都市銀行(特定取引勘定設置銀行5行)

 都市銀行の平成22年度決算をみると、資金運用益は、資金運用収益・資金調達費用ともに減少したものの、国内業務部門・国際業務部門ともに収益の減少が費用の減少を上回ったことから、全体では減益となった。
 経常利益は、資金運用益が減益となったことに加えて、株式等償却が大幅に増加したものの、国債等債券売却益が大幅に増加し、与信関係費用も大幅に減少したこと等から、全体では増益となった。また、当期純利益も、経常利益が増益となったこと等から、増益となった。
 業容面(末残)をみると、資金調達では、預金が前年度末比3.5%増、資金運用では、貸出金が同2.2%減となった。

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、3兆6,073億円(前年度比2,401億円、6.2%減)の減益となった。内訳をみると、国内業務部門においては、政策金利の引下げ等の影響により貸出金利息が減少したことを主因として、2兆9,592億円(同1,344億円、4.3%減)の減益となった。また、国際業務部門においては、米欧政策金利が年度を通じて概ね横ばいで推移したこと等から、貸出金利息や有価証券利息配当金等が減少した結果、6,482億円(同1,057億円、14.0%減)と減益となった。
(国内業務部門)
 資金運用収益をみると、国債の増加を主因として有価証券残高(平残)が増加したことにより、有価証券利息配当金は7,039億円(前年度比492億円、7.5%増)と増加したものの、日銀の金融緩和政策や平成22年10月に行われた無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標の引下げ等を受けて貸出金利が低下し、企業の資金需要も低調に推移したことから、貸出金利息が2兆5,496億円(同3,110億円、10.9%減)と減少した。また、コールローン利息も344億円(同153億円、30.8%減)と減少した結果、全体では3兆4,704億円(同3,067億円、8.1%減)と減少した。
 資金調達費用をみると、預金および譲渡性預金残高(平残)は増加したものの、預金金利の低下等により預金利息は2,180億円(前年度比1,237億円、36.2%減)と減少し、譲渡性預金利息も349億円(同213億円、37.9%減)と減少した。また、コールマネー利息が397億円(同182億円、31.5%減)と減少したこと等から、全体では5,113億円(同1,723億円、25.2%減)と減少した。以上の結果、国内業務部門における資金運用益は2兆9,592億円(同1,344億円、4.3%減)の減益となった。
(国際業務部門)
 資金運用収益をみると、米欧の金融緩和政策や政策金利が年度を通じて概ね横ばいで推移したことを受けて市場金利が低下したことから、貸出金利息は5,672億円(前年度比1,005億円、15.0%減)と減少し、有価証券利息配当金も3,649億円(同556億円、13.2%減)と減少した。また、金利スワップ受入利息が1,714億円(同504億円、22.7%減)と減少し、その他の受入利息も722億円(同275億円、27.6%減)と減少した結果、全体では1兆2,537億円(同2,273億円、15.3%減)と減少した。
 資金調達費用をみると、譲渡性預金残高(平残)が増加したことに伴い、譲渡性預金利息は631億円(前年度比120億円、23.4%増)と増加したものの、借用金残高(平残)の減少を主因として、借用金利息が2,580億円(同513億円、16.6%減)と減少したほか、預金金利の低下を主因として預金利息が1,225億円(同368億円、23.1%減)と減少した。また、その他の支払利息が277億円(同275億円、49.9%減)と減少した結果、全体では6,055億円(同1,216億円、16.7%減)と減少した。以上の結果、国際業務部門における資金運用益は、6,482億円(同1,057億円、14.0%減)の減益となった。
役務取引等収益・費用
 国内業務部門においては、投資信託等の販売手数料は回復基調にあるものの、その他の役務収支の収益超過額が減少したほか、為替手数料収支の収益超過額も減少した。一方、国際業務部門においては、融資関連手数料等が増加したこと等から、その他の役務収支の収益超過額が増加したほか、為替手数料収支の収益超過額も増加した。この結果、全体の収益超過額は1兆119億円(前年度比119億円、1.2%増)と増加した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国内業務部門においては、収益超過額が半減したものの、国際業務部門においては、円高に伴い外貨調達に係る通貨スワップ取引関係費用が減少したこと等から、収益超過額は増加した。この結果、全体の収益超過額は3,985億円(前年度比126億円、3.3%増)と増加した。
その他業務収益・費用
 円高に伴う為替差損の増加により、外国為替売買損益の収益超過額は大幅に減少したものの、上期における内外債券市場金利の低下を受けて国債等債券売却益が大幅に増加したことにより、国債等債券関係損益の収益超過額は大幅に増加し、金融派生商品損益の損失超過額も大幅に改善したこと等から、その他業務収支全体の収益超過額は、5,232億円(前年度比4,406億円、533.3%増)と大幅に増加した。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益は、株価の下落や東日本大震災を受けて保有株式の減損処理が増加し、株式等償却が大幅に増加したことから、2,671億円の損失超過(前年度は626億円の収益超過)と収益超過から損失超過に転じた。一方、企業の大型倒産や倒産件数の減少に伴い、貸倒引当金繰入額は、全体で1,343億円(前年度比1,783億円、57.0%減)と大幅に減少し、貸出金償却も2,750億円(同2,271億円、45.2%減)と大幅に減少した。この結果、その他経常収支の損失超過額は、6,992億円(前年度は1兆62億円の損失超過)と大幅に減少した。
営業経費
 営業経費は、退職給付関係費用の減少等に伴い、人件費が減少したほか、システム・施設関連費用の圧縮により物件費も減少したこと等から、全体では2兆9,449億円(前年度比918億円、3.0%減)と減少した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は7兆6,828億円(前年度比3,480億円、4.3%減)となり、経常費用は5兆7,577億円(同9,697億円、14.4%減)となったことから、経常利益は1兆9,251億円(同6,217億円、47.7%増)の増益となった(増益6行)。また、特別利益は、一部の銀行において貸倒引当金の戻入が行われたこと等から、1,533億円(同113億円、6.8%減)となり、特別損失は509億円(同120億円、19.1%減)となったことから、税引前当期純利益は2兆276億円(同6,224億円、44.3%増)の増益となった。この結果、当期純利益は、法人税等調整額(税金費用)は増加したものの、1兆6,223億円(同5,496億円、51.2%増)の増益となった(増益6行)。
 なお、業務純益は2兆7,291億円(前年度比978億円、3.7%増)の増益となった(増益4行、減益2行)。国内業務粗利益は3兆9,355億円(同320億円、0.8%減)、国際業務粗利益は1兆6,416億円(同2,562億円、18.5%増)となった。

