信託銀行 (特定取引勘定設置銀行5行)

 信託銀行の平成22年度決算をみると、資金運用益は、内外の政策金利が低位に推移したこと等により国内業務部門、国際業務部門ともに減益となったことから、4,479億円(前年度比591億円、11.7%減)の減益となった。
 経常利益は、以上に加えて、株価の下落により株式等関係損益が収益超過から損失超過に転じたこと等から、2,843億円(前年度比72億円、2.5%減)の減益となった。また、当期純利益は、経常利益が減益となったものの、特別利益が増加したこと等から、2,252億円(同604億円、36.6%増)の増益となった。
 業容面(末残)をみると、預金は前年度末比1.1%増となった。信託勘定については、投資信託、有価証券の信託、年金信託、金銭信託等が増加したことから、同4.2%増となった。また、貸出金は、銀行勘定は同1.1%増、信託勘定は同15.4%減となった。

損益状況

信託報酬
 投資信託をはじめ、他の信託の時価ベースでの受託資産残高が減少したこと等から、信託報酬は2,302億円(前年度比75億円、3.1%減)と減少した。
資金運用益
 資金運用収益は6,979億円(前年度比1,147億円、14.1%減)、資金調達費用は2,500億円(同556億円、18.2%減)と、資金運用収益が資金調達費用を上回って減少したことから、資金運用益は4,479億円(同591億円、11.7%減)の減益となった。
 国内業務部門をみると、資金運用収益は、平成22年10月に行われた日本銀行による無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標の引下げ等を受けて貸出金利が年度を通じて低下し、貸出金利息が減少したほか、有価証券利回りの低下により有価証券利息配当金も減少したこと等から、全体では5,370億円(前年度比810億円、13.1%減)となった。一方、資金調達費用は、預金金利の低下により預金利息が減少したこと等から、全体では1,989億円(同515億円、20.6%減)となった。以上の結果、資金運用益は3,382億円(同296億円、8.0%減)の減益となった。
 国際業務部門をみると、資金運用収益は、有価証券残高(平残)は増加したものの、有価証券利回りが低下したことから有価証券利息配当金が減少し、金利スワップ受入利息も減少したこと等から、全体では1,759億円(前年度比370億円、17.4%減)となった。一方、資金調達費用は、借用金残高(平残)の減少により借用金利息が減少したほか、預金金利の低下により預金利息が減少したこと等から、全体では661億円(同74億円、10.1%減)となった。以上の結果、資金運用益は1,098億円(同295億円、21.2%減)の減益となった。
役務取引等収益・費用
 各種手数料等の受払収支をみると、投資信託の販売手数料や不動産仲介業務関連手数料の増加により、その他の役務収支の収益超過額が増加したことから、全体の収益超過額は1,950億円(前年度比72億円、3.8%増)と増加した。
特定取引収益・費用
 トレーディング業務に係る特定取引収益・費用は、国際業務部門において損失超過額が減少したものの、国内業務部門において収益超過額が減少したことから、全体の収益超過額は258億円(前年度比101億円、28.1%減)と減少した。
その他業務収益・費用
 上期における内外債券市場金利の低下を受けて国債等債券売却益が大幅に増加したことにより、国債等債券関係損益の収益超過額が大幅に増加したほか、外国為替売買損益が損失超過から収益超過に転じたこと等から、全体の収益超過額は598億円(前年度比491億円、457.3%増)と大幅に増加した。
その他経常収益・費用
 株式等関係損益は、株価の下落により株式等売却益が減少したほか、保有株式の減損処理の増加により株式等償却が増加したことから、354億円の損失超過(前年度は43億円の収益超過)と収益超過から損失超過に転じた。一方、貸倒引当金繰入額は、企業の大型倒産や倒産件数の減少により、個別貸倒引当金純繰入額が大幅に減少したことから、73億円(前年度比158億円、68.4%減)と大幅に減少した。以上の結果、全体では958億円の損失超過と損失超過額は増加した(前年度は739億円の損失超過)。
営業経費
 営業経費は、人件費、物件費および税金がいずれも減少したことから、5,787億円(前年度比350億円、5.7%減)と減少した。
経常利益・当期純利益
 以上の結果、経常収益は1兆4,811億円(前年度比753億円、4.8%減)、経常費用は1兆1,967億円(同681億円、5.4%減)となり、経常収益が経常費用を上回って減少したことから、経常利益は2,843億円(同72億円、2.5%減)の減益となった(増益2行、減益4行)。一方、経常利益は減益となったものの、特別利益が増加したこと等から、当期純利益は2,252億円(同604億円、36.6%増)の増益となった(増益4行、減益2行)。
 なお、業務純益は、国債等債券関係損益の収益超過額が大幅に増加したことにより、その他業務収支の収益超過額は大幅に増加したものの、資金運用益が減益となったこと、および特定取引収支の収益超過額が減少したこと等から、4,299億円(前年度比83億円、1.9%減)の減益となった(増益3行、減益3行)。また、国内業務粗利益は8,032億円(同169億円、2.1%減)、国際業務粗利益は1,557億円(同36億円、2.2%減)となった。

 

