2007年7月23日

全国銀行協会

金融調査研究会第1研究グループ報告書
「金融機関におけるCSR活動や環境配慮行動のあり方」について

金融調査研究会(座長:貝塚啓明京都産業大学客員教授)の第1研究グループ(主査:清水啓典一橋大学教授)は、今般、標記報告書を取りまとめました。

本研究会では、平成18年度において、全銀協が重点的に取り組むべき課題の一つとして挙げた「CSR活動の推進」に関して、その推進策等について検討を行いました。その成果は、「金融機関におけるCSR活動や環境配慮行動の充実に向けて」と題するレポートにとりまとめ、去る3月6日に開催したシンポジウムにおいて公表しています。

この報告書は、同レポートに加え、研究会の各メンバーが執筆した研究論文を収録し、金融機関におけるCSR活動や環境配慮行動の推進にあたっての課題等を理論面から論じたものとなっています。

本研究会としては、この報告書が、金融機関の取組みを後押しするとともに、本分野に関心を持つ企業関係者、研究者等、多くの方々にご活用いただけることを期待しています。なお、各章の概要は後掲の別紙のとおりです。

(注) 本報告書は研究会としてのもので、全銀協として意見を表明したものではありませんので、念のため申し添えます。

「金融機関におけるCSR活動や環境配慮行動のあり方」の概要">「金融機関におけるCSR活動や環境配慮行動のあり方」の概要

【本件に関するご照会先】
金融調査研究会事務局
全国銀行協会 金融調査部 世良、今津
〒100-8216 東京都千代田区丸の内1-3-1
Tel.03-5252-3789 Fax.03-3214-3429

(別紙)

「金融機関におけるCSR活動や環境配慮行動のあり方」の概要

研究とりまとめ「金融機関におけるCSR活動や環境配慮行動の充実に向けて」

金融機関にとってのCSRには、(1)自社の経営におけるCSRの確立(金融CSR)、(2)本業を通じた社会的課題の解決(CSR金融)、(3)社会との共存のための活動、の3つの側面があると整理し、このうち(2)が金融機関にとってCSRの中心になるのではないかと指摘している。

そのうえで、金融機関の投融資全体の仕組みに、いわゆるE(環境)・S(社会的責任)・G(ガバナンス)を組み込むこと等を通じて社会的課題に取組むことが重要と指摘している。また、業界にも、金融機関のCSR活動を積極的に支援することが求められるとしている。

第1章 金融機関のCSR

(清水啓典 一橋大学大学院商学研究科教授)

金融機関の情報生産機能、外部性を内部化する能力等、経済学的視点から見て、金融機関にとってのCSRは他の一般企業とどのような点が異なるべきか、広告宣伝との相違点や金融機関として果たすべき社会的役割等を検討している。その結果、CSRは過大評価すべきではないが、金融機関として顧客への支援・指導等の本業を通じて一般企業以上の大きな貢献が可能であり、社会をリードする観点から模範的行動を示す必要があるとの結論を示している。

第2章 金融機関のCSR:その課題と提言

(谷本寛治 一橋大学大学院商学研究科教授)

多様な視点からCSR活動についての現状分析を行い、社会的に責任ある企業経営を行うという意味での「金融CSR」と、産業界のCSRを評価し支援するという意味での「CSR金融」とに分けて検討を行っている。さらにここでは、個別企業、政府、各種団体等インターミディアリーレベルそれぞれの取り組むべき課題を示したうえで、金融機関のCSRには、CSRの視点を取り入れる方向で経営システム全般を問い直し、各部署における地道な取り組みや定着させるための努力が必要である点を強調している。

第3章 金融機関のコーポレート・ガバナンスとCSR戦略

(首藤 惠 早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授)

企業の多様なステークホルダーの利害を経営に反映させるツールとしてのコーポレート・ガバナンスの視点からCSRを分析している。CSRの実践に当たっては、CSRの組織への定着、組織の透明性と情報発信が求められるが、これらは、経営方針の徹底と情報開示体制の確立、外部への説明責任というガバナンスの問題とも一致するとしている。そのうえで、金融機関には、蓄積された情報能力や情報ネットワークを活用して積極的にCSR情報生産を行い、また、企業に企業価値の向上に必要なCSR情報開示を求めていく役割が期待されていることを指摘している。

第4章 金融機関にとってのCSRの重要性

(柳川範之 東京大学大学院経済学研究科助教授)

金融仲介業は外部性を持っており、また企業の内部情報を入手可能な立場にある点に注目して、コンプライアンス体制の充実、健全性の確保、金融システム安定性への貢献なども金融機関のCSRとして重要であり、情報開示やCSRを実施する上でのプリンシプルを明示することの大切さを指摘している。

第5章 CSR経営の実証分析

(馬奈木俊介 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科助教授)

CSR経営の向上が企業の業績評価や環境効率に対して正の影響を持つかどうかに関する実証分析を行っている。その結果、CSR経営は企業の無形資産、収益性、効率性や環境効率に正の大きな影響を与えており、CSR経営は企業経営にとって重要な要素であることを示している。

(※肩書きは平成19年3月現在)

以上