以下は、都市銀行6行(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行64行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)47行、信託銀行7行(三菱UFJ信託、みずほ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、三井アセット信託、りそな信託)、新生銀行、あおぞら銀行の126行ベースで算出、分析したものである。

経理基準の主な変更等

  1. 特定取引勘定を設置している銀行は24行であった。
  2. 固定資産の減損会計は、平成14年8月9日付企業会計審議会「固定資産の減損に係る会計基準」および平成15年10月31日付企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」により、平成15年度から早期適用が認められているが、本年度から強制適用することとされた。なお、認識測定された減損損失は、損益計算書上「特別損失」に計上している。
  3. 平成17年3月16日付企業会計基準第3号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正」により、本年度から未認識年金資産を資産及び利益として認識することとされた(前期末から早期適用は可能)。これに伴い、本改正を適用した場合には、同日付企業会計基準適用指針第7号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正に関する適用指針」により、未認識年金資産は数理計算上の差異として、損益計算書上「営業経費」中の退職給付費用の減額の対象としている。

担当:加藤

概況

(以下は、銀行単体の決算をとりまとめたものである。)

全国銀行126行の平成17年度決算をみると、資金運用益は、資金運用収益が資金調達費用を上回って増加したため、8兆7,451億円(前年度比565億円、0.7%増)と、若干の増益となった。また、各種手数料等の受払収支を示す役務取引等利益は、2兆1,281億円(同3,351億円、18.7%増)と、増益となった。

経常利益は、以上に加えて、不良債権処理が進展して貸出金償却等が2兆円以上減少し、株式等関係収支も利益に転じたこと等から、4兆7,500億円(同2兆8,481億円、149.7%増)と、大幅な増益となった。

当期純利益は、経常利益が大幅な増益となったことに加え、貸倒引当金の戻入れ等により特別利益が増加した一方で、法人税等について繰越欠損金による控除が行われたこと等から、4兆2,033億円(同2兆9,090億円、224.7%増)と、過去最高益を記録した。

なお、参考までに業務純益をみると、5兆7,110億円(同7,322億円、11.4%減)と減益となったが、その要因は、前年度に一般貸倒引当金の大幅な取崩しがあったこと等による。
業容面(末残)は、預金が前年度末比で1.5%の増加、貸出金は同3.4%の増加、有価証券は同3.5%の増加となった。

