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有識者インタビュー

有識者インタビュー

小池 正道・市場国際委員長

小池 正道

全国銀行協会
市場国際委員長

(三井住友銀行 常務執行役員)

Q1: LIBORの恒久的な公表停止が懸念される2021年末まで、残り2年を切った。

LIBOR(London Interbank Offered Rate)の恒久的な公表停止への対応は、国際的なビッグプロジェクトだ。2021年末までの残り期間を考えると、企業、銀行を問わずLIBORを利用するすべての方々にとって、2020年は極めて重要な年となる。

銀行としては、企業におけるお借入やデリバティブ取引など、本邦だけでも数万件におよぶとされるLIBORを利用する契約について、残された期間で、市場の混乱を招かないよう「代替金利指標(LIBORに代わる金利指標)」を参照する契約へと変更していくことが必要となる。加えて、システムの改修、会計の対応等も含めると膨大な作業が短期間の内に発生する見込みだ。2021年末から逆算すると、今から準備・対応を進めなければ、最悪間に合わないといった事態も想定され得る。こうした危機感をもって対応を推し進めていかなければならない。

一方で、LIBORを利用する企業、投資家の皆様にとっては、「お取引の1件1件が、適切な方法で円滑に変更されるのか」ということが、最大の関心事であろう。今後、銀行からお客様に契約変更等に関するご説明などを本格的に開始させていただくこととなるが、事業法人や投資家の方々におかれても、取引先金融機関との対話を開始され、必要な対応事項の把握を行うなど、できるだけ早期に準備、ご対応をお願いしたい。

Q2: LIBORの公表停止について銀行界ではどのような取組みを行っているか。

まず、LIBOR移行対応には、「2021年末」という時限性があることに加え、これまで、国際的にも幅広い商品、取引で利用されてきた経緯から、その影響は予測が難しく、複雑さがある。銀行界では、適切かつ円滑なお客様への対応を最重要課題の一つとして、これまで、準備・対応を進めてきた。例えば、全銀協において作成した、お客様への説明用ファクトシート(「LIBORの恒久的な公表停止に備えた対応について」)や、企業のご担当者様を対象に開設した本ウェブサイト「LIBOR特設ページ」は、その取組みの一つである。加えて、全銀協においては、各種契約を巡る法的論点の整備等についても対応を進めている。

他方、金融庁や日本銀行は、合同でLIBORを利用する金融商品・取引のエクスポージャー調査を(金融機関向けに)実施するなど、官民がともに取組みを進めてきている。こうした動きを受けて、個別行においても社員教育の観点から、行内勉強会の開催等、対応に向けた準備が進んできているとも聞いている。

LIBORの公表停止は当然ながら、銀行界に限った問題ではなく、LIBORを利用する全ての利害関係者に関係する問題だが、その中でも銀行界は主たる業界団体として、この難題への対応を牽引していくことが重要と考えており、今後も各種取組みを通じて、対応を促していきたい。

Q3: 「日本円金利指標に関する検討委員会(以下、「検討委員会」という。)」の市中協議の取りまとめ報告書では、貸出においては、資金の借り手である企業などを中心にターム物RFR金利(スワップ)の利用が支持された一方、資金の貸し手である銀行ではTIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate)の利用を支持する声もあったが、こうした声をどのようにとらえているか。

本市中協議にご意見を提出された企業の多くは、TIBORの選択肢がある中で、あえて円LIBORを選好している方々であると理解しており、代替金利指標として、TIBOR以外が支持されたことは、ある意味当然の結果であろう。むしろ、本市中協議結果を受けて、ターム物RFR金利(スワップ)を利用したいお客様が多いことが明らかになり、一つの明確な方向性が出てきた、ということがより重要である。銀行界としては、既存の取引慣行との親和性や、即時利用可能な金利指標であるTIBORを支持したが、こうしたお客様の声を受け、幅広い代替金利指標に対応していくことが必要と考えている。

もっとも、ターム物RFR金利(スワップ)は今後構築が必要な金利指標であり、即時利用はできない。銀行においては、将来的に貸出等の分野でターム物RFR金利(スワップ)が利用されることを想定したうえで、同金利が構築されるまでの間に、契約変更やシステム更改等の実務対応を順次進めていく必要がある。そのため、場合によっては、O/N RFR複利(後決め)やTIBOR等、ターム物RFR金利(スワップ)以外の選択肢の利用も視野に入れた準備・対応を行っておくことも必要だろう。もちろん、ターム物RFR金利(スワップ)の構築にも可能な限り協力していきたい。

