〔以下は、都市銀行6行(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)42行、信託銀行6行(三菱UFJ信託、みずほ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、中央三井アセット信託)、新生銀行、あおぞら銀行の120行ベースで算出、分析したものである。〕

経理基準の主な変更等

 改正された「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号平成20年3月10日)が平成21年度末から適用され、従来、「市場価格のない有価証券」として債権に準じて償却原価法にもとづいて算定された価額から貸倒見積高にもとづいて算定された貸倒引当金を控除した金額を貸借対照表価額とすることとされていた私募債等の債券については、「時価を把握することが極めて困難と認められる」場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とすることとされた。

概況

 (以下は、銀行単体の決算を取りまとめたものである。)
 全国銀行120行の平成21年度決算をみると、資金運用益は、国際業務部門では増益となったものの、国内業務部門では、貸出金利息の減少を主因とする資金運用収益の減少により減益となったことから、8兆6,893億円(前年度比144億円、0.2%減)と、前年度比横ばいとなった。また、各種手数料等の受払収支を示す役務取引等収支は、1兆6,481億円(同415億円、2.5%減)と収益超過額は減少した。
 経常利益は、以上に加えて、金融危機による市場の混乱の収束により株式等関係損益、国債等債券関係損益が大幅に改善し損失超過から収益超過に転じたほか、景気の持ち直しによる大型倒産や倒産件数の減少により与信関係費用が大幅に減少したことから、2兆4,457億円の黒字(前年度は1兆6,096億円の赤字)と赤字から黒字に転じた。
 当期純利益は、法人税等を控除した結果、1兆8,116億円の黒字(前年度は1兆9,956億円(注)の赤字)と赤字から黒字に転じた。

(注)
本分析における前年度の当期純利益は、預金保険機構から足利銀行に実施された金銭贈与2,566億円を除いて集計している。

 なお、参考までに業務純益をみると、国債等債券関係損益が大幅に改善し、一般貸倒引当金純繰入額も戻入に転じたこと等から、4兆8,049億円(前年度比1兆3,096億円、37.5%増)と増益となった。 業容面(末残)は、預金が前年度末比で2.2%の増加、貸出金は同3.6%の減少、有価証券は同18.9%の増加となった。

 

 