損益状況

資金運用益
資金運用益は、8兆7,451億円(前年度比565億円、0.7%増)と、若干の増益となった。
このうち、資金運用収益は、11兆6,093億円(同9,575億円、9.0%増)と増加した。国内業務部門では、貸出金利息は減少したものの、一部に再生専門子会社の配当という特殊要因もあって、有価証券利息配当金が増加したことから、全体でも前年度比1.1%増加した。また、国際業務部門では、米国金利の上昇や円安に伴う為替換算等から、貸出金利息、有価証券利息配当金とも増加し、全体でも同41.3%増加した。
一方、資金調達費用は、2兆8,642億円(同9,010億円、45.9%増)と大幅に増加した。
国内業務部門では、低金利が続いたことから、預金利息や債券利息などが減少し、全体でも前年度比14.4%減少した。一方、国際業務部門では、米国金利の上昇や円安に伴う為替換算等から、預金利息などが大幅に増加し、全体でも同78.4%増加した。
以上から、資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では前年度比2.5%増加した一方、国際業務部門では同16.7%減少したが、国内業務部門の増益額が国際業務部門の減益額を上回ったことから、全体では、若干の増益となった。
役務取引等収益・費用
各種手数料等の受払収支をみると、為替手数料収支は前年度比若干の増加であったものの、その他の役務収支が、法人関係ではシンジケートローンの組成やコミットメントライン契約等が、また、個人関係では投資信託や年金保険の窓口販売等がいずれも好調であったことから大幅に伸び、全体の収益超過額は2兆1,281億円(同3,351億円、18.7%増)となった。
特定取引収益・費用
トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、収益超過額が1,160億円(同2,258億円、66.1%減)と大幅な減益となった。この要因としては、米国金利の上昇に伴う通貨スワップ取引の評価損失等が挙げられる。
その他業務収益・費用
米国金利の上昇に伴う通貨スワップの為替換算益等から、外国為替売買損益が大幅な収益超過となる一方、国債等債券関係損益は、国内・国際両業務部門において損失超過となった。このほか、金融派生商品(デリバティブ取引)関係損益が若干の収益超過となったことから、全体では7,603億円(同163億円、2.1%減)となった。
信託報酬
信託報酬は、3,849億円(同154億円、3.8%減)となった。
その他経常収益・費用
株式等関係損益は、国内の市況が改善したことから、6,623億円の収益超過となり、前年度(30億円の損失超過)に比べて大きく改善した。また、一般貸倒引当金繰入額は増加したものの、この間の不良債権処理の進展もあって、貸出金償却が前年度比1兆2,189億円減の4,975億円、個別貸倒引当金繰入額も同9,431億円減の5,425億円と、いずれも前年度に比べて大幅に減少した。このほか、債権売却損などのその他の経常費用も大幅に減少した。以上の結果、全体では、その損失超過額は8,587億円と、前年度に比べて2兆8,174億円減少した。
営業経費
事務委託費を中心に物件費等が増加したことから、6兆5,256億円(同1,034億円、1.6%増)と増加に転じた。
経常利益・当期純利益
以上の結果、経常収益は18兆262億円(同1兆1,075億円、6.5%増)、経常費用は13兆2,761億円(同1兆7,406億円、11.6%減)となり、経常利益は4兆7,500億円(同2兆8,481億円、149.7%増)と大幅な増益となった(増益92行、減益20行、黒字転換8行、経常損失6行)。当期純利益は、経常利益が大幅な増益となったことに加え、貸倒引当金の戻入れ等により特別利益が増加したこと、法人税等について繰越欠損金による控除が行われたこと等から、4兆2,033億円(同2兆9,090億円、224.7%増)と、過去最高益を記録した(増益85行、減益27行、黒字転換8行、当期純損失6行)。
なお、参考までに業務純益をみると、資金運用益や役務取引等利益の増加があったものの、一般貸倒引当金の積増し(前年度は大幅な取崩し)等から、5兆7,110億円(同7,322億円、11.4%減)と減益となった(増益53行、減益72行、赤字1行)。

利回り・利鞘(国内業務部門)

資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.14%ポイント低下の1.70%、有価証券利回りは同0.22%ポイント上昇して0.96%、コールローン等利回りは同0.15%ポイント上昇して0.43%となった。以上に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは、同0.02%ポイント低下して1.42%となった。

資金調達原価をみると、預金債券等利回りは同0.01%ポイント低下して0.05%(預金利回りは0.04%)、コールマネー等利回りは同0.09%ポイント低下して0.20%となった。また、人件費率・物件費率がともに低下したことから、経費率は同0.03%ポイント低下して1.04%となった。以上に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は同0.03%ポイント低下して1.02%となった。

以上のように、資金運用利回り、資金調達原価ともに低下したが、資金調達原価の低下が資金運用利回りの低下を上回ったことから、総資金利鞘は同0.01%ポイント拡大して0.40%となった。なお、預貸金利鞘は、貸出金利回りの低下を主因に、同0.11%ポイント縮小して0.60%となった。

資金調達

預金は、国内業務部門では、年度中、定期性預金は減少したが、流動性預金が増加し、全体でも増加した。一方、国際業務部門では、外貨預金は減少したが、海外店は定期預金を中心に増加し、全体でも増加した。この結果、末残では548兆6,374億円(前年度末比7兆8,737億円、1.5%増)となった。また、平残では550兆9,231億円(前年度比24兆1,338億円、4.6%増)となった。

譲渡性預金は、国際業務部門で増加が見られ、末残では31兆3,096億円(前年度末比1兆7,794億円、6.0%増)となり、平残では32兆6,703億円(前年度比1,034億円、0.3%減)となった。

債券は、末残では8兆7,598億円(前年度末比1兆2,336億円、12.3%減)となり、平残では9兆3,565億円(前年度比1兆6,463億円、15.0%減)となった。

