地方銀行 (特定取引勘定設置銀行12行)

地方銀行の平成16年度決算をみると、資金運用益は、資金運用収益および資金調達費用がともに減少したものの、前者の減少額が後者のそれを上回ったため、前年度比2.2%の減少となった。

経常利益は、一部の銀行で個別貸倒引当金純繰入額および貸出金償却がともに大幅に減少したこと等から、4年ぶりに黒字(9,231億円の黒字)となった(前年度969億円の赤字)。また、当期純利益は、5年ぶりの黒字(6,870億円の黒字)となった(前年度6,470億円の赤字)。
なお、業容面をみると、預金は微増、貸出金はほぼ横ばいとなった。

  • 本分析は、預金保険法第102条第1項第3号措置の認定を受けた特別危機管理銀行1行を含んでいる。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆2,589億円(前年度比775億円、2.3%減)となり、減益となった。

資金運用収益をみると、有価証券利息配当金は、有価証券投資額の増加から7,177億円(同295億円、4.3%増)と増加したものの、貸出金利息は、国内金利の低下から2兆7,702億円(同1,210億円、4.2%減)と減少した。この結果、資金運用収益全体では、3兆5,408億円(同796億円、2.2%減)となった。

次に資金調達費用をみると、コールマネー利息が171億円となったものの、預金利息が、国内金利の低下や定期預金の減少等により1,071億円(同74億円、6.4%減)となったことから、資金調達費用全体では、2,819億円(同21億円、0.7%減)となった。

役務取引等収益・費用
投信販売関連手数料の増加等によりその他の役務収支の収益超過額が増加したことから、収益超過額は4,199億円(前年度比304億円、7.8%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益が大幅に増加したことから、収益超過額は144億円(前年度比58億円、67.1%増)となった。
その他業務収益・費用
金融派生商品の収益超過額が22億円と減少(前年度120億円)したこと等から、その他業務収支は、475億円(前年度比72億円、13.2%減)の収益超過となった。
その他経常収益・費用
個別貸倒引当金純繰入額が4,948億円(前年度比4,086億円、45.2%減)、貸出金償却が1,814億円(同2,899億円、61.5%減)といずれも大幅に減少した。一般貸倒引当金は、昨年度は純繰入となったが(1,068億円)、本年度は889億円の純取崩しとなった。また、株式等関係損益が1,040億円の収益超過となった。この結果、その他経常収支は、5,056億円の損失超過となったが、損失超過額は前年度(1兆4,889億円)に比べ大幅に減少した。
営業経費
人件費等が減少したことから、2兆3,131億円(前年度比869億円、3.6%減)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は4兆6,165億円(前年度比1,178億円、2.5%減)、経常費用は3兆6,933億円(同1兆1,379億円、23.6%減)となり、経常利益は9,231億円の黒字(前年度969億円の赤字)と4年ぶりの黒字となった(増益45行、減益12行、黒字転換3行、経常損失4行)。当期純利益は、経常利益が黒字となったこと、一部の銀行で法人税等調整額(税金費用)が大幅に減少したこと等から、6,870億円の黒字(同6,470億円の赤字)と5年ぶりの黒字となった(増益43行、減益13行、黒字転換4行、当期純損失4行)。

業務純益は、一般貸倒引当金が純取崩しとなったこと等から1兆5,604億円(前年度比1,835億円、13.3%増)となった(増益40行、減益22行、黒字転換2行)。また、国内業務粗利益は3兆5,618億円(同531億円、1.5%増)となり、国際業務粗利益は1,811億円(同407億円、18.4%減)となった。

利回り・利鞘(国内業務)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.07%ポイント低下して2.06%、有価証券利回りは同0.03%ポイント低下して1.06%、コールローン等利回りは同0.02%ポイント上昇して0.04%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.06%ポイント低下して1.70%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは同0.01%ポイント低下して0.04%、コールマネー等利回りは同0.08%ポイント低下して1.06%となった。また、経費率は、人件費率が低下したこと等から同0.03%ポイント低下して1.20%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.04%ポイント低下して1.26%となった。

以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.02%ポイント縮小して0.44%となった。

資金調達

預金は、定期性預金が減少したものの、流動性預金は増加したことから、末残で188兆2,221億円(前年度末比2兆9,450億円、1.6%増)となった。また、平残では183兆1,537億円(前年度比2兆3,735億円、1.3%増)となった。

譲渡性預金は、末残で3兆4,742億円(前年度末比438億円、1.3%増)となった。また、平残では4兆4,074億円(前年度比6,626億円、17.7%増)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門において住宅ローンは増加したものの、企業向け貸出が引き続き低迷したこと等から、末残で137兆3,718億円(前年度末比1,597億円、0.1%増)となった。また、平残は134兆3,269億円(前年度比3,762億円、0.3%増)となった。

銀行勘定のリスク管理債権についてみると、破綻先債権額は3,861億円(前年度末比2,082億円、35.0%減)となり、延滞債権額は4兆6,468億円(同9,451億円、16.9%減)、3カ月以上延滞債権額は654億円(同132億円、16.8%減)、貸出条件緩和債権額は2兆3,972億円(同7,583億円、24.0%減)となった。この結果、銀行勘定のリスク管理債権全体では、7兆4,956億円(同1兆9,248億円、20.4%減)となった。

なお、金融再生法第7条に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準じる債権は1兆4,875億円(同5,119億円、25.6%減)、危険債権は3兆7,315億円(同6,694億円、15.2%減)、要管理債権額は2兆3,660億円(同7,632億円、24.4%減)、正常債権は132兆7,152億円(同2兆432億円、1.6%増)となった(信託勘定の計数は除く)。

有価証券は、国債、社債、外国証券等が増加したことから、56兆9,977億円(前年度末比4兆784億円、7.7%増)となった。また、平残は53兆4,453億円(前年度比2兆8,315億円、5.6%増)となった。

自己資本

資本金は、期中に1行で増資、9行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われたことから、2兆3,612億円(前年度比234億円、1.0%減)となった。

  • 西日本銀行と福岡シティ銀行の合併に伴い、前年度比較は遡及調整を行っている。なお、合併時の西日本シティ銀行の資本金は、旧西日本銀行の資本金と同額。

資本勘定全体では、10兆3,615億円(同7,267億円、7.5%増)となった。

担当:小暮