地方銀行 (特定取引勘定設置銀行12行)

 地方銀行の平成23年度決算をみると、資金運用益は、収益、費用ともに減少したものの、貸出金利の低下を受けて貸出金利息が減少したこと等により、収益の減少が費用の減少を上回ったことから、全体では、3年連続の減益となった。
 経常利益は、与信関係費用の減少等を受けて1兆252億円(前年度比1,654億円、19.2%増)の増益となった。当期純利益は、法人税の引下げに伴う繰延税金資産の取崩しにより法人税等調整額(費用)が増加したものの、経常利益の増益に加え、前年度の東日本大震災による特別損失の剥落により、5,795億円(同367億円、6.8%増)の増益となった。
 業容面(末残)をみると、預金は前年度末比3.9%増、貸出金は同2.7%増となった。

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、3兆1,798億円(前年度比556億円、1.7%減)の減益となった。
 資金運用収益をみると、資金運用収益の大半を占める貸出金利息は、貸出金残高(平残)が増加したものの、金利低下の影響を大きく受けて2兆6,970億円(前年度比1,112億円、4.0%減)と減少した。また、有価証券利息配当金が債券市場金利の低下により7,444億円(同121億円、1.6%減)と減少し、全体では、3兆4,888億円(同1,181億円、3.3%減)と減少した。
 資金調達費用をみると、預金利息は、預金残高(平残)が増加したものの、金利の低下により1,944億円(前年度比658億円、25.3%減)と減少するとともに、譲渡性預金利息も102億円(同18億円、15.3%減)と減少した。この結果、全体では、3,089億円(同625億円、16.8%減)と減少した。
役務取引等収益・費用
 その他の役務収支が増加したものの、為替手数料収支が減少したことから、全体の収益超過額は3,780億円(前年度比23億円、0.6%減)と減少した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、特定金融派生商品収益等が減少したことから、全体の収益超過額は41億円(前年度比3億円、7.1%減)と減少した。
その他業務収益・費用
 国債等債券売却損は減少したものの、国債等債券売却益がそれを上回って減少し、国債等債券関係損益の収益超過額が減少した結果、全体の収益超過額は、1,534億円(前年度比43億円、2.7%減)となった。
その他経常収益・費用
 株式等償却は減少したものの、株式等売却損が増加し、株式等売却益が減少したことから、株式等関係損益の損失超過額は876億円(前年度は700億円の損失超過)と増加した。一方、一般貸倒引当金純繰入額が戻入超過となり、個別貸倒引当金純繰入額も減少したことから、貸倒引当金繰入額は1,455億円(前年度比1,259億円、46.4%減)と減少し、貸出金償却も793億円(同280億円、26.1%減)と減少した。加えて、今期から新たな会計基準の適用を受けて、貸倒引当金戻入益(383億円)および償却債権取立益(442億円)の計上区分が特別利益からその他経常収益に変更された。以上の結果、その他経常収支の損失超過額は2,344億円(前年度は4,520億円の損失超過)と減少した。
営業経費
 物件費、税金および人件費がいずれも減少したことから、2兆4,564億円(前年度比101億円、0.4%減)となった。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は4兆6,330億円(前年度比437億円、0.9%減)、経常費用は3兆6,077億円(同2,091億円、5.5%減)となり、経常利益は1兆252億円(同1,654億円、19.2%増)の増益となった(増益46行、減益16行、経常損失1行)。当期純利益は、法人税の引下げに伴う繰延税金資産の取崩しにより法人税等調整額(費用)が増加したものの、経常利益の増益に加え、前年度の東日本大震災による特別損失の剥落により、5,795億円(同367億円、6.8%増)の増益となった(増益32行、黒字転換2行、減益28行、当期損失1行)。
 なお、業務純益は、1兆3,616億円(前年度比203億円、1.5%減)の減益となった(増益30行、減益33行)。また、国内業務粗利益は3兆5,471億円(同690億円、1.9%減)となり、国際業務粗利益は1,698億円(同66億円、4.1%増)となった。

 

利回り・利鞘(国内業務部門)

 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.11%ポイント低下して1.72%、有価証券利回りは同0.08%ポイント低下して1.03%、コールローン等利回りは同0.01%ポイント低下して0.17%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.11%ポイント低下して1.45%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.03%ポイント低下して0.09%、コールマネー等利回りは同0.01%ポイント低下して1.30%となった。また、経費率は、同0.04%ポイント低下して1.06%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.08%ポイント低下して1.16%となった。
 以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.03%ポイント縮小して0.29%となった。

 

資金調達

 預金は、普通預金を中心に増加したことから、末残で220兆9,917億円(前年度末比8兆2,873億円、3.9%増)と増加した。また、平残では214兆3,642億円(前年度比7兆4,689億円、3.6%増)と増加した。
 譲渡性預金は、末残で7兆7,867億円(前年度末比1兆6,854億円、27.6%増)となった。また、平残では8兆1,036億円(前年度比6,550億円、8.8%増)と増加した。

 

資金運用

 貸出金は、国内業務部門において地方公共団体向け貸出および住宅ローンを中心に増加したことから、末残で161兆9,739億円(前年度末比4兆2,912億円、2.7%増)と増加した。また、平残では157兆5,018億円(前年度比3兆4,323億円、2.2%増)と増加した。
 銀行勘定のリスク管理債権は、破綻先債権額は2,383億円(前年度末比1,071億円、31.0%減)となり、延滞債権額は3兆7,680億円(同601億円、1.6%増)、3カ月以上延滞債権額は337億円(同123億円、26.8%減)、貸出条件緩和債権額は8,803億円(同1,608億円、22.3%増)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は、4兆9,205億円(同1,015億円、2.1%増)となり、貸出金総額に占める割合は、前年度末に比べて0.02%ポイント低下して、3.04%となった。
 金融再生法第7条にもとづき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容(信託勘定の計数は除く。)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権は9,643億円(前年度末比1,956億円、16.9%減)、危険債権は3兆819億円(同1,437億円、4.9%増)、要管理債権額は9,140億円(同1,484億円、19.4%増)、正常債権は159兆4,409億円(同4兆791億円、2.6%増)となった。
 有価証券は、国債等が増加したことから、末残で71兆846億円(前年度末比5兆5,638億円、8.5%増)となった。平残でも、67兆7,879億円(前年度比4兆3,546億円、6.9%増)と増加した。

 

自己資本

 資本金は、期中に1行で増資が行われたことから、2兆5,513億円(前年度末比275億円、1.1%増)となった。また、その他有価証券評価差額金が1兆1,039億円の評価差益(同3,317億円、42.9%増)と増加したこと等から、純資産の部合計は、13兆365億円となった。

 

[担当:大峰]