 

利回り・利鞘

(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.10%ポイント低下して1.53%、有価証券利回りは同0.09%ポイント低下して0.60%、コールローン等利回りは同0.17%ポイント低下して0.71%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.14%ポイント低下して1.11%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.06%ポイント低下して0.10%、コールマネー等利回りは同0.08%ポイント低下して0.40%、経費率は同0.04%ポイント低下して0.86%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.08%ポイント低下して0.91%となった。なお、資金調達利回りは同0.06%ポイント低下して0.17%となった。
 以上の結果、国内業務部門における総資金利鞘(資金運用利回り-資金調達原価)は前年度比0.06%ポイント低下して0.20%、うち、経費部分を除いた総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は同0.07%ポイント低下して0.95%となった。
(国際業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.15%ポイント低下して1.83%、有価証券利回りは同0.52%ポイント低下して1.67%、コールローン利回りは同0.17%ポイント上昇して1.27%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.30%ポイント低下して1.82%となった。
 資金調達利回りをみると、預金利回りは前年度比0.09%ポイント低下して0.41%、コールマネー利回りは同0.29%ポイント上昇して0.77%、借用金利息利回りは同0.15%ポイント低下して3.35%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.15%ポイント低下して0.88%となった。
 以上の結果、国際業務部門における総資金粗利鞘(資金運用利回り-資金調達利回り)は前年度比0.15%ポイント低下して0.93%となった。

