地方銀行(特定取引勘定設置銀行12行)

地方銀行の平成17年度決算をみると、資金運用益は、資金運用収益および資金調達費用がともに増加したものの、有価証券利息配当金が増加したことから、前者の増加額が後者のそれを上回ったため、前年度比0.3%の若干の増加となった。

経常利益は、資金調達費用が増加したものの、一部の銀行で個別貸倒引当金繰入額が減少したこと等から、1兆1,115億円の黒字となった。また、当期純利益についても、8,410億円と、過去最高益を記録した。
なお、業容面をみると、預金、貸出金ともに微増となった。

  • 本分析は、預金保険法第102条第1項第3号措置の認定を受けた特別危機管理銀行1行を含んでいる。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、3兆2,700億円(前年度比111億円、0.3%増)となり、増益となった。

資金運用収益をみると、貸出金利息は、国内金利の低下から2兆7,212億円(同490億円、1.8%減)と減少したものの、有価証券利息配当金は、有価証券利回りの上昇および有価証券投資額の増加から8,463億円(同1,286億円、17.9%増)と増加した。この結果、資金運用収益全体では、3兆6,560億円(同1,152億円、3.3%増)となった。

次に資金調達費用をみると、国内金利は低下したが、米国短期金利の上昇や円安に伴う為替換算等から預金利息が1,455億円(同384億円、35.9%増)、コールマネー利息が339億円(同168億円、98.4%増)と増加したこと等から、資金調達費用全体では、3,860億円(同1,041億円、36.9%増)となった。

役務取引等収益・費用
投資信託等の販売手数料の増加によりその他の役務収支の収益超過額が増加したことから、収益超過額は4,880億円(前年度比680億円、16.2%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益が減少したことから、収益超過額は105億円(前年度比40億円、27.6%減)となった。
その他業務収益・費用
国債等債券関係損益が損失超過となったが、その他業務収支全体では、226億円(前年度比249億円、52.5%減)の収益超過となった。
その他経常収益・費用
貸出金償却が1,872億円(前年度比58億円、3.2%増)と増加になったものの、個別貸倒引当金純繰入額が3,454億円(同1,494億円、30.2%減)と大幅な減少となったほか、一般貸倒引当金は、189億円の純取崩しとなった。また、債権売却損などのその他の経常費用も1,074億円(同258億円、19.4%減)と減少した。その他、株式等関係損益が1,630億円(同590億円、56.7%増)の収益超過となった。この結果、その他経常収支の損失超過額は、3,451億円となり、前年度(5,056億円)に比べ大幅に減少した。
営業経費
事務委託費を中心に物件費等が増加したことから、2兆3,352億円(前年度比221億円、1.0%増)となった。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は4兆8,692億円(前年度比2,527億円、5.5%増)、経常費用は3兆7,576億円(同643億円、1.7%増)となり、経常利益は1兆1,115億円(同1,884億円、20.4%増)の黒字(前年度9,231億円の黒字)となった(増益45行、減益14行、黒字転換2行、経常損失3行)。

当期純利益は、一部の銀行で法人税等調整額(税金費用)等が増加したものの、経常利益が増益となったことに加え、貸倒引当金の戻入れ等により特別利益が増加したことから、8,410億円(前年度比1,540億円、22.4%増)と、過去最高益を記録した(増益42行、減益17行、黒字転換2行、当期純損失3行)。

業務純益は、有価証券利息配当金が増加したものの、資金調達費用が増加したこと等から1兆5,231億円(前年度比373億円、2.4%減)となった(増益28行、減益31行、赤字1行)。また、国内業務粗利益は3兆6,355億円(同737億円、2.1%増)となり、国際業務粗利益は1,573億円(同238億円、13.2%減)となった。

利回り・利鞘(国内業務)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.08%ポイント低下して1.98%、有価証券利回りは同0.05%ポイント上昇して1.11%、コールローン等利回りは同0.08%ポイント上昇して0.12%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.04%ポイント低下して1.66%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは同0.01%ポイント低下して0.03%、コールマネー等利回りは同0.54%ポイント低下して0.52%となった。また、経費率は、人件費率が低下したこと等から同0.01%ポイント低下して1.19%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.04%ポイント低下して1.22%となった。

以上の結果、総資金利鞘は、前年度比不変の0.44%となった。

資金調達

預金は、定期性預金が減少したものの、流動性預金は増加したことから、末残で189兆2,703億円(前年度末比1兆481億円、0.6%増)となった。また、平残では186兆3,273億円(前年度比3兆1,735億円、1.7%増)となった。

譲渡性預金は、末残で4兆1,090億円(前年度末比6,347億円、18.3%増)となった。また、平残では4兆6,871億円(前年度比2,797億円、6.3%増)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門において住宅ローンなどが増加したことに加え、企業向け貸出も増加に転じたことから、末残で140兆5,137億円(前年度末比3兆1,419億円、2.3%増)となった。また、平残では136兆8,591億円(前年度比2兆5,322億円、1.9%増)となった。

銀行勘定のリスク管理債権についてみると、破綻先債権額は3,150億円(前年度末比711億円、18.4%減)、となり、延滞債権額は4兆377億円(同6,091億円、13.1%減)、3カ月以上延滞債権額は470億円(同185億円、28.2%減)、貸出条件緩和債権額は1兆8,504億円(同5,468億円、22.8%減)となった。この結果、銀行勘定のリスク管理債権全体では、6兆2,502億円(同1兆2,454億円、16.6%減)となった。

なお、金融再生法第7条に基づき開示が義務づけられている資産査定の各区分の内容は、それぞれ破産更生債権及びこれらに準じる債権は1兆2,592億円(同2,283億円、15.3%減)、危険債権は3兆2,019億円(同5,295億円、14.2%減)、要管理債権額は1兆8,562億円(同5,098億円、21.5%減)、正常債権は137兆1,123億円(同4兆3,971億円、3.3%増)となった(信託勘定の計数は除く)。

有価証券は、市場の回復により株式が増加したことに加え、国債や外国証券等が増加したことから、末残で61兆8,472億円(前年度末比4兆8,495億円、8.5%増)となった。また、平残では57兆5,800億円(前年度比4兆1,346億円、7.7%増)となった。

自己資本

資本金は、当期中に8行で増資が、また、12行で転換社債型新株予約権付社債の転換等が行われたことから、2兆4,609億円(前年度比997億円、4.2%増)となった。また、株式等評価差額金が2兆2,219億円(同6,838億円、44.5%増)と評価益となり、資本勘定全体では、11兆8,641億円(同1兆5,025億円、14.5%増)となった。

担当:石井