1.当中間期決算の背景

(1)当中間期中の経理基準の変更等

  1. 「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号平成19年3月30日)が平成20年度から適用されたことに伴い、従来、通常の賃貸借取引として費用処理されていた所有権移転外ファイナンス・リース取引については、原則としてオンバランス処理することとされた。借手のリース資産は、「有形固定資産」または「無形固定資産」中の「リース資産」に、リース債務は、「その他負債」中の「リース債務」に計上している。中間連結貸借対照表における貸手のリース債権及びリース投資資産は、「その他資産」に含めて表示している。
  2. 「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第25号平成20年10月28日)が公表され、時価の概念の明確化が図られたことを踏まえ、当中間期においては、「有価証券」中の変動利付国債等を市場価格に代えて経営者の合理的な見積りに基づく合理的に算定された価額をもって、評価している銀行がある。

 

(2)当中間期中の金融情勢

 平成20年度中間期の金融情勢をみると、短期金利については、日本銀行の4月から9月までのすべての金融政策決定会合において、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.5%前後で推移するよう促すとしたことから、概ね0.5%前後で安定的に推移した。

 一方、長期金利については、6月中旬にかけて、市場参加者のインフレ見通しの上方修正等から、1.8%台まで上昇したが、景気の先行きや米欧の金融機関の経営状況に対する懸念を反映して低下に転じ、1.4%台から1.5%台の範囲で推移した。

 株価は、6月中旬に、日経平均株価が1万4,000円台まで上昇したが、9月には、米欧の金融機関の経営状況に対する懸念を背景として大幅に下落し、当中間期末の日経平均株価は、11,259円86銭と前年度末(12,525円54銭)比で1,265円68銭安となった(前中間期末16,785円69銭)。

 また、外国為替市場では、円の対ドル相場は減価傾向をたどり、8月中旬には、110円台までいったん下落した。しかし、9月中旬の米リーマン・ブラザーズの経営破綻などの影響から反転し、中間期末の外国為替相場(スポットレート)は、1米ドル=104円76銭となり、前年度末(99円37銭)比で5円39銭の円安となった(前中間期末115円27銭)。

図1 国内主要金利等の推移

図2 海外主要金利等の推移

担当:福田

 

2.概況

(以下は、銀行単体をベースにとりまとめたものである。)

 全国銀行124行の平成20年度中間期決算をみると、資金運用益(算式は後掲(注)参照)は、資金運用収益、資金調達費用ともに減少したものの、費用が収益を上回って減少したため、4兆3,490億円(前中間期比484億円、1.1%増)と増益となった。

 経常利益は、役務取引等収支の減少や国債等債券関係損益の悪化、営業経費の増加等に加えて、景気減速による貸出金償却および貸倒引当金純繰入額の増加、ならびに国内外における金融市場の混乱等により株式等償却が増加したこと等から、4,173億円(同1兆3,462億円、76.3%減)と大幅な減益となった。

 中間純利益は、経常利益が減少したこと等から、4,824億円(注)(同7,362億円、60.4%減)と大幅な減益となった。

(注)
預金保険機構から足利銀行に実施された金銭贈与2,566億円を除いて集計。

 

 業容面では、預金は期中0.2%減、貸出金は同1.5%増であった。

 

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、4兆3,490億円(前中間期比484億円、1.1%増)と、前中間期比微増となった。内訳をみると、資金運用収益は6兆9,423億円(同3,172億円、4.4%減)となり、一方、資金調達費用は2兆5,933億円(同3,656億円、12.4%減)と、いずれも減少に転じたものの、費用が収益を上回って減少したことから増益となった。
 内訳をみると、国内業務部門では、有価証券利息配当金は減少したものの、貸出金残高の増加と利回りの上昇により貸出金利息が増加したこと等により、資金運用収益は増加した。一方、利回りの上昇による預金利息の増加等から資金調達費用も増加したが、資金運用収益を上回って資金調達費用に係る利回りが上昇したことから、資金運用益は前中間期比720億円の減益となった。また、国際業務部門では、貸出金残高は増加したものの利回りの低下により貸出金利息が減少し、有価証券利息配当金も大幅に減少したこと等から資金運用収益は減少した。しかし、預金利息が利回りの低下により大幅に減少したこと等から資金調達費用の減少が資金運用収益の減少を上回ったため、国際業務部門の資金運用益は都市銀行の増益を主因として前中間期比1,213億円の大幅な増益となった。
役務取引等収益・費用
 役務取引等収益・費用は、個人向けの投資信託の販売手数料が減少したこと等により、その収益超過額は8,904億円(前中間期比1,597億円、15.2%減)と減少した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国際業務部門における特定取引収益の減少と特定取引費用の増加を主因として、全体の収益超過額は603億円(前中間期比2,838億円、82.5%減)と大幅な減少となった。
その他業務収益・費用
 国債等債券関係損益は、前年の収益超過から損失超過に転じたが、外国為替売買損益の収益超過額が増加したことから、その他業務収益・費用全体の収益超過額は、863億円(前中間期比487億円、129.5%増)となった。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益は前年の収益超過から損失超過に転じた。引当金等は、国内外の景況感が悪化した影響等により、一般貸倒引当金繰入額、個別貸倒引当金純繰入額、貸出金償却のいずれについても繰入額等が増加した。その結果、その他経常収益・費用全体の損失超過額は、1兆6,265億円と前中間期(7,845億円の損失超過)に比べて大幅に増加した。
信託報酬
 信託報酬は、1,714億円(前中間期比204億円、10.7%減)となった。
営業経費
 営業経費は、人件費、物件費ともに増加し、全体では3兆5,135億円(前中間期比1,375億円、4.1%増)となった。
経常利益・中間純利益
 以上の結果、経常収益は9兆6,730億円(前中間期比6,570億円、6.4%減)、経常費用は9兆2,556億円(同6,893億円、8.0%増)となり、経常利益は4,173億円(同1兆3,462億円、76.3%減)と大幅な減益となった(増益6行、黒字転換4行、減益74行、損失40行)。
 中間純利益は、経常利益が減益となったことから、4,824億円(前中間期比7,362億円、60.4%減)と大幅な減益となった(増益10行、黒字転換6行、減益71行、純損失37行)。
 参考までにみると、業務純益は、2兆177億円(前中間期比5,407億円、21.1%減)と減益であった。一般貸倒引当金繰入額を除いた実質業務純益は2兆1,518億円(前中間期比4,732億円、18.0%減)と減益であった。
 なお、全国銀行の業態別の損益状況は表のとおりである。
利回り・利鞘(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りが前中間期比0.03%ポイント上昇して2.00%、一方、有価証券利回りは同0.04%ポイント縮小して1.21%、コールローン等利回りが同0.13%ポイント上昇して1.01%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.01%ポイント上昇して1.68%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りが同0.05%ポイント上昇して0.33%、コールマネー等利回りは前中間期比変わらず0.81%、経費率は前中間期比0.01%ポイント上昇して1.12%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.06%ポイント上昇して1.41%となった。
 以上の結果、預貸金利鞘は、同0.04%ポイント縮小して0.55%、総資金利鞘は、同0.05%ポイント縮小して0.27%となった。

