都市銀行(特定取引勘定設置銀行5行)

 都市銀行の平成23年度決算をみると、資金運用益は、資金運用収益・資金調達費用ともに減少したものの、収益の減少が費用の減少を上回ったことから減益となったため、全体では2年連続の減益となった。
 経常利益は、資金運用益が減益となったものの、国内業務部門において、与信関係費用が大幅に減少したほか株式等償却も減少し、また、国際業務部門において、外国為替売買損益の収益超過額が大幅に増加したほか、国債等債券売却益および役務取引等収益も増加したこと等から、全体では2兆2,212億円(前年度比2,960億円、15.4%増)の増益となった。当期純利益は、経常利益が増益となったものの、法人税および法人税等調整額(費用)が増加したこと等から、1兆5,673億円(同550億円、3.4%減)の減益となった。
 業容面(末残)をみると、預金が前年度末比0.9%増、貸出金が同3.1%増となった。

損益状況

資金運用益
 資金運用益は3兆5,104億円(前年度比970億円、2.7%減)の減益となった。内訳をみると、国内業務部門では、日銀の金融緩和政策を受けて年度を通じて貸出金利が低下し、貸出金利息が減少したことを主因として、2兆8,362億円(同1,230億円、4.2%減)の減益となった。また、国際業務部門では、アジア向貸出を中心に貸出残高が増加したことを主因に貸出金利息が増加した結果、6,742億円(同260億円、4.0%増)の増益となった。
(国内業務部門)
 資金運用収益をみると、金利スワップ受入利息が増加したものの、日銀の金融緩和政策を受けて年度を通じて貸出金利が低下し、また、企業の資金需要も低調に推移したことから、貸出金利息が2兆3,581億円(前年度比1,915億円、7.5%減)と減少した。また、有価証券利息配当金も債券市場金利の低下により6,855億円(同184億円、2.6%減)と減少したことから、全体では3兆2,665億円(同2,039億円、5.9%減)と減少した。
 資金調達費用をみると、預金残高(平残)は増加したものの、預金金利の低下等により、預金利息は1,495億円(前年度比685億円、31.4%減)と減少し、譲渡性預金利息も金利低下および残高(平残)の減少により272億円(同77億円、22.0%減)と減少したこと等から、全体では4,304億円(同809億円、15.8%減)と減少した。この結果、国内業務部門における資金運用益は2兆8,362億円(同1,230億円、4.2%減)の減益となった。
(国際業務部門)
 資金運用収益をみると、金利スワップ受入利息は831億円(前年度比883億円、51.5%減)と減少したものの、アジア向貸出を中心に貸出残高が増加(平残)したことから貸出金利息は6,882億円(同1,209億円、21.3%増)と増加し、また、預け金利息は701億円(同158億円、29.1%増)と増加したほか、有価証券利息配当金は残高(平残)が増加したことから3,790億円(同141億円、3.9%増)と増加した。この結果、全体では1兆3,336億円(同798億円、6.4%増)と増加した。
 資金調達費用をみると、借用金残高(平残)の減少を主因として借用金利息が2,471億円(前年度比109億円、4.2%減)と減少したものの、その他の支払利息が556億円(同279億円、101.0%増)と増加したことに加え、預金残高(平残)および譲渡性預金残高(平残)が増加したことに伴い、預金利息は1,436億円(同212億円、17.3%増)、譲渡性預金利息は669億円(同38億円、6.0%増)とそれぞれ増加したことから、全体では6,594億円(同538億円、8.9%増)と増加した。この結果、国際業務部門における資金運用益は、6,742億円(同260億円、4.0%増)の増益となった。
役務取引等収益・費用
 国内業務部門においては、為替手数料収支の収益超過額が減少したものの、その他の役務取引等収支の収益超過額が増加した。国際業務部門においては、海外の融資関連手数料が増加したこと等から、その他の役務取引等収支の収益超過額が増加したほか、為替手数料収支の収益超過額も増加した。この結果、全体の収益超過額は1兆586億円(前年度比467億円、4.6%増)と増加した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国内業務部門では、収益超過額が増加したものの、国際業務部門では、収益超過額が減少したが、国際業務部門の減少が国内業務部門の増加を上回ったことから、全体の収益超過額は2,447億円(前年度比1,538億円、38.6%減)と減少した。
その他業務収益・費用
 国内業務部門では、国債等債券売却益が減少したことを主因に減少したものの、国際業務部門では、外国為替売買損益の収益超過額が大幅に増加したほか、債券市場金利の低下を受けて国債等債券売却益が増加したことにより、国債等債券関係損益の収益超過額が増加したことから、全体の収益超過額は、7,516億円(前年度比2,284億円、43.6%増)と増加した。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益は、株式等償却が大幅に減少したことを主因に1,499億円の損失超過(前年度は2,671億円の損失超過)と損失超過額が減少した。また、貸出金償却は1,580億円(前年度比1,170億円、42.5%減)と大幅に減少したほか、今期から新たな会計基準の適用を受けて、貸倒引当金戻入益(522億円)および償却債権取立益(995億円)の計上区分が特別利益からその他経常収益に変更された。この結果、その他経常収支の損失超過額は3,948億円(前年度は6,992億円の損失超過)と減少した。
営業経費
 営業経費は、海外人件費の増加を主因に人件費が増加したほか、業務拡大に伴うシステム投資等に係る費用の増加により、物件費も増加したこと等から、全体では2兆9,745億円(前年度比296億円、1.0%増)と増加した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は7兆6,847億円(前年度比19億円、0.0%増)、経常費用は5兆4,635億円(同2,942億円、5.1%減)となり、経常利益は2兆2,212億円(同2,960億円、15.4%増)の増益となった(増益6行)。また、特別利益は189億円(同1,345億円、87.7%減)、特別損失は637億円(同128億円、25.1%増)となったことから、税引前当期純利益は2兆1,764億円(同1,488億円、7.3%増)の増益となった。当期純利益は、法人税等が増加したことに加え、法人税率の引下げを受けて繰延税金資産の取崩しが行われたことにより法人税等調整額(費用)が増加したことから、1兆5,673億円(同550億円、3.4%減)の減益となった(増益3行、減益3行)。
 なお、業務純益は2兆8,111億円(前年度比820億円、3.0%増)の増益となった(増益4行、減益2行)。国内業務粗利益は3兆8,271億円(同1,084億円、2.8%減)、国際業務粗利益は1兆7,710億円(同1,294億円、7.9%増)となった。