資金運用

貸出金は、国内業務部門では、年度中、住宅ローンを中心とする個人向け貸出や、中央政府・地方公共団体等向け貸出が増加した。また、企業向け貸出も、不良債権の売却・償却がピークアウトしたことや、景気の回復基調から借入需要が一部に出始めたことから、概ね横這いとなった。これにより、国内業務部門全体としても増加した。また、国際業務部門では、年度中、アジア向け貸出の伸びや円安に伴う為替換算等から大幅に増加した。この結果、貸出金全体では、末残で428兆625億円(前年度末比13兆9,887億円、3.4%増)となった。また、平残では425兆9,201億円(前年度比13兆3,660億円、3.2%増)となった。

ここで、不良債権の状況として、銀行勘定のリスク管理債権額をみると、破綻先債権額は6,058億円(前年度末比1,350億円、18.2%減)、延滞債権額は7兆6,835億円(同2兆8,241億円、26.9%減)、3カ月以上延滞債権額は1,306億円(同889億円、40.5%減)、貸出条件緩和債権額は4兆5,413億円(同1兆647億円、19.0%減)であった。この結果、リスク管理債権額の総額は、12兆9,614億円(同4兆1,127億円、24.1%減)となり、貸出金総額に占める比率も同1.09%ポイント低下して3.03%となった。

また、金融再生法第7条に基づき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆3,154億円(同7,867億円、25.4%減)、危険債権が6兆2,799億円(同2兆3,612億円、27.3%減)、要管理債権が4兆6,311億円(同1兆955億円、19.1%減)、正常債権が442兆785億円(同18兆5,936億円、4.4%増)であった。

有価証券は、年度中、国債が減少した一方で、社債が増加したほか、市況の回復により株式が増加、また、円安に伴う為替換算等もあって外国証券が増加したことから、末残で207兆3,114億円(前年度末比7兆431億円、3.5%増)となった。また、平残では209兆1,932億円(前年度比13兆4,157億円、6.9%増)となった。

自己資本

当期中、地方銀行8行、第二地銀協地銀8行が増資を、また、第二地銀協地銀1行が減資を行い、地方銀行12行、第二地銀協地銀2行、信託銀行2行で転換社債型新株予約権付社債の転換等が行われたほか、都市銀行で2件、信託銀行で1件合併が行われた。この結果、資本金は9兆1,591億円(前年度末比1兆4,189億円、13.4%減)となった。また、資本勘定全体では、37兆3,058億円(同5兆8,710億円、18.7%増)と増加した。

担当:増田

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
参考経常利益の業態別内訳 (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益87,451
(565)
37,935
(461)
32,700
(111)
10,744
(7)
5,044
(62)
役務取引等収支21,281
(3,351)
12,050
(1,748)
4,880
(680)
926
(200)
3,176
(672)
特定取引収支1,160
(△2,258)
715
(△2,100)
105
(△40)

(-)
60
(△119)
その他業務収支7,603
(△163)
6,737
(247)
226
(△249)
△118
(△388)
234
(△50)
その他経常収支△8,587
(28,174)
△3,464
(24,153)
△3,451
(1,605)
△1,405
(1,010)
△601
(1,274)
信託報酬3,849
(△154)
162
(63)
8
(△3)

(-)
3,679
(△214)
営業経費65,256
(1,034)
27,575
(562)
23,352
(221)
7,532
(53)
5,595
(120)
経常利益47,500
(28,481)
26,562
(24,009)
11,115
(1,884)
2,614
(776)
5,997
(1,504)
当期純利益42,033
(29,090)
26,072
(24,911)
8,410
(1,540)
1,446
(558)
4,157
(1,682)
参考:業務純益57,110
(△7,322)
29,998
(△6,678)
15,231
(△373)
4,232
(△406)
6,712
(△48)
  • 上段は平成17年度計数、下段( )内は対前年度増減額。なお、りそな銀行と奈良銀行の合併に伴い、都市銀行と地方銀行IIの対前年度増減額は、遡及調整して算出した。