レポート

 社会科(公民的分野)「家計の収入と支出」の授業の一環として、生活設計・マネープランゲームを活用した授業が実施されました。
 京都市の「政治的教養を育む教育」のモデル指定校となっている当校は、数年後には主権者となる生徒たちに、社会科の経済や社会保障のしくみを理解する授業を通して、政治や未来について考えていく取組みを実施しています。カードゲーム体験を通して、社会に出てからの自分とお金との関わり方について考えていきます。

 はじめに先生から「20歳になるまであと5年ほど。みなさんは、中学校を卒業して、それぞれの進路を経て、いずれは社会に出ます。家庭を持ったり、子どもを育てたり、いろいろな物を買うことを経験していきます。」と、生徒の近い将来について話がありました。そして、この授業ではその近い将来に「どのようなこと」に「どれくらい」お金を使うのかをシミュレーションしていくことが伝えられました。

 各班にカードセットと資料集、マネープランシートが配られました。カードを箱から出し、スライドを見ながらカードを机に並べていきます。またこの時間で使わないカード(転職カード、業績カード、退職金カード)は箱に戻すよう先生から指示がありました。
 まずは先生から、20歳代になればいずれは何かの仕事に就き、収入を得ていくということが伝えられました。資料集のp10-11「キャリアカード一覧」を見て、なりたい職業を「弁護士」「医師」「公務員」「スポーツ選手」「トリマー」など班で話し合って発表しました。次に、3枚の収入カードから1枚を選び20歳代の収入を決めます。引いたカードの内容を確認し、カードに書かれている20歳代の年収から、20歳代(10年間分)の収入を計算し、マネープランシートに記入しました。また、収入カードに書いてある「仕事の特徴」について詳しく確認していきました。一般的に、収入が高い仕事(収入カード①)はその職に就くために特別な資格や能力が必要、逆に収入の低い仕事(収入カード③)は比較的誰でも就くことができることを理解しました。また、先生から思い出ポイントについて「心の豊かさのバロメーターのようなもの」という説明もなされました。
 次に、スライドの「非消費支出:自分では使えないお金」を見ながら、給与には「額面」と「手取り」があり、「額面」の給与から税金や社会保険料などの非消費支出が引かれたあとに残った「手取り」の給与が実際の収入であることが伝えられました。生徒も資料集p2の非消費支出一覧から、先ほど引いた収入カードの年収に応じた非消費支出を調べ、金額をマネープランシートに記入しました。次に、基本生活支出カードを引いて生活にかかるお金を決め、20歳代の大きな買い物として自動車の購入を検討しました。先生から、自動車を買う際のルールとして、貯蓄額がマイナスでも「自動車を買う」カード引いた班は「豪華・標準・お手ごろ」の3種類から1つを選ぶことが伝えられました。各班に「収入・支出・自動車」の結果を発表してもらい、ここまでの貯蓄額と思い出ポイントを比較して、20歳代の人生体験を終了しました。

 続いて、生徒たちにとっては今から15年後に当たる、30歳代の人生を体験していきます。
 まず、人生の中で大きな資金が必要と言われている「人生の三大資金」について、先生から説明がありました。「住宅資金」「教育資金」「老後資金」の金額や、「老後資金」の1,520万円は年金等見込まれる収入以外に自分で用意する必要がある金額であることが伝えられました。
 30歳代では、結婚、子育て、住居の購入、自動車の購入、保険の加入、イベント&アクシデントを体験します。結婚を決める場面では「結婚して働くのは二人」カードを引いた班は30歳代の収入が1.5倍になります。結婚、子育てカードを引いたところで30歳代の家族構成と年収が決まりますが、非消費支出が20歳代から変わってきます。先生から、資料集を見て「結婚しない」「結婚する・働くのは一人」「結婚する・二人とも働く」の3パターンから、家族構成と年収に応じた非消費支出の金額を探すよう指示がありました。
 次に住居の購入を決めます。その前に、大きな買い物をするときの仕組みとして「ローン」について、資料集p7を見ながら、頭金と金利の違いで最終的に支払う総額が変わることを確認しました。住居カードを引き、どの住居を購入するか、支払方法はどうするかを班で話し合いました。生徒たちは、家族構成に合わせて家を選ぼうと考えたり、家を買うことで貯蓄額がマイナスになってしまうことに気づき、賃貸に変更したりしていました。
 続いて自動車カードを引き、保険に加入するかどうか検討したところで、イベント&アクシデントカードを引きました。各班「盗難被害にあう」「宝くじ当選」など様々なイベントやアクシデントにかかるお金や保険の役割について確認しました。

 30歳代までの貯蓄額と思い出ポイントを集計したあと、各班にタブレット端末が配られ、30歳代までの結果をカメラで写すよう指示がありました。画像を大型テレビに写し、班長が結果を発表していきました。
 ある班からは「30歳代まで貯蓄ができていたが、豪華な家を買って費用がかさんでしまい、借金ができてしまった」という感想がありました。

 最後にまとめとして、先生から「社会に出たらどのようなことに気をつけて生活をしていかないといけないでしょうか」と生徒に聞きました。生徒からは「借金をしないようにする」、「買い物をするときはよく考えてから買う」などの意見が発表されました。
生徒たちは、生活設計・マネープランゲームの活動を通して、収入と支出のバランスの大切さや、人生の選択の重要性について学んだようです。