信託銀行 (特定取引勘定設置銀行5行)

 信託銀行の平成23年度決算をみると、資金運用益は、国内業務部門では増益となったものの、国際業務部門において減益となったことから、4,227億円(前年度比252億円、5.6%減)の減益となった。
 経常利益は、資金運用益が減益となったものの、国際業務部門において、国債等債券関係損益の収益超過額が大幅に増加したこと等から、3,061億円(前年度比218億円、7.7%増)の増益となった。また、当期純利益は、経常利益が増益となったものの、法人税の引下げに伴う繰延税金資産の取崩しにより法人税等調整額(費用)が増加したことから、1,636億円(同616億円、27.4%減)の減益となった。
 業容面(末残)をみると、預金は前年度末比0.6%減となった。信託勘定については、投資信託、年金信託および金銭信託以外の金銭の信託等が減少したものの、有価証券の信託、金銭信託および金銭債権の信託等が増加したことから、同1.3%増となった。また、貸出金は、銀行勘定は同0.8%減、信託勘定は同36.7%減となった。

損益状況

信託報酬
 信託報酬は2,208億円(前年度比94億円、4.1%減)と減少した。
資金運用益
 資金運用収益は6,730億円(前年度比249億円、3.6%減)、資金調達費用は2,503億円(同3億円、0.1%増)と、資金運用収益が減少するとともに、資金調達費用が増加したことから、資金運用益は4,227億円(同252億円、5.6%減)の減益となった。
 国内業務部門をみると、資金運用収益は、有価証券(平残)の増加を主因に有価証券利息配当金が増加したものの、日銀の金融緩和政策を受けて年度を通じて貸出金利が低下したことから、貸出金利息が減少したほか、金利スワップ受入利息も減少したことから、全体では5,056億円(前年度比314億円、5.9%減)と減少した。一方、資金調達費用は、預金金利の低下により預金利息が減少したほか、金利スワップ支払利息も減少したこと等から、全体では1,662億円(同327億円、16.4%減)と減少した。この結果、資金運用益は、3,394億円(同13億円、0.4%増)の増益となった。
 国際業務部門をみると、資金運用収益は、債券市場金利の低下を主因に有価証券利息配当金が減少し、金利スワップ受入利息も減少したものの、貸出金残高(平残)の大幅な増加により貸出金利息が増加するとともに、預け金利息も増加したこと等から、全体では1,818億円(前年度比59億円、3.4%増)となった。一方、資金調達費用は、金利スワップ支払利息および譲渡性預金利息が大幅に増加したことを主因として、全体では985億円(同324億円、49.1%増)となった。この結果、資金運用益は、833億円(同265億円、24.1%減)の減益となった。
役務取引等収益・費用
 各種手数料等の減少により、その他の役務収支の収益超過額が減少したことから、全体の収益超過額は1,877億円(前年度比73億円、3.7%減)と減少した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国内業務部門において収益超過額が増加し、国際業務部門において損失超過から収益超過に転じたことから、全体の収益超過額は327億円(前年度比69億円、26.6%増)と増加した。
その他業務収益・費用
 国際業務部門において、国債等債券関係損益の収益超過額が大幅に増加したこと等から、全体の収益超過額は966億円(前年度比368億円、61.5%増)と大幅に増加した。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益は、株式等売却益が減少するとともに、株式等売却損および株式等償却が増加したことから、604億円の損失超過(前年度は354億円の損失超過)と損失超過額が増加した。貸倒引当金繰入額は、210億円(前年度比137億円、187.9%増)と大幅に増加したものの、貸出金償却は25億円(同216億円、89.5%減)と大幅に減少した。また、今期から新たな会計基準の適用を受けて、貸倒引当金戻入益(22億円)および償却債権取立益(177億円)の計上区分が特別利益からその他経常収益に変更された。この結果、その他経常収支の損失超過額は804億円(前年度は958億円の損失超過)と減少した。
営業経費
 営業経費は、人件費および税金は増加したものの、物件費が減少したことから、5,740億円(前年度比47億円、0.8%減)と減少した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は1兆4,804億円(前年度比7億円、0.0%減)、経常費用は1兆1,742億円(同225億円、1.9%減)となったことから、経常利益は3,061億円(同218億円、7.7%増)の増益となった(増益3行、減益3行)。一方、当期純利益は、経常利益が増加したものの、法人税の引下げに伴う繰延税金資産の取崩しにより法人税等調整額(費用)が増加したことから、1,636億円(同616億円、27.4%減)の減益となった(増益2行、減益3行、当期純損失1行)。
 なお、業務純益は、4,472億円(前年度比173億円、4.0%増)の増益となった(増益2行、減益4行)。また、国内業務粗利益は7,715億円(同317億円、3.9%減)、国際業務粗利益は1,892億円(同334億円、21.5%増)となった。

 

