業務部門においても、円高により外貨調達に係る通貨スワップ取引関係費用は減少したものの、特定金融派生商品収益およびその他の特定取引収益が減少したこと等により、収益超過額が減少したことから、全体の収益超過額は3,859億円(前年度比1,287億円、25.0%減)と減少した。
その他業務収益・費用
 一部の銀行においてクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に関する損失等を計上したことにより、金融派生商品損益が収益超過から損失超過に転じたものの、証券化商品関連損失の減少等により、国債等債券関係損益の収益超過額が大幅に増加したこと等から、その他業務収支全体の収益超過額は、826億円(前年度は274億円の損失超過)と損失超過から収益超過に転じた。
その他経常収益・費用
 株価の上昇を受けて保有株式の減損処理が減少し、株式等償却が大幅に減少したことから、株式等関係損益の収益超過額は、626億円(前年度は1兆1,625億円の損失超過)と損失超過から収益超過に転じた。また、貸倒引当金繰入額は全体で3,126億円(前年度比3,131億円、50.0%減)と大幅に減少し、企業の大口倒産や倒産件数の減少に伴い、貸出金償却も5,020億円(同5,002億円、49.9%減)と大幅に減少した。この結果、その他経常収支の損失超過額は、1兆62億円(前年度は2兆8,848億円の損失超過)と大幅に減少した。
営業経費
 営業経費は、物件費、税金ともに減少したものの、退職給付関係費用の増加等に伴い、人件費が増加したことから、全体では3兆367億円(前年度比340億円、1.1%増)と増加した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は、8兆308億円(前年度比1兆8,323億円、18.6%減)となり、経常費用は、6兆7,273億円(同3兆7,267億円、35.6%減)となったことから、経常利益は1兆3,035億円の黒字(前年度は5,909億円の赤字)と赤字から黒字に転じた(増益3行、黒字転換3行)。また、特別利益は、前年度の一部の銀行における本社ビルの売却益が剥落したこと等から、1,646億円(同1,917億円、53.8%減)となり、特別損失は630億円(同790億円、55.6%減)となったことから、税引前当期純利益は1兆4,051億円(前年度は3,765億円の赤字)と赤字から黒字に転じた。この結果、当期純利益は1兆727億円(前年度は1兆964億円の赤字)と赤字から黒字に転じた(増益1行、減益1行、黒字転換4行)。
 なお、業務純益は2兆6,313億円(前年度比4,393億円、20.0%増)と増益となった(増益4行、減益2行)。国内業務粗利益は3兆9,675億円(同1,456億円、3.5%減)、国際業務粗利益は1兆3,854億円(同1,977億円、16.6%増)となった。

 

利回り・利鞘

(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.21%ポイント低下して1.63%、有価証券利回りは同0.27%ポイント低下して0.69%、コールローン等利回りは同0.21%ポイント低下して0.88%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.23%ポイント低下して、1.25%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.11%ポイント低下して0.16%、コールマネー等利回りは同0.23%ポイント低下して0.48%、経費率は同0.08%ポイント低下して0.90%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.21%ポイント低下して、0.99%となった。なお、資金調達利回りは、同0.14%ポイント低下して、0.22%となった。
 以上の結果、国内業務部門における総資金利鞘(資金運用利回り-資金調達原価)は前年度比0.02%ポイント低下して0.26%、うち、経費部分を除いた総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は同0.10%ポイント低下して1.03%となった。
(国際業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比1.64%ポイント低下して1.97%、有価証券利回りは同0.55%ポイント低下して2.19%、コールローン利回りは同1.57%ポイント低下して1.09%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同1.05%ポイント低下して2.12%となった。
 資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比1.35%ポイント低下して0.50%、コールマネー利回りは同1.92%ポイント低下して0.48%、借用金利息利回りは同0.20%ポイント低下して3.49%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同1.42%ポイント低下して1.03%となった。
 以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.37%ポイント上昇して1.09%となった。

 

資金調達

 預金は、末残でみると、国内業務部門では249兆2,335億円(前年度末比7兆5,850億円、3.1%増)と増加し、国際業務部門では29兆4,933億円(同2兆3,959億円、7.5%減)と減少した。その結果、全体では278兆7,269億円(同5兆1,891億円、1.9%増)と増加した。内訳を見ると、当座預金は22兆2,731億円(同4,660億円、2.1%増)、普通預金は131兆2,414億円(同5兆4,046億円、4.3%増)、定期預金は102兆4,144億円(同1兆2,909億円、1.3%増)と増加し、外貨預金は8兆1,930億円(同1兆356億円、11.2%減)と減少した。
 平残でみると、国内業務部門では236兆6,247億円(前年度比6兆4,213億円、2.8%増)と増加し、国際業務部門では32兆711億円(同9,901億円、3.0%減)と減少した。この結果、全体では268兆6,957億円(同5兆4,312億円、2.1%増)と増加した。
 譲渡性預金は、末残では28兆4,001億円(前年度末比3兆8,885億円、15.9%増)、平残では28兆9,551億円(前年度比6兆1,362億円、26.9%増)と増加した。

 

資金運用

 貸出金は、末残でみると、CP・社債市場における発行環境が改善したことにより、国内業務部門では、176兆2,557億円(前年度末比11兆5,257億円、6.1%減)、国際業務部門では、31兆8,959億円(同5兆1,799億円、14.0%減)と減少した。この結果、全体では208兆1,516億円(同16兆7,056億円、7.4%減)と減少した。
 平残でみると、国内業務部門では181兆1,113億円(前年度比1兆5,770億円、0.9%減)、国際業務部門では33兆8,410億円(同1兆300億円、3.0%減)と減少した。この結果、全体では214兆9,523億円(同2兆6,070億円、1.2%減)と減少した。
 銀行勘定のリスク管理債権については、破綻先債権額が3,022億円(前年度末比1,797億円、37.3%減)、延滞債権額が2兆6,915億円(同3,008億円、12.6%増)、3カ月以上延滞債権額が682億円(同217億円、24.1%減)、貸出条件緩和債権額が9,464億円(同499億円、5.0%減)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は4兆85億円(同495億円、1.3%増)となり、貸出金総額に占める比率は前年度比0.17%ポイント上昇して、1.93%となった。
 金融再生法第7条にもとづき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が7,009億円(前年度末比2,085億円、22.9%減)、危険債権が2兆4,351億円(同2,456億円、11.2%増)、要管理債権が1兆147億円(同716億円、6.6%減)、正常債権が227兆8,189億円(同18兆8,169億円、7.6%減)となった。
 有価証券は、末残でみると、株価の上昇を受けて、株式が12兆1,457億円(前年度末比1兆7,497億円、16.8%増)と増加し、国債も85兆3,529億円(同28兆6,307億円、50.5%増)と大幅に増加したことから、全体では130兆8,414億円(同27兆9,535億円、27.2%増)と増加した。平残でも、114兆1,389億円(前年度比18兆3,954億円、19.2%増)と増加した。

 

自己資本

 資本金は、期中に4行で増資が行われたことから、5兆9,369億円(前年度末比1兆9,948億円、50.6%増)となり、資本剰余金は8兆1,738億円(同1兆8,839億円、30.0%増)となった。また、利益剰余金は3兆271億円(同9,203億円、43.7%増)となった。
 以上のほか、株価の上昇を受けて、その他有価証券評価差額金が8,560億円の評価差益(前年度末は1兆2,558億円の評価差損)と評価差損から評価差益に転じたこと等から、純資産の部合計は18兆7,201億円となった。

 

[担当:福田]