〔以下は、都市銀行6行(みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそな、みずほコーポレート、埼玉りそな)、地方銀行63行、地方銀行II(第二地方銀行協会加盟の地方銀行)42行、信託銀行6行(三菱UFJ信託、みずほ信託、中央三井信託、住友信託、野村信託、中央三井アセット信託)、新生銀行、あおぞら銀行の119行ベースで算出、分析したものである。〕

経理基準の主な変更等

  1. 「資産除去債務に関する会計基準」(企業会計基準第18号平成20年3月31日)および「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第21号平成20年3月31日)の適用により、有形固定資産の処分等に係る債務を「その他負債」中の「資産除去債務」に計上し、当該債務に係る費用は「営業経費」中の「物件費」に含めて表示している。
  2. 「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号平成20年12月26日)および「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号平成20年12月26日改正)の適用により、新たに負ののれんが生じた場合には「特別利益」として処理し、従前の負ののれんについては、「その他負債」中「その他の負債」に含めて表示している。
  3. 「持分法に関する会計基準」(企業会計基準第16号平成20年3月10日公表分)および「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第24号平成20年3月10日)の適用により、投資会社との会計処理の原則および手続の統一等が行われている。
  4. 「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号平成20年12月26日)の適用により、連結損益計算書に「少数株主損益調整前当期純利益」の科目を表示している。
  5. 「包括利益の表示に関する会計基準」(企業会計基準第25号平成22年6月30日)の適用により、連結損益計算書の欄外に「包括利益」を表示したほか、連結貸借対照表の「評価・換算差額等合計」を「その他の包括利益累計額合計」に変更している。

概況

 (以下は、銀行単体の決算を取りまとめたものである。)
 全国銀行119行の平成22年度決算をみると、資金運用益は、内外の政策金利が低位に推移したこと等により国際業務部門、国内業務部門ともに減益となったことから、8兆3,494億円(前年度比3,399億円、3.9%減)の減益となった。また、各種手数料等の受払収支を示す役務取引等収支は、1兆6,667億円(同186億円、1.1%増)と収益超過額は増加した。
 経常利益は、以上に加えて、株価の下落により株式等関係損益が収益超過から損失超過に転じたものの、上期における内外債券市場金利の低下により国債等債券関係損益の収益超過額が大幅に増加したほか、企業の大型倒産や倒産件数の減少により与信関係費用が減少したことから、3兆2,611億円(前年度比8,154億円、33.3%増)の増益となった。
 当期純利益は、2兆5,084億円(前年度比6,969億円、38.5%増)と2年連続で増益となった。
 なお、参考までに業務純益をみると、国債等債券関係損益が大幅に改善したこと等から、4兆9,471億円(前年度比1,422億円、3.0%増)の増益となった。
 業容面(末残)は、預金が前年度末比2.6%の増加、貸出金は同0.5%の減少、有価証券は同11.2%の増加となった。

 

