地方銀行 (特定取引勘定設置銀行12行)

 地方銀行の平成22年度決算をみると、資金運用益は、資金運用収益および資金調達費用がともに減少したものの、収益が費用を上回って減少したことから、2年連続の減益となった。
 経常利益は、国債等債券関係損益の収益超過額が増加したことに加え、与信関係費用が減少したことから、8,599億円(前年度比533億円、6.6%増)の増益となった。一方、当期純利益は、東日本大震災の影響により特別損失が増加したことから、5,428億円(同100億円、1.8%減)の減益となった。
 業容面(末残)をみると、預金は前年度末比2.5%増、貸出金は同1.8%増となった。

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、3兆2,354億円(前年度比256億円、0.8%減)の減益となった。
 資金運用収益をみると、国債を中心とした有価証券残高(平残)の増加に伴い、有価証券利息配当金が7,566億円(前年度比200億円、2.7%増)と増加したものの、資金運用収益の大半を占める貸出金利息は、金利低下の影響を大きく受けて2兆8,082億円(同1,682億円、5.7%減)と減少した。この結果、全体では、3兆6,069億円(同1,534億円、4.1%減)と減少した。
 次に、資金調達費用をみると、前年度に比べ金利水準が低下したこと等から、預金利息が2,603億円(前年度比1,231億円、32.1%減)、譲渡性預金利息が120億円(同64億円、34.6%減)とそれぞれ減少した。この結果、全体では3,714億円(同1,278億円、25.6%減)と減少した。
役務取引等収益・費用
 為替手数料収支は減少したものの、投資信託および年金保険販売の受入手数料等の増加によりその他の役務収支が増加したことから、全体の収益超過額は3,804億円(前年度比8億円、0.2%増)と増加した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、特定金融派生商品収益等が減少したことから、全体の収益超過額は44億円(前年度比42億円、48.9%減)と減少した。
その他業務収益・費用
 国債等債券売却損は増加したものの、国債等債券売却益がそれを上回って増加し、国債等債券関係損益の収益超過額が増加した結果、その他業務収益・費用全体の収益超過額は1,577億円(前年度比286億円、22.1%増)と増加した。
その他経常収益・費用
 個別貸倒引当金純繰入額は増加したものの、一般貸倒引当金純繰入額が大幅に減少したことから、貸倒引当金繰入額は2,714億円(前年度比358億円、11.7%減)と減少し、貸出金償却も1,074億円(同538億円、33.4%減)と減少した。この結果、その他経常収支の損失超過額は4,520億円と、前年度に比べ減少した(前年度は5,134億円の損失超過)。
営業経費
 営業経費は、人件費を中心に増加したことから、2兆4,665億円(前年度比77億円、0.3%増)となった。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は4兆6,767億円(前年度比1,517億円、3.1%減)、経常費用は3兆8,168億円(同2,050億円、5.1%減)となり、経常利益は8,599億円(同533億円、6.6%増)の増益となった(増益39行、減益24行)。当期純利益は、経常利益の増益に対し、東日本大震災による損失として貸倒引当金繰入額の積増し等が特別損失に計上されたことから、5,428億円(同100億円、1.8%減)の減益となった(増益33行、減益26行、黒字転換2行、当期純損失2行)。
 なお、業務純益は1兆3,818億円(前年度比261億円、1.9%増)の増益となった(増益35行、減益28行)。また、国内業務粗利益は3兆6,161億円(同80億円、0.2%増)となり、国際業務粗利益は1,632億円(同61億円、3.9%増)となった。

 

利回り・利鞘(国内業務部門)

 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.11%ポイント低下して1.83%、有価証券利回りは同0.07%ポイント低下して1.11%、コールローン等利回りは同0.03%ポイント低下して0.18%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.11%ポイント低下して1.56%となった。
 一方、資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.07%ポイント低下して0.12%、コールマネー等利回りは同0.15%ポイント上昇して1.31%となった。また、経費率は、同0.02%ポイント低下して1.10%となった。この結果、資金調達原価全体では、同0.08%ポイント低下して1.24%となった。
 以上の結果、総資金利鞘は前年度比0.03%ポイント低下して0.32%となった。

 

資金調達

 預金は、普通預金を中心に増加したことから、末残で212兆7,044億円(前年度末比5兆1,836億円、2.5%増)となった。また、平残では206兆8,953億円(前年度比5兆1,893億円、2.6%増)となった。
 譲渡性預金は、末残で6兆1,013億円(前年度末比4,225億円、7.4%増)となった。また、平残では7兆4,486億円(前年度比1兆993億円、17.3%増)となった。

 

資金運用

 貸出金は、地方公共団体向け貸出を中心に増加したことから、末残で157兆6,827億円(前年度末比2兆7,253億円、1.8%増)となった。また、平残では154兆695億円(前年度比1兆250億円、0.7%増)となった。
 銀行勘定のリスク管理債権についてみると、破綻先債権額は3,453億円(前年度末比1,003億円、22.5%減)となり、延滞債権額は3兆7,079億円(同1,525億円、4.3%増)、3カ月以上延滞債権額は460億円(同68億円、12.9%減)、貸出条件緩和債権額は7,195億円(同545億円、8.2%増)となった。この結果、リスク管理債権額の合計は、4兆8,190億円(同998億円、2.1%増)となり、貸出金総額に占める割合は、前年度末に比べ0.01%ポイント上昇して、3.06%となった。
 なお、金融再生法第7条にもとづき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容(信託勘定の計数は除く。)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権は1兆1,599億円(前年度末比895億円、7.2%減)、危険債権は2兆9,382億円(同1,296億円、4.6%増)、要管理債権額は7,656億円(同477億円、6.6%増)、正常債権は155兆3,619億円(同2兆3,748億円、1.6%増)となった。
 有価証券は、国債が増加したことから、末残で65兆5,208億円(前年度末比3兆7,511億円、6.1%増)となった。また、平残では63兆4,332億円(前年度比5兆2,752億円、9.1%増)となった。

 

自己資本

 資本金は、期中に1行で増資が行われたものの、泉州銀行と池田銀行の合併により消滅会社の資本金が減少したことから、2兆5,238億円(前年度末比519億円、2.0%減)となった。また、その他有価証券評価差額金が7,722億円の評価差益(同2,906億円、27.3%減)となったこと等から、純資産の部合計は、12兆3,146億円となった。

 

[担当:長谷川]