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Q&A

Q&A

※本Q&Aは、原則、LIBOR公表停止以前(2021年12月末まで)の対応を念頭に記載しています

一般的な質問事項(2022年1月時点)

LIBOR(ライボー)とはなんですか。

LIBOR(ライボー)とは、「London Interbank Offered Rate」の略称で、ロンドン市場での金融取引における銀行間取引金利のことです。

主要な5通貨(米ドル・英ポンド・スイスフラン・ユーロ・日本円)について、2021年12月末まで(米ドルLIBORの一部テナーは2023年6月末まで)公表されており、様々な金融取引における参照指標として利用されてきました。このうち日本円通貨のLIBORは「円LIBOR」と呼びます。 

なお、LIBORと同様の銀行間取引の金利指標としては、東京市場での銀行間取引金利であるTIBOR(タイボー。Tokyo Interbank Offered Rate)や、欧州市場での銀行間金利であるEURIBOR(ユリボー。Euro Interbank Offered Rate)などがあり、これらを総称して「IBORs」(アイボーズ)と呼びます。 

LIBORの恒久的な公表停止時期等について教えてください。

2021年3月5日、LIBORの監督当局である英国金融行為規制機構(FCA)は、LIBORの運営機関であるICE Benchmark Administration(IBA)が実施していたLIBORの通貨・テナー別の恒久的な公表停止時期に係る市中協議結果等を踏まえ、現行のパネル行が呈示するレートを一定の算出手法にもとづき算出するLIBOR(パネルLIBOR)については、米ドルLIBORの一部テナーを除き、2021年12月末以降直ちに公表停止とするアナウンスメントを公表しました。
本アナウンスメントは、いわゆる「トリガー」に該当するとされています。

本件については、本ページ後出の「LIBORの公表停止時期等に係る監督当局・運営機関の検討状況」の欄をご確認ください。

なお、当該アナウンスメントに沿って、米ドルLIBORの一部テナーを除き、LIBORは2021年12月末以降直ちに公表が停止されています。

擬似的なLIBOR(シンセティックLIBOR)について教えてください。

2021年3月5日、FCAは、代替金利指標への移行やフォールバック条項の導入が真に困難な既存契約(タフレガシー)に関する対応として、日本円・英ポンド・米ドルの「1か月物、3か月物、6か月物」(計9テナー)のみを対象に、法令にもとづく権限を行使して、LIBORとは算出方法等が異なる擬似的なLIBOR(シンセティックLIBOR)を一定期間に亘って継続公表するよう、LIBOR運営機関のIBAに対して求めることについて、協議・検討していく方針を表明し、市中協議等を経て、2022年1月4日から、IBAにおいて日本円・英ポンドの「1か月物、3か月物、6か月物」についてシンセティックLIBORの公表が開始されました。

本邦では、日本円金利指標に関する検討委員会において、やむを得ず移行対応が遅延するリスクや不確実性を踏まえ、いわばセーフティネットとしてシンセティック円LIBORの利用を検討し得る契約(タフレガシーを想定)や、利用する際の留意事項等について検討が進められ、2021年9月に「本邦におけるタフレガシーへの対応に関する市中協議」が実施された後、同年11月に取りまとめ報告書が公表されました。

本件については、本ページ後出の「LIBORの公表停止時期等に係る監督当局・運営機関の検討状況」および「本邦におけるタフレガシーの検討状況について」の欄をご確認ください。

LIBORの恒久的な公表停止に関連して「トリガー」という用語がありますが、どのような意味ですか。

LIBORの恒久的な公表停止に関する「トリガー」とは、フォールバック(LIBOR参照の既存契約について、LIBORの恒久的な公表停止後に参照する金利(フォールバック・レート)を、契約当事者間で公表停止前にあらかじめ合意しておく対応)の発動条件となるイベントを指しており、FCAによる2021年3月5日のアナウンスメントは、いわゆる「トリガー」に該当するとされています(下表の太字部分に該当しています)。

貸出の「トリガー」としては、下表の3種類が想定されており、グローバルな検討においては、「公表停止トリガー」および「公表停止前トリガー」を設定することが支持、推奨されています。

また、ISDAマスター契約にもとづき取引されるデリバティブの「トリガー」としては、「公表停止トリガー」および「公表停止前トリガー」が含まれています。

トリガーの種類 内容
公表停止トリガー
  • LIBOR監督当局が、LIBORの公表停止または公表停止予定を発表した場合
  • LIBOR運営機関が、LIBORの公表停止または公表停止予定を発表した場合
公表停止前トリガー
  • LIBOR監督当局が、LIBORが市場の実態を表さない旨または市場の実態を表さない予定である旨を発表した場合
早期選択トリガー
  • 客観的事情に関わらず、契約当事者の間で合意のうえ、トリガーを設定する場合

「トリガー」が発生した場合、どのような影響があるのですか。

「トリガー」が発生すると、フォールバック時にLIBORとフォールバック・レートとの差異の調整(スプレッド調整)を行う際に利用する値(スプレッド調整値)が確定することとなります。

