平成14年6月28日
全国銀行協会
金融調査部

全国銀行の平成13年度決算の状況(単体ベース)

1.損益状況

(1)資金運用益

全国銀行(注)の平成13年度決算をみると、資金運用益(資金運用収益-資金調達費用)は、9兆6,793億円(前年度比3,137億円、3.3%増)と前年度の減益(前年度3.7%減)から増益に転じた。

内訳をみると、資金運用収益は、貸出金利息が市場金利の低下に加え、運用量の減少により、14兆1,272億円(同1兆8,607億円、11.6%減)となった。資金調達費用は、国内業務部門では流動性預金へのシフトによる調達コストの低下に加え、国際業務部門での調達量の減少などにより預金利息が減少したことから、4兆4,480億円(同2兆1,744億円、32.8%減)と大幅な減少となった。

なお、業務純益は、国債等債券関係損益の収益超過額が増加したことや人件費を中心に経費が減少したものの、不良債権処理の更なる促進を図るため、一般貸倒引当金繰入額が大幅に増加したことを主因に4兆5,596億円(同861億円、1.9%減)と3年ぶりに減益に転じた(前年度1.4%増)。

(2)経常利益

経常利益は、5兆7,029億円の赤字となり、3年ぶりに黒字から赤字に転じた(前年度は4,464億円の黒字)。

これは、1.不良債権処理に伴う貸倒引当金繰入額および貸出金償却が増加したこと、2.株式市況の低迷を背景に大幅な減損処理を実施したことなどから株式等関係損益が大幅な損失超過に転じたことなどによる。

(3)当期利益

当期利益は、4兆1,989億円の赤字となり、2年連続の赤字となった(前年度1,756億円の赤字)。

注.
13年度決算における「全国銀行」は、都市銀行7行、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)53行、信託銀行8行(当年度から大和銀信託銀行を集計対象に加えた)、長期信用銀行1行の133行である。なお、東京スター銀行、石川銀行、中部銀行、新生銀行、あおぞら銀行は、全国銀行および地方銀行II、長期信用銀行に含まれていない。また、当年度から関西さわやか銀行を集計に加えた。

(第1表)損益状況 (単位:億円、%)

 平成13年度
(133行ベース)
平成12年度
(136行ベース)
計数前年度比増減率計数増減率
経常収益198,342△32,666△14.1231,267△23.6
資金運用収益141,272△18,607△11.6160,134△14.8
役務取引等収益19,1626223.418,5608.1
特定取引収益3,6631544.43,50981.7
その他業務収益13,0221,85716.611,188△57.3
その他経常収益16,945△16,024△48.632,930△49.3
信託報酬4,275△668△13.54,9444.5
経常費用255,37229,11712.9226,802△18.8
資金調達費用44,480△21,744△32.866,267△26.7
役務取引等費用6,74461710.16,1392.9
特定取引費用21△474△95.8495146.2
その他業務費用5,8783095.55,581△77.0
営業経費68,957△2,084△2.971,206△2.5
その他経常費用129,28952,49468.477,112△9.6
経常利益△57,029△61,7834,464△81.1
(資金運用益・注2)96,7933,1373.393,866△3.7
(業務純益)45,596△861△1.946,5051.4
特別利益3,580△3,590△50.17,18234.0
特別損失6,675△4,064△37.810,78296.1
税引前当期利益△60,124△61,309864△96.3
法人税・住民税・事業税2,648△1,991△42.94,640△38.0
法人税等調整額△20,783△18,755△2,021△129.4
当期利益△41,989△40,562△1,756△119.3
注1.
平成13年度の前年度比、増減率は、133行ベースに遡及調整して算出したため、平成12年度計数(136行ベース)との比較とは一致しない。
注2.
資金運用益=資金運用収益-資金調達費用

(参考)個別行の決算状況 (単位:行)

 黒字行うち増益行うち減益行赤字行
業務純益130(135)68(62)62(73)3(1)
経常利益76(99)28(48)48(51)57(37)
当期利益75(95)33(40)42(55)58(41)
注.
平成13年度は133行ベース、()内は平成12年度(136行ベース)の実績。

