信託銀行 (特定取引勘定設置銀行6行)

信託銀行の平成16年度決算をみると、その他業務収支が減少(前年度比724億円、71.8%減)したものの、役務取引等収支の増加(同658億円、35.7%増)、信託報酬の増加(同159億円、4.3%増)等から、業務純益は6,760億円(同313億円、4.9%増)と増益となった。また、株式等関係損益が減少となったこと等から経常利益は4,492億円(同274億円、5.7%減)となり、また、特別利益の減少等から当期純利益は2,475億円(同1,064億円、30.1%減)となった。

業容面をみると、銀行勘定における預金は減少(前年度末比1.7%減)した。信託勘定については、貸付信託が減少(同24.5%減)となったが、投資信託の増加(同15.0%増)、包括信託の増加(同21.7%増)等により、全体では増加(同5.0%増)した。また、貸出金は、銀行勘定(同2.7%減)、信託勘定(同15.8%減)ともに減少となった。

損益状況

信託報酬
財産管理部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託以外の信託)においては、投資信託および包括信託の増加に加えて、有価証券の信託の残高が増加(前年度末比2兆653億円、6.5%増)するとともに、金銭債権の信託の残高が増加(同2兆8,421億円、18.9%増)した。一方、長期金融部門(合同運用指定金銭信託、貸付信託)においては、貸付信託の残高が減少(同1兆3,074億円、24.5%減)した。以上から、信託報酬は、3,893億円(前年度比159億円、4.3%増)と増加した。
資金運用益
資金運用収益、資金調達費用ともに減少したが、前者の減少額が後者のそれを上回ったことから、資金運用益は、4,982億円(前年度比37億円、0.7%減)と減益となった。

国内業務部門

資金運用収益をみると、貸出金残高(平残)は増加(前年度比1.2%増)したものの、貸出金利回りが低下(同0.11%ポイント低下)したことから、貸出金利息は3,574億円(同283億円、7.3%減)と減少した。また、有価証券利回りは低下(同0.02%ポイント低下)したものの、有価証券残高(平残)が増加(同8.3%増)したことから、有価証券利息配当金は1,001億円(同51億円、5.4%増)と増加した。この結果、全体では4,910億円(同90億円、1.8%減)となった。

資金調達費用をみると、預金残高(平残)は減少(前年度比0.6%減)し、預金利回りも低下(同0.04%ポイント低下)したことから、預金利息は610億円(同119億円、16.3%減)と減少したほか、金利スワップ支払利息も24億円(同94億円、79.8%減)と減少し、その他の支払利息も288億円(同12億円、3.9%減)と減少した。この結果、全体では1,210億円(同246億円、16.9%減)と減少した。

以上の結果、資金運用収益の減少額が資金調達費用のそれを下回ったことから、国内業務部門における資金運用益は3,700億円(前年度比156億円、4.4%増)と増益となった。

国際業務部門

資金運用収益をみると、米国金利の上昇から貸出金利回りが上昇(前年度比0.18%ポイント上昇)したものの、貸出金残高(平残)が減少(同11.3%減)したことから貸出金利息は375億円(同18億円、4.5%減)と減少した。また、有価証券残高(平残)が減少(同11.1%減)し、有価証券利回りも横ばいであったことから、有価証券利息配当金は1,978億円(同240億円、10.8%減)と減少した。この結果、資金運用収益全体では、2,710億円(同213億円、7.3%減)となった。

資金調達費用をみると、預金残高(平残)が減少(前年度比11.8%減)したものの、米国金利の上昇から預金利回りが上昇(同0.59%ポイント上昇)したことから預金利息が447億円(同90億円、25.3%増)と増加した。また、金利スワップ支払利息は97億円(同90億円、1,320.3%増)と増加した。一方、コールマネー利息は42億円(同25億円、37.4%減)と減少した。この結果、資金調達費用全体では、1,428億円(同20億円、1.4%減)と減少となった。

