都市銀行(特定取引勘定設置銀行6行)

都市銀行の平成16年度決算をみると、資金運用益は、有価証券利息配当金や預け金利息などが増加したものの、資金需要の低迷による貸出金利息の減少などから収益が減少したことに加え、預金利息の増加等により資金調達費用が増加したことから、資金運用収益は減少し減益となった。経常利益は、一部の銀行では当初の計画を超える不良債権処理を進めたことなどから赤字となったものの、全体では、一般貸倒引当金の純取崩し等から業務純益が増加し、2,551億円の黒字と4年ぶりに黒字に転じた。また、当期純利益も1,157億円の黒字と5年ぶりに黒字に転じた。
業容面をみると、資金調達では預金が前年度末比1.2%増、資金運用では貸出金が同3.8%減となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆7,441億円(前年度比2,378億円、6.0%減)と減益となった。

国内業務部門

資金運用収益をみると、有価証券利息配当金は5,094億円(前年度比618億円、13.8%増)と増加したほか、金利スワップ受入利息も591億円(同207億円、54.1%増)と増加したものの、貸出金利回りが低下(同0.05%ポイント低下)したことに加え、残高(平残)が減少(同4.5%減)したことから、貸出金利息は2兆9,791億円(同2,481億円、7.7%減)と減少した。この結果、全体では3兆6,043億円(同1,650億円、4.4%減)と減少した。

資金調達費用をみると、預金全体の残高(平残)は増加(同2.4%増)したものの、定期預金は減少(同0.7%減)したことに加え、金利水準も低下したことから、預金利息は674億円(同145億円、17.7%減)と減少した。また、債券利息・差金償却は683億円(同276億円、28.7%減)と減少したほか、借用金利息も805億円(同187億円、18.9%減)と減少した。この結果、全体では3,373億円(同686億円、16.9%減)と減少した。

以上の結果、資金運用収益の減少額が資金調達費用のそれを上回ったことから、国内業務部門における資金運用益は3兆2,670億円(同963億円、2.9%減)と減益となった。

国際業務部門

資金運用収益をみると、貸出金の残高(平残)が減少(前年度比2.8%減)したものの、米国金利の上昇から、預け金利息が1,608億円(同528億円、48.9%増)と増加したほか、貸出金利息も4,910億円(同312億円、6.8%増)と増加した。一方、その他の受入利息が988億円(同529億円、34.9%減)となったことに加え、金利スワップ受入利息も1,060億円(同299億円、22.0%減)と減少した。この結果、全体では1兆4,626億円(同142億円、1.0%増)と増加した。

資金調達費用をみると、米国金利が上昇し、定期預金(平残)の増加(同14.8%増)から預金全体の残高(平残)も増加(同5.4%増)し、預金利息は4,070億円(同1,114億円、37.7%増)と増加した。また、借用金利息も2,540億円(同260億円、11.4%増)と増加した。この結果、全体では9,855億円(同1,557億円、18.8%増)と増加した。

以上の結果、全体では、資金調達費用の増加額が資金運用収益のそれを上回ったことから、国際業務部門における資金運用益は4,771億円(前年度比1,415億円、22.9%減)と減益となった。

役務取引等収益・費用
シンジケーションローン、投資信託や保険販売等の手数料収入が増えたことから、その他の役務収支の収益超過額が増加したほか、為替手数料収支の収益超過額も増加したことから、全体の収益超過額は1兆298億円(前年度比1,672億円、19.4%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国際業務部門において、上期に円安・ドル高傾向が見られたこと、および米国短期金利上昇から、通貨スワップ取引等で外国為替売買益(換算益)が生じた一方で、特定取引の部分で損失(評価損)が生じたこと等から、全体の収益超過額は2,815億円(前年度比3,306億円、54.0%減)となった。
その他業務収益・費用
国債等関係損益の収益超過額が減少したほか、金融派生商品損益が損失超過に転じたものの、外国為替売買損益の収益超過額が大幅に増加したことから、その他業務収支全体の収益超過額は6,490億円(前年度比2,209億円、51.6%増)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株式等売却益が減少したほか、一部の銀行では大口与信先が発行した優先株式を減損処理したことから株式等償却が増加し、損失超過額は1,610億円と、前年度の収益超過から損失超過に転じた(前年度は5,583億円の収益超過)。
また、不良債権処理を進めたことから貸出金償却は1兆4,116億円(同102億円、0.7%増)となり、個別貸倒引当金純繰入額は8,876億円(同2,694億円、23.3%減)と減少した。一方、景気回復傾向を踏まえ債務者区分の改善もあったことから、一般貸倒引当金は5,104億円の純取崩しとなった。
以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は前年度(3兆508億円の損失超過)に比べ減少したものの、2兆7,612億円(前年度比2,896億円、9.5%減)となった。
営業経費
営業経費は、人件費が9,567億円(前年度比1,799億円、15.8%減)、物件費が1兆5,873億円(同142億円、0.9%減)、税金が1,541億円(同34億円、2.3%増)となり、全体では2兆6,981億円(同1,907億円、6.6%減)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は8兆7,271億円(前年度比4,878億円、5.3%減)、経常費用は8兆4,721億円(同7,927億円、8.6%減)となり、経常利益は前年度の498億円の赤字から2,551億円の黒字と、4年ぶりに黒字となった(増益2行、減益行2行、黒字転換1行、経常損失2行)。また、減損損失709億円を含む特別損失が2,541億円(同1,622億円、39.0%減)あったものの、貸倒引当金の戻入れ益や一部の銀行で法人税に係る訴訟の還付金等により特別利益が7,056億円(同465億円、6.2%減)あったこと等から、税引前当期純利益は7,066億円となった。そして、繰延税金資産の取崩し等により法人税等調整額(税金費用)が前年度比で減少し5,872億円となったことから、当期純利益は前年度の6,526億円の赤字から1,157億円の黒字へと転換し、5年ぶりに黒字となった(増益1行、減益行3行、黒字転換1行、当期純損失2行)。

