1.当中間期決算の背景

(1)当中間期中の経理基準の変更

 当中間期の期首以後に行われる会計上の変更および過去の誤謬の訂正から、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号平成21年12月4日)および「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号平成21年12月4日)が適用されるとともに、同基準および同適用指針を踏まえて改正が行われた「金融商品会計に関する実務指針」(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号)にもとづいて、「貸倒引当金戻入益」および「償却債権取立益」の計上区分は、「特別利益」から「その他経常収益」に変更されている。

 

(2)当中間期中の金融情勢

 平成23年度中間期の金融情勢をみると、短期金利については、日銀による潤沢な資金供給のもと、総じて低利で安定的に推移した。無担保コールレート(オーバーナイト物)は、日銀の誘導目標が0~0.1%程度であるなかで、期中を通じて0.1%を下回る水準で概ね横ばい圏内で推移した。一方、長期金利(10年物国債利回り)は、国債増発への警戒感等から上昇し、4月上旬には1.3%を超えた。しかし、同警戒感が後退し、米国の長期金利も低下するなかで低下基調となり、8月中旬には1.0%を割り込み、中間期末にかけては1.0%前後で推移した。

 株価(日経平均)は、東日本大震災の影響を受けて6月末までは9,500円前後で推移したものの、米国株価が堅調であること等から上昇し、7月には10,000円台を回復した。しかし、8月に入り、米国経済の減速懸念や欧州の信用不安を受けて米欧の株価が下落するなか、為替が円高方向で推移したこと等を受けて下落し、9月下旬には一時8,500円を下回った。その後、いくぶん持ち直し、中間期末の株価は8,700円29銭となった(23年3月末は9,755円10銭)。

 外国為替市場では、円の対ドル相場は、4月上旬に一時的に円安に振れたものの、その後は円高基調となり、7月上旬までは80円前後で推移した。その後、米国経済の減速懸念から米国金利が低下したこと等を受けて円高が進み、8月初旬の為替介入の実施を契機として一旦は円安方向に転じたものの、8月中旬にかけて再び上昇し、その後は76~77円台での推移となり、中間期末の為替相場は、1ドル=76円70銭となった(23年3月末は82円84銭)。

図1 国内主要金利等の推移

図2 海外主要金利等の推移

担当:福田

 

2.概況

(以下は、銀行単体をベースに取りまとめたものである。)

 全国銀行119行の平成23年度中間期決算をみると、資金運用益(算式は後掲(注)参照)は、4兆735億円(前中間期比1,202億円、2.9%減)と前中間期に引続き減益となった。

 経常利益は、資金運用益が減益となり、株価の下落を受けて株式等償却が増加したものの、国債等債券の関係収益が引続き好調であったなかで、企業倒産が低水準で推移したことによる与信関係費用の減少等により、2兆53億円(同60億円、0.3%増)と3中間期連続の増益となった。

 中間純利益は、経常利益が増益となったものの、法人税、住民税及び事業税が増加したこと等から、1兆3,751億円(同2,532億円、15.6%減)と3中間期ぶりに減益となった。業容面では、預金は期中0.4%減、貸出金は同0.1%増となった。

 

