平成15年6月27日
全国銀行協会
金融調査部

全国銀行の平成14年度決算の状況(単体ベース)

1.損益状況

(1)資金運用益

全国銀行(注)の平成14年度決算をみると、資金運用益(資金運用収益-資金調達費用)は、費用が大幅な減少となったものの収益の減少がそれを上回ったため、9兆3,721億円(前年度比4,919億円、5.0%減。なお、平成14年度の前年度比、増減率は134行ベースに遡及調整して算出したため、平成13年度計数(133行ベース)との比較とは一致しない。以下同じ。)と前年度の増益(前年度3.3%増)から減益に転じた。

内訳をみると、資金運用収益は、貸出金利息および有価証券利息配当金の減少などにより、大幅に減少し12兆623億円(同2兆3,520億円、16.3%減)となった。資金調達費用は、国内業務部門では流動性預金へのシフトによる調達コストの低下に加え、国際業務部門での調達量の減少などにより預金利息が減少したことから、2兆6,902億円(同1兆8,601億円、40.9%減)と大幅な減少となった。

なお、業務純益は、資金運用収益の大幅な減少があったものの国債等債券関係損益の収益超過額の増加、経費の減少などがあり、4兆6,711億円(同2億円、0.0%増)と前年度比横這いであった(前年度1.9%減)。

(2)経常利益

経常利益は、4兆8,074億円の赤字となったが、前年度よりも赤字幅が縮小した(前年度は5兆7,029億円の赤字)。

これは、株式市況の低迷の中、株式等売却損および株式等償却が増えて株式等関係損益の損失超過額が増加したものの、個別貸倒引当金繰入額および貸出金償却が大幅に減少したことなどによる。

(3)当期利益

当期利益は、4兆8,515億円の赤字となり、3年連続の赤字となった(前年度4兆1,989億円の赤字)。

注1.
14年度決算における「全国銀行」は、都市銀行7行(みずほ、東京三菱、UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)53行、信託銀行8行(三菱信託、みずほ信託、UFJ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、三井アセット信託、りそな信託)、長期信用銀行2行の134行である。
なお、当年度から、東京スター銀行、三井アセット信託銀行、新生銀行、あおぞら銀行を集計に加えた。

(第1表) 損益状況 (単位:億円、%)

 平成14年度
(134行ベース)
平成13年度
(133行ベース)
計数前年度比増減率計数増減率
経常収益177,917△24,261△12.0198,342△14.1
資金運用収益120,623△23,520△16.3141,272△11.6
役務取引等収益20,6421,3096.819,1623.4
特定取引収益5,0031,32135.93,6634.4
その他業務収益17,1203,95530.013,02216.6
その他経常収益10,619△6,713△38.716,945△48.6
信託報酬3,909△615△13.64,275△13.5
経常費用225,991△32,513△12.6255,37212.9
資金調達費用26,902△18,601△40.944,480△32.8
役務取引等費用7,3944155.96,74410.1
特定取引費用21△10△31.921△95.8
その他業務費用6,62662010.35,8785.5
営業経費69,934△245△0.368,957△2.9
その他経常費用115,110△14,692△11.3129,28968.4
経常利益△48,0748,252△57,029
(資金運用益・注2)93,721△4,919△5.096,7933.3
(業務純益)46,71120.045,596△1.9
特別利益4,41368518.43,580△50.1
特別損失6,004△777△11.56,675△37.8
税引前当期利益△49,6659,714△60,124
法人税・住民税・事業税2,208△540△19.72,648△42.9
法人税等調整額△3,35917,670△20,783
当期利益△48,515△7,417△41,989
注1.
平成14年度の前年度比、増減率は、134行ベースに遡及調整して算出したため、平成13年度計数(133行ベース)との比較とは一致しない。
注2.
資金運用益=資金運用収益-資金調達費用

(参考)個別行の決算状況 (単位:行)

 黒字行赤字行
黒字行うち増益行うち減益行
業務純益129(130)76(68)53(62)5(3)
経常利益87(76)61(28)26(48)47(57)
当期利益86(75)61(33)25(42)48(58)
注.
平成14年度は134行ベース、( )内は平成13年度(133行ベース)の実績。