ただし、最も重要なことは、お客様がLIBORの代わりにどの代替金利指標をご利用になりたいのかであり、銀行は、それぞれの代替金利指標の特性等をお客様に十分丁寧にご説明していく必要があるだろう。

Q4: 銀行からLIBORを利用する企業へのアプローチは一般的に、どのような動きが想定されるか。企業側で特に準備しておいたほうがよい事項はあるか。

今後、取引銀行の担当者より、(前述の)ファクトシートや銀行が独自に作成した資料等を用いて、LIBOR問題の概要、代替金利指標の選択肢など、基本的な説明が開始される予定である。銀行により異なるが、早いところでは、銀行内での研修を経て2020年度早々にもお客様へのアプローチを開始すると聞いている。その後、お客様への十分な説明を経たうえで、LIBORの恒久的な公表停止に間に合うよう、順次、契約変更の手続きを行って頂くことになると想定される。

企業のご担当者様においては、まずはLIBORを利用している契約を洗い出すことが第一歩となるだろう。もっとも、企業によっては財務・管理会計やシステム等、銀行側では十分に把握しきれないところでLIBORを利用しているケースもあると聞いている。銀行担当者以外にも、会計であれば会計監査人に、システムであればシステムベンダーに早期に相談する等、全社的な視点から代替金利指標の利用に向けた準備を進めておくこと等の対応が必要なのではないかと思う。

Q5: LIBORの公表停止への対応については、通貨別に検討が進んでいると聞いているが、英米での動きと比べ、日本円での動きをどのように考えているか。

各通貨の検討体において、LIBORに代わる代替金利指標への移行・フォールバックを円滑に進めていくための様々な検討や取りまとめが行われていると認識している。

例えば英国では、本年1月、英国のリスクフリー・レート・ワーキンググループが2020年における優先事項として、本年9月末までに、2021年末以降に満期を迎える英ポンドLIBORベースのキャッシュ商品の発行を停止するというロードマップを示し、監督当局である金融行為規制機構(FCA)とイングランド銀行(BOE)がこれに賛同する旨の文書を共同で公表するなど、官民一体で2021年末のLIBORの恒久的な公表停止に向けた具体的なプランが示されている。

また、フォールバックに備えた実務的な対応として、米国のARRCは、「相対貸出」、「シ・ローン」および「変動利付債」などの各プロダクトについて、フォールバック条項に係る推奨文言を昨年公表しているほか、英国のリスク・フリー・レート・ワーキンググループは、シ・ローンの移行を促進していくために、LMA(Loan Market Association)が作成した推奨文言を公表するなど、着実に準備が進められている。

わが国においても、昨年11月に検討委員会の市中協議の取りまとめ報告書が公表され、円LIBOR の恒久的な公表停止に備えて検討すべき論点が整理されている。各国の検討事項は当然ながら参考になるが、例えば、わが国のOIS(Overnight Index Swap)取引は英国のOIS取引に比べ、まだまだ取引ボリュームが少なく、彼我の差があるなど、取り巻く環境は一様ではない点には留意する必要がある。今後は、2021年末に向けて各種課題に係るマイルストーンを適切に設定し、誰が、いつ、なにをすべきか、について関係者間で明確化し、官民一体となって実務的な検討を進めていくことが極めて重要である。

Q6: 業界団体に期待することは何か。

業界団体には、検討委員会の市中協議の取りまとめ報告書において、「市場慣行の整備や適切な顧客対応に向けて、業界団体等による透明性の高いガイドラインの策定等を求める」、「(当該)対応を進めていくにあたっては、当局による適切な関与が必要」との整理が行われていることを踏まえ、多岐に亘る実務的論点のうち、個別企業のみで取り組んだ場合に非効率である課題について、関係者が円滑かつ効率的に対処することができるよう、積極的なサポートを期待している。全銀協としてもすでに様々な取り組みを進めているが、他の業界団体の検討結果についても、関係者に共有され、市場全体で準備が進んでいくことが望ましい。

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当サイトに掲載の図版およびデータは、日本円金利指標に関する検討委員会「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議のポイント」(2019年7月公表)より作成、一部加工したものです。