2.リスク管理債権額(銀行勘定)

平成14年3月末における銀行勘定のリスク管理債権の総額(破綻先債権額、延滞債権額、3カ月以上延滞債権額、貸出条件緩和債権額)は、景気低迷による貸出先企業の経営悪化などから延滞債権額および貸出条件緩和債権額が著増し、39兆8,380億円(前年度末比9兆9,490億円、33.3%増)と大幅な増加となった。
また、総貸出に占める割合は、2.43%ポイントの上昇となり、8.73%となった(前年度末6.33%)。

(第2表) リスク管理債権額(銀行勘定)(単位:億円、%)

 平成14年3月末
(133行ベース)
平成13年3月末
(136行ベース)
計数前年度末比増減率計数
破綻先債権額27,455△902△3.228,417
延滞債権額212,30546,04227.7167,634
3カ月以上延滞債権額5,038△1,431△22.16,468
貸出条件緩和債権額153,58055,78257.097,720
リスク管理債権総額398,38099,49033.3300,241
(貸出金総額に対する比率)(8.73)(2.43) (6.33)
注.
平成14年3月末の前年度末比、増減率は、133行ベースに遡及調整して算出したため、平成13年3月末計数(136行ベース)との比較とは一致しない。以下、参考表も同じ。

(参考)金融再生法第7条に基づく「資産の査定」額(銀行勘定)(単位:億円)

 平成14年3月末
(133行ベース)
平成13年3月末
(136行ベース)
計数前年度末比増減率計数
破産更生債権69,0984250.669,731
危険債権183,89143,29730.8141,487
要管理債権156,56356,77056.999,712
正常債権4,535,339△316,983△6.54,854,599

3.利回り・利鞘(国内業務)

国内業務部門の利回りをみると、預貸金利鞘は、貸出金利回り(A)が前年度比0.12%ポイント低下したものの、預金債券等原価(C)がこれを上回って前年度比0.16%ポイント低下したことから、0.62%と前年度比0.04%ポイント拡大した。

また、総資金利鞘は、資金運用利回り(B)および資金調達原価(D)がともに低下したものの、資金調達原価の低下幅が資金運用利回りの低下幅を上回ったことから、0.37%と前年度比0.03%ポイント拡大した。

(第3表) 資金運用利回り・資金調達原価および利鞘(国内業務)(単位:%、ポイント)

 平成13年度
(133行ベース)
前年度比平成12年度
(136行ベース)
貸出金利回り(A)1.99△0.122.11
有価証券利回り1.13△0.141.27
コールローン等利回り0.29△0.150.45
資金運用利回り(B)1.68△0.151.84
預金債券等利回り0.17△0.110.28
預金利回り0.14△0.090.23
経費率1.21△0.041.26
人件費率0.55△0.040.59
物件費率0.600.000.60
預金債券等原価(C)1.37△0.161.53
コールマネー等利回り0.58△0.260.84
資金調達原価(D)1.31△0.181.50
預貸金利鞘(A)-(C)0.620.040.58
総資金利鞘(B)-(D)0.370.030.34
注.
平成13年度の前年度比は、133行ベースに遡及調整して算出したため、平成12年度計数(136行ベース)との比較とは一致しない。

4.主要勘定(末残)

(1)資金調達

預金は、国内業務部門では、個人預金および一般法人預金がともに増加した。なお、預金の内訳を見ると、ペイオフ解禁を控え、定期性預金から流動性預金に振り替える動きが顕著であった。一方、国際業務部門では、海外業務の縮小などから減少した。この結果、預金全体では、523兆5,353億円 (前年度末比11兆7,655億円、2.3%増)と3年連続の増加となった。
譲渡性預金は、33兆2,454億円(同14兆8,531億円、30.9%減)と減少した。

(2)資金運用

貸出金は、国内業務部門では、住宅ローンを中心とする個人向け貸出や地方公共団体向けが増加した。一方、企業向け貸出は設備資金を中心に引き続き低迷していることに加え、不良債権の売却・償却を積極的に進めたことなどにより減少したため、国内の貸出金全体では減少となった。また、国際業務部門も減少した。この結果、貸出金全体では456兆3,184億円(前年度末比17兆8,636億円、3.8%減)と5年連続の減少となった。