2021年3月5日に「トリガー」が発生したことから、IBOR Fallbacks SupplementもしくはIBOR Fallbacks Protocolが適用される取引または同Supplementの効力発生後に2006 ISDA Definitionsを参照して約定された取引で利用するスプレッド調整値がすでに確定しており、Bloombergのウェブサイト(英文)より確認ができます。
なお、スプレッド調整値の適用は、個々の契約書における規定に従うこととなります。

なぜLIBORは恒久的に公表が停止することになったのですか。

2017年7月、LIBORを監督している英国金融行為規制機構(FCA)のベイリー長官(当時)は、
〔1〕LIBORを算出する際の基礎となるホールセール無担保資金市場における取引が十分に活発でないこと、
〔2〕LIBORの算出基礎となるレートを呈示するパネル行が、十分な取引の裏付けがないレートの呈示を継続することに不安を覚えていること
を理由として、2021年末以降はLIBORのパネル行に対して、レート呈示の強制権を行使しないことを表明しました。

これにより、2021年末以降にLIBORの公表が恒久的に停止する可能性が急速に高まることとなりました。

国際的に、LIBORの恒久的な公表停止に関して、どのような検討が進められてきましたか。

金融安定理事会(FSB)が、2014年7月に公表した「主要な金利指標の改革」と題する報告書の提言にもとづき、各国において既存の金利指標である銀行間取引金利(IBORs)の信頼性・頑健性の向上を図る取組みが進められました。

こうした中、各通貨について、銀行の信用リスクなどを反映しないリスク・フリー・レート(RFR)の特定が行われるとともに、日本をはじめとした複数の国においては、IBOR・RFRそれぞれの金利指標を、金融商品や取引の性質を踏まえて利用していくこと(マルチプル・レート・アプローチ)について、検討が行われてきました。

本邦において、LIBORの恒久的な公表停止に関して、どのような検討がなされてきたのですか。

LIBORの恒久的な公表停止により、例えば、LIBORを参照している貸出・債券における支払(あるいは受取)金利や、デリバティブ取引における金利の支払額の算出ができなくなることが想定されます。

本邦では2018年8月に日本銀行を事務局とする「日本円金利指標に関する検討委員会」が設立されました。検討委員会のメンバーは円金利指標に関わる金融機関、機関投資家、事業法人等の幅広い金融市場参加者および円金利指標ユーザーで構成されています。なお、各国でも同様の検討体が組成されています(例えば、米国における代替参照金利委員会(ARRC)等)。

検討委員会では、円金利指標の適切な選択と利用に関する基本的な考え方や、それを踏まえた具体的課題・対応策について整理を行い、2019年11月末にその結果の第1回取りまとめ報告書が公表されました。
その後、銀行界や証券界での検討やグローバルな進捗状況も踏まえ、2020年11月末に公表された第2回取りまとめ報告書において、円LIBORを参照するキャッシュ商品(貸出、債券等)におけるフォールバック時の具体的な取扱いに関する推奨内容や、ターム物リスク・フリー・レートの頑健性向上に向けた日本円OIS取引の活性化といった実務的な論点のほか、2021年末以降に満期を迎える円LIBORを参照するキャッシュ商品について、対応の目安となる時期等を定めた移行計画が取りまとめられました。

リスク・フリー・レート(RFR)とはなんですか。IBOR(s)との違いはなんですか。

例えば、日本円におけるリスク・フリー・レート(RFR)は、「無担保コールオーバーナイト(O/N)物レート」(TONA)と特定されていますが、RFRは金融機関が資金を調達する際の金融機関の信用リスクをほぼ含まない金利として、通貨ごとに特定されています。

日本円におけるRFRであるTONAは、銀行の信用リスクを含まないほか、翌日物である(3か月・6か月物などの期間構造を有しない)という特徴を有しており、この点で、銀行の信用リスクを含み、かつ期間構造を有しているLIBORをはじめとするIBORsとは異なります。

日本円のリスク・フリー・レート(RFR)は公表されていますか。

日本円のリスク・フリー・レート(無担保コールオーバーナイト(O/N)物レート(TONA))については、日本銀行のウェブサイトにおいて、日次ベースで公表されています。

LIBORの恒久的な公表停止による影響はLIBORを利用している商品だけに及ぶのですか。

LIBORは、貸出・債券・デリバティブといった商品における参照金利としてだけではなく、会計(ヘッジ会計等)、事務・システム(資金決済等)、インフラ(取引所(上場商品))、内部ガバナンス(リスク管理等)など、様々な制度・慣行等で利用が前提とされてきました。また、LIBORを直接参照していなくとも、円LIBORベースの東京スワップ・レート(LIBOR TSR)のように関連する指標も複数存在していたことから、これらを参照している商品にも影響が生じました。

このようにLIBORは様々な枠組みで相互依存関係にあったため、その恒久的な公表停止による影響は甚大であり、金融機関だけではなく、事業法人においても必要な対応が行われました。

LIBORの代替金利指標またはフォールバック・レートとして、過去の金利の水準がLIBORより高く推移してきているTIBORを選択した場合、リスク・フリー・レート(RFR)ベースの金利を選んだ場合より支払側は損をするのですか。