利回り・利鞘

(国内業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.16%ポイント低下して1.26%、有価証券利回りは同0.09%ポイント低下して0.82%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.13%ポイント低下して1.09%となった。
 資金調達利回りをみると、預金債券等利回りは前年度比0.11%ポイント低下して0.37%、譲渡性預金利回りは同0.13%ポイント低下して0.16%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.09%ポイント低下して0.41%となった。
 以上の結果、総資金粗利鞘は、前年度比0.04%ポイント縮小して0.68%となった。
(国際業務部門)
 資金運用利回りをみると、貸出金利回りは前年度比0.29%ポイント低下して1.24%、有価証券利回りは同0.32%ポイント低下して1.98%となった。この結果、資金運用利回り全体では、同0.48%ポイント低下して1.61%となった。
 資金調達利回りをみると、預金利回りが前年度比0.11%ポイント低下して0.52%、借用金利回りは同0.65%ポイント上昇して3.10%となった。この結果、資金調達利回り全体では、同0.09%ポイント低下して0.59%となった。
 以上の結果、総資金粗利鞘は、前年度比0.38%ポイント低下して1.02%となった。

 

資金調達等

 預金は、末残でみると、国内業務部門(前年度末比3,059億円、0.9%増)、国際業務部門(同795億円、5.0%増)ともに増加したことから、全体では36兆6,247億円(同3,855億円、1.1%増)となった。平残では35兆5,256億円(前年度比8,620億円、2.4%減)となった。
 譲渡性預金は、末残では6兆7,396億円(前年度末比1兆2,893億円、23.7%増)、平残では5兆8,640億円(前年度比5,431億円、10.2%増)となった。
 また、信託勘定借は、末残では3兆2,968億円(前年度末比3,188億円、8.8%減)、平残では3兆5,344億円(前年度比4,280億円、10.8%減)となった。
 信託勘定をみると、投資信託(前年度末比10.6%増)、有価証券の信託(同6.2%増)および年金信託(同4.3%増)は増加した。一方、貸付信託(同50.5%減)、金銭信託以外の金銭の信託(同7.8%減)および金銭債権の信託(同2.4%減)は減少した。この結果、信託勘定の負債合計額は309兆4,559億円(同12兆4,540億円、4.2%増)となった。

 

資金運用等

 貸出金は、末残でみると、国内業務部門は企業における資金需要が低迷したことから減少(前年度末比0.2%減)したが、国際業務部門は増加(同17.6%増)したことから、全体では35兆1,690億円(同3,795億円、1.1%増)となった。平残では33兆1,183億円(前年度比3,287億円、1.0%減)となった。
 一方、信託勘定(末残)をみると、貸出金は、2兆6,325億円(前年度末比4,801億円、15.4%減)となった。
 ここで、不良債権の状況として、リスク管理債権の残高についてみると、破綻先債権額は、銀行勘定で277億円(前年度末比49億円、15.1%減)、信託勘定で1億円(同0.06億円、5.5%減)となった。延滞債権額は、銀行勘定で1,595億円(同603億円、27.4%減)、信託勘定で188億円(同23億円、13.6%増)となった。3カ月以上延滞債権額は、銀行勘定で7億円(同9億円、54.0%減)、信託勘定で1億円(同0.3億円、32.5%増)となった。貸出条件緩和債権額は、銀行勘定で1,259億円(同150億円、10.7%減)、信託勘定で91億円(同7億円、7.0%減)となった。この結果、リスク管理債権の総額は、銀行勘定で3,140億円(同812億円、20.5%減)、信託勘定で282億円(同16億円、6.0%増)となった(信託勘定については、いずれも元本補填契約のある信託勘定の計数)。なお、銀行勘定のリスク管理債権額の貸出金総額に占める比率は、同0.25%ポイント低下して0.89%となった。
 また、金融再生法第7条にもとづき開示が義務付けられている資産査定の各区分の内容(銀行勘定)は、破産更生債権及びこれらに準ずる債権が831億円(前年度末比42億円、4.8%減)、危険債権が1,402億円(同677億円、32.6%減)、要管理債権は1,267億円(同159億円、11.2%減)、正常債権は35兆7,679億円(同4,097億円、1.2%増)となった。
 有価証券は、銀行勘定の末残では、株式は減少(前年度末比12.0%減)したものの、国債(同12.9%増)、その他の証券(同8.7%増)等が増加したことから、全体では22兆607億円(同1兆6,509億円、8.1%増)となった(平残では19兆9,493億円、前年度比8,053億円、3.9%減)。一方、信託勘定の末残では、株式や社債は減少したものの、その他の証券、国債および外国証券等が増加したことから、全体では57兆4,242億円(前年度末比3兆2,852億円、6.1%増)となった。

 

自己資本

 資本金は、期中に1行で新株予約権の行使が行われたことから、1兆3,543億円(前年度末比0.4億円、0.0%増)となった。資本剰余金は9,033億円(同83億円、0.9%増)、利益剰余金は1兆3,232億円(同1,435億円、12.2%増)となった。以上のほか、その他有価証券評価差額金が178億円(同1,118億円、86.2%減)と大幅に減少したこと等から、純資産の部合計は3兆5,687億円となった。

[担当:昆]