有価証券は、株式および国債が減少したことから、156兆9,927億円(同19兆4,932億円、11.0%減)と3年ぶりに減少に転じた。

(第4表) 主要勘定(末残)(単位:億円、%)

 平成14年3月末
(133行ベース)
平成13年3月末
(136行ベース)
計数前年度末比増減率計数増減率
預金5,235,353117,6552.35,120,1283.4
譲渡性預金332,454△148,531△30.9481,14316.6
債券180,814△37,306△17.1218,119△10.9
コールマネー等347,702△9,115△2.6356,82249.2
借用金174,236△23,545△11.9197,825△7.0
調達勘定計6,270,561△100,842△1.66,374,0405.1
負債合計7,267,808△405,655△5.37,676,1379.0
資本合計293,023△73,801△20.1366,7673.8
貸出金4,563,184△178,636△3.84,745,188△0.4
有価証券1,569,927△194,932△11.01,765,20729.2
国債635,449△75,459△10.6711,10063.7
地方債99,817△1,445△1.4101,279△0.5
社債192,3051,6590.9190,6716.7
株式343,727△99,481△22.4443,299△0.4
その他の証券298,624△20,206△6.3318,83955.8
コールローン等90,413△48,700△35.0136,59514.1
運用勘定計6,223,524△422,268△6.46,646,9916.4
資産合計7,560,833△479,456△6.08,042,9058.7
注.
平成14年3月末の前年度末比、増減率は、133行ベースに遡及調整して算出したため、平成13年3月末計数(136行ベース)との比較とは一致しない。

5.自己資本比率

国際統一基準採用行(21行)をみると、単体ベース、連結ベースともに全行が8%以上であった。
国内基準採用行(112行)をみると、単体ベース、連結ベース(注)ともに全行が4%以上であった。

注.
連結財務諸表規則に基づく重要性の原則を適用して、信託銀行2行、地方銀行II4行の計6行は、連結財務諸表を作成していない。

(第5表) 自己資本比率 (単位:行)

   14年3月末
(133行ベース)
13年3月末
(136行ベース)
12年3月末
(137行ベース)
国際統一基準単体8%以上212627
8%未満000
連結8%以上212627
8%未満000
国内基準単体4%以上112110109
4%未満001
連結4%以上106105104
4%未満001

6.営業経費・職員数・店舗数

営業経費は、リストラ等経営全般にわたる合理化・効率化をより一層進めたことにより、前年度に引き続き人件費が大幅に減少し、物件費も減少したことから、前年度比2,084億円、2.9%減となった。

職員数・店舗数をみると、職員数は前年度末比5.1%減、店舗数も同2.1%減とそれぞれ減少した。

(第6表)営業経費・職員数・店舗数

(1)営業経費 (単位:億円、%)

 平成13年度
(133行ベース)
前年度比増減率平成12年度
(136行ベース)
増減率
営業経費68,957△2,084△2.971,206△2.5
うち人件費32,202△1,369△4.133,655△4.4
うち物件費33,414△576△1.734,064△0.5
うち税金3,339△139△4.03,486△2.8
注.
平成13年度の前年度比、増減率は、133行ベースに遡及調整して算出したため、平成12年度計数(136行ベース)との比較とは一致しない。

(2)職員数・店舗数 (単位:人、店、%)

 平成14年3月末
(133行ベース)
前年度末比増減率平成13年3月末
(136行ベース)
増減率
職員数334,238△17,922△5.1352,590△4.4
店舗数14,954△318△2.115,301△1.0
注.
平成14年3月末の前年度末比、増減率は、133行ベースに遡及調整して算出したため、平成13年3月末計数(136行ベース)との比較とは一致しない。

以上


〔参考表〕平成13年度決算の状況(連結ベース)