どの代替金利指標(またはフォールバック・レート)を選択した場合でも、契約当事者間のコミュニケーションを通じて、移行・フォールバック前後で金利が同程度に調整されることが前提であり、必ずしもTIBORを選択することでより多くの利息を授受することになるわけではありません。

同様に、リスク・フリー・レート(RFR)ベースの金利を選択した場合に授受する利息が減少するわけでもありません。

なお、TIBORをフォールバック・レートとして選択した際のスプレッド調整の手法については、2020年11月末に公表された「日本円金利指標に関する検討委員会」の第2回取りまとめ報告書において、経済的価値の観点からの課題を踏まえ、推奨は見送られた一方で、TIBORの利用ニーズ等を踏まえ、検討委員会傘下の貸出サブグループにおける検討結果(借入人・貸付人双方が理解・確認すべき事項や算出手法等)が公表されています。

日本円のターム物RFR金利(スワップ)は公表されていますか。

2020年7月、「日本円金利指標に関する検討委員会」が算出・公表主体として選定したQUICK社は、ターム物RFR金利(スワップ)の正式名称を「東京ターム物リスク・フリー・レート」(英語名:Tokyo Term Risk Free Rate)、略称は「TORF」(トーフ)に決定した旨を公表しました。

2021年1月、QUICK社はTORFの算出会社として「QUICKベンチマークス(QBS)」を設立し、同年4月から、TORF(確定値)の算出・公表を開始しております。
なお、QBS社は金融商品取引法で定める「特定金融指標算出者」に指定されており、TORFは同法で「金融指標であって、その信頼性が低下することにより、わが国の資本市場に重大な影響を及ぼすおそれがあるもの」と定義される「特定金融指標」となっております。

Refinitiv社が公表している、円LIBORベースの東京スワップ・レート(LIBOR TSR)のフォールバックに関する検討について教えてください。

Refinitiv社が2021年7月に公表した、円LIBORベースの東京スワップ・レート(LIBOR TSR)のフォールバックに関する市中協議結果において、他通貨のスワップレートでも採用されている手法と同様に、後継金利を計算する手法を採用する方針が示されました。
上記のフォールバックに関して、後継金利はLIBOR TSRとは異なる金利であることや、LIBOR TSRのユーザーは他の金利指標も選択可能であり、当該フォールバックを利用することが唯一の解決策ではないことなどが留意点として言及されています。
なお、LIBOR TSRは2021年12月30日で公表が終了しました。また、LIBOR TSRのフォールバックは、LIBORの公表停止と同時に利用が可能となっています。

LIBORの公表停止時期等に係る監督当局・運営機関の検討状況(2021年3月18日時点)

LIBORの公表停止時期等について、監督当局(FCA)やLIBORの運営機関(IBA)において、具体的にどのような検討が行われていますか。

2021年3月5日、FCAは、IBAによるLIBORの恒久的な公表停止時期に係る市中協議結果等を踏まえて声明(アナウンスメント)を公表し、全ての通貨・テナーの恒久的な公表停止時期等が確定しています。
本件については、以下のとおり別途Q&Aを取りまとめていますので、ご確認ください。

FCAによる公表文書等に関するQ&A(2021年3月18日時点)

本邦におけるタフレガシーの検討状況について(2022年1月時点)

シンセティック円LIBORはどのように算出されますか。

英国FCAは市中協議を通じてシンセティック円 LIBOR の算出方法を「TORF×360/365+ISDA スプレッド(過去5年中央値)」と決定し、2022年1月からIBAにより公表されています。ただし、シンセティック円 LIBORの公表期間は、2022年12月末までに限定されているほか、裏付けとなる市場および経済実態についての指標性を有しないとされていること等に留意が必要です。

本邦において、真に円LIBORからの移行が困難な既存契約(タフレガシー)とは、どのような契約ですか。

日本円金利指標に関する検討委員会の「本邦におけるタフレガシーへの対応に関する市中協議」取りまとめ報告書では、キャッシュ商品に関して、タフレガシーとしてシンセティック円LIBORの利用を検討し得る契約を特定するための考え方や要件等に関する整理が示されています。
この内、貸出契約については、「金融機関からの説明を受け、円LIBORからの移行に向けて契約当事者間で誠実に協議を実施したうえでもなお、2021年末までに事前移行または頑健なフォールバック条項の導入に関する合意ができなかった契約」がタフレガシーに該当すると整理されています。
他方、債券契約については、「法令に定められた契約変更手続き(社債権者集会の開催または全員同意の取得)により、発行体が円LIBORからの移行(事前移行または頑健なフォールバック条項の導入)に取り組んだものの、2021年末までに法令上必要な同意等を得られず、円LIBORからの移行を完了することができなかった契約」がタフレガシーに該当すると整理されています。
取りまとめ報告書では、タフレガシーとしてシンセティック円LIBORの利用を検討し得る契約について、基本的な考え方等の詳細が整理されていますので、ご参照ください。

本邦において、シンセティック円LIBORの利用を検討する際に、個々の契約当事者に求められることは何ですか。

日本円金利指標に関する検討委員会の「本邦におけるタフレガシーへの対応に関する市中協議」取りまとめ報告書によると、シンセティック円LIBORの利用を検討する際、本邦においては、特定の金利指標の利用を規制する法令は存在しないため、個々の契約当事者が、タフレガシーとして特定し、シンセティック円LIBORを利用するか否かを、契約の内容や当事者の意向にもとづき、また、(別途取りまとめ報告書に記載された)留意事項等も考慮して、判断する必要があることが示されています。