2.リスク管理債権額(銀行勘定)

平成15年3月末における銀行勘定のリスク管理債権の総額(破綻先債権額、延滞債権額、3カ月以上延滞債権額、貸出条件緩和債権額)は、大幅に減少し、34兆3,062億円(前年度末比7兆1,268億円、17.2%減)となった。
また、総貸出に占める割合は、1.11%ポイント低下して、7.80%となった。

(第2表) リスク管理債権額(銀行勘定)(単位:億円、%)

 平成15年3月末
(134行ベース)
平成14年3月末
(133行ベース)
計数前年度末比増減率計数
破綻先債権額21,625△8,070△27.227,455
延滞債権額156,742△63,769△28.9212,305
3カ月以上延滞債権額4,932△1,059△17.75,038
貸出条件緩和債権額159,7621,6301.0153,579
リスク管理債権総額343,062△71,268△17.2398,379
(貸出金総額に対する比率)(7.80)(△1.11) (8.73)
注.
平成15年3月末の前年度末比、増減率は、134行ベースに遡及調整して算出したため、平成14年3月末計数(133行ベース)との比較とは一致しない。以下、参考表も同じ。

(参考)金融再生法第7条に基づく「資産の査定」額(銀行勘定)(単位:億円、%)

 平成15年3月末
(134行ベース)
平成14年3月末
(133行ベース)
計数前年度末比増減率計数
破産更生債権56,011△16,565△22.869,098
危険債権128,166△63,349△33.1183,891
要管理債権163,0789470.6156,564
正常債権4,326,756△287,138△6.24,535,339

3.利回り・利鞘(国内業務)

国内業務部門の利回りをみると、預貸金利鞘は、貸出金利回り(A)が前年度比0.10%ポイント低下したものの、預金債券等原価(C)がこれを上回って前年度比0.14%ポイント低下したことから、0.66%と前年度比0.04%ポイント拡大した。

また、総資金利鞘は、資金運用利回り(B)、資金調達原価(D)がともに低下したものの、資金運用利回りの低下幅が資金調達原価のそれを上回ったことから、0.36%と前年度比0.01%ポイント縮小した。

(第3表) 資金運用利回り・資金調達原価および利鞘(国内業務)(単位:%、ポイント)

 平成14年度
(134行ベース)
前年度比平成13年度
(133行ベース)
貸出金利回り(A)1.90△0.101.99
有価証券利回り0.87△0.251.13
コールローン等利回り0.21△0.080.29
資金運用利回り(B)1.53△0.161.68
預金債券等利回り0.10△0.070.17
預金利回り0.08△0.060.14
経費率1.14△0.071.21
人件費率0.50△0.050.55
物件費率0.58△0.020.60
預金債券等原価(C)1.24△0.141.37
コールマネー等利回り0.35△0.230.58
資金調達原価(D)1.17△0.151.31
預貸金利鞘(A)-(C)0.660.040.62
総資金利鞘(B)-(D)0.36△0.010.37
注.
平成14年度の前年度比は、134行ベースに遡及調整して算出したため、平成13年度計数(133行ベース)との比較とは一致しない。

4.主要勘定(末残)

(1)資金調達

預金は、国内業務部門では増加したものの、国際業務部門では海外業務の縮小などから大幅に減少し、預金全体では、524兆9,957億円(前年度末比3兆492億円、0.6%減)と4年ぶりに減少に転じた。
譲渡性預金は、27兆8,277億円(同6兆4,415億円、18.8%減)と減少した。

(2)資金運用

貸出金は、国内業務部門では、住宅ローンを中心とする個人向け貸出や地方公共団体向けが増加した。一方、企業向け貸出は、設備資金を中心に引き続き低迷していることに加え、不良債権の売却・償却を積極的に進めたことなどにより減少したため、国内の貸出金全体では減少となった。また、国際業務部門も海外業務の縮小などから大幅に減少した。この結果、貸出金全体では439兆7,760億円(前年度末比25兆3,578億円、5.5%減)と6年連続の減少となった。