利回り・利鞘

(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.12%ポイント低下して1.14%、有価証券利回りは同0.07%ポイント上昇して0.89%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.09%ポイント低下して1.00%となった。
 資金調達利回りをみると、預金債券等利回りは前年度比0.07%ポイント低下して0.30%、譲渡性預金利回りは同0.03%ポイント低下して0.13%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.08%ポイント低下して0.33%となった。
 以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.01%ポイント縮小して0.67%となった。
(国際業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.04%ポイント低下して1.20%、有価証券利回りは同0.19%ポイント低下して1.79%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.19%ポイント低下して1.42%となった。
 資金調達利回りをみると、預金利回りが前年度比0.02%ポイント低下して0.50%、借用金利回りは同0.07%ポイント低下して3.03%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.13%ポイント上昇して0.72%となった。
 以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.32%ポイント縮小して0.70%となった。

 

資金調達等

 預金は、末残でみると、国際業務部門(前年度末比1,842億円、11.0%増)において増加したものの、国内業務部門(同3,864億円、1.1%減)において減少したことから、全体では36兆4,226億円(同2,022億円、0.6%減)となった。平残では36兆5,292億円(前年度比1兆37億円、2.8%増)となった。
 譲渡性預金は、末残では8兆5,014億円(前年度末比1兆7,619億円、26.1%増)、平残では7兆1,250億円(前年度比1兆2,610億円、21.5%増)となった。
 また、信託勘定借は、末残では3兆1,525億円(前年度末比1,443億円、4.4%減)、平残では3兆2,398億円(前年度比2,946億円、8.3%減)となった。
 信託勘定をみると、有価証券の信託(前年度末比12.3%増)、金銭信託(同3.0%増)および金銭債権の信託(同1.7%増)は増加した。一方、投資信託(同1.5%減)、年金信託(同2.7%減)、金銭信託以外の金銭の信託(同4.9%減)および貸付信託(同42.2%減)が減少した。この結果、信託勘定の負債合計額は、313兆5,016億円(同4兆356億円、1.3%増)となった。

 

資金運用等

 貸出金は、末残でみると、国際業務部門(前年度末比31.0%増)は増加したものの、国内業務部門(同3.6%減)は企業の資金需要が低調に推移したことにより減少したことから、全体では34兆9,022億円(同2,668億円、0.8%減)となった。平残では33兆9,875億円(前年度比8,692億円、2.6%増)となった。
 一方、信託勘定(末残)をみると、貸出金は、1兆6,672億円(前年度末比9,653億円、36.7%減)となった。
 リスク管理債権の残高は、破綻先債権額は、銀行勘定で210億円(前年度末比68億円、24.3%減)、信託勘定で0億円(同0億円、18.4%減)となった。延滞債権額は、銀行勘定で1,680億円(同85億円、5.3%増)、信託勘定で307億円(同119億円、63.2%増)となった。3カ月以上延滞債権額は、銀行勘定で5億円(同2億円、25.9%減)、信託勘定で1億円(同1億円、60.8%増)となった。貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で1,105億円(同154億円、12.2%減)、信託勘定で14億円(同78億円、84.6%減)となった。この結果、リスク管理債権の総額は、銀行勘定で3,001億円(同138億円、4.4%減)、信託勘定で324億円(同42億円、14.8%増)となった(信託勘定については、いずれも元本補填契約のある信託勘定の計数)。なお、銀行勘定のリスク管理債権額の貸出金総額に占める比率は、同0.03%ポイント低下して0.86%となった。
 金融再生法第7条にもとづき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容(銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が678億円(前年度末比153億円、18.4%減)、危険債権が1,574億円(同172億円、12.3%増)、要管理債権は1,112億円(同156億円、12.3%減)、正常債権は35兆5,157億円(同2,521億円、0.7%減)と減少した。
 有価証券は、銀行勘定の末残では、株式(前年度末比7.8%減)および社債(同6.2%減)等は減少したものの、国債(同3.4%増)等は増加したことから、全体では22兆611億円(同4億円、0.0%増)と増加した。平残では21兆3,979億円(前年度比1兆4,486億円、7.3%増)となった。一方、信託勘定の末残では、株式および社債等は減少したものの、国債およびその他の証券が増加したことから、全体では59兆5,517億円(前年度末比7,264億円、1.2%増)と増加した。

 

自己資本

 資本金は、期中に1行で新株予約権の行使が行われたことから、1兆3,543億円(前年度末比1億円、0.0%増)となった。
 資本剰余金は9,029億円(前年度末比4億円、0.0%減)、利益剰余金は1兆4,009億円(同778億円、5.9%増)となった。
 以上のほか、その他有価証券評価差額金が2,239億円(前年度末比2,061億円、1,154.4%増)と大幅に増加したこと等から、純資産の部合計は3兆8,137億円となった。

[担当:藤澤]