詳細は、同取りまとめ報告書をご参照ください。

本邦において、シンセティック円LIBORを利用する際の留意事項は何ですか。

日本円金利指標に関する検討委員会の「本邦におけるタフレガシーへの対応に関する市中協議」取りまとめ報告書によると、シンセティック円LIBORを利用する際に留意すべき事項として、主に以下の整理が示されています。

〔1〕係争リスク:パネル円LIBORとシンセティック円LIBORを参照する契約では経済価値が変わり得るため、契約当事者の合意がないまま、シンセティック円LIBORを利用した場合には、係争リスクがあること。
〔2〕契約当事者間の認識共有:シンセティック円LIBOR利用の係争リスク低減のため、合意に至らないまでも、契約当事者間で認識を共有する方策を講じることが考えられること。
〔3〕契約内容に応じた対応等:シンセティック円LIBORの利用を検討する契約当事者自身が、必要に応じ弁護士等に相談する等して、有効な係争リスクの低減策を講じることや、シンセティック円LIBORを利用する際は、その公表が1年に限られる見込みであることも前提に、可能な限り早期に、シンセティック円LIBORから代替金利指標に移行することが望ましいと考えられること。

取りまとめ報告書では、〔2〕の認識を共有する方策の具体例等の詳細が示されていますので、ご参照ください。


企業において確認や対応が必要となる事項(2022年1月時点)

将来的なLIBORの恒久的な公表停止に備え、企業としてどのような準備を行えばよいのか、教えてください。

LIBORからの移行やフォールバック対応に向け、LIBORを参照している金融商品・取引等の洗い出しを完了のうえ、関係業務等の特定を行うとともに、移行やフォールバック等の必要な対応について、早急に取引金融機関の担当者との対話を進めていただくことが望ましいと考えられます。(詳細は、LIBOR特設ページ「企業に必要となる対策」の「企業における対策のポイント・進め方」をご確認ください。)

LIBORの恒久的な公表停止に対する対応時期としてはいつ頃を目処とすべきですか。

LIBORは、LIBOR監督当局のFCAが行った2021年3月5日のアナウンスメントにより、2021年12月末(ドルLIBORの一部テナーは2023年6月末)以降直ちに恒久的に公表停止することが決定していることから、可能な限り早期に代替金利指標への移行やフォールバック条項の導入といった対応が必要となります。
なお、各通貨の移行計画で設定されている期限も参考にしてください。

LIBORの恒久的な公表停止に備えて計画を策定する予定ですが、具体的な対応時期の目安として参考になるものはありますか。

2020年11月末に「日本円金利指標に関する検討委員会」が公表した第2回取りまとめ報告書で示された、「LIBORの恒久的な公表停止に備えた本邦での移行計画」においては、貸出・債券について、金融機関・事業法人等に求められる対応期限が設定されたほか、2021年3月には検討委員会傘下のターム物金利構築に関するサブグループにおける意見照会結果として、金利スワップに関する対応期限も追加的に設定されました。

各社で事情が異なるため、同移行計画で示された対応期限はひとつの目安であるとされつつも、検討委員会は、こうした対応の進捗状況について点検していく方針を示しています。

(1)O/N RFR複利(後決め)参照商品・取引の体制整備:2021年3月末まで

(2)LIBOR参照商品(貸出・債券)の新規取引停止:2021年6月末まで

(3)LIBOR参照商品(金利スワップ)の新規取引停止:2021年9月末まで(※)

(4)既存商品(レガシー)の顕著な削減:2021年9月末まで


(※)LIBORを参照する既存ポジションのリスク管理目的等でのデリバティブ取引は除かれています。また、お客さまのために執行した取引が、結果としてLIBORリスクの積み増しとなることを妨げるものではなく、取引の勧誘・交渉・執行前後に、お客様の取引目的の確認までを求めるものではありません。

貸出の金利変更に当たって必要な手続きはなんですか。

貸出契約においては、当事者間の個別の交渉によって、できる限り早期に金利変更を行うか、フォールバック条項の導入について合意する手続きが必要となります。

フォールバック条項の導入については、導入時に後継金利を決定する方法(ハードワイヤードアプローチ)があります。

社債の契約変更に当たって必要な手続きはなんですか。

公募社債について、代替金利指標への移行やフォールバック条項の導入を行う場合には、原則として、会社法にもとづき、発行体による社債権者集会の開催・決議(または社債権者全員の同意)が必要と考えられます。

LIBORを参照している社債に関する対応については、別途Q&Aにまとめていますので、ご確認ください。

LIBORを参照している社債に関するQ&A

デリバティブの契約変更に当たって必要な手続きはなんですか。

国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)では、ISDAマスター契約にもとづき取引されるデリバティブ(以下「ISDAデリバティブ」といいます。)について、LIBORをはじめとするIBOR系指標(こうした銀行間取引金利を総称してIBOR(s)といいます。)の公表が恒久的に停止された場合への対応が進められてきました。

