1.当中間期決算の背景

(1)当中間期中の経理基準の変更

  1. 「資産除去債務に関する会計基準」(企業会計基準第18号平成20年3月31日)および「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第21号平成20年3月31日)の適用により、有形固定資産の処分等に係る債務を「その他負債」中の「資産除去債務」に計上し、当該債務に係る費用は「営業経費」中の「物件費」に含めて表示している。
  2. 「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号平成20年12月26日改正)および「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号平成20年12月26日改正)の適用により、新たに負ののれんが生じた場合には「特別利益」として処理し、従前の負ののれんについては、「その他負債」に含めて表示している。
  3. 「持分法に関する会計基準」(企業会計基準第16号平成20年3月10日公表分)及び「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号平成20年3月10日)の適用により、投資会社との会計処理の原則および手続の統一等が行われている。
  4. 「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号平成20年12月26日)の適用により、「少数株主損益調整前中間純利益」の科目を表示している。

 

(2)当中間期中の金融情勢

 平成22年度中間期の金融情勢をみると、短期金利については、日本銀行が20年12月から「無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.1%前後で推移するよう促す」としていたことから、概ね0.1%前後で推移した。

 一方、長期金利については、米国の景気回復ペースなどに対する慎重な見方を背景に海外長期金利が低下していることを受けて、低下基調を辿り、9月末にかけては0.9%前後で推移した。

 株価は、米欧株価が軟調に推移したほか、為替が円高傾向を辿ったこともあって、8月下旬には日経平均株価が8,000円台まで低下したものの、米欧株価の上昇に加え、為替が9月半ばに円安方向の動きとなったことなどを反映して上昇し、その後に幾分か反落したものの9月末にかけては9,000円台で推移し、当中間期末の日経平均株価は、9,369円35銭と前年度末(11,089円94銭)比で1,720円59銭安となった(前中間期末10,133円23銭)。

 また、外国為替市場では、円の対ドル相場は、6月初旬まで概ね横ばい圏内で推移したが、7月以降は米国経済を巡る不透明感が高い状況が続く中、円高傾向を辿ったことから、中間期末の外国為替相場(スポットレート)は、1米ドル=83円32銭となり、前年度末(93円27銭)比で9円95銭の円高となった(前中間期末89円76銭)。

 

(3)銀行の経営統合等の動き

 平成22年5月1日、泉州銀行と池田銀行が合併し、「池田泉州銀行」となった。

図1 国内主要金利等の推移

図2 海外主要金利等の推移

担当:石井良

 

2.概況

(以下は、銀行単体をベースにとりまとめたものである。)

 全国銀行119行の平成22年度中間期決算をみると、資金運用益(算式は後掲(注)参照)は、4兆1,937億円(前中間期比1,682億円、3.9%減)と前中間期の増益から減益に転じた。

 経常利益は、資金運用益は減益となったものの、役務取引等収支および特定取引収支が増加したほか、内外の長期金利の低下による国債等債券売却益の大幅な増加、倒産件数および大型倒産の減少により与信関係費用が半減したこと等から、1兆9,993億円(同1兆58億円、101.2%増)と大幅な増益となった。

 中間純利益は、経常利益が増益となったことから、1兆6,284億円(同7,598億円、87.5%増)と大幅な増益となった。

 業容面では、預金は期中0.5%減、貸出金は同1.4%減であった。

 

