〔以下は、都市銀行6行(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)42行、信託銀行6行(三菱UFJ信託、みずほ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、中央三井アセット信託)、新生銀行、あおぞら銀行の120行ベースで算出、分析したものである。〕

経理基準の主な変更

  1. 当期の期首以後に行われる会計上の変更および過去の誤謬の訂正から、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号平成21年12月4日)および「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第24号平成21年12月4日)が適用されるとともに、同基準および同適用指針を踏まえて改正が行われた「金融商品会計に関する実務指針」(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号)にもとづいて、「貸倒引当金戻入益」および「償却債権取立益」の計上区分は、「特別利益」から「その他経常収益」に変更されている。
  2. 「経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律」(平成23年法律第114号)および「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(平成23年法律第117号)が平成23年12月2日に公布・施行され、平成24年4月1日以後に開始する事業年度の所得金額に対する法人税の税率が現行の30%から25.5%に引き下げられるとともに、復興特別法人税の創設により平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度において、各課税事業年度の基準法人税額に10%の税率を乗じて復興特別法人税額が計算・課税される。このため、平成24年4月1日以後開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異等に係る繰延税金資産および繰延税金負債の計算に用いる法定実効税率が変更されている。
    また、欠損金の繰越控除制度について、平成20年4月1日以後に終了した事業年度において生じた欠損金の繰越期間が7年から9年に延長されるとともに、平成24年4月1日以後に開始する事業年度の所得金額に対する控除限度額が繰越控除前の所得金額の80%に制限されている。

概況

 (以下は、銀行単体の決算を取りまとめたものである。)
 全国銀行120行の平成23年度決算をみると、資金運用益は、国際業務部門は前年度比横ばいとなったものの、国内業務部門では減少したことから、8兆1,569億円(前年度比1,925億円、2.3%減)の減益となった。また、各種手数料等の受払収支を示す役務取引等収支の収益超過額は、1兆7,072億円(同406億円、2.4%増)と増加した。
 経常利益は、以上に加えて、与信関係費用が減少したほか、国債等債券関係損益の収益超過額が増加したこと等から、3兆8,173億円(前年度比5,562億円、17.1%増)の増益となった。
 当期純利益は、税金費用が増加したことから、2兆4,812億円(前年度比272億円、1.1%減)の減益となった。
 なお、参考までに業務純益をみると、一般貸倒引当金純繰入額が繰入から戻入に転じたこと等から、5兆332億円(前年度比860億円、1.7%増)の増益となった。
 業容面(末残)は、預金が前年度末比2.1%の増加、貸出金は同2.5%の増加、有価証券は同8.2%の増加となった。

 

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、8兆1,569億円(前年度比1,925億円、2.3%減)と、前年度に比べ減少した。
 資金運用収益は、9兆9,347億円(前年度比3,429億円、3.3%減)と減少した。国内業務部門では、日銀の金融緩和政策を受けて、貸出金利が年度を通じて低下し、貸出金利息が減少したことを主因として、全体では前年度比4.7%の減少となった。また、国際業務部門では、金利スワップ受入利息は減少したものの、貸出金残高(平残)の増加により貸出金利息が増加したこと等から、全体では同4.8%の増加となった。
 資金調達費用は、1兆7,778億円(前年度比1,504億円、7.8%減)と減少した。国内業務部門では、預金残高(平残)は増加したものの、預金金利が低下し、預金利息が減少したことを主因として、全体では前年度比17.8%の減少となった。また、国際業務部門では、その他の支払利息および金利スワップ支払利息が増加したほか、預金残高(平残)の増加により預金利息が増加したこと等から、全体では同10.6%の増加となった。
 資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では前年度比1,921億円(2.6%)減少し、国際業務部門では同4億円(0.0%)減少したことから、全体では同1,925億円(2.3%)減少した。
役務取引等収益・費用
 各種手数料等の受払収支をみると、国内業務部門では前年度比横ばいとなったものの、国際業務部門では、海外の融資関連手数料が増加したこと等から、全体の収益超過額は1兆7,072億円(前年度比406億円、2.4%増)となった。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国際業務部門の収益超過額が減少したことを主因として、全体の収益超過額は3,014億円(前年度比1,470億円、32.8%減)となった。
その他業務収益・費用
 外国為替売買損益の収益超過額が大幅に増加したほか、国際業務部門における国債等債券関係損益の収益超過額が増加したこと等から、全体の収益超過額は1兆647億円(前年度比2,377億円、28.7%増)と増加した。
信託報酬
 信託報酬は、2,467億円(前年度比123億円、4.7%減)と減少した。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益の損失超過額が減少したほか、一般貸倒引当金純繰入額が繰入から戻入に転じたことにより貸倒引当金繰入額(前年度比1,891億円減)が減少するとともに、貸出金償却(同1,690億円減)も減少した。また、今期から新たな会計基準の適用を受けて、貸倒引当金戻入益(1,291億円)および償却債権取立益(1,775億円)の計上区分が特別利益からその他経常収益に変更された。以上の結果、その他経常収支の損失超過額は8,044億円と、前年度に比べて大幅に減少した(前年度は1兆4,543億円の損失超過)。
営業経費
 営業経費は、物件費および税金は減少したものの、人件費が増加したことから、6兆8,552億円(前年度比201億円、0.3%増)と増加した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は15兆4,372億円(前年度比682億円、0.4%減)、経常費用は11兆6,198億円(同6,244億円、5.1%減)となり、経常利益は3兆8,173億円(同5,562億円、17.1%増)の増益となった(増益81行、黒字転換2行、減益33行、経常損失3行)。また、法人税等を控除した当期純利益は、法人税等の増加に加え、法人税の引下げを受けて繰延税金資産の取崩しが行われたことにより法人税等調整額(費用)が増加したこと等から、2兆4,812億円(同272億円、1.1%減)の減益となった(増益59行、黒字転換7行、減益49行、当期純損失4行)。
 なお、参考までに業務純益をみると、資金運用益は減益となり、特定取引収支の収益超過額は減少したものの、外国為替売買損益が大幅な収益超過となったほか、一般貸倒引当金純繰入額が繰入から戻入に転じたこと等から、5兆332億円(前年度比860億円、1.7%増)の増益となった(増益57行、減益60行、赤字2行)。

