平成19年1月 4日

全国銀行協会会長 畔柳信雄

年頭所感

平成19年の新春を迎えるにあたり、所感の一端を申し述べ、新年のご挨拶に代えさせていただきます。 わが国経済は、企業業績の好調が、設備投資の拡大や雇用・所得環境の改善を通じて個人消費・住宅投資に波及するという、バランスの取れた成長を続けています。昨年11月には、今回の景気拡大がいざなぎ景気を超え、戦後最長になったとの政府の判断が示されました。銀行界においても、昨年は公的資金の完済が相次ぐなど、守りから攻めへとフェーズ転換が鮮明となっております。 こうした中、銀行界としては、本年、特に以下の2つの課題に取り組んでまいりたいと思います。 第一に、金融市場の構造改革・活性化を推進し、そのメリットをお客さまに享受いただくということであります。そのためには、自由な競争を通じて利便性の高い商品・サービスを提供するとともに、お客様に安心してお取引いただく環境を整備するという「自由と規律」の実践が求められます。 日本版ビッグバン構想の発表から10年が経過し、規制緩和・市場の改革は大きく進展しました。お客さまの選択肢も広がり、個人金融資産に占める投資信託・株式の比率が10年前の約8%から12%に上昇するなど、運用手段の多様化も着実に進んでおります。本年は、年末に予定されている銀行の保険販売の全面解禁を着実に実施することで、業際にかかる一連の規制緩和を仕上げる必要があります。さらに、経済・金融のグローバル化が進む中、海外先進国の動向も視野に入れ、今後も不断の改革に努める必要があることは申し上げるまでもありません。 各金融機関には、こうした改革の成果を、お客さまにしっかりと還元することが求められております。特に銀行代理店制度、証券仲介業、保険の窓販等、金融における「製販分離」が進む中、業態・業種を超えた競争・協業を通じて、利便性の更なる向上に努めていく必要があります。 また、金融取引に対する安心・信頼の確保のため、まずは、今年夏頃に施行される予定の金融商品取引法への対応が重要となります。同法は、投資性のある金融商品を幅広く対象とし、業態横断的に利用者保護のルールを定めるものであります。全銀協としても、今後、政省令等、制度の詳細が定められる過程で、実務的見地から意見を述べるとともに、各金融機関が適切に対応できるよう、会員銀行の指針である「消費者との契約のあり方に関する留意事項」の改訂、各行の取り組み方針や対応状況等に関するアンケートの実施・還元等を行ってまいります。 加えて、各金融機関には、いわゆるバーゼルⅡや金融商品取引法において求められる内部統制の強化等への対応を通じて、経営に対する信頼を向上させていくことが必要となります。 さらにお客さまに安心してお取引いただくための環境の整備に向け、金融犯罪防止のための取り組み、銀行とりひき相談所の機能・体制強化等、業界団体としての自主的な取り組みを継続してまいります。 今年取り組むべき第二の課題は、大きな節目を迎える公的金融改革への対応であります。 今年10月には、いよいよ「ゆうちょ銀行」が営業を開始します。郵便貯金事業の本質的な問題は、約200兆円もの巨大な規模の資金が市場原理の埒外にあることにより、金融市場における公正な価格形成や効率的な資金配分を阻害するということであります。民営化を通じてこの問題を解決するため、まずはゆうちょ銀行自身が、規模を縮小しながら、民間に溶け込むための具体的なプランを早期に示す必要があると考えます。また、間接的な政府出資が残る間は、民間金融機関との公正な競争条件を確保する観点から、ゆうちょ銀行の業務範囲等に対する厳格な制限を継続する必要があります。 政策金融改革に関しても、新たな政策金融機関については、民業補完の原則に則り、業務範囲を真に民間で対応できない分野に絞込むこととともに、民営化される機関に関しては、他の民間金融機関とのイコールフッティングへの配慮が重要と考えます。 「入口」「出口」とも、完全民営化が実現した暁には、同じ土俵で切磋琢磨することは当然でありますが、政府出資が残る移行期において、競争条件や金融市場に歪みを与えることのないよう、全銀協としても引き続き、積極的な意見表明を行ってまいります。 わが国経済が、中長期的にその活力・国際競争力を維持・向上していくためには、財政再建、少子高齢化問題等の克服が必要となります。銀行界としても、付加価値の高い商品・サービスを通じて、個人・企業の経済活動を広く支えることにより、わが国がこうした課題を乗り越え、新たな経済発展の段階に入るよう、貢献してまいりたいと考えております。 本年が、金融界にとって大きな飛躍の年になることを祈念いたします。