損益状況

資金運用益
 資金運用益は、8兆3,494億円(前年度比3,399億円、3.9%減)と、前年度に比べ減益となった。
 資金運用収益は、10兆2,776億円(前年度比8,855億円、7.9%減)と減少した。国内業務部門では、平成22年10月に行われた日本銀行による無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標の引下げ等を受けて、貸出金利が年度を通じて低下し、貸出金利息が減少したことを主因として、全体では前年度比6.4%の減少となった。また、国際業務部門では、米欧政策金利が年度を通じて概ね横ばいとなり、貸出金利息、有価証券利息配当金および金利スワップ受入利息等が減少したことから、全体では同15.0%の減少となった。
 資金調達費用は、1兆9,282億円(前年度比5,456億円、22.1%減)と大幅に減少した。国内業務部門では、預金残高(平残)は増加したものの、預金金利が低下し、預金利息が減少したことを主因として、全体では前年度比25.6%の減少となった。また、国際業務部門では、借用金残高(平残)の減少により借用金利息が減少したほか、預金利息およびその他の支払利息が減少したこと等から、全体では同16.8%の減少となった。
 資金運用収益から資金調達費用を引いた資金運用益は、国内業務部門では前年度比1,727億円(2.3%)減少し、国際業務部門では同1,393億円(13.4%)減少したことから、全体では同3.9%の減少となった。
役務取引等収益・費用
 各種手数料等の受払収支をみると、為替手数料収支の収益超過額が国内業務部門では減少したものの、国際業務部門におけるその他の役務収支のローン関連手数料等が増加したことから、全体の収益超過額は1兆6,667億円(前年度比186億円、1.1%増)となった。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、円高による外貨調達に係る通貨スワップ取引関係費用の減少等により国際業務部門の収益超過額は増加したものの、国内業務部門の収益超過額は減少したことから、全体の収益超過額は4,484億円(前年度比57億円、1.3%減)となった。
その他業務収益・費用
 円高による通貨スワップ取引に見合う外貨建資産における為替差損の増加等により外国為替売買損益の収益超過額は減少したものの、上期における内外債券市場金利の低下により、国債等債券関係損益の収益超過額が国際業務部門、国内業務部門ともに大幅に増加したことから、全体の収益超過額は8,270億円(前年度比5,518億円、200.4%増)と大幅に増加した。
信託報酬
 信託報酬は、2,590億円(前年度比97億円、3.6%減)となった。
その他経常収益・費用
 株価の下落および東日本大震災に伴う保有株式の減損により株式等関係損益が収益超過から損失超過(4,081億円の損失超過)に転じたものの、企業の大型倒産や倒産件数の減少により、貸倒引当金繰入額(前年度比3,053億円減)および貸出金償却(同2,997億円減)が減少したこと等から、その他経常収支の損失超過額は1兆4,543億円と、前年度に比べ減少した(前年度は1兆9,190億円の損失超過)。
営業経費
 営業経費は、人件費のほか、物件費および税金も減少したことから、6兆8,351億円(前年度比1,357億円、1.9%減)と減少した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は15兆5,054億円(前年度比6,676億円、4.1%減)、経常費用は12兆2,443億円(同1兆4,830億円、10.8%減)となり、経常利益は3兆2,611億円(同8,154億円、33.3%増)の増益となった(増益70行、減益38行、黒字転換8行、経常損失3行)。また、法人税等を控除した当期純利益は、一部の銀行で東日本大震災に係る特別損失を計上したものの、2兆5,084億円(同6,969億円、38.5%増)の増益となった(増益64行、減益38行、黒字転換9行、当期純損失8行)。
 なお、参考までに業務純益をみると、資金運用益の減益のほか、一般貸倒引当金純繰入額が戻入益から繰入に転じたものの、国債等債券関係損益が大幅な収益超過となったことから、4兆9,471億円(前年度比1,422億円、3.0%増)の増益となった(増益70行、減益49行)。

 

利回り・利鞘(国内業務部門)

 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.10%ポイント低下して1.69%、有価証券利回りは同0.10%ポイント低下して0.80%、コールローン等利回りは同0.14%ポイント低下して0.58%となった。以上に加えて、金利スワップ受入利息等も含めて算出した資金運用利回りは同0.12%ポイント低下して1.33%となった。
 資金調達原価をみると、預金債券等利回りは前年度比0.07%ポイント低下して0.14%(預金利回りは0.14%)、コールマネー等利回りは同0.06%ポイント低下して0.49%(コールマネー利回りは0.49%)となった。また、経費率は同0.02%ポイント低下して1.02%となった。以上に加えて、金利スワップ支払利息等も含めて算出した資金調達原価は同0.08%ポイント低下して1.12%となった。
 以上のように、資金運用利回りの低下幅が資金調達原価のそれを上回ったことから、総資金利鞘は前年度比0.04%ポイント縮小して0.21%となった。なお、預貸金利鞘は、貸出金利回りの低下幅と預金債券等原価のそれが同率であったことから、前年度比変わらず0.53%となった。

 

資金調達

 預金は、国内業務部門では、個人、法人ともに手元資金を厚くする傾向がみられたこと等から、定期預金は減少し、流動性預金は増加した。一方、国際業務部門では、定期預金、外貨預金ともに増加した。この結果、末残では603兆8,934億円(前年度末比15兆1,443億円、2.6%増)となった。また、平残では580兆6,711億円(前年度比9兆3,494億円、1.6%増)となった。
 譲渡性預金は、国内業務部門における増加を主因に41兆5,686億円(前年度末比1兆1,146億円、2.8%増)となり、平残では、45兆6,818億円(前年度比3兆8,312億円、9.2%増)となった。
 債券は、末残では1兆3,582億円(前年度末比1兆2,092億円、47.1%減)となり、平残では1兆9,297億円(前年度比1兆5,353億円、44.3%減)となった。

