レポート

 江戸川区立瑞江中学校の校内研究授業において、「生活設計・マネープランゲーム」が実施されました。これは、平成27年8月に実施された「江戸川区中学校研究会家庭科部会」において実施された「生活設計・マネープランゲーム体験ワークショップ」での経験がもととなり、授業での活用に繋がりました。

 授業は、技術・家庭科(家庭分野)「わたしたちの消費生活と環境」の全5時間授業の2時間目として実施されました。5〜6人で1班になり、前時にあらかじめ決めておいた係・職業(資料集p10キャリアカード一覧の「勤め人」の中から選択)を再度確認し、20歳代の人生からゲームをスタートしました。

 まず、カード係が「収入カード」「基本生活支出カード」を引きました。ここで生徒達は、自分が引いたカードの内容を順に読み上げ、カードの内容を全員で共有し、各班の収入と支出がどのようなバランスになっているかをイメージしました。
 記録係がマネープランシートにそれぞれ金額を書き込むところで、生徒たちが「思い出ポイント」の欄に気付きました。先生から「思い出ポイント」について説明があり、「貯蓄額だけではない、お金に変えられない思い出」についても意識してゲームを進めてみるよう伝えられました。続いて「自動車カード」を引き、自動車を購入するかどうかを選択しました。先生が各班で引いたカードを板書して20歳代の結果をまとめました。

 続いて30歳代の人生体験です。
 「結婚カード」「子育てカード」を引き、家族構成を決めました。「結婚しない」「子どもはいない」カードを引いた班も、他のカードにはどのような選択肢が書かれているか確認しました。先生から、年代や家族構成の変化に伴い、年収や基本生活支出そして非消費支出も変わることが説明されました。
 次に住居の購入を検討します。検討には事前に学習していた「ローン」が関わってくることが説明され、現在の貯蓄額から考えて「頭金が払えるのか」「賃貸にするのか」など、班で話し合って決定しました。
 続いて、保険に入るかどうかを検討し、イベント&アクシデントカードを引きました。人生には、思いもよらないイベントやアクシデントが起こり得ること、保険に加入していることでアクシデント支出が補てんできる場合があることなどを体験しました。

 30歳代までの貯蓄額と思い出ポイントをまとめ、各班の班長は、班のメンバーからゲームを通して気づいたことや感想を聞きとり、マネープランシートにメモします。そして班の意見をまとめて発表します。「ケガをしたが保険に入っていたのでよかった」「結婚せず、車も買わなかったので貯蓄だけが貯まって思い出ポイントがあまり残らなかった」など、人生の選択により家族構成や貯蓄額、思い出ポイントが大きく変わることを理解しました。

 20歳〜30歳代までの人生を疑似体験した生徒たちの中には、生活設計が上手くいかなかったと感じた班もあった様子でしたが、先生から「まだ30歳代。これからの人生で巻き返すチャンスがあります」と話がありました。次時の授業で「40歳代〜定年まで」の人生を疑似体験すること、40歳代のライフイベント「転職」でどのように人生の見直しをしていくかがポイントになることが伝えられ、50分の授業が終了しました。

 今回の授業では、50分間でメリハリをつけながらスムーズに進行するために、以下の点を工夫されていました。

<工夫された点>

  • 「非消費支出」や「ローンの仕組み」などは事前学習を行う。
  • 班分け、係決め、職業の選択を前時に行う。
  • 各班の結果は、黒板に貼り付けた模造紙に記入・貼り付けできるようにする。
  • 「自動車」と「住居」の選択は、マグネットでできた色分けしたカードを用意して模造紙に貼り付ける。
  • 「結婚」、「子供」、「自動車」、「住居」の各グループの選択結果は、先生が机間巡回の際にノートに書き留めたものを模造紙上に記入・貼り付けして発表時間を節約し、一方で、「貯蓄額」や「思い出ポイント」は生徒に記入してもらう。


  これらの工夫により進行に余裕ができ、班で話し合う、考える、結果を発表し共有する、そこから新たに課題を見つけるというアクティブラーニングの要素を引き出し、生徒たちが能動的に取り組むことができる充実した授業となりました。