1.損益状況

(1)経常利益

経常利益は、5兆4,822億円の赤字となり、前年度の黒字(8,686億円の黒字)から赤字に転じた。

(2)当期純利益

当期純利益は、4兆1,257億円の赤字となり、2年連続の赤字となった(前年度1,304億円の赤字)。

注.
連結の計数は、連結財務諸表規則に基づく重要性の原則を適用して、連結財務諸表を作成していない信託銀行2行、地方銀行II4行および他の銀行の被連結銀行である信託銀行1行、地方銀行1行、地方銀行II3行を除いた122行ベースで集計した。
以下の第2、3表および第4表も同じ。

(第1表) 連結損益状況 (単位:億円、%)

 平成13年度
(122行ベース)
平成12年度
(126行ベース)
計数前年度比増減率計数
経常収益242,916△33,816△12.2277,595
資金運用収益151,032△20,488△11.9172,142
役務取引等収益26,4714551.726,091
経常費用297,73830,63811.5268,909
資金調達費用51,081△23,328△31.474,536
役務取引等費用6,5601221.96,463
経常利益△54,822△64,4548,686
税金等調整前当期純利益△57,474△63,4274,966
法人税・住民税・事業税5,152△1,153△18.36,314
法人税等調整額△22,107△20,902△1,182
当期純利益△41,257△40,972△1,304
注.
平成13年度の前年度比、増減率は、122行ベースに遡及調整して算出したため、平成12年度計数(126行ベース)との比較とは一致しない。

2.リスク管理債権額(銀行勘定)

平成14年3月末における銀行勘定のリスク管理債権の総額(破綻先債権額、延滞債権額、3カ月以上延滞債権額、貸出条件緩和債権額)は、40兆8,817億円(前年度末比10兆924億円、32.8%増)となった。
また、総貸出に占める割合は、2.48%ポイントの上昇により、8.89%となった。

(第2表)連結のリスク管理債権額(銀行勘定)(単位:億円、%)
 平成14年3月末
(122行ベース)
平成13年3月末
(125行ベース)
計数前年度末比増減率計数
破綻先債権額28,623△1,183△4.029,901
延滞債権額219,92446,52026.8174,976
3カ月以上延滞債権額5,358△1,486△21.76,849
貸出条件緩和債権額154,91157,07358.398,026
リスク管理債権総額408,817100,92432.8309,754
(貸出金総額に対する比率)(8.89)(2.48) (6.44)
注.
平成14年3月末の前年度末比、増減率は、122行ベースに遡及調整して算出したため、平成13年3月末計数(125行ベース)との比較とは一致しない。
以下の第3表および第4表も同じ。

(第3表)連結主要勘定(末残)(単位:億円、%)

 平成14年3月末
(122行ベース)
平成13年3月末
(125行ベース)
計数前年度末比増減率計数
預金5,259,727121,5472.45,148,183
譲渡性預金330,369△151,858△31.5482,385
債券186,503△37,519△16.7224,142
コールマネー等347,195△24,755△6.7371,835
借用金127,728△33,199△20.6161,107
調達勘定計6,251,524△125,783△2.06,387,654
負債合計7,387,020△478,340△6.17,876,477
資本合計278,953△70,837△20.3350,053
貸出金4,598,376△202,434△4.24,809,468
有価証券1,551,767△190,952△11.01,743,654
コールローン等95,812△54,934△36.4151,083
運用勘定計6,245,956△448,320△6.76,704,206
資産合計7,698,559△543,872△6.68,253,814

3.連結キャッシュ・フローの状況(間接法)

営業活動によるキャッシュ・フローは、9兆2,127億円のプラスとなり、投資活動によるキャッシュ・フローは、10兆8,402億円のプラスとなった。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、1兆858億円のマイナスとなった。この結果、現金及び現金同等物期末残高は、前年度に比べ16兆941億円増加し、33兆5,796億円となった。

(第4表) 連結キャッシュ・フロー(間接法)(単位:億円)
 平成13年度
(122行ベース)
平成12年度
(125行ベース)
計数前年度比計数
営業活動によるキャッシュ・フロー92,127△144,465235,903
投資活動によるキャッシュ・フロー108,402362,006△253,247
財務活動によるキャッシュ・フロー△10,8587,302△17,976
現金及び現金同等物期末残高335,796160,941175,456

以上

本件に関する照会先
木佐森、木村 Tel 03-5252-3778