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、4兆735億円(前中間期比1,202億円、2.9%減)と前中間期に引続き減益となった。内訳をみると、資金運用収益は4兆9,611億円(同2,471億円、4.7%減)、資金調達費用は8,876億円(同1,268億円、12.5%減)といずれも減少し、収益の減少が費用の減少を上回ったことから、資金運用益は減益となった。
 国内業務部門では、収益は、日銀の金融緩和政策を受けて貸出金利が低下し、貸出金利息が減少したことを主因として、減少した。一方、費用は、預金残高(平残)は増加したものの、預金金利の低下により預金利息および譲渡性預金利息が大幅に減少したこと等から、全体でも減少した。以上のように、収益・費用ともに減少したものの、収益の減少が費用の減少を上回ったことから、国内業務部門の資金運用益は前中間期比817億円の減益となった。また、国際業務部門では、収益は、アジア等を中心に貸出金残高(平残)が増加したことにより貸出金利息が増加し、預け金利息も増加したものの、金利スワップ受入利息が減少したこと等から、全体では減少した。一方、費用は、その他の支払利息および金利スワップ支払利息が増加したほか、預金残高(平残)の増加を受けて預金利息が増加したこと等から、全体でも増加した。以上のように、収益は減少し、費用が増加したことから、国際業務部門の資金運用益は前中間期比361億円の減益となった。
役務取引等収益・費用
 役務取引等収益・費用は、国内業務部門では役務取引等収支の収益超過額は減少したものの、海外の融資関連手数料の増加を主因として国際業務部門では役務取引等収支の収益超過額が増加したこと等から、全体の収益超過額は8,148億円(前中間期比1億円、0.0%増)と概ね横ばいとなった。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国内業務部門および国際業務部門の特定取引収支の収益超過額がともに減少したことにより、全体の収益超過額は2,183億円(前中間期比1,291億円、37.2%減)と大幅に減少した。
その他業務収益・費用
 その他業務収益・費用は、国債等債券関係損益は、前中間期比減少したものの債券市場金利の低下を受けて引続き堅調となったほか、外国為替売買損益が損失超過から収益超過に転じたことに加え、バンキング勘定における金融派生商品損益の損失超過額も減少したことから、全体の収益超過額は6,238億円(前中間期比587億円、10.4%増)と増加した。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益は、株価の下落に伴う株式等償却が増加したことから、損失超過幅が増加した。一方、企業倒産件数の減少により、個別貸倒引当金繰入額および貸出金償却が大幅に減少したほか、今期から新たな会計基準の適用を受けて、貸倒引当金戻入益および償却債権取立益の計上区分が特別利益からその他経常収益に変更された。以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は4,390億円(前中間期は6,202億円の損失超過)と減少した。
信託報酬
 信託報酬は、年金信託、投資信託等の時価ベースの受託資産残高が減少したこと等から、1,253億円(前中間期比32億円、2.5%減)と減少した。
営業経費
 営業経費は、人件費は増加したものの、物件費および税金が減少したことから、全体では3兆4,114億円(前中間期比186億円、0.5%減)となった。
経常利益・中間純利益
 以上の結果、経常収益は7兆9,471億円(前中間期比1,819億円、2.2%減)、経常費用は5兆9,417億円(同1,879億円、3.1%減)となり、経常利益は2兆53億円(同60億円、0.3%増)と3中間期連続の増益となった(増益72行、黒字転換3行、減益43行、損失1行)。
 中間純利益は、経常利益が増益となったものの、法人税、住民税及び事業税が増加したことから、1兆3,751億円(前中間期比2,532億円、15.6%減)と3中間期ぶりに減益に転じた(増益58行、黒字転換2行、減益57行、純損失2行)。
 参考までに業務純益をみると、2兆6,223億円(前中間期比1,853億円、6.6%減)と3中間期ぶりに減益に転じた。また、一般貸倒引当金純繰入額を除いた実質業務純益は2兆5,965億円(前中間期比1,838億円、6.6%減)と3中間期ぶりに減益に転じた。
 なお、全国銀行の業態別の損益状況は表のとおりである。
利回り・利鞘(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前中間期比0.09%ポイント低下して1.61%、有価証券利回りは同0.07%ポイント低下して0.75%、コールローン等利回りは同0.04%ポイント低下して0.54%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.11%ポイント低下して1.24%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りが同0.05%ポイント低下して0.11%、コールマネー等利回りは同0.03%低下して0.47%、経費率は同0.02%ポイント低下して1.00%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.09%ポイント低下して1.05%となった。
 以上の結果、預貸金利鞘は同0.01%ポイント縮小して0.51%、総資金利鞘は同0.02%ポイント縮小して0.19%となった。

 

