2019年1月25日(金)9:40~11:10(3年:LHR)

兵庫県立北条高等学校 LHR 授業レポート(講師派遣授業)

 高校卒業を前に、人生とお金との関わりを自分ごととして理解を深めていくために、「社会に出て気をつけたいお金のこと」をテーマに全銀協職員による講師派遣授業が実施されました。
 この講義では、自立のために、お金を賢く管理できるようになるためのポイントを学んでいきました。

 はじめに、お金のことについてどれくらい知識を持っているのか三択クイズを通して確認していきました。

Q1.今、日本で発行されているお金の種類はいくつか
  →A1.10種類

Q2.破けて3分の2になってしまった1,000円札を銀行に持っていくと、いくらで交換してくれるか
  →A2.1,000円(3分の2以上であれば、1,000円札と交換してくれる

Q3.姫路駅周辺の一人暮らし向けアパート・マンションの家賃相場は
  →A3.57,000円

Q4.3大キャリアのスマートフォンの費用の平均はいくらか
  →A4.月7,800円

 社会に出るということは、お金を自分で稼ぎ、稼いだお金の使い方(支出)を自分で管理するということであり、本時は、自立のために、お金を賢く管理できるようになるための4つのポイントを学んでいくことが伝えられました。

1.人生に必要なお金を知ろう!

 はじめに、今年の4月、10年後にどのような生活をしていると思うか考えてもらいました。生徒からは、4月は「大学生になっている」、10年後については「結婚して田舎で静かに暮らしている」、「目指している分野で働いている」といった意見がありました。
 人生にはさまざまなライフイベントがあり、ライフイベントの実現にはお金が必要になります。そこで、大学進学、奨学金、就職活動、結婚、出産、自動車の購入に必要となる金額の目安と、人生の三大資金(子どもの教育費、住宅の購入費、老後の生活費)について確認していきました。
 住宅の購入費については、平均は3,500~4,500万円で、東京など首都圏ではマンションの価格が高騰していること、老後の生活費については、年金だけでは賄うのは難しいため、働いている現役時代から貯めておく必要があることが説明されました。
 また、教育費に関係する奨学金について、大学や専門学校に進学している半数弱の学生が利用しているとされる日本学生支援機構の制度、奨学金の種類などを確認しました。特に、返還開始から6ヶ月以上経過した時点で3ヶ月以上返還を延滞した場合は、個人信用情報機関に延滞情報として登録され、新たにローンやクレジットの契約ができなくなる可能性があることが説明されました。
 理想の人生を送るためには、ライフプランに必要な資金計画(マネープラン)を立てて、お金を準備していくことが重要であることが伝えられました。

2.働いてお金を稼ぐとは?

 日本の労働人口のうち約8割がサラリーマンという現状から、サラリーマンの初任給、正規雇用と非正規雇用それぞれの特徴、年収の違いを確認しました。

 働き方に優劣があるということではなく、収入、時間の使い方、ライフスタイルなどそれぞれの価値観によって選択していく必要がありますが、働くことでどのくらいの収入を得られるかは、基本的にはどのくらいの価値を提供できるかによりますので、社会に出るまでに「将来どのような仕事をするのか」「どのように働いていくのか」を考え、自分が提供できる価値を高めていくことが重要であると、講師から伝えられました。

3.家計管理をしよう!

 家計は収入と支出のバランスで成り立っていること、給与明細の見方を理解し、収入から税金や社会保険料を引いた残りである手取り収入(可処分所得)の範囲で家計をやりくりする必要があることが伝えられました。
 賢いお金の使い方・貯め方のポイントとして「必要なものか欲しいものかを考える習慣をつける」「価格と条件を比べる」「貯蓄をする際は給与から先取りして貯蓄をし、その残りを使えるお金として考えていく」と良いことが伝えられました。

4.いろいろな決済方法を知ろう!

 最近の買い物で現金以外での支払いについて隣同士で話し合い、発表していきました。生徒からは「図書カード」「iTunesカード」「Amazonギフトカード」などの回答がありました。こうした現金以外の決済方法について主にどのような種類があるか確認していきました。

  • プリペイドカード:プリペイドとは「前払い」という意味。コンビニで購入できる。
  • デビットカード :買い物と同時に銀行口座から代金が引き落とされるしくみ。口座に入っている金額まで支払いができる。
  • クレジットカード:買い物をした代金を後払いで支払う方法。手元や銀行口座にお金がなくても、買い物

ができる。

 そのほか、銀行振込みやコンビニでの支払いなどの決済方法も説明がありました。
 さまざまな決済方法を支払いのタイミングで分類すると一般的に下記の3つに分けられます。

  • 前払い:プリペイドカード、コンビニ支払い、銀行振込み
  • 同時払い:デビットカード、代引き
  • 後払い:クレジットカード

 ここで、「あなたにとって安心な決済方法はどれですか」と質問がありました。生徒からは「デビットカードは自分が持っているお金で支払えるので安心」、「前払いは商品が届かない可能性があるため同時払いが安心」などの意見がでました。
 講師から、「前払い」は商品の未着やサービスの未提供といったリスクがあること、「後払い」は手元に現金がない状態でも商品・サービスを購入できるため使いすぎてしまう危険性があることを踏まえて、自分にあった決済方法を賢く選択する必要があることが伝えられました。

5.クレジットカードの利用は計画的に!

 クレジットカードは後払いの決済方法で、三者間(購入者・加盟店・クレジット会社)の契約により成り立っている仕組みです。クレジットカードを利用した買い物では、商品を購入した時点で購入者はお金を支払わず、クレジット会社が加盟店に立替払いをします。そのあと、購入者がクレジットカード会社にお金を支払うことになります。
 クレジットカードによる支払い方法には、一括払い、分割払い、リボルビング払いがあります。ここで、分割払いとリボルビング払いの事例を具体的な買い物の事例で考えていきました。2月から4月の3ヶ月間にクレジットカードで18万円分の買い物をした場合、リボルビング払いで月々2万円ずつ支払った場合、何月に支払いが終了するか、3回分割払いと比較して手数料が多いのはどちらかを隣同士で話し合い考えていきました。(正解は11月(手数料は考慮しない)。手数料は支払う期間の長いリボルビング払いの方が多い)
 クレジットカードは現金をたくさん持ち歩かなくてよく、分割払いにすることで一度に支払う金額を小さくすることができるなどのメリットがある一方、使い過ぎる心配があったり、分割払いやリボルビング払いには手数料がかかったりするなどデメリットがあることを確認しました。

6.トラブルに注意しよう!

 動画 家族で防ごう!金融犯罪「ネットショッピング詐欺編」を視聴し、詐欺の疑いがあるネットショッピングサイトの特徴を確認していきました。支払方法が銀行振込みのみであったり、販売会社の住所・電話番号の記載がないような場合は詐欺の可能性が高いため注意する必要があることが伝えられました。
 最近の詐欺の手口として「訴訟最終通告のお知らせ」等と書かれた手紙が送付され、料金の未払いがあるように思わせてお金を騙し取る「架空請求詐欺」も横行しており、身に覚えのない請求には対応しないこと、など対処法が伝えられました。

 最後に担当の先生から、「自分たちの将来の生活には多くのお金がかかること、そのお金を自分でしっかり管理していくことが大切だということを学ぶことができたと思います。キャッシュレス化等社会の変化に対応していけるようになってください」と伝えられ授業は終了しました。

 4月から進学等で自立した生活をはじめる生徒たちにとって、お金との関わり方を現実的・具体的に考える機会となったようでした。