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、8兆6,893億円(前年度比144億円、0.2%減)と、前年度比横ばいとなった。
 資金運用収益は、11兆1,631億円(前年度比2兆663億円、15.6%減)と減少した。国内業務部門では、政策金利は年度を通じて横ばいであったものの、前年度の金融危機前に比べ金利水準が低下し、貸出金利息および有価証券利息配当金が減少したこと等から、全体では前年度比9.7%の減少となった。また、国際業務部門においても、米欧政策金利は年度を通じて概ね横ばいであったものの、前年度の金融危機前に比べ金利水準が大幅に低下したほか、預け金、外国証券および貸出金等の運用資産残高が減少したこと等から、全体では同37.6%の減少となった。
 資金調達費用は、2兆4,738億円(前年度比2兆519億円、45.3%減)と大幅に減少した。国内業務部門では、前年度の金融危機前に比べ金利水準が低下し、預金利息および譲渡性預金利息等が大幅に減少したこと等から、全体では前年度比28.6%の減少となった。また、国際業務部門においても、前年度の金融危機前に比べ米欧政策金利の水準が大幅に低下し、預金利息が7割減となったほか、その他の支払利息や金利スワップ支払利息も大幅に減少したことから、全体では同61.9%の大幅な減少となった。
 資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では前年度比3,302億円(4.2%)減少したものの、国際業務部門では同2,966億円(39.9%)増加したことから、全体では前年度比横ばいとなった。
役務取引等収益・費用
 各種手数料等の受払収支をみると、国際業務部門では増加したものの、国内業務部門においてその他の役務収支および為替手数料収支が減少したことから、全体の収益超過額は1兆6,481億円(前年度比415億円、2.5%減)となった。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、円高により外貨調達に係る通貨スワップ取引関係費用は減少したものの、特定金融派生商品収益およびその他の特定取引収益も減少したこと等から、全体の収益超過額は4,541億円(前年度比575億円、11.2%減)となった。
その他業務収益・費用
 金融派生商品損益が損失超過に転じたほか、円高による通貨スワップ取引に見合う外貨建資産における為替差損の増加等により外国為替売買損益の収益超過額は減少したものの、金融危機による市場の混乱の収束により国債等債券償却が大幅に減少(前年度比6,757億円減)し、国債等債券関係損益が収益超過に転じたことから、全体の収益超過額は2,753億円(前年度は6,526億円の損失超過)と損失超過から収益超過に転じた。
信託報酬
 信託報酬は、時価ベースの受託資産残高が減少したこと等から、2,687億円(前年度比459億円、14.6%減)となった。
その他経常収益・費用
 株価の上昇により株式等償却が大幅に減少(前年度比1兆7,631億円減)するとともに、景気の持ち直しによる企業の大型倒産や倒産件数の減少により、貸倒引当金繰入額が半減(同7,944億円減)したほか、貸出金償却(同6,690億円減)が減少したこと等から、その他経常収支の損失超過額は1兆9,190億円となり、前年度に比べて大幅に減少した(前年度は5兆2,417億円の損失超過)。
営業経費
 物件費および税金は減少したものの、職員数の増加(前年度比2.0%増)や退職給付関係費用の増加等により人件費が増加したことから、6兆9,707億円(前年度比359億円、0.5%増)と増加した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は16兆1,730億円(前年度比2兆7,748億円、14.6%減)、経常費用は13兆7,273億円(同6兆8,301億円、33.2%減)となり、経常利益は2兆4,457億円の黒字(前年度は1兆6,096億円の赤字)と赤字から黒字に転じた(増益48行、減益3行、黒字転換57行、経常損失12行)。また、法人税等を控除した当期純利益は、1兆8,116億円の黒字(前年度は1兆9,956億円の赤字)と赤字から黒字に転じた(増益45行、減益9行、黒字転換55行、当期純損失11行)。
 なお、参考までに業務純益をみると、国債等債券関係損益が前年度の大幅な損失超過から収益超過に転じたほか、一般貸倒引当金純繰入額が戻入に転じたこと等から、4兆8,049億円(前年度比1兆3,096億円、37.5%増)と大幅な増益となった(増益68行、減益32行、黒字転換20行)。

 

利回り・利鞘(国内業務部門)

 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.19%ポイント低下して1.79%、有価証券利回りは同0.22%ポイント低下して0.90%、コールローン等利回りは同0.24%ポイント低下して0.72%となった。以上に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは、同0.20%ポイント低下して1.45%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.10%ポイント低下して0.21%(預金利回りは0.21%)、コールマネー等利回りは同0.20%ポイント低下して0.55%(コールマネー利回りは0.55%)となった。また、経費率は同0.07%ポイント低下して1.04%となった。以上に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は同0.17%ポイント低下して1.20%となった。
 以上のように、資金運用利回りの低下幅が資金調達原価のそれを上回ったことから、総資金利鞘は前年度比0.03%ポイント縮小して0.25%となった。なお、預貸金利鞘は、貸出金利回りの低下幅が預金債券等原価のそれを上回ったことから、前年度比0.03%ポイント縮小して0.53%となった。

 

資金調達

 預金は、国内業務部門では、個人の安全資産の選好や法人の手元流動性の余剰等により、定期預金、流動性預金ともに増加した。一方、国際業務部門では、定期預金、外貨預金ともに減少した。この結果、末残では588兆7,491億円(前年度末比12兆3,967億円、2.2%増)となった。また、平残では571兆3,217億円(前年度比13兆1,052億円、2.3%増)となった。
 譲渡性預金は、末残では、国際業務部門における増加を主因に40兆4,540億円(前年度末比5兆176億円、14.2%増)となり、平残でも、国際業務部門における増加を主因に41兆8,506億円(前年度比5兆2,729億円、14.4%増)となった。
 債券は、末残では2兆5,674億円(前年度末比1兆9,057億円、42.6%減)となり、平残では3兆4,650億円(前年度比1兆9,262億円、35.7%減)となった。

