2004年7月21日

各 位

全国銀行協会

金融法務研究会第1分科会報告書「社債管理会社の法的問題」について

今般、標記金融法務研究会報告書を刊行いたしました。
金融法務研究会(座長:前田 庸学習院大学名誉教授)は、金融法務分野における研究者をメンバーとして、全銀協により平成2年10月に設置された研究会です。

本研究会では、2つの分科会を設置し(第1分科会主査:岩原紳作東京大学法学部教授、第2分科会主査:能見善久東京大学法学部教授)、金融法務・法制のテーマの検討を行っています。

本報告書は、第1分科会における平成15年度の研究成果をとりまとめたもので概要は下記のとおりです。

なお、本報告書は研究会としてのもので、全銀協としての意見を表明したものではありませんので、念のため申し添えます。

1.趣旨

「社債管理会社」に関しては、平成5年社債法改正当時、長い審議の末導入されたが、その後、社債発行をめぐる環境は変化し、今般、会社法制の現代化の検討作業においても、平成5年改正以降の変化を踏まえて見直すこととされている。今回の報告書においては、こうした変化を踏まえつつ社債管理会社をめぐる法的問題について、主として、会社法制の現代化の検討作業において取り上げられた事項を検討対象としてとりまとめた。
以下、その概要である。

2.概要

報告書の各章の概要は以下のとおりである(執筆者の肩書は2004年3月現在)。

第1章 「会社法制の現代化に関する要綱試案」における社債関係事項の概要

(山下友信 東京大学教授)

現在、法制審議会会社法(現代化関係)部会では、会社法制の現代化のための会社法制全般におよぶ検討を行っているが、そこでは、社債関係事項も含まれている。同部会は、平成15年10月に中間的な取りまとめとして要綱試案を公表したが、本章では、第2章以下の社債法に関する主要問題の検討の前提として、同要綱試案の社債に関する改正提案とその基礎にある考え方を概観している。

第2章 平成5年社債法改正の審議の経緯

(前田庸 学習院大学名誉教授)

会社法制の現代化の検討作業における社債関係事項は、主として平成5年の社債法改正後の社債市場の変化を受けて、見直しを行うとともに、現代的ニーズへの対応を行うというものである。こうした問題認識を踏まえ、本章では、平成5年社債法改正の審議過程において意見が分かれたもの、未解決のまま残された問題等を選んで、その経緯を紹介するととともに、そうした諸問題に対して今日どのような対応が考えられるかについて言及し、あわせて、要綱試案において取り上げられた事項について、その旨を付記している。

第3章 債権者保護手続における社債管理会社の権限

(前田重行 筑波大学大学院教授)

今日、企業再編等における債権者保護手続において、手続の煩雑さや過大な負担の強制という問題が指摘され、商法改正による手続の簡素化や特別法による例外的な緩和措置が採られてきているが、本章では、多数の社債権者を対象とする商法上の債権者保護手続を行う場合の問題点について、社債権者集会による社債権者の意思集約・調整の困難さを補うための社債管理会社の手続への関与の問題を論じる。

第4章 社債管理会社の公平誠実義務

(神田秀樹 東京大学教授)

本章は、社債管理会社の公平誠実義務に関し、その位置付けを示したうえで、公平義務と誠実義務それぞれについて、実務上生じ得る具体的な問題について論じている。

第5章 商法311条ノ2第2項の見直しについて

(岩原紳作 東京大学教授)

本章は、要綱試案における商法311条ノ2第2項の見直し提案に関し、その立法論の妥当性とあるべき法制について検討がなされている。平成5年商法改正において導入された商法311条ノ2第2項の沿革、また、同条項の導入にあたって参考とされた米国連邦信託証書法 311条の概要と同条と比較した商法311条ノ2第2項の特色を論じている。そのうえで、要綱試案で示された諸問題について論じるとともに、立法提案について言及している。

第6章 会社更生手続における社債権者の権利行使

(青山善充 成蹊大学教授)

本章は、会社更生手続における社債権者の権利行使に関し、平成14年の新会社更生法制定に至る経緯、新会社更生法の社債権者の議決権行使に関する特則について概観し、要綱試案で示された会社更生手続における社債権者集会の決議要件の緩和提案について論じている。

(本件に関するご照会先)
金融法務研究会事務局 全国銀行協会
業務部 大野 電話 03-5252-4310
金融調査部 電話 03-3216-3761(代)