 

資金運用

 貸出金は、国際業務部門では増加したものの、国内業務部門では、企業における資金需要が低迷したことから減少し、全体では、末残で446兆9,852億円(前年度末比2兆2,046億円、0.5%減)となった。また、平残では439兆7,557億円(前年度比11兆4,686億円、2.5%減)となった。
 ここで、不良債権の状況として、銀行勘定のリスク管理債権額をみると、破綻先債権額は7,356億円(前年度末比3,675億円、33.3%減)、延滞債権額は7兆9,472億円(同1,875億円、2.3%減)、3カ月以上延滞債権額は2,198億円(同764億円、53.2%増)、貸出条件緩和債権額は2兆2,633億円(同3,023億円、15.4%増)であった。この結果、リスク管理債権額の総額は、11兆1,662億円(同1,763億円、1.6%減)となり、貸出金総額に占める比率も同0.03%ポイント低下して2.50%となった。
 また、金融再生法第7条にもとづき開示された資産査定の各区分の内容(いずれも銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が2兆3,626億円(前年度末比4,829億円、17.0%減)、危険債権が6兆6,068億円(同774億円、1.2%減)、要管理債権が2兆4,833億円(同3,787億円、18.0%増)、正常債権が463兆2,315億円(同2兆8,136億円、0.6%減)であった。
 有価証券は、預金の増加および貸出金の減少等による余剰資金の運用として、国債が増加したこと等から、末残で257兆5,175億円(前年度末比25兆8,857億円、11.2%増)となった。また、平残では241兆2,319億円(前年度比29兆6,620億円、14.0%増)となった。

 

自己資本

 当期中、地方銀行1行、第二地銀協地銀5行、その他1行が増資を、第二地銀協地銀1行が減資を行った。また、信託銀行1行で新株予約権の行使が行われた。この結果、資本金は11兆6,791億円(前年度末比35億円、0.0%増)となった。また、その他有価証券評価差額金が1兆1,086億円の評価差益(同1兆555億円、48.8%減)となったこと等から、純資産の部合計は、39兆6,601億円となった。

 

[担当:竹内]

  • 資金運用益=資金運用収益-資金調達費用
  • 業務粗利益=業務純益+貸倒引当金繰入額+債券費+経費
  • 業務純益=業務収益-(業務費用-金銭の信託運用見合費用)
  • 業務収益=資金運用収益+役務取引等収益+その他業務収益
  • 業務費用=資金調達費用+役務取引等費用+その他業務費用+貸倒引当金繰入額(個別貸倒引当金および特定海外債権引当勘定への(純)繰入額は除く)+経費+債券費
  • 国内業務部門取引=国内店の円建取引
  • 国際業務部門取引=国内店の外貨取引+国内店の対非居住者向け円建取引+海外店の取引
    • オフショア勘定取引は国際業務部門取引に含む
    • ユーロ円インパクトローン取引は海外店の取引に含む
(参考)経常利益の内訳(業態別)  (単位:億円)
 全国銀行都市銀行地方銀行地方銀行II信託銀行
資金運用益83,494
(△3,399)
36,073
(△2,401)
32,354
(△256)
9,472
(△68)
4,479
(△591)
役務取引等収支16,667
(186)
10,119
(119)
3,804
(8)
653
(47)
1,950
(72)
特定取引収支4,484
(△57)
3,985
(126)
44
(△42)

(-)
258
(△101)
その他業務収支8,270
(5,518)
5,232
(4,406)
1,577
(286)
581
(145)
598
(491)
その他経常収支△14,543
(4,647)
△6,992
(3,070)
△4,520
(614)
△1,712
(547)
△958
(△218)
信託報酬2,590
(△97)
282
(△22)
5
(△0)

(-)
2,302
(△75)
営業経費68,351
(△1,357)
29,449
(△918)
24,665
(77)
7,435
(△55)
5,787
(△350)
経常利益32,611
(8,154)
19,251
(6,217)
8,599
(533)
1,558
(725)
2,843
(△72)
当期純利益25,084
(6,969)
16,223
(5,496)
5,428
(△100)
752
(138)
2,252
(604)
参考:業務純益49,471
(1,422)
27,291
(978)
13,818
(261)
3,492
(308)
4,299
(△83)
(注)
上段は平成22年度計数、下段( )内は前年度比増減額。