有価証券は、株式が減少したものの国債および社債が大幅に増加したことから、166兆7,942億円(同6兆8,631億円、4.3%増)と増加に転じた。

(第4表) 主要勘定(末残)(単位:億円、%)

 平成15年3月末
(134行ベース)
平成14年3月末
(133行ベース)
計数前年度末比増減率計数増減率
預金5,249,957△30,492△0.65,235,3532.3
譲渡性預金278,277△64,415△18.8332,454△30.9
債券157,952△64,916△29.1180,814△17.1
コールマネー等442,67084,38523.6347,702△2.6
借用金142,685△37,163△20.7174,236△11.9
調達勘定計6,271,543△112,602△1.86,270,561△1.6
負債合計7,214,297△197,001△2.77,267,808△5.3
資本合計248,396△56,381△18.5293,023△20.1
貸出金4,397,760△253,578△5.54,563,184△3.8
有価証券1,667,94268,6314.31,569,927△11.0
国債769,708115,46517.6635,449△10.6
地方債91,129△9,165△9.199,817△1.4
社債220,99626,65013.7192,3050.9
株式231,906△112,149△32.6343,727△22.4
その他の証券352,83446,46715.2298,624△6.3
コールローン等157,97363,80767.890,413△35.0
運用勘定計6,223,676△121,140△1.96,223,524△6.4
資産合計7,462,694△253,382△3.37,560,833△6.0
注.
平成15年3月末の前年度末比、増減率は、134行ベースに遡及調整して算出したため、平成14年3月末計数(133行ベース)との比較とは一致しない。

5.自己資本比率

国際統一基準採用行(17行)をみると、単体ベース、連結ベースともに全行が8%以上であった。
国内基準採用行(117行)をみると、単体ベース116行、連結ベース(注)は108行が4%以上であったが、1行のみ単体・連結ベースともに4%未満であった。

注.
連結財務諸表規則に基づく重要性の原則を適用して、都市銀行1行、信託銀行3行、地方銀行II4行の計8行は、連結財務諸表を作成していない。

(第5表) 自己資本比率 (単位:行)

   15年3月末
(134行ベース)
14年3月末
(133行ベース)
13年3月末
(136行ベース)
国際統一基準単体8%以上172126
8%未満000
連結8%以上172126
8%未満000
国内基準単体4%以上116112110
4%未満100
連結4%以上108106105
4%未満100

6.営業経費・職員数・店舗数

営業経費は、前年度に引き続きリストラ等合理化・効率化を一層進めたことにより人件費が減少し、前年度比245億円、0.3%減となった(なお、実勢をみる観点から、一部銀行の合併により平成13年度計数を遡及調整した場合には、14年度は前年度比2,086億円、2.9%減となる。)。

職員数・店舗数をみると、職員数は前年度末比5.1%減、店舗数も同4.3%減とそれぞれ減少した。

(第6表)営業経費・職員数・店舗数

(1)営業経費 (単位:億円、%)

 平成14年度
(134行ベース)
前年度比増減率平成13年度
(133行ベース)
増減率
営業経費69,934△245△0.368,957△2.9
うち人件費32,405△323△1.032,202△4.1
うち物件費34,2031430.433,414△1.7
うち税金3,326△65△1.93,339△4.0
注.
平成14年度の前年度比、増減率は、134行ベースに遡及調整して算出したため、平成13年度計数(133行ベース)との比較とは一致しない。

(2)職員数・店舗数 (単位:人、店、%)

 平成15年3月末
(134行ベース)
前年度末比増減率平成14年3月末
(133行ベース)
増減率
職員数321,186△17,188△5.1332,730△5.6
店舗数14,415△644△4.314,952△2.2
注.
平成15年3月末の前年度末比、増減率は、134行ベースに遡及調整して算出したため、平成14年3月末計数(133行ベース)との比較とは一致しない。

以上


〔参考表〕平成14年度決算の状況(連結ベース)

