平成13年1月 3日

全国銀行協会
会長  西川 善文

『年頭所感』

平成13年の新春を迎えるにあたり、所感の一端を申し述べ、新年のご挨拶とさせていただきます。

まず、昨年の経済情勢を振り返りますと、総じて企業部門中心の緩やかな景気回復が続くなか、公共投資・輸出といった「外生需要」主導の回復から、設備投資を牽引役とする「自律的回復」パターンへの進展がみられました。すなわち、公共投資については経済新生対策(平成11年11月発表)による発注が一巡し、輸出は米国景気の減速等を背景に年後半にかけ増勢が鈍化した一方で、設備投資がIT関連分野を中心に着実な回復傾向を辿りました。

しかしながら、依然として各種の構造調整圧力は根強く、現状は業種等に偏りのあるいわばまだら模様の景気回復の状態にあり、また原油高や米国景気といった不安定要因も存在します。こうした状況のもとで、わが国の景気回復の持続を確実なものとするためには、技術革新や経営改革を通じて生産性の向上を実現し、外的ショックを跳ね返すだけの体力を取り戻す必要があります。官民が一致団結し、ここ数年来の改革への取り組みを一段と強力に推し進めていくことが求められているといえましょう。

金融界に目を向けますと、金融システムの安定性が増大するとともに、金融機関破綻時における預金者等への影響を最小限に抑えることを狙いとして破綻処理の迅速化を図る改正預金保険法が成立するなど、平成14年4月のペイオフ凍結解除に向けた準備が着々と進められました。私ども民間金融機関としては、健全かつ安定した金融システムを構築することは必須の課題であり、全力を挙げて健全性の向上に努めていく必要があります。

次に、金融ビッグバンに関しては、証券化関連商品における流動化・運用対象資産が多様化される、本年4月から銀行による保険商品の窓口販売が実現することとなるなど、業務の自由化・多様化が一段と進みました。その一方で、「金融商品の販売等に関する法律」が制定され、元本割れリスクのある商品の販売の本格化に備えた利用者保護の充実が図られるなど、今後の金融業のインフラとなる制度が整備された実りある1年でした。

さらには、様々な業態における金融機関の合併や提携等が進展したことに加え、インターネット専業銀行の設立、異業種からの銀行業参入の動き等、金融界にとって新しい時代の到来が実感された年でもありました。

本年は、21世紀の幕開けの年です。新世紀において、金融界がわが国経済と国民生活の発展に貢献していくために取り組むべき課題は、大きく以下の3つであると考えております。

第1の課題は、金融システムに対する信頼を確固たるものとすることです。このためには、各金融機関が、すでに実行に移されている種々の経営効率化策に加えて、いわゆる「選択と集中」やマーケティング技術の向上等に基づく収益力向上策を着実に実行し、財務体質を一層強化していく必要があります。また、金融システム不安の再発を防止するためには、リスク管理の抜本的強化が不可欠です。

第2の課題は、ビッグバンの成果の顧客への還元です。提供する商品やサービス、またチャネルの多様化によるお客様の利便性向上はもちろんですが、今後は預貸金という従来の間接金融の枠組みにとらわれず、お客様に利益をもたらす魅力的な運用商品を提供していく必要があり、さらには、各運用商品提供機関が、自らの運用能力の抜本的強化を図っていかなければなりません。このような努力を通じて、金融界は、約1,400兆円に上る個人金融資産の有効活用、ひいてはわが国経済の発展に貢献することができることになります。

第3の課題は、新世紀における新しい活力ある金融システムの構築です。自己責任原則に基づいた国際的な整合性を持つ自由かつ公正な競争を実現するためには、市場の歪みを極力取除くことが不可欠です。とくに、現行の業態別の縦割り規制は、すでに利用者ニーズの実態にそぐわない面が出てきており、より利用者の立場に立った金融サービス横断的な法制のあり方を考えていく必要があります。また、すでに個人預貯金残高の約四割弱を占めるまでに肥大化した郵便貯金事業が市場原理の埒外に存在し続けることは、効率的かつ安定した金融システム構築の障害と言わざるを得ません。このため、平成15年に移行が予定されている郵政公社の具体的なあり方について、広範な議論を行うための公の場を早急に設けた上で、民営化等の抜本的改革を見据えた検討を行うことが必要と考えます。

本年が、わが国経済にとって新たな飛躍の年となるよう、私ども金融界もできる限りの貢献をしてまいりたいと存じます。