 

利回り・利鞘(国内業務部門)

 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.10%ポイント低下して1.59%、有価証券利回りは同0.07%ポイント低下して0.73%、コールローン等利回りは同0.04%ポイント低下して0.54%となった。以上に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは、同0.11%ポイント低下して1.22%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.04%ポイント低下して0.10%(預金利回りは0.10%)、コールマネー等利回りは同0.03%ポイント低下して0.46%(コールマネー利回りは0.46%)となった。また、経費率は同0.02%ポイント低下して1.00%となった。以上に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は同0.08%ポイント低下して1.04%となった。
 以上のように、資金運用利回りの低下幅が資金調達原価のそれを上回ったことから、総資金利鞘は前年度比0.03%ポイント縮小して0.18%となった。なお、預貸金利鞘は、貸出金利回りの低下幅が預金債券等原価のそれを上回ったことから、同0.04%ポイント縮小して0.49%となった。

 

資金調達

 預金は、国内業務部門では、預金金利の低下や安全資産の選好等により、定期預金は減少し、流動性預金は増加した。一方、国際業務部門では、定期預金、外貨預金ともに増加した。この結果、末残では616兆7,119億円(前年度末比12兆8,185億円、2.1%増)となった。また、平残では599兆8,281億円(前年度比19兆1,570億円、3.3%増)となった。
 譲渡性預金は、国際業務部門における増加を主因に末残では48兆2,796億円(前年度末比6兆7,109億円、16.1%増)となり、平残では、47兆5,830億円(前年度比1兆9,012億円、4.2%増)となった。
 債券は、末残では5,199億円(前年度末比8,383億円、61.7%減)となり、平残では6,615億円(前年度比1兆2,682億円、65.7%減)となった。

 

資金運用

 貸出金は、国際業務部門で増加したことを主因として、全体では、末残で458兆2,542億円(前年度末比11兆2,690億円、2.5%増)となった。また、平残では446兆5,505億円(前年度比6兆7,948億円、1.5%増)となった。
 ここで、不良債権の状況として、銀行勘定のリスク管理債権額をみると、破綻先債権額は5,330億円(前年度末比2,026億円、27.5%減)、延滞債権額は8兆2,702億円(同3,230億円、4.1%増)、3カ月以上延滞債権額は1,469億円(同729億円、33.2%減)、貸出条件緩和債権額は2兆4,960億円(同2,327億円、10.3%増)であった。この結果、リスク管理債権額の総額は、11兆4,463億円(同2,801億円、2.5%増)となったものの、貸出金総額に占める比率は、貸出金総額が増加したことから、前年度比横這いの2.50%となった。
 また、金融再生法第7条にもとづき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が1兆9,586億円(前年度末比4,040億円、17.1%減)、危険債権が7兆1,341億円(同5,273億円、8.0%増)、要管理債権が2兆6,430億円(同1,597億円、6.4%増)、正常債権が474兆7,459億円(同11兆5,144億円、2.5%増)であった。
 有価証券は、国債が増加したこと等から、末残で278兆6,521億円(前年度末比21兆1,346億円、8.2%増)となった。また、平残では260兆3,972億円(前年度比19兆1,653億円、7.9%増)となった。

 

自己資本

 当期中、地方銀行1行、第二地銀協地銀2行が増資を行い、信託銀行1行で転換社債型新株予約権付社債等の転換が行われた。この結果、資本金は11兆7,222億円(前年度末比431億円、0.4%増)となった。また、その他有価証券評価差額金が2兆609億円の評価差益(同9,523億円、85.9%増)となったこと等から、純資産の部合計は、42兆1,121億円となった。

 

[担当:竹内]

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
(表)経常利益の内訳(業態別)  (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益81,569
(△1,925)
35,104
(△970)
31,798
(△556)
9,314
(△158)
4,227
(△252)
役務取引等収支17,072
(406)
10,586
(467)
3,780
(△23)
680
(27)
1,877
(△73)
特定取引収支3,014
(△1,470)
2,447
(△1,538)
41
(△3)

(-)
327
(69)
その他業務収支10,647
(2,377)
7,516
(2,284)
1,534
(△43)
514
(△67)
966
(368)
その他経常収支△8,044
(6,499)
△3,948
(3,044)
△2,344
(2,176)
△961
(751)
△804
(153)
信託報酬2,467
(△123)
252
(△30)
7
(1)

(-)
2,208
(△94)
営業経費68,552
(201)
29,745
(296)
24,564
(△101)
7,474
(40)
5,740
(△47)
経常利益38,173
(5,562)
22,212
(2,960)
10,252
(1,654)
2,072
(514)
3,061
(218)
当期純利益24,812
(△272)
15,673
(△550)
5,795
(367)
1,118
(366)
1,636
(△616)
参考:業務純益50,332
(860)
28,111
(820)
13,616
(△203)
3,456
(△36)
4,472
(173)
(注)
上段は平成23年度計数、下段( )内は前年度比増減額。