平成19年7月23日

全国銀行協会

金融調査研究会第2研究グループ報告書
「諸外国の税制改革と金融所得課税のあり方」について

金融調査研究会(座長:貝塚啓明京都産業大学客員教授)の第2研究グループ(主査:井堀利宏東京大学教授)は、今般、標記報告書を取りまとめました。

近年、欧米においては、簡素・中立で経済成長につながる税制の構築等の観点から、金融所得に係る税制改革が進められています。翻って、わが国においては、少子高齢化の進展による家計貯蓄率の低下等を背景に、個人金融資産をより効率的に運用することが要請されており、「貯蓄から投資へ」の政策対応が求められています。この政策対応においては、税制によって最適な資源配分が歪められないように、金融商品間における課税の中立性を確保することと、一般の個人投資家にとって簡素でわかりやすい税制を実現することが必要です。

本研究グループは、上記の問題意識に立ち、平成18年度のテーマとして、「諸外国の税制改革と金融所得課税のあり方」を取り上げて研究を行い、今般、その成果を取りまとめました。本報告書に所収された論文は、研究グループ各人の責任で執筆されたものであり、執筆者の所属する機関あるいは全国銀行協会の意見を表明したものではありません。

本研究会としては、この報告書が学術面だけでなく、今後、金融所得課税のあり方についての議論に対しても、有益な示唆を与えるものと期待しています。

「諸外国の税制改革と金融所得課税のあり方」の概要「諸外国の税制改革と金融所得課税のあり方」の概要

【本件に関するご照会先】
金融調査研究会事務局
全国銀行協会 金融調査部 小川、飯島
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Tel.03-5252-3789 Fax.03-3214-3429

「諸外国の税制改革と金融所得課税のあり方」の概要

第1章 今後のわが国の金融所得課税のあり方

当研究会の提言として3月にとりまとめたものを再録している。具体的には、平成19年度の税制改正において、平成21年(度)から金融所得課税の見直しを実施するとされたこと等を踏まえ、(1)金融所得課税に関する基本的な考え方をまとめるとともに、(2)証券特定口座を活用した「新しい金融所得課税のスキーム」、(3)配当の二重課税調整を含めた「実施にあたっての検討課題」を整理している。

第2章 スウェーデンとノルウェーの金融所得課税一元化 -わが国への教訓 -わが国への教訓

(馬場 義久 早稲田大学政治経済学術院教授)

 1990年代初頭に二元的所得税導入の一環として金融所得課税の一元化を実現したスウェーデンとノルウェーを取り上げ、一元化のねらいと成果・改革後の問題点を論じている。具体的には、(1)スウェーデンでは、各種金融収益を均一にかつ低率で課税し、損益通算を広範囲に認める包括的な金融所得課税一元化を実施して、金融所得税制を中立的で実効性のある税制として蘇らせた、(2)北欧型二元的所得税のもとでは、法人税の負担調整について問題が生じており、わが国でも法人税の課税ベース自体の再検討が求められる等を指摘している。 

第3章 オランダの所得税改革

(田近 栄治 一橋大学国際・公共政策大学院教授)

先進的な開放経済であり、国際的な資本取引が活発に行われているオランダを取り上げ、同国の個人所得税改革の取組みと、改革後に残されている諸問題について論じている。具体的には、(1)所得を労働所得等、大口持ち株主所得および資本所得の3つに分類したボックスに焦点をあて、その成立過程をさぐっている。(2)グローバル化の進展のなかで、二元的所得税も安定した税制ではなく、さらに改革が迫られることが予想されるが、オランダのボックス・タックスも例外ではなく、ボックス間の所得の付け替えである「ボックス越え」等により、早晩、本質的な再検討が必要になると思われる。

第4章 米国における金融所得課税の影響と改革の方向性

(前川 聡子 関西大学経済学部助教授)

日本と同様に家計貯蓄率の低下が問題となっている米国において、2005年11月の大統領諮問委員会答申で提案された金融所得課税に関する改革案を紹介するとともに、同国における家計の資産選択と税制との関係に関する実証分析を紹介している。そのうえで、(1)低税率で分離課税することにより、金融資産の税引き後収益率を引き上げることができれば、金融資産に対する家計の需要を高めることができる、(2)損益通算の範囲拡大や繰越控除の導入によりリスクの平準化を図ることができれば、投資の期待収益率を高め、ひいてはリスクのある金融資産への需要を増やすことが期待できる、等を指摘している。

第5章 我が国の金融税制のあり方について

(國枝 繁樹 一橋大学国際・公共政策大学院助教授)

我が国家計の資産選択の特徴と望ましい金融税制改革の方向性、中立的な金融税制の構築等について検討を行っている。そのうえで、(1)我が国家計の資産構成をみると高齢者のリスク資産保有が高いと考えられることから、中立的な税制を目指しつつ、現役世代によるリスク資産保有を促進していくことが望ましい、(2)中立的な税制とは、法人・個人段階を通じ、かつ、時間を通じて中立な税制を意味しており、何らかの二重課税調整措置を行わず個人段階のみで一律課税することは中立的ではない、(3)確定拠出型年金の拡大を通じた現役世代による株式投資拡大を促進するためには、投資教育の拡充等に積極的に取り組むことが望まれる、等を指摘している。

(※ 肩書きは平成19年3月現在)