 

資金調達

 預金は、末残でみると、国内業務部門では258兆4,023億円(前年度末比9兆1,688億円、3.7%増)、国際業務部門では30兆2,044億円(同7,112億円、2.4%増)と増加した。その結果、全体では288兆6,068億円(同9兆8,799億円、3.5%増)と増加した。内訳を見ると、当座預金は23兆6,824億円(同1兆4,093億円、6.3%増)、普通預金は140兆1,860億円(同8兆9,446億円、6.8%増)、外貨預金は8兆2,817億円(同887億円、1.1%増)と増加し、定期預金は101兆6,243億円(同7,901億円、0.8%減)と減少した。
 平残でみると、国内業務部門では242兆9,773億円(前年度比6兆3,526億円、2.7%増)と増加し、国際業務部門では29兆7,935億円(同2兆2,776億円、7.1%減)と減少した。この結果、全体では272兆7,707億円(同4兆750億円、1.5%増)と増加した。
 譲渡性預金は、末残では27兆6,047億円(前年度末比7,954億円、2.8%減)と減少し、平残では31兆1,882億円(前年度比2兆2,331億円、7.7%増)と増加した。

 

資金運用

 貸出金は、末残でみると、企業の資金需要が低調に推移したことにより、国内業務部門では170兆2,542億円(前年度末比6兆15億円、3.4%減)と減少し、国際業務部門では33兆2,907億円(同1兆3,948億円、4.4%増)と増加した。この結果、全体では203兆5,449億円(同4兆6,067億円、2.2%減)と減少した。
 平残でみると、国内業務部門では171兆3,684億円(前年度比9兆7,429億円、5.4%減)、国際業務部門では31兆772億円(同2兆7,639億円、8.2%減)と減少した。この結果、全体では202兆4,456億円(同12兆5,067億円、5.8%減)と減少した。
 銀行勘定のリスク管理債権については、破綻先債権額が1,715億円(前年度末比1,307億円、43.2%減)、延滞債権額が2兆4,614億円(同2,301億円、8.5%減)、3カ月以上延滞債権額が1,574億円(同892億円、130.6%増)、貸出条件緩和債権額が1兆2,246億円(同2,782億円、29.4%増)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は4兆151億円(同66億円、0.2%増)となり、貸出金総額に占める比率は前年度比0.04%ポイント上昇して、1.97%となった。
 金融再生法第7条にもとづき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が5,230億円(前年度末比1,779億円、25.4%減)、危険債権が2兆2,674億円(同1,677億円、6.9%減)、要管理債権が1兆3,821億円(同3,674億円、36.2%増)、正常債権が222兆8,682億円(同4兆9,507億円、2.2%減)となった。
 有価証券は、末残でみると、株価の下落を受けて株式が11兆1,051億円(前年度末比1兆406億円、8.6%減)と減少したものの、国債が101兆3,902億円(同16兆373億円、18.8%増)と増加したことから、全体では150兆4,798億円(同19兆6,384億円、15.0%増)と増加した。平残でも、138兆8,064億円(前年度比24兆6,674億円、21.6%増)と増加した。

 

自己資本

 資本金は、5兆9,369億円(前年度末比横ばい)となり、資本剰余金は8兆9,332億円(前年度末比7,593億円、9.3%増)となった。また、利益剰余金は4兆1,511億円(同1兆1,240億円、37.1%増)となった。以上のほか、株価の下落を受けて、その他有価証券評価差額金は2,669億円の評価差益(同5,892億円、68.8%減)と減少したこと等から、純資産の部合計は19兆7,973億円となった。

 

[担当:福田]