資金調達

 預金は、期中、国内業務部門では、定期性預金は増加したものの、流動性預金は減少したことから、全体では減少(0.7%減)となり、国際業務部門では、定期性預金の増加を主因として、全体では増加(4.3%増)した。この結果、預金全体では、601兆6,147億円(前期末比2兆2,788億円、0.4%減)と減少した。

 譲渡性預金は、国内業務部門の増加を主因として、45兆5,079億円(同3兆9,393億円、9.5%増)と増加した。

 債券は、利付金融債の減少を主因として、6,094億円(同7,488億円、55.1%減)と大幅に減少した。

 

資金運用

 貸出金は、期中、国内業務部門では減少(0.3%減)したものの、国際業務部門では増加(4.4%増)したことから、貸出金全体では、447兆3,140億円(前期末比3,288億円、0.1%増)と概ね横ばいとなった。

 有価証券は、期中、株式および外国証券は減少したものの、国債が増加したこと等から、全体では262兆372億円(前期末比4兆5,196億円、1.8%増)と増加した。

 リスク管理債権(銀行勘定の単体ベース)は、破綻先債権額は6,558億円(前期末比798億円、10.9%減)、延滞債権額は8兆446億円(同974億円、1.2%増)、3カ月以上延滞債権額は1,647億円(同551億円、25.1%減)、貸出条件緩和債権額は2兆3,623億円(同990億円、4.4%増)となった。以上の結果、リスク管理債権の合計は、11兆2,276億円(同614億円、0.5%増)となり、貸出金総額に占める割合は、前期末に比べて0.01%ポイント上昇して、2.51%となった。

 また、金融再生法第7条にもとづき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆1,677億円(前期末比1,949億円、8.3%減)、危険債権が6兆7,998億円(同1,930億円、2.9%増)、要管理債権が2兆5,272億円(同439億円、1.8%増)、正常債権が462兆9,409億円(同2,905億円、0.1%減)となった。

 資本金は、11兆7,116億円(前期末比326億円、0.3%増)と増加した。純資産の部合計では、株価の下落に伴いその他有価証券評価差額金の評価差益は減少したものの、利益剰余金が増加したことから、40兆1,148億円(前期末比4,546億円、1.1%増)となった。

 なお、繰延税金資産(純額)は、2兆7,069億円(前期末比3,521億円、11.5%減)となった。

担当:井出野

(注)

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務純益=資金運用益+役務取引等収支+特定取引収支+その他業務収支+信託報酬-一般貸倒引当金繰入額-債券費-経費-金銭の信託運用見合費用
  • 国内業務=国内店の円建取引
  • 国際業務=国内店の外貨建取引+海外店の取引(円建対非居住者取引とオフショア勘定は国際業務に含む)

 

図3 全国銀行の経常利益・資金運用益の推移

 

表 経常利益の内訳(業態別) (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益40,735
(△1,202)
17,397
(△721)
15,976
(△280)
4,680
(△100)
2,174
(△15)
役務取引等収支8,148
(1)
4,973
(140)
1,912
(△53)
320
(△5)
870
(△86)
特定取引収支2,183
(△1,291)
1,907
(△1,264)
17
(△7)

(-)
155
(△13)
その他業務収支6,238
(587)
4,423
(828)
957
(△138)
316
(△39)
549
(161)
その他経常収支△4,390
(1,813)
△2,558
(253)
△1,083
(969)
△481
(356)
△349
(△118)
信託報酬1,253
(△32)
129
(△13)
3
(0)

(-)
1,120
(△19)
営業経費34,114
(△186)
14,669
(△59)
12,367
(△50)
3,755
(12)
2,848
(△59)
経常利益20,053
(60)
11,602
(△717)
5,415
(541)
1,079
(200)
1,671
(△31)
中間純利益13,751
(△2,532)
8,192
(△2,305)
3,429
(△169)
718
(163)
1,140
(△253)
(参考)業務純益26,223
(△1,853)
15,014
(△1,415)
6,907
(△421)
1,754
(△30)
2,312
(116)
(注)
上段は平成23年度中間期計数、下段( )内は対前中間期比増減額。