業務純益は、一般貸倒引当金の純取崩しが生じたこと等から、3兆6,670億円(前年度比7,061億円、23.8%増)と増益となった(増益5行、減益2行)。また、国内業務粗利益は、4兆2,806億円(同251億円、0.6%増)、国際業務粗利益は、1兆4,384億円(同2,024億円、12.3%減)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.05%ポイント低下して1.64%、有価証券利回りは同0.01%ポイント低下して0.55%、コールローン等利回りは同0.03%ポイント上昇して0.34%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.05%ポイント低下して、1.23%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.01%ポイント低下して0.06%、コールマネー等利回りは同0.04%ポイント低下して0.22%となり、経費率は同0.05%ポイント低下して、0.85%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.06%ポイント低下して、0.80%となった。
以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.01%ポイント拡大して0.43%となった。

国際業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.26%ポイント上昇して2.88%、有価証券利回りは同0.12%ポイント低下して3.31%、コールローン利回りは0.43%ポイント上昇して1.90%となった。この結果、資金運用利回り全体では、0.10%ポイント低下して2.77%となった。
資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比0.31%ポイント上昇して1.32%、コールマネー利回りは同0.42%ポイント上昇して1.72%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.23%ポイント上昇して1.87%となった。

以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.33%ポイント縮小して0.89%となった。

資金調達

預金は、末残でみると、国際部門では外貨預金等が減少したものの、国内部門で流動性預金が増加したことから、全体では259兆8,240億円(前年度末比3兆513億円、1.2%増)と増加した。預金の内訳を見ると、定期預金は87兆7,787億円(同6,995億円、0.8%減)と減少したが、普通預金は120兆7,529億円(同3兆2,889億円、2.8%増)となった。また、平残では、国内部門(前年度比2.4%増)および国際部門(同5.4%増)ともに増加したことから、全体でも252兆5,930億円(同6兆7,399億円、2.7%増)と増加した。

譲渡性預金は、末残では20兆8,187億円(前年度末比2,700億円、1.3%減)と減少したが、平残は23兆760億円(前年度比1兆7,630億円、8.3%増)と増加した。

資金運用

貸出金は、国内部門についてみると、住宅ローンは着実に増加したものの、企業向け貸出は資金需要が引続き低迷したことに加え、不良債権の売却・償却を進めたこと等から減少し、全体では182兆7,671億円(前年度末比8兆7,429億円、4.6%減)と減少した。一方、国際部門については、17兆1,384億円(同8,692億円、5.3%増)と増加した。この結果、貸出金全体の末残は199兆9,056億円(同7兆8,737億円、3.8%減)と減少した。なお、平残は、202兆2,561億円(前年度比9兆2,872億円、4.4%減)と減少した。

銀行勘定のリスク管理債権については、破綻先債権額が1,225億円(前年度末比1,031億円、45.7%減)、延滞債権額が3兆6,135億円(同1兆235億円、22.1%減)、3ヵ月以上延滞債権額が1,365億円(同721億円、34.5%減)、貸出条件緩和債権額が2兆2,038億円(同2兆7,533億円、55.5%減)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は銀行勘定で6兆764億円(同3兆9,519億円、39.4%減)であった。

金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準ずる債権が8,788億円(前年度末比1,846億円、17.4%減)、危険債権が3兆1,159億円(同9,016億円、22.4%減)、要管理債権が2兆3,403億円(同2兆8,253億円、54.7%減)、正常債権が215兆3,394億円(同2兆4,279億円、1.1%減)であった。

有価証券は、株式が(前年度末比1兆3,364億円、7.1%減)減少したほか、外国証券(6,945億円、4.2%減)も減少したものの、社債(同2兆237億円、23.9%増)が増加したほか、国債(同1兆332億円、1.7%増)も増加した結果、全体では増加し、末残は109兆8,704億円(同1兆6,700億円、1.5%増)となった(平残は前年度比13.6%増)。

預け金は、国内部門で増加(前年度末比14.0%増)したことに加え、国際部門でも増加(同11.6%増)したことから、末残は23兆7,046億円(同2兆7,362億円、13.0%増)となった。また平残でも、8兆9,954億円(前年度比8,265億円、10.1%増)となった。

自己資本

資本金は、4行で増資が行われた結果、4兆9,914億円(前年度末比6,650億円、15.4%増)となった。
資本剰余金は4兆5,406億円(同1兆373億円、18.6%減)となったが、利益剰余金は2兆20億円(同1兆4,071億円、236.5%増)となった。

以上のほか、株式等評価差額金が1兆5,661億円と評価益となったこと等から、資本勘定全体では13兆6,633億円(同1兆1,953億円、9.6%増)となった。

担当:岡島