具体的には、ISDAデリバティブが参照する2006年版定義集の改定が行われ、これによりISDAデリバティブの新規契約については、フォールバック条項(ISDA IBOR Fallback Supplement)が導入されることとなりました。また、当該発効日より前に締結された既存契約については、(プロトコルを批准した当事者間において)契約を一斉に修正してフォールバック条項を適用するための仕組みとしてプロトコル(ISDA IBOR Fallback Protocol)も整備されました。

他方、ISDAマスター契約にもとづかない契約については、契約当事者間で後継金利等について合意する必要があります。また、共通して、貸出等のヘッジ対象との関係などについて検討することが必要となります。

国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)のフォールバック条項(ISDA IBOR Fallback Supplement)やプロトコル(ISDA IBOR Fallback Protocol)に関するスケジュールについて教えてください。

国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)のフォールバック条項(ISDA IBOR Fallback Supplement)およびプロトコル(ISDA IBOR Fallback Protocol)については、2021年1月25日に発効しています。

上記のほか、ISDAマスター契約にもとづく取引について、確認や対応が必要となる事項を教えてください。

本ページへの掲載事項以外にも、ISDAマスター契約にもとづく取引に関して確認・対応が必要な事項は、別途Q&Aにまとめていますので、ご確認ください。

ISDAマスター契約にもとづき取引されるデリバティブに関するQ&A

フォールバックにおいて、LIBORから後継金利(フォールバック・レート+スプレッド調整値)に切り替わるタイミングについて教えてください。

フォールバック条項に定める内容に従いますが、例えば、LIBORの公表が恒久的に停止した時点以降に行われる金利更改から後継金利(フォールバック・レート+スプレッド調整値)にもとづくことが想定されます。

LIBORとフォールバック・レート間には、差異が生じますか。またその差異はどのように調整するのか教えてください。

一般的に、LIBORとフォールバック・レートの間には金利の性質の違い等により差異(スプレッド)があるため、フォールバックによって、一方の当事者には利益が生じ、他方の当事者には損失(価値の移転)が発生する可能性があります。

そのため、価値の移転を最小化するには、LIBORとフォールバック・レートの間の差異の調整(スプレッド調整)を行うことが求められます。

例えば、フォールバック・レートとして(過去の金利の水準がLIBORより高く推移してきている)TIBORを選択した場合、スプレッド調整の手法によっては、スプレッドがマイナスとなる可能性があります。

なお、スプレッド調整は可能な限り「価値の移転」を最小化することを目的とするものの、価値の移転を完全に排除できるわけではない点には留意が必要です。(スプレッド調整については、LIBOR特設ページ「企業に必要となる対策」の「『フォールバック』にあたっての留意事項」もあわせてご確認ください。) 

キャッシュ商品(貸出・債券等)における、LIBORとフォールバック・レートの間の差異の調整(スプレッド調整)の方法について教えてください。

「日本円金利指標に関する検討委員会」が2020年11月末に公表した第2回取りまとめ報告書において、キャッシュ商品(貸出、債券等)の円LIBORのフォールバック・レートとしてターム物リスク・フリー・レート(RFR)あるいはO/N RFR複利(後決め)を参照する場合については、通貨間の整合性やISDAによる検討結果との平仄等を踏まえ、過去5年間の中央値にもとづく手法(過去5年中央値アプローチ)を採用することが適当と整理され、推奨されています。

TIBORを貸出のフォールバック・レートとして利用する場合のスプレッド調整の手法について教えてください。

TIBORをフォールバック・レートとして利用する場合のスプレッド調整の手法については、「日本円金利指標に関する検討委員会」が2020年11月末に公表した第2回取りまとめ報告書において、経済的価値の観点からの課題を踏まえ、推奨は見送られました。
他方、フォールバック・レートとしてのTIBORの利用ニーズや、現行の事務・システムとの親和性および当事者の体制整備への配慮の観点等を特に重視する主体における選択肢を確保する観点から、第2回取りまとめ報告書において、経済的な観点からの課題について、借入人・貸付人双方が理解し、確認する必要があるとされており、貸付人が借入人に対して十分な説明を行わない場合、コンダクトリスクが生じうると整理されています。

TIBORを貸出のフォールバック・レートとして利用する際のスプレッド調整手法として「過去5年中央値アプローチ」を利用する場合において、借入人・貸付人双方が理解し、確認する必要があることは何ですか。

「日本円金利指標に関する検討委員会」が2020年11月末に公表した第2回取りまとめ報告書において、経済的な観点からの課題について、借入人・貸付人双方が理解し、確認する必要があるとされており、貸付人が借入人に対して、例えば以下の内容について、十分な説明を行わない場合、コンダクトリスクが生じうると整理されています。

〔1〕TIBOR のスプレッド調整手法として「過去5年中央値アプローチ」を利用した場合、「過去5年中央値アプローチ」から得られるスプレッドとデリバティブ市場から得られるフォワード・カーブとの差異により、価値の移転が最小化されるとは限らない。また、直近の相場状況にもとづくと年限が長くなるほど、両者の差異は大きくなる。