以上の結果、全体では、資金運用収益の減少額が資金調達費用のそれを上回ったことから、国際業務部門における資金運用益は1,282億円(前年度比193億円、13.1%減)と減益となった。

役務取引等収益・費用
不動産等仲介取引やノンリコースローン等の増加、財産管理業務の収益増加等により、その他の役務収支の収益超過額が増加したことから、全体の収益超過額は2,504億円(前年度比658億円、35.7%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益が減少し、特定取引費用が増加したことから、全体の収益超過額は178億円(前年度比10億円、5.4%減)となった。
その他業務収益・費用
国債等関係損益の収益超過額が大幅に減少したこと等から、全体の収益超過額は285億円(前年度比724億円、71.8%減)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株式等売却益995億円(1,024億円、50.7%減)であったが、株式等売却損は55億円(852億円、93.9%減)、株式等償却は716億円(522億円、268.7%増)となったことから、収益超過額は224億円にとどまった(前年度918億円の収益超過)。
また、不良債権処理から、個別貸倒引当金繰入額が705億円(前年度比477億円、208.5%増)と増加した。なお、貸出金償却は722億円(同144億円、16.6%減)と減少した。
以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は1,875億円と前年度(1,198億円の損失超過)から拡大した。
営業経費
税金が250億円(前年度比60億円、31.7%増)と増加したものの、人件費が2,212億円(同370億円、14.3%減)、物件費が3,012億円(同47億円、1.5%減)と減少したことから、営業経費全体では5,475億円(同357億円、6.1%減)と減少した。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は1兆8,575億円(前年度比626億円、3.3%減)、経常費用は1兆4,082億円(同352億円、2.4%減)となり、経常利益は4,492億円(同274億円、5.7%減)となった(増益4行、減益3行、経常損失1行)。また、特別利益が729億円(同588億円、44.7%減)と減少したことから、税引前当期純利益は4,928億円(同367億円、6.9%減)となり、法人税等調整額(税金費用)が2,350億円となったことから、当期純利益は、2,475億円(同1,064億円、30.1%減)となった(増益5行、減益2行、当期純損失1行)。
業務純益は、役務取引等収支の大幅な増加(前年度比658億円、35.7%増)や信託報酬の増加(同159億円、4.3%増)等から6,760億円(同313億円、4.9%増)となった(増益6行、減益2行)。また、国内業務粗利益は1兆646億円(同1,157億円、12.2%増)、国際業務粗利益は1,196億円(同1,113億円、48.2%減)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.11%ポイント低下して1.26%、有価証券利回りは同0.02%ポイント低下して0.80%となった。この結果、資金運用利回りは、同0.06%ポイント低下して1.06%となった。
資金調達利回りをみると、預金債券等利回りは前年度比0.03%ポイント低下して0.18%、譲渡性預金利回りは同0.01%ポイント低下して0.03%となった。この結果、資金調達利回り(資金調達費用/資金調達勘定平残)全体では、同0.06%ポイント低下して0.26%となった。

以上の結果、総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度と同じ0.80%となった。

国際業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.18%ポイント上昇して2.48%、有価証券利回りは同0.01%ポイント上昇して3.44%、預け金利回りは同0.57%ポイント上昇して1.74%となった。この結果、資金運用利回りは、同0.32%ポイント上昇して3.11%となった。
資金調達利回りをみると、預金利回りが前年度比0.59%ポイント上昇して1.99%、譲渡性預金利回りは同0.10%ポイント低下して3.22%、借入金利回りは同0.02%ポイント上昇して1.70%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.21%ポイント上昇して1.58%となった。

以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.11%ポイント上昇して1.53%となった。

資金調達

預金は、末残でみると、国内部門(前年度末比1.6%減)、国際部門(同3.1%減)ともに減少したことから、全体では33兆7,248億円(同5,912億円、1.7%減)と減少となった。一方、平残においても、国内部門(前年度比0.6%減)、国際部門(同11.8%減)ともに減少したことから、全体では33兆6,009億円(同4,857億円、1.4%減)となった。
譲渡性預金は、末残では3兆9,678億円(前年度末比238億円、0.6%増)、平残では3兆8,998億円(前年度比117億円、0.3%増)となった。また、信託勘定借は、末残では6兆3,594億円(前年度末比7,171億円、10.1%減)、平残では、6兆8,826億円(前年度比176億円、0.3%減)となった。