 

利回り・利鞘

(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.08%ポイント低下して1.45%、有価証券利回りは同0.07%ポイント低下して0.53%、コールローン等利回りは同0.04%ポイント低下して0.67%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.11%ポイント低下して、1.00%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.03%ポイント低下して0.07%、コールマネー等利回りは同0.03%ポイント低下して0.37%、経費率は同横ばいの0.86%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.06%ポイント低下して、0.85%となった。なお、資金調達利回りは、同0.03%ポイント低下して、0.13%となった。
 以上の結果、国内業務部門における総資金利鞘(資金運用利回り-資金調達原価)は前年度比0.05%ポイント縮小して0.15%、うち、経費部分を除いた総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は同0.08%ポイント縮小して0.87%となった。
(国際業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.05%ポイント上昇して1.87%、有価証券利回りは同0.04%ポイント低下して1.62%、コールローン利回りは同0.26%ポイント上昇して1.52%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.16%ポイント低下して1.66%となった。
 資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比0.01%ポイント上昇して0.42%、コールマネー利回りは同0.06%ポイント上昇して0.83%、借用金利息利回りは同0.04%ポイント低下して3.31%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.06%ポイント低下して0.82%となった。
 以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.10%ポイント縮小して0.84%となった。

 

資金調達

 預金は、末残でみると、国内業務部門では258兆8,221億円(前年度末比4,198億円、0.2%増)、国際業務部門では32兆4,671億円(同2兆2,627億円、7.5%増)と増加した。この結果、全体では291兆2,893億円(同2兆6,825億円、0.9%増)と増加した。内訳を見ると、当座預金は24兆6,209億円(同9,386億円、4.0%増)、普通預金は142兆8,198億円(同2兆6,338億円、1.9%増)、外貨預金は8兆9,308億円(同6,491億円、7.8%増)と増加し、定期預金は102兆6,210億円(同9,967億円、1.0%増)と増加した。
 平残でみると、国内業務部門では248兆6,302億円(前年度比5兆6,529億円、2.3%増)と増加し、国際業務部門では33兆8,891億円(同4兆957億円、13.7%増)と増加した。この結果、全体では282兆5,193億円(同9兆7,486億円、3.6%増)と増加した。
 譲渡性預金は、末残では30兆5,161億円(前年度末比2兆9,114億円、10.5%増)と増加し、平残では30兆9,875億円(前年度比2,007億円、0.6%減)と減少した。

 

資金運用

 貸出金は、末残でみると、国内業務部門では、企業の資金需要が低調に推移したことにより、170兆16億円(前年度末比2,526億円、0.1%減)と減少し、国際業務部門では、39兆9,251億円(同6兆6,344億円、19.9%増)と増加した。この結果、全体では209兆9,267億円(同6兆3,818億円、3.1%増)と増加した。
 平残でみると、国内業務部門では168兆980億円(前年度比3兆2,704億円、1.9%減)と減少し、国際業務部門では36兆7,880億円(同5兆7,108億円、18.4%増)と増加した。この結果、全体では204兆8,860億円(同2兆4,404億円、1.2%増)と増加した。
 銀行勘定のリスク管理債権は、破綻先債権額が1,401億円(前年度末比314億円、18.3%減)、延滞債権額が2兆6,260億円(同1,646億円、6.7%増)、3カ月以上延滞債権額が958億円(同616億円、39.2%減)、貸出条件緩和債権額が1兆2,841億円(同595億円、4.9%増)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は4兆1,461億円(同1,310億円、3.3%増)となり、貸出金総額に占める比率は前年度比0.01%ポイント上昇して、1.98%となった。
 金融再生法第7条にもとづき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が4,281億円(前年度末比949億円、18.1%減)、危険債権が2兆5,081億円(同2,407億円、10.6%増)、要管理債権が1兆3,799億円(同21億円、0.2%減)、正常債権が229兆5,629億円(同6兆6,948億円、3.0%増)となった。
 有価証券は、末残でみると、株式が10兆9,213億円(前年度末比1,838億円、1.7%減)と減少したものの、国債が112兆6,915億円(同11兆3,013億円、11.1%増)と増加したことから、全体では166兆2,664億円(同15兆7,866億円、10.5%増)と増加した。平残でも、151兆8,659億円(前年度比13兆595億円、9.4%増)と増加した。

 

自己資本

 資本金は、5兆9,369億円(前年度末比横ばい)となり、資本剰余金は8兆9,332億円(同横ばい)となった。また、利益剰余金は5兆2,168億円(同1兆657億円、25.7%増)となった。
 以上のほか、株価の影響を受けて、その他有価証券評価差額金は5,985億円の評価差益(前年度末比3,316億円、124.2%増)と増加したこと等から、純資産の部合計は21兆297億円となった。

 

[担当:井出野]