〔2〕現時点もしくは将来的に、金利ヘッジ等を目的としたデリバティブ取引のニーズがある借入人は、ヘッジ対象である貸出について「過去5年中央値アプローチ」を利用してTIBORへフォールバックした場合、そのヘッジ手段であるデリバティブ取引が市場実勢にもとづいてプライシングされる可能性に留意する必要がある。経済的なヘッジ関係を重視し、デリバティブ取引のプライシングを「TIBOR+過去5年中央値」に合わせる場合、その追加的なコストを借入人・貸付人いずれかの主体が負担する必要がある。

〔3〕フォールバック・レートとしてTIBORを選択する場合のスプレッド調整値の公示主体は、検討委員会において選定されていない。スプレッド調整値については、貸出サブグループにおいて整理したメソドロジー等にもとづき、当事者間の合意により決定する必要がある。

フォールバック条項の導入はどのような方法がありますか。

フォールバック条項の導入手続としては、フォールバック条項導入時に、契約の枠組みやフォールバックの発動条件(トリガー)等に加え、具体的に後継金利を定める「ハードワイヤードアプローチ」が望ましい方法として考えられます。

「日本円金利指標に関する検討委員会」の第1回取りまとめ報告書では、貸出においては「ハードワイヤードアプローチ」が多くの支持を集めているほか、債券においても、「ハードワイヤードアプローチ」が強く支持されています。

代替金利指標としてO/N RFR複利(後決め)を利用する場合、事務面への影響はありますか。

LIBORからO/N RFR複利(後決め)へ移行した場合、金利決定から決済日までの日数が大幅に短縮されます。この金利の場合、約定時には金利が確定しないことから、金利確定後、利払日までの営業日数が短く、金利通知書等を受領する前に、支払いをしなければならない可能性もあります。

また、金利の支払いが決算期をまたぐ場合、経過勘定(未払利息)の計上について、検討する必要があります。

代替金利指標としてO/N RFR複利(後決め)を利用する場合、どのような利息の計算方法が考えられますか。

適用金利が確定するタイミングから金利支払い日(利払い日)までの期間を十分に確保する手法として、複数の利息計算方式があります。

具体的には、金利の参照期間と金利の計算期間の日数を一致させ、金利の参照期間を数営業日前にスライドする「Lookback方式(Lookback without Observation Shift方式)」、金利の参照期間と金利の計算期間を一致させ、金利支払日を後倒しする「Delay方式」、金利の計算期間全体を数営業日前倒し、当該金利参照期間に対して複利計算する「Observation Period Shift方式(Backward-shift方式)」、金利の参照期間を数営業日短縮する「Lockout方式」等が挙げられます。

O/N RFR複利(後決め)を利用する場合の標準的な利息の計算方法はありますか。

米ドルについて、米検討体(ARRC:代替参照金利委員会)は、SOFR(米ドルのRFR)を参照するシ・ローン(2020年7月)および相対貸出(2020年11月)について、推奨するコンベンション(利息計算方式)として「Lookback without Observation Shift方式」を推奨しています。

英ポンドについて、英検討体(RFR WG)においても、SONIA(英ポンドのRFR)を参照する貸出のコンベンションとして、「Lookback without Observation Shift方式」を推奨しています。

そのうえで、日本円については、2020年12月の「日本円金利指標に関する検討委員会」(第18回会合)の公表資料では、検討委員会傘下の貸出サブグループの報告事項として、貸出におけるTONA(後決め)のコンベンションについて、「英米との平仄の観点から、圧倒的多数の先が『Lookback without Observation Shift』方式を選好する意見を示した」ことが提示されたうえ、計算上の論点や具体的な計算方法が示されています。

なお、検討委員会からは、TONA複利(後決め)のコンベンションに関する理解促進を目的として、利息計算に係るコンベンションのツールが公表されています(ツールの利用を希望する場合は、検討委員会事務局宛に連絡)。

LIBORの恒久的な公表停止に関して、貸出契約書類の記載について標準化されたものは公表されていますか。また、「トリガー」が発生した後に契約交渉をする際に参考となる貸出契約書類の記載は公表されていますか。

当協会において、金融機関や一般事業法人等の関係者からのヒアリング結果のほか、グローバルな議論や本邦の実務慣行等も踏まえ、円LIBORを参照する相対貸出のフォールバック条項の参考例(サンプル)を作成し、2020年3月に初版を公表(7月に補訂版を公表)した後、2021年1月に改訂版を公表しています。

改訂版では、現在のような、すでに「トリガー」が発生(2021年3月5日)した後にフォールバック条項を導入するケースを念頭に置いて「公表停止等の予定発表後に変更契約を締結するパターン」を新たに作成しているほか、2020年11月に「日本円金利指標に関する検討委員会」が公表した第2回市中協議の取りまとめ報告書において、貸出分野におけるフォールバック・レートやスプレッド調整手法について推奨等がなされたことを踏まえ、所要の追記を行っています。
なお、当該参考例は、あくまでも一つのサンプルとして取りまとめているに過ぎず、ひな型のような何らかの定型的な書式を定める目的はありません。したがって、各金融機関の契約書において、当事者間で十分協議のうえ、必要に応じて修正して利用されることが想定されています。

