レポート

 社会科公民的分野「消費者として経済を考えよう」の2時間目の授業が実施されました。

 生活設計・マネープランゲームを活用した「30歳代の人生体験」の授業を1時間目に実施しており、本時は、人生体験の結果と考察から、自分たちが将来安心して生活していくために必要と思われる公的支援や制度について考えていく授業です。

 はじめに先生から班に分かれ、前時に記入したマネープランシートをもとに、30歳代の人生体験について話し合うよう指示が出されました。話し合いのポイントは、「収支のバランス」、「ライフイベントとお金の関係」、「家族構成とお金の関係」についてです。
 貯蓄額や家族構成、住居の種類、イベント&アクシデントの内容と費用を改めて確認しながら、気づいたことや考えたことを班でまとめていきました。
 各班の話し合いがまとまったところで、班長に発表してもらいました。

 

【各班の結果と考察】

貯蓄額
(万円)
30歳代の人生体験 気づいたこと、考えたこと
1 -1,500 働くのが1人なのに、子どもが2人だったので、収入が足りなかった。一戸建てでなく、マンションにして住居費を安くすればよかった。 先のことを考えずにお金を使ってしまったので、支出が収入を上回ってしまった。考えてお金を使わないといけないと思った。
2 -2,700 子どもが多く、賑やかで楽しい生活だったが、その分お金もかかり、借金が増えてしまった。 お金を稼ぐということが、大変なこと。
子育てには思った以上にお金がかかるので、子どもの人数も考える必要があると思った。
3 -1,900 結婚して子どもが1人、一戸建てを購入した。 贅沢な生活をしなくても、生活していくためには多くのお金がかかることが分かった。
4 -700 共働きだったが、英才教育でお金を多く使ってしまった。 限られた収入で、欲しいものを全て手に入れることは無理だと分かったので、優先順位をつけないといけないと思う。
5 -400 子ども2人にお金がかかった。あったらあるだけお金を使っていたら、足りなくなった。 収入が増えるようにしないといけないと思った。
6 1,100 3人家族だったが、家や自動車を買うときに、標準を選んで無駄にお金を使わないようにしたのがよかった。 タレントは収入が不安定なので、これからも貯蓄をしていかなくてはいけないと思った。
7 -2,100 お金が足りないと分かっているのに、家を買ったりしてしまった。 将来の生活も見越して、お金を使わないといけないと思った。

 

 各班の結果をふまえ、「ゲーム体験の結果は、実際の人生でも同じことが考えられます。生活設計やマネープランはみんなが必ず直面する問題なので、今回の経験をきっかけにして、これからの人生について考えていくようにしてください」と先生から伝えられました。

 次に、いくつかの班が「子育てには思った以上にお金がかかる」という感想を発表していたことから、「安心して子育てができる制度など、『こんな社会支援や制度があったら、自分たちが将来安心して生活できると思う』支援や制度を考えて、ワークシートに書き出してください」と先生から指示がありました。
 30歳代の人生体験から気づいたこと、考えたことのほかに、今の日本社会の問題点についても目を向けるよう先生は促しました。少子高齢化や待機児童問題、高齢者の介護問題など、これまでに授業で学んできた内容などをもとに、多角的な視点から生徒たちは考えているようでした。考えを進める中で、生徒から「所得税はみんな同じ金額ですか」という質問が出てきました。「所得税は累進課税と言われ、収入が高い人ほど所得税率も高くなり、税金による所得の低い人への再分配効果による課税の公平性を達成するための仕組みです」と先生から説明がありました。自分が納めた税金はどのように集められ、その税金はどのように使われているのかということも考えながら、安心して生活していくために必要な社会支援や制度を考えていきました。

 最後に、自分が必要と思う社会支援や制度とその理由について、何人かに発表してもらいました。

  • 子育てが安心してできるように、子どもの人数によって、税金や住宅ローンなどの負担が軽くなるような制度があるとよい。
  • 小学校や中学校は義務教育と言っても、給食費や修学旅行など多くのお金がかかっている。お金に余裕のない家も多いと思うので、義務教育期間中はお金がかからないような支援策が必要と思う。
  • 共働きしやすいように、兄弟姉妹で同じ学校に通っている場合には二人目から学費が半額など、いくつかメリットがあるようにしたらいいのではないか。
  • 高齢者の介護が問題となっているということは、今の制度では足りない部分が多いと思う。もっと介護サービスなどへの金銭的な支援が必要と思う。

 

 将来の生活を疑似体験することで、社会で生活していくことを自分ごととして捉え、自身の生活と合わせ、日本社会全体をどのようにしていくべきかを考えることができ、また、これから学ぶ「財政と国民の福祉」にもつながる視点を持つことができた授業となりました。