信託勘定をみると、年金信託は31兆6,726億円(前年度末比3兆629億円、8.8%減)の減少に加えて、貸付信託が4兆363億円(同1兆3,074億円、24.5%減)と減少した。一方で、金銭信託(合同運用指定金銭信託、単独運用指定金銭信託および特定金銭信託)は88兆円(同1兆274億円、1.2%増)、有価証券の信託は33兆8,896億円(同2兆653億円、6.5%増)と増加したほか、投資信託は56兆7,693億円(同7兆4,034億円、15.0%増)、包括信託は29兆974億円(同5兆1,812億円、21.7%増)と増加した。この結果、信託勘定の負債合計額は、269兆8,212億円(同12兆8,304億円、5.0%増)と前年度に引続き増加した。

資金運用

貸出金は、末残でみると、国内部門(前年度末比2.7%減)、国際部門(同3.8%減)ともに減少したことから、全体では30兆4,069億円(同8,545億円、2.7%減)と減少となった。一方、平残においては、国内部門では増加(前年度比1.2%増)し、国際部門では減少(同11.3%減)したことから、全体では30兆5,141億円(同1,629億円、0.5%増)となった。
また、信託勘定(末残)をみると、貸出金は、4兆8,866億円(同9,171億円、15.8%減)と減少した。

リスク管理債権の残高についてみると、延滞債権額は、銀行勘定で4,532億円(前年度末比2,814億円、38.3%減)、信託勘定で311億円(同341億円、52.3%減)となり、貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で3,138億円(同2,960億円、48.5%減)、信託勘定で710億円(同461億円、39.3%減)と減少した。そのほか、破綻先債権額、3ヵ月以上延滞債権額においても銀行勘定、信託勘定がともに減少したことから、リスク管理債権の総額は、銀行勘定で7,946億円(同6,321億円、44.3%減)、信託勘定で1,125億円(同922億円、45.0%減)となった(信託勘定については、いずれも元本補填契約のある信託勘定の計数)。

なお、金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容(銀行勘定)は、それぞれ破産更生債権が894億円(前年度末比697億円、43.8%減)、危険債権が4,061億円(同2,611億円、39.1%減)、要管理債権額が3,158億円(同3,001億円、48.7%減)といずれも減少した。また、正常債権額は30兆9,238億円(同1,832億円、0.6%減)となった。

有価証券については、銀行勘定の末残では、国債が増加(前年度末比2,580億円、3.8%増)したものの、地方債の減少(同494億円、21.3%減)や、株式の減少(同943億円、2.8%減)、外国証券の大幅な減少(同1兆5,562億円、24.3%減)から、全体では17兆6,826億円(同5,013億円、2.8%減)となった(平残では18兆2,499億円、前年度比2,409億円、1.3%増)。一方、信託勘定では、株式(前年度末比6,534億円、3.6%減)、外国証券(同6,205億円、4.1%減)が減少したものの、国債の増加(同4兆7,775億円、27.0%増)等から、全体の末残は64兆7,662億円(同4兆9,978億円、8.4%増)となった。

自己資本

資本金は、期中に2行で転換社債型新株予約権付社債の転換が行われたことから、1兆5,464億円(前年度末比1億円増)となった。

資本剰余金は7,269億円(前年度末比1億円増)となったが、利益剰余金は、7,363億円(同1,408億円、23.6%増)となり、任意積立金が2,410億円(同1,530億円、173.7%増)と積み上げられた。以上のほか、株式等評価差額金の評価益が3,749億円(同716億円、23.6%増)と拡大したこと等から、資本勘定全体では3兆3,508億円(同2,122億円、6.8%増)となった。

担当:飯島