また、日本ローン債権市場協会(JSLA)は、2020年10月に、シンジケートローンのフォールバック条項の参考例(サンプル)を作成・公表した後、相対貸出の参考例(サンプル)の改訂を踏まえ、2021年2月に改訂版(サンプル)を公表しています。

その他、JSLAからは、同改訂版(サンプル)と関連して、「本付随修正の内容の参考例(コミットメントライン用、タームローン用)」が公表されています。これは、コミットメントラインやタームローンにおいて、LIBORの「代替参照レート」としてTORFやTONA(後決め)を利用する場合の本付随修正の内容について整理されたものであり、当該金利指標を利用するその他の貸出契約において同様の対応を行う際にも参考となり得るものです。

貸出契約において、後決め金利を利用する場合の規定について標準化されたものは公表されていますか。

当協会において、2021年1月、円LIBORを参照する相対貸出のフォールバック条項の参考例(サンプル)の改訂版の公表と同時に、「TONA複利(後決め)レートの規定参考例」および「リスク・フリー・レートの用語集」を公表しています。

また、日本ローン債権市場協会(JSLA)は、前述のとおり2021年8月に、「シンジケートローンのフォールバック条項の参考例および解説書(改訂版)」に関連する「本付随修正の内容の参考例(コミットメントライン用、タームローン用)」を公表しています。後決め金利を利用する場合等を想定した本付随修正の内容が参考例として整理されています。

貸出のフォールバックについて、円LIBORのフォールバック・レートとして、どのようなレートが推奨されていますか。

「日本円金利指標に関する検討委員会」が2020年11月末に公表した第2回取りまとめ報告書において、以下のウォーターフォール構造にもとづくフォールバック・レートが検討委員会として推奨されています。

【貸出のフォールバック・レート】

第1順位:ターム物リスク・フリー・レート

第2順位:O/N RFR複利(後決め)

第3順位:貸付人が、〔関連監督当局等による推奨内容又は市場慣行を適切に考慮したうえで〕適当と認め、借入人に通知するレート

なお、当事者間の合意により、推奨内容と異なる内容の契約を締結することは当然に妨げられていません。

貸出のフォールバックについて、円LIBORのフォールバック・レートとしてTIBORを利用する場合について、どのような整理がなされていますか。

「日本円金利指標に関する検討委員会」が2020年11月末に公表した第2回取りまとめ報告書では、貸出のフォールバックに関して、現行の事務・システムとの親和性の観点等から、TIBORをウォーターフォール構造に含むべきであるとの意見が寄せられたことが言及されています。

ただし、TIBORをフォールバック・レートとする場合のスプレッド調整手法に関しては、経済的価値の観点からの課題が指摘されており、十分留意が必要であることから、第2回取りまとめ報告書においては、当該課題の内容や留意事項についても併せて整理されています。詳細は、前出のQ&A(「TIBORを貸出のフォールバック・レートとして利用する場合のスプレッド調整の手法について教えてください。」等)をご参照ください。

貸出とデリバティブとでフォールバック・レートが異なる可能性があるということですが、具体的にどのように異なるのか、教えてください。

貸出では、当事者間の合意によって、フォールバック・レート(例えば、ターム物リスク・フリー・レートやO/N RFR複利(後決め)など)が決まりますが、国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)が制定するISDAマスター契約に準拠するデリバティブでは、標準的なフォールバック・レートは(異なる取り決めがなされない限り)O/N RFR複利(後決め)となるため、当事者間の合意内容次第では両者で異なる可能性があります。

債券のフォールバック条項の導入事例におけるフォールバック・レートの決定方法について教えてください。

あらかじめフォールバック・レートをウォーターフォール形式で定めておきつつ、フォールバックの発動条件(トリガー)への該当時点において、発行体の判断により金利を決定する旨を盛り込んだ社債が起債されています。

なお、「当社が自らの費用負担により選任する国際的に定評のある独立した金融機関又は国際資本市場における実績を有するその他の独立したアドバイザー」にフォールバック・レート等の決定を委ねることを認める旨を盛り込んだ社債も起債されています(このように、フォールバック条項の導入時点でフォールバック・レート等を指定していない場合、トリガー発動時に独立アドバイザーの対象候補や選任等のプロセスがあらかじめ明確化されているか等については留意する必要があります)。

債券のフォールバックについて、円LIBORのフォールバック・レートとして、どのようなレートが推奨されていますか。

「日本円金利指標に関する検討委員会」が2020年11月末に公表した第2回取りまとめ報告書において、プレーンな債券について、以下のウォーターフォール構造にもとづくフォールバック・レートが検討委員会として推奨されています。

【債券のフォールバック・レート】

第1順位:ターム物リスク・フリー・レート

第2順位:O/N RFR複利(後決め)

第3順位:当局関連委員会により推奨された指標

第4順位:代替されるべき指標のフォールバック・レートとしてISDA定義集が定めるもの

第5順位:発行体等が選定する指標

なお、証券化商品や仕組債等では商品特性に応じた内容を定めることが合理的であるケースも想定されるほか、プレーンな変動利付債を含め、当事者間の合意により推奨内容と異なる内容の契約を締結することは妨げられていません。

