都市銀行(特定取引勘定設置銀行5行)

都市銀行の平成17年度決算をみると、資金運用益は、一部の銀行の特殊要因による有価証券利息配当金の増加や預け金利息の増加により、資金運用収益が資金調達費用を上回って増加したことから、増益となった。経常利益は、前期末で不良債権処理がほぼ終了したことにより個別貸倒引当金繰入額や貸出金償却が減少したことから、2兆6,562億円と大幅な増益となり、全行で黒字となった。また、当期純利益も2兆6,072億円と、過去最高益を記録した。
業容面(末残)をみると、資金調達では預金が前年度末比2.2%増、資金運用では貸出金が同3.8%増となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆7,935億円(前年度比461億円、1.2%増)と増益となった。

国内業務部門

資金運用収益をみると、貸出金残高(平残)が増加(前年度比2.0%増)に転じたが、利回りが低下(同0.17%ポイント低下)したことから、貸出金利息は2兆7,290億円(同2,534億円、8.5%減)と減少したものの、一部の銀行における再生専門子会社からの多額の配当という特殊要因があったことから、有価証券利回りが大幅に上昇(同0.27%ポイント上昇)し、有価証券利息配当金は7,872億円(同2,777億円、54.5%増)と増加したほか、金利スワップ受入利息も666億円(同75億円、12.7%増)と増加した。この結果、全体では3兆6,534億円(同456億円、1.3%増)と増加した。

資金調達費用をみると、預金全体の残高(平残)は増加(同7.1%増)したものの、低金利が続いたこと等から、預金利息は624億円(同51億円、7.6%減)と減少した。利回りの低下および残高の減少により、借用金利息は611億円(同195億円、24.2%減)、債券利息・差金償却は482億円(同201億円、29.4%減)といずれも減少した。この結果、全体では2,849億円(同525億円、15.6%減)と減少した。

以上の結果、有価証券利息配当金の増加から資金運用収益は増加し、一方、資金調達費用は減少したことから、国内業務部門における資金運用益は3兆3,685億円(同982億円、3.0%増)と増益となった。

国際業務部門

資金運用収益をみると、米国短期金利の上昇や円安による為替換算の影響もあって、貸出金の残高(平残)が増加(前年度比23.6%増)したことから、貸出金利息は8,415億円(同3,505億円、71.4%増)と増加した。また、外国証券の残高(平残)も増加(同22.8%増)したこと等から、有価証券利息配当金が7,705億円(同2,124億円、38.1%)と増加し、預け金利息も2,900億円(同1,292億円、80.4%増)と増加した。一方、金利スワップ受入利息は500億円(同559億円、52.8%減)と減少した。この結果、全体では2兆2,027億円(同7,401億円、50.6%増)と増加した。

資金調達費用をみると、米国短期金利の上昇や円安による為替換算の影響もあって、定期預金(平残)の増加(同19.3%増)から預金全体の残高(平残)も増加(同7.7%増)し、預金利息は8,242億円(同4,173億円、102.5%増)と増加した。また、その他の支払利息が1,251億円(同628億円、100.7%増)、譲渡性預金利息が680億円(同533億円、361.0%増)と増加した。この結果、全体では1兆7,777億円(同7,922億円、80.4%増)と増加した。

以上の結果、米国金利の長短スプレッドの縮小などが影響し、資金調達費用の増加額が資金運用収益のそれを上回ったことから、国際業務部門における資金運用益は4,251億円(前年度比521億円、10.9%減)と減益となった。

役務取引等収益・費用
投資信託や保険販売、シンジケートローン組成等の手数料収入が増えたことから、その他の役務収支の収益超過額が増加したこと等から、全体の収益超過額は1兆2,050億円(前年度比1,748億円、17.0%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国際業務部門において、円安の影響による通貨スワップ取引の評価損の増加等から、全体の収益超過額は715億円(前年度比2,100億円、74.6%減)と減益となった。
その他業務収益・費用
下期の長期金利の上昇やこれに伴う保有ポートフォリオのデュレーションの短期化を行った銀行があったことから、国債等関係損益が損失超過に転じたものの、ドル高による通貨スワップ取引の為替換算益の増加等により、外国為替売買損益の収益超過額が増加したことから、その他業務収支全体の収益超過額は6,737億円(前年度比247億円、3.8%増)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益をみると、株式等売却益は減少したものの、相場の回復から株式等償却が大幅に減少したことから、収益超過額は3,523億円と、前年度の損失超過から収益超過に転じた(前年度は1,610億円の損失超過)。
また、前期末において不良債権処理がほぼ終了したことから、貸出金償却は2,111億円(同1兆2,010億円、85.1%減)と大幅に減少し、個別貸倒引当金は2,209億円の純取崩しとなった(同8,880億円の純繰入れ)。一方、一般貸倒引当金は1,513億円の純繰入れであった(前年度は、5,104億円の純取崩し)。
以上の結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は前年度(2兆7,616億円の損失超過)に比べ大幅に減少し、3,464億円(前年度比2兆4,153億円、87.5%減)となった。
営業経費
営業経費は、人件費が9,629億円(前年度比48億円、0.5%増)、物件費が1兆6,394億円(同505億円、3.2%増)、税金が1,551億円(同9億円、0.6%増)となり、全体では2兆7,575億円(同562億円、2.1%増)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は9兆3,727億円(前年度比6,412億円、7.3%増)、経常費用は6兆7,166億円(同1兆7,597億円、20.8%減)となり、経常利益は2兆6,562億円(同2兆4,009億円、940.6%増)となった(増益4行、黒字転換2行)。また、減損損失448億円を含む特別損失が1,371億円(同1,170億円、46.0%減)あったものの、貸倒引当金の戻入れ益等により特別利益が1兆30億円(同2,970億円、42.1%増)あったこと等から、税引前当期純利益は3兆5,221億円(同2兆8,149億円、398.0%増)となった。法人税等調整額(税金費用)が前年度比で増加し8,671億円となったものの、法人税等について繰越欠損金による控除が行われたことから、当期純利益は2兆6,072億円(同2兆4,911億円、2145.7%増)と、過去最高益を記録した(増益4行、黒字転換2行)。
業務純益は、一般貸倒引当金の積増しもあって、2兆9,998億円(前年度比6,678億円、18.2%減)と減益となった(増益2行、減益4行)。また、国内業務粗利益は、4兆3,721億円(同877億円、2.0%増)、国際業務粗利益は、1兆3,922億円(同463億円、3.2%減)となった。