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、4兆1,937億円(前中間期比1,682億円、3.9%減)と、前中間期の増益から減益に転じた。内訳をみると、資金運用収益は5兆2,082億円(同5,066億円、8.9%減)、資金調達費用は1兆144億円(同3,384億円、25.0%減)といずれも減少し、前者の減少額が後者の減少額を上回ったことから、資金運用益は減益となった。
 内訳をみると、国内業務部門では、日銀の金融緩和政策の影響により、貸出金利息が減少したことを主因として、資金運用収益は減少した。一方、資金調達費用は、預金金利の低下により預金利息および譲渡性預金利息が減少し全体でも減少したものの、資金運用収益の減少が資金調達費用の減少を上回ったことから、資金運用益は前中間期比1,116億円の減益となった。また、国際業務部門では、米欧の金融緩和政策の影響により貸出金利息および有価証券利息配当金が減少したことから、資金運用収益は減少した。一方、資金調達費用は、預金利息、借用金利息およびその他の支払利息等が減少し、全体でも減少したものの、資金運用収益の減少が資金調達費用の減少を上回ったことから、資金運用益は前中間期比590億円の減益と、前中間期の増益から減益に転じた。
役務取引等収益・費用
 役務取引等収益・費用は、個人向けの投資信託や年金保険販売の回復による手数料の増加等により、全体の収益超過額は8,148億円(前中間期比164億円、2.0%増)と増加した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国内業務部門の収益超過額は減少したものの、期中の円高により外貨調達に係る通貨スワップ取引関係費用が減少したこと等により、国際業務部門の収益超過額は増加したことから、全体の収益超過額は3,475億円(前中間期比40億円、1.2%増)と増加した。
その他業務収益・費用
 円高により外貨建資産の換算差損は増加したものの、内外の長期金利の低下により国債等債券売却益が大幅に増加したほか、国際業務部門における金融派生商品費用も大幅に減少したこと等から、その他業務収益・費用全体の収益超過額は5,651億円(前中間期比5,626億円、22,122.4%増)と大幅に増加した。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益は、株価の下落により株式等売却益が半減したほか、株式等償却も増加し、前中間期の収益超過から大幅な損失超過に転じた。一方、与信関係費用は、倒産件数および大型倒産の減少により個別貸倒引当金純繰入額や貸出金償却は半減し、一般貸倒引当金純繰入額も戻入超過となった。この結果、その他経常収益・費用の全体の損失超過額は6,202億円と前中間期(1兆1,456億円の損失超過)に比べ大幅に減少した。
信託報酬
 信託報酬は、1,285億円(前中間期比63億円、4.7%減)となった。
営業経費
 営業経費は、物件費が減少したこと等から、全体では3兆4,299億円(前中間期比720億円、2.1%減)となった。
経常利益・中間純利益
 以上の結果、経常収益は8兆1,290億円(前中間期比1,598億円、1.9%減)、経常費用は6兆1,296億円(同1兆1,657億円、16.0%減)となり、経常利益は1兆9,993億円(同1兆58億円、101.2%増)と大幅な増益となった(増益85行、黒字転換6行、減益24行、損失4行)。
 中間純利益は、経常利益が増益となったことから、1兆6,284億円(前中間期比7,598億円、87.5%増)と大幅な増益となった(増益72行、黒字転換5行、減益39行、純損失3行)。
 参考までにみると、業務純益は、2兆8,076億円(前中間期比4,141億円、17.3%増)と増益となった。また、一般貸倒引当金純繰入額を除いた実質業務純益は2兆7,803億円(前中間期比4,322億円、18.4%増)と増益となった。
 なお、全国銀行の業態別の損益状況は表のとおりである。
利回り・利鞘(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りが前中間期比0.12%ポイント縮小して1.70%、有価証券利回りは同0.10%ポイント縮小して0.82%、コールローン等利回りは同0.18%ポイント縮小して0.58%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.13%ポイント縮小して1.35%となった。
 資金調達費用をみると、預金債券等利回りが同0.07%ポイント縮小して0.16%、コールマネー等利回りは同0.08%縮小して0.50%、経費率は同0.03%ポイント縮小して1.02%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.08%ポイント縮小して1.14%となった。
 以上の結果、預貸金利鞘は、同0.02%ポイント縮小して0.52%、総資金利鞘は、同0.05%ポイント縮小して0.21%となった。

 