何等かのフォールバックに関する事項が既存の社債要項に規定されていれば、当該債券について契約変更など特段の対応は不要と理解してよいですか。

多くの債券にすでに導入されている参照金利の「一時的な公表停止」に関するフォールバック条項では不十分であり、参照金利をLIBORから代替金利指標に変更するか、恒久的な停止に備えたフォールバック条項を導入する必要があります。ただし、そうした社債要項の内容変更を行う場合は、原則として社債権者集会の決議が必要と考えられます。

LIBORを参照している社債に関する対応については、別途Q&Aにまとめていますので、ご確認ください。

LIBORを参照している社債に関するQ&A

貸出・債券等とデリバティブ間でヘッジ会計を適用していますが、移行やフォールバックに伴い、両者の間で異なる金利を参照した場合もしくは金利の変更タイミングにずれが生じた場合、ヘッジ会計は維持されますか。

本邦の会計基準におけるヘッジ会計の取扱いに関しては、国際会計基準審議会(IASB)や米国財務会計基準審議会(FASB)等の議論の動向等を踏まえた検討の結果として、企業会計基準委員会(ASBJ)より、2020年9月に、実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」が公表されています。

当該実務対応報告では、LIBORを参照する金融商品のヘッジ会計の適用について、一定の条件のもとで、原則的処理方法(繰延ヘッジ)における特例的な取扱いや、金利スワップの特例処理、振当処理における特例的な取扱い等が示されています。

なお、金利指標置換後の会計処理については、2023年3月31日以前に終了する事業年度まで継続することができる旨、記載されています。もっとも、金利指標の選択に関する実務や企業のヘッジ行動について不確実な点が多いため、当該実務報告の公表から約1年後に、金利指標置換後の取扱いについて再度確認すると整理されたことを踏まえ、2021年10月から改めて検討が行われています。

こうした検討を踏まえ、対応方針について会計監査人等に早急に相談しておくことをおすすめいたします。

実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」を踏まえて特例的な会計処理等を行った場合、税務処理においても同様に特例的な取扱いは認められますか。

2021年3月31日、国税庁ウェブサイトにおいて、当該実務対応報告にもとづいて特例的な会計処理等を行った場合に、法人税法等の関連法令(繰延ヘッジ処理による利益額又は損失額の繰延べ等)や法令解釈通達にもとづく税務処理に当たって、実務対応報告と平仄を合わせた取扱いが認められる旨が公表されています。

LIBORからの金利変更に伴う法的論点について、何らか整理はされていますか。

2021年3月26日、金融庁ウェブサイトにおいて、LIBORを参照しているローンの金利変動をヘッジするために締結している金利スワップ契約において、フォールバック等により参照金利の変更を行うケースを想定した、金融商品取引法ならびに銀行法上の論点に関する一般的な法令解釈に係る照会書面および同庁の回答書が公表されています。

回答書では、フォールバック等に伴う〔1〕金利変更直前の時価評価損益、および、〔2〕市場関係者において合理的と認められている方法によりスプレッド調整を行ったうえでも不可避的に生じる金利変更評価損益について、一定の前提のうえで清算を行わない対応が金融商品取引法・銀行法には違反しないことについて、想定事例にもとづき明確化されています。

また、2020年10月23日、金融法委員会(事務局:日本銀行)から「LIBORの恒久的な公表停止への対応に関する論点整理」が公表されており、LIBORからの金利変更に当たって想定される法的な論点等が整理されています。

例えば、米国では、LIBORの代替金利指標やフォールバック・レートとしては、どのような検討がなされているのか、教えてください。

米国では、リスク・フリー・レート(RFR)としてSOFR(Secured Overnight Financing Rate)が特定されており、当該金利にもとづく代替金利指標の利用が期待されます。

具体的には、代替金利指標として、全ての商品に対してSOFR(SOFRの単利(後決め)/複利(後決め)およびSOFR Averages)の利用が推奨されています。

フォールバックに関しては、米国における検討体であるARRC(代替参照金利委員会)が公表しているキャッシュ商品(貸出、債券等)のフォールバック条項の推奨文言において、ウォーターフォールの第一階層として「ターム物SOFR」が設定されています。また、第二階層は、貸出においては「SOFRの単利(後決め)」、債券においては「SOFRの複利(後決め)」がそれぞれ推奨されています。

2021年7月には、ARRCにより、「ターム物SOFR(CME Term SOFR Reference Rates)」を正式に推奨するアナウンスが公表されましたが、当該指標は、上記のARRCが推奨するフォールバック条項を導入する既存契約での利用等が想定されています。

他方、米国では、銀行の信用リスクを含む金利指標(Credit Sensitive rate)の公表や構築に向けた動きもみられますが、証券監督者国際機構(IOSCO)および英米当局者から同指標の利用に対する懸念も示されていることから、実際の利用には留意が必要です。

なお、SOFRの単利(後決め)/複利(後決め)を利用する場合について、貸出(相対貸出、シ・ローン)における利息の計算方法(コンベンション)としては、金利の参照期間を数営業日前にスライドする「Lookback without Observation Shift方式」が推奨されています。

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