利回り・利鞘

国内業務部門

資金運用利回りをみると、有価証券利回りは前年度比0.27%ポイント上昇して0.82%、コールローン等利回りは同0.11%ポイント上昇して0.45%となったものの、貸出金利回りは同0.17%ポイント低下して1.47%となったことから、資金運用利回り全体では、同0.02%ポイント低下して、1.21%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.02%ポイント低下して0.04%、コールマネー等利回りは同0.07%ポイント低下して0.15%となり、経費率は同0.02%ポイント低下して、0.83%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.03%ポイント低下して、0.77%となった。
以上の結果、総資金利鞘は、前年度比0.01%ポイント拡大して0.44%となった。

国際業務部門

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比1.11%ポイント上昇して4.00%、有価証券利回りは同0.42%ポイント上昇して3.73%、コールローン利回りは同1.68%ポイント上昇して3.58%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.86%ポイント上昇して3.63%となった。

資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比1.16%ポイント上昇して2.47%、コールマネー利回りは同1.59%ポイント上昇して3.31%、また、借用金利回りは同0.02%ポイント上昇して3.85%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同1.05%ポイント上昇して2.92%となった。
以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は、前年度比0.19%ポイント縮小して0.71%となった。

資金調達

預金は、末残でみると、外貨預金が減少したものの、普通預金が増加したことから、全体では265兆6,691億円(前年度末比5兆6,831億円、2.2%増)と増加した。預金の内訳を見ると、普通預金は126兆5,095億円(同5兆6,991億円、4.7%増)、定期預金は88兆969億円(同2,211億円、0.3%増)と増加し、外貨預金は10兆3,280億円(同1兆1,051億円、9.7%減)と減少となった。また、平残では、国内業務部門(前年度比7.1%増)および国際業務部門(同7.7%増)ともに増加したことから、全体でも270兆8,868億円(同18兆1,324億円、7.2%増)と増加した。

譲渡性預金は、末残では20兆8,595億円(前年度末比408億円、0.2%増)と増加したが、平残は22兆22億円(前年度比1兆739億円、4.7%減)と減少した。

資金運用

貸出金は、国内業務部門についてみると、住宅ローンは着実に増加したこと、公的部門向け貸出が増加したこと、企業向け貸出が増加した銀行もあったこと等から全体では184兆9,117億円(前年度末比2兆19億円、1.1%増)と増加した。一方、国際業務部門については、22兆6,620億円(同5兆5,236億円、32.2%増)と増加した。この結果、貸出金全体の末残は207兆5,738億円(同7兆5,255億円、3.8%増)と増加した。また、平残は、210兆1,899億円(前年度比7兆7,975億円、3.9%増)と増加した。

銀行勘定のリスク管理債権については、破綻先債権額が1,159億円(前年度末比72億円、5.9%減)、延滞債権額が1兆9,333億円(同1兆6,856億円、46.6%減)、3カ月以上延滞債権額が716億円(同650億円、47.6%減)、貸出条件緩和債権額が1兆8,455億円(同3,595億円、16.3%減)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は3兆9,665億円(同2兆1,173億円、34.8%減)であった。

金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が4,674億円(前年度末比4,132億円、46.9%減)、危険債権が1兆7,411億円(同1兆3,791億円、44.2%減)、要管理債権が1兆9,172億円(同4,245億円、18.1%減)、正常債権が225兆6,266億円(同10兆1,474億円、4.7%増)であった。

有価証券は、国債(前年度末比6兆9,239億円、10.9%減)が減少したものの、外国証券(同2兆3,664億円、15.1%増)、社債(同2兆2,843億円、21.7%増)および市況の回復から株式(同1兆5,289億円、8.8%増)が増加し、また、その他の証券(同3兆8,280億円、22.1%増)も増加した結果、全体では増加し、末残は110兆8,500億円(同9,522億円、0.9%増)となった(平残は前年度比6.8%増)。

預け金は、国際業務部門で増加(前年度末比11.1%増)したものの、国内業務部門で減少(同28.3%減)したことから、末残は20兆7,459億円(同2兆9,608億円、12.5%減)となった。平残では、10兆6,107億円(前年度比1兆6,141億円、17.9%増)となった。

自己資本

資本金は、都市銀行どうしの合併があったことから、3兆7,328億円(前年度末比1兆2,644億円、25.3%減)となり、資本剰余金は5兆6,800億円(同1兆1,394億円、25.1%増)となった。また、利益剰余金は3兆6,738億円(同1兆6,721億円、83.5%増)となった。

以上のほか、株式等評価差額金が3兆3,690億円(同1兆8,027億円、115.1%増)と評価益となったこと等から、資本勘定全体では16兆9,598億円(同3兆2,900億円、24.1%増)となった。

担当:諸江