 

資金調達

 預金は、期中、国内業務部門では、個人預金が定期性預金を中心に増加したが、法人預金、公金預金の減少から、全体では減少(0.2%減)となり、国際業務部門も減少(0.3%減)した。この結果、預金全体では、末残で564兆612億円(前期末比1兆2,131億円、0.2%減)と減少した。

 譲渡性預金は、末残で34兆6,497億円(同1兆1,045億円、3.3%増)となった。

 債券は、末残で5兆5,059億円(同3,979億円、6.7%減)となった。

 

資金運用

 貸出金は、期中、国内業務部門では微増(0.1%増)にとどまったが、国際業務部門での増加(16.7%増)を主因として、貸出金全体では、末残で452兆5,863億円(前期末比6兆6,108億円、1.5%増)となった。

 有価証券は、期中、国債は増加したものの、株式、外国証券等が減少したことから、全体では末残で184兆4,621億円(同3兆2,343億円、1.7%減)となった。

 リスク管理債権(銀行勘定の単体ベース)の残高をみると、破綻先債権額は1兆2,052億円(前期末比5,960億円、97.8%増)、延滞債権額は7兆3,776億円(同5,621億円、8.2%増)、3カ月以上延滞債権額は1,511億円(同417億円、38.1%増)、貸出条件緩和債権額は3兆1,741億円(同3,523億円、10.0%減)となった。この結果、リスク管理債権額全体では、11兆9,083億円(同8,476億円、7.7%増)となり、貸出金総額に占める割合は、前期末に比べて0.15%ポイント上昇して、2.63%となった。

 また、金融再生法第7条に基づき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆7,404億円(前期末比7,445億円、37.3%増)、危険債権が6兆1,253億円(同4,608億円、8.1%増)、要管理債権が3兆3,254億円(同3,119億円、8.6%減)となった。なお、正常債権は475兆6,612億円(同6兆5,575億円、1.4%増)となった。

 資本金は、9兆2,921億円(同902億円、1.0%減)となり、純資産の部合計では、その他有価証券評価差額金の減少等から32兆6,794億円(同2兆1,545億円、6.2%減)となった。

 なお、繰延税金資産(純額)は、4兆8,107億円(前期末比1兆1,734億円、32.3%増)となった。

担当:遠藤

(注)

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務純益=資金運用益+役務取引等収支+特定取引収支+その他業務収支+信託報酬-一般貸倒引当金繰入額-債券費-経費-金銭の信託運用見合費用
  • 国内業務=国内店の円建取引
  • 国際業務=国内店の外貨建取引+海外店の取引(円建対非居住者取引とオフショア勘定は国際業務に含む)

 

図3 全国銀行の経常利益・資金運用益の推移

 

表 経常利益の内訳(業態別) (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益43,490
(484)
18,567
(759)
16,738
(89)
5,072
(△228)
2,467
(△190)
役務取引等収支8,904
(△1,597)
5,113
(△537)
2,260
(△419)
381
(△112)
1,032
(△512)
特定取引収支603
(△2,838)
349
(△2,822)
57
(△21)

(-)
△96
(△200)
その他業務収支863
(487)
2,419
(1,917)
△1,139
(△1,160)
△371
(△296)
254
(429)
その他経常収支△16,265
(△8,421)
△9,485
(△4,950)
△3,567
(△1,323)
△1,465
(△904)
△861
(△191)
信託報酬1,714
(△204)
47
(△15)
4
(△0)

(-)
1,663
(△189)
営業経費35,135
(1,375)
15,182
(779)
12,406
(383)
3,881
(11)
3,037
(232)
経常利益4,173
(△13,462)
1,828
(△6,426)
1,946
(△3,218)
△265
(△1,551)
1,421
(△1,085)
中間純利益4,824
(△7,362)
3,365
(△3,008)
1,444
(△1,291)
△195
(△977)
889
(△1,025)
(参考)業務純益20,177
(△5,407)
11,415
(△1,873)
5,280
(△1,826)
1,087
(△800)
2,466
(△475)
注1.
上段は平成20年度中間期計数、下段( )内は対前中間期比増減額。
注2.
「中間純利益」は、預金保険機構から足利銀行に実施された金銭贈与2,566億円を除いて集計。