 

資金運用

 貸出金は、国内業務部門では、金融危機による市場の混乱の収束により、大企業のCPや社債の発行環境が改善した反動で減少した。また、国際業務部門では、景気の悪化により米欧向け貸出が減少した結果、全体では、末残で449兆1,898億円(前年度末比16兆8,072億円、3.6%減)となった。また、平残では451兆2,243億円(前年度比2,132億円、0.0%増)となった。
 ここで、不良債権の状況として、銀行勘定のリスク管理債権額をみると、破綻先債権額は1兆1,031億円(前年度末比4,470億円、28.8%減)、延滞債権額は8兆1,348億円(同3,202億円、4.1%増)、3カ月以上延滞債権額は1,434億円(同263億円、15.5%減)、貸出条件緩和債権額は1兆9,610億円(同150億円、0.8%増)であった。この結果、リスク管理債権額の総額は、11兆3,425億円(同1,381億円、1.2%減)となったものの、貸出金総額に占める比率は、貸出金総額が減少したことから、同0.07%ポイント上昇して2.53%となった。
 また、金融再生法第7条にもとづき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆8,455億円(前年度末比5,075億円、15.1%減)、危険債権が6兆6,842億円(同3,119億円、4.9%増)、要管理債権が2兆1,046億円(同131億円、0.6%減)、正常債権が466兆361億円(同19兆7,904億円、4.1%減)であった。
 有価証券は、預金の増加および貸出金の減少による余剰資金の運用として、国債が大幅に増加したこと等から、末残で231兆6,318億円(前年度末比36兆8,185億円、18.9%増)となった。また、平残では211兆5,699億円(前年度比21兆466億円、11.0%増)となった。

 

自己資本

 当期中、都市銀行4行、地方銀行10行、第二地銀協地銀4行、信託銀行1行が増資を、地方銀行4行、第二地銀協地銀3行が減資を行った。また、地方銀行1行、信託銀行1行で転換社債型新株予約権付社債等の転換が行われた。この結果、資本金は11兆6,756億円(前年度末比1兆9,835億円、20.5%増)となった。また、純資産の部合計では、その他有価証券評価差額金が2兆1,641億円の評価差益(前年度末は1兆8,852億円の評価差損)と評価差損から評価差益に転じたこと等から、38兆4,279億円となった。

 

[担当:竹内]

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
(参考)経常利益の内訳(業態別)  (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益86,893
(△144)
38,474
(896)
32,611
(△1,005)
9,540
(△297)
5,070
(480)
役務取引等収支16,481
(△415)
10,000
(△143)
3,796
(△205)
606
(△79)
1,878
(△44)
特定取引収支4,541
(△575)
3,859
(△1,287)
86
(△44)

(-)
359
(775)
その他業務収支2,753
(9,279)
826
(1,100)
1,292
(4,683)
435
(3,176)
107
(△1,349)
その他経常収支△19,190
(33,226)
△10,062
(18,787)
△5,134
(5,921)
△2,259
(2,457)
△739
(4,075)
信託報酬2,687
(△459)
305
(△70)
6
(△2)

(-)
2,377
(△387)
営業経費69,707
(359)
30,367
(340)
24,589
(△64)
7,489
(△80)
6,137
(306)
経常利益24,457
(40,553)
13,035
(18,944)
8,066
(9,412)
833
(5,338)
2,916
(3,243)
当期純利益18,116
(38,071)
10,727
(21,691)
5,527
(6,231)
613
(4,363)
1,649
(2,163)
参考:業務純益48,049
(13,096)
26,313
(4,393)
13,557
(3,564)
3,183
(3,192)
4,383
(△593)
(注1)
上段は平成21年度計数、下段( )内は対前年度増減額。
(注2)
平成20年度の「当期純利益」は、預金保険機構から足利銀行に実施された金銭贈与2,566億円を除いて集計し、「対前年度増減額」を算出している。