資金調達

 預金は、期中、国内業務部門では、定期性預金は微増であったものの、流動性預金は減少したことから、全体では減少(0.6%減)となり、国際業務部門では増加(0.7%増)した。この結果、預金全体では、末残で585兆5,692億円(前期末比3兆1,799億円、0.5%減)と減少した。

 譲渡性預金は、国内業務部門の増加を主因として、末残で44兆8,448億円(同4兆3,908億円、10.9%増)と増加した。

 債券は、利付金融債の減少を主因として、末残で1兆8,969億円(同6,705億円、26.1%減)と大幅に減少した。

 

資金運用

 貸出金は、期中、国内業務部門(1.2%減)、国際業務部門(4.2%減)ともに減少したことから、貸出金全体では、442兆8,796億円(前期末比6兆3,102億円、1.4%減)と減少した。

 有価証券は、期中、株式は減少したものの、国債および外国証券が増加したことから、全体では245兆4,377億円(同13兆8,059億円、6.0%増)と増加した。

 リスク管理債権(銀行勘定の単体ベース)の残高をみると、破綻先債権額は8,644億円(前期末比2,387億円、21.6%減)、延滞債権額は8兆1,018億円(同330億円、0.4%減)、3カ月以上延滞債権額は1,598億円(同164億円、11.4%増)、貸出条件緩和債権額は2兆553億円(同944億円、4.8%増)となった。この結果、リスク管理債権の全体は、11兆1,816億円(同1,610億円、1.4%減)となり、貸出金総額に占める割合は、前期末に比べて0.01%ポイント縮小して、2.52%となった。

 また、金融再生法第7条にもとづき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆5,324億円(前期末比3,131億円、11.0%減)、危険債権が6兆7,076億円(同234億円、0.3%増)、要管理債権が2兆2,153億円(同1,107億円、5.3%増)となった。なお、正常債権は458兆8,568億円(同7兆1,882億円、1.5%減)となった。

 資本金は、11兆6,375億円(同381億円、0.3%減)と減少した。純資産の部合計では、株価の下落によりその他有価証券評価差額金の評価差益は減少したものの、中間純利益が増加したことから利益剰余金が増加し、39兆326億円(同6,047億円、1.6%増)となった。

 なお、繰延税金資産(純額)は、2兆6,749億円(前期末比3,266億円、10.9%減)となった。

担当:竹内

(注)

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務純益=資金運用益+役務取引等収支+特定取引収支+その他業務収支+信託報酬-一般貸倒引当金繰入額-債券費-経費-金銭の信託運用見合費用
  • 国内業務=国内店の円建取引
  • 国際業務=国内店の外貨建取引+海外店の取引(円建対非居住者取引とオフショア勘定は国際業務に含む)

 

図3 全国銀行の経常利益・資金運用益の推移

 

表 経常利益の内訳(業態別) (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益41,937
(△1,682)
18,118
(△1,303)
16,256
(△224)
4,780
(4)
2,189
(△277)
役務取引等収支8,148
(164)
4,833
(16)
1,966
(66)
325
(39)
957
(79)
特定取引収支3,475
(40)
3,171
(118)
24
(△19)

(-)
168
(△42)
その他業務収支5,651
(5,626)
3,594
(4,555)
1,096
(563)
355
(130)
388
(327)
その他経常収支△6,202
(5,254)
△2,812
(4,129)
△2,052
(659)
△836
(141)
△231
(379)
信託報酬1,285
(△63)
143
(△7)
3
(0)

(-)
1,139
(△56)
営業経費34,299
(△720)
14,728
(△485)
12,417
(33)
3,743
(△21)
2,907
(△177)
経常利益19,993
(10,058)
12,319
(7,993)
4,875
(1,012)
880
(335)
1,702
(587)
中間純利益16,284
(7,598)
10,497
(6,062)
3,598
(727)
555
(70)
1,394
(637)
(参考)業務純益28,076
(4,141)
16,429
(3,163)
7,328
(824)
1,784
(227)
2,196
(△158)
(注)
上段は平成22年度中間期計数、下段( )内は対前中間期比増減額。