1.損益状況

(1)経常利益

経常利益は、4兆6,375億円の赤字となり、2年連続の赤字となった(前年度5兆4,822億円の赤字)。

(2)当期純利益

当期純利益は、4兆9,378億円の赤字となり、3年連続の赤字となった(前年度4兆1,257億円の赤字)。

注.
連結の計数は、連結財務諸表規則に基づく重要性の原則を適用して、連結財務諸表を作成していない都市銀行1行、信託銀行3行、地方銀行II4行および他の銀行の被連結銀行である地方銀行1行、地方銀行II3行を除いた122行ベースで集計した。
以下の第2、3表および第4表も同じ。

(第1表)連結損益状況 (単位:億円、%)

 平成14年度
(122行ベース)
平成13年度
(122行ベース)
計数前年度比増減率計数
経常収益209,879△38,890△15.6242,916
資金運用収益125,891△28,928△18.7151,032
役務取引等収益27,3743121.226,471
経常費用256,254△48,253△15.8297,738
資金調達費用27,957△24,681△46.951,081
役務取引等費用6,9443124.76,560
経常利益△46,3759,363△54,822
税金等調整前当期純利益△48,11210,251△57,474
法人税・住民税・事業税3,020△2,210△42.35,152
法人税等調整額△2,76519,357△22,107
当期純利益△49,378△7,166△41,257
注.
平成14年度の前年度比、増減率は、遡及調整して算出したため、平成13年度計数との比較とは一致しない。

2.リスク管理債権額(銀行勘定)

平成15年3月末における銀行勘定のリスク管理債権の総額(破綻先債権額、延滞債権額、3カ月以上延滞債権額、貸出条件緩和債権額)は、34兆9,573億円(前年度末比7兆8,816億円、18.4%減)となった。
また、総貸出に占める割合は、1.11%ポイント低下して、7.97%となった。

(第2表) 連結のリスク管理債権額(銀行勘定)(単位:億円、%)
 平成15年3月末
(122行ベース)
平成14年3月末
(122行ベース)
計数前年度末比増減率計数
破綻先債権額22,769△8,335△26.828,587
延滞債権額162,014△67,870△29.5219,715
3カ月以上延滞債権額5,189△1,153△18.25,356
貸出条件緩和債権額159,599△1,457△0.9154,541
リスク管理債権総額349,573△78,816△18.4408,200
(貸出金総額に対する比率)(7.97)(△1.11) (8.88)
注.
平成15年3月末の前年度末比、増減率は、遡及調整して算出したため、平成14年3月末計数との比較とは一致しない。
以下の第3表および第4表も同じ。

(第3表)連結主要勘定(末残)(単位:億円、%)

 平成15年3月末
(122行ベース)
平成14年3月末
(122行ベース)
計数前年度末比増減率計数
預金5,193,110△134,827△2.55,257,377
譲渡性預金270,520△71,780△21.0330,369
債券158,162△70,887△30.9186,503
コールマネー等443,20180,90022.3347,115
借用金101,001△32,483△24.3127,688
調達勘定計6,165,995△229,077△3.66,249,053
負債合計7,348,265△231,613△3.17,384,481
資本合計238,610△54,342△18.5278,842
貸出金4,383,370△332,655△7.14,596,395
有価証券1,638,18943,6642.71,551,440
コールローン等132,20632,64232.895,812
運用勘定計6,153,766△256,349△4.06,243,648
資産合計7,625,697△279,738△3.57,695,909

3.連結キャッシュ・フローの状況(間接法)

営業活動によるキャッシュ・フローは、12兆9,464億円の収入となり、投資活動によるキャッシュ・フローは、12兆2,389億円の支出となった。ま た、財務活動によるキャッシュ・フローは、2兆2,920億円の支出となった。この結果、現金及び現金同等物期末残高は、前年度に比べ2兆9,171億円低下し、31兆9,852億円となった。

(第4表)連結キャッシュ・フロー(間接法)(単位:億円)
 平成14年度
(122行ベース)
平成13年度
(122行ベース)
計数前年度比計数
営業活動によるキャッシュ・フロー129,46434,01492,264
投資活動によるキャッシュ・フロー△122,389△241,802108,201
財務活動によるキャッシュ・フロー△22,920△9,564△10,878
現金及び現金同等物期末残高319,852△29,171335,649

以上

本件に関する照会先
木佐森、加藤 Tel 03-5252-3778