平成20年3月21日

各 位

金融法務研究会

金融法務研究会第2分科会報告書「銀行取引をめぐる消費者保護の現代的展開」について(金融法務研究会)

 金融法務研究会(座長:前田 庸 学習院大学名誉教授)は、金融法務分野における研究者をメンバーとして、全銀協により平成2年10月に設置された研究会です。
 本研究会では、2つの分科会を設置し(第1分科会主査:岩原紳作 東京大学大学院法学政治学研究科教授、第2分科会主査:能見善久 東京大学大学院法学政治学研究科教授)、金融法務・法制に関するテーマの検討を行っています。
 本報告書は、第2分科会における平成18年度の研究テーマに関する成果をとりまとめたもので、概要は下記のとおりです。
 なお、本報告書は研究会としてのもので、全銀協として意見を表明したものではありませんので、念のため申し添えます。

  1. 趣旨
     銀行による投資信託や保険の窓販が拡大し、また、電子金融取引などの非対面取引の利用が増加するなど消費者との金融取引も進展・変化を続けている。
     こうした状況を踏まえて、銀行取引をめぐる消費者保護の諸論点について検討した。検討にあたっては、前記の金融取引のほか、新しい銀行代理店制度における取引についても検討対象とした。また、金融商品取引法(いわゆる投資サービス法)施行や金融商品販売法拡充と、消費者取引との関係について、今後の法的課題等も含めて検討した。

  2. 概要
     報告書の各章の概要は以下のとおりである。

第1章 特定預金等契約における銀行の行為規制

(一橋大学 中田裕康教授)

 本章では、金融商品取引法制の下で、特定預金等を受け入れる契約に際して銀行に課せられる行為規制を分析し、その根拠を検討している。
 まず、金融商品取引法制のもとでの銀行の行為規制を概観し、銀行法が準用する金融商品取引法の行為規制のうち、主要なもの(契約締結前及び契約締結時等の書面の交付、不招請勧誘の禁止・勧誘受諾に係る意思確認義務・再勧誘の禁止、適合性の原則など)について、その根拠を検討している。特に適合性の原則については、その意義、内容および機能のほか、金融商品取引法と金融商品販売法における適合性の原則の関係にも言及しており、両者は、その内容・機能が異なっているものの、相互補完的に作用するものと考えるべきであるとしている。
 そして、特定預金等契約における銀行の行為規制は、証券取引法のもとで形成された規範が基本的な根拠となっており、その影響がどこまで及ぶのかは、結局のところ、その規律の根拠と銀行取引の特性を個別的に吟味することによって判断すべきことになる、としている。

第2章 改正金融商品販売法における説明義務と適合性の原則

(神戸大学 山田誠一教授)

 本章では、金融商品取引法の制定とともに改正された金融商品販売法について検討している。
 まず、改正前の金融商品販売法の、「金融商品の販売」と金融商品販売業者等、説明義務、損害賠償責任、および、勧誘方針の策定について検討している。次いで、改正金融商品販売法について改正の背景と主な改正点を概観し、改正点のうち、説明義務の対象が拡大されたこと、および断定的判断の提供が新たに禁止されたことを中心に検討している。検討にあたっては、金融商品販売業者等の説明義務が問題となった裁判例を参照して、金融商品販売法の改正前と改正後とで説明義務の範囲がどう変わるかについて具体的に検討している。
 そして、説明義務と適合性の原則の関係について、今回の改正は、金融商品販売法にもとづく説明義務に関するものではあるものの、両者の関係に一定の方向を示したものということができる、としている。

第3章 平成17年銀行法改正による銀行代理店制度の見直し -兼業承認、複数所属銀行等を中心として-

(学習院大学 前田 庸名誉教授)

 本章では、平成17年銀行法改正により、銀行代理店制度が見直されたことから、銀行代理業について、兼業の問題を中心に、所属銀行が複数の場合や再委託の場合の問題にも触れながら検討している。
 まず、銀行代理業が許可制であることから、その許可基準や許可の審査について言及しており、特に許可基準の審査の際に配慮すべき事項について、代理業の内容が貸付等の場合で、一般事業者によるケースと貸付事業者によるケースとを、金融庁の主要行等向けの総合的な監督指針を拠り所として詳細に論じている。
 次に、銀行代理業の業務の範囲や、分別管理、業務にかかる顧客に対する説明、顧客情報の適正な取扱い等について検討している。
 そして、所属銀行の賠償責任について、代理業者がその代理行為について顧客に損害を加えた場合であっても例外的に所属銀行が責任を負わない場合の要件について検討している。

第4章 銀行の保険販売業務に関する諸問題

(東京大学 山下友信教授)

 本章では、銀行の保険販売に関する消費者保護上の課題について検討している。
 まず、銀行の保険販売に関する規制の概要を、保険業法を中心に、銀行法、金融商品取引法および金融商品販売法にも触れて整理している。そして、保険販売における情報提供義務について、説明義務は、まず判例法理が確立し、その後、私法上の説明義務概念の確立と並行して業法上の説明義務が整備されてきたことに言及している。次に、助言義務の問題について、裁判例や平成19年4月に導入された「意向確認書」に言及し、近時の学説の動向も紹介している。
 また、保険販売を行う銀行の法的地位のあり方について、乗合代理店としての銀行の問題や保険仲立人となる場合の規制に言及し、参考事例として、EUの保険仲介者指令および英国の規制を取り上げ、保険募集主体の規制に関する課題について言及している。

第5章 非対面取引 -インターネット・バンキングを中心に

(東京大学 能見善久教授/学習院大学 山下純司准教授)

 本章では、インターネット・バンキングを使った銀行取引(送金・振込・各種料金代金支払など)における非対面取引を中心に、リスクが現実化したときの法的問題を検討している。
 まず、非対面取引の意義、銀行取引における非対面取引および非対面取引と消費者保護について概観している。
 次に、個別的論点として、取引の成立・不成立、顧客への情報提供義務・説明義務、誤取引、不正取引などの法的問題に言及しており、特に不正取引に関して、銀行に求められる防止策につき、最近の判例を用いて、システム上の過失論や免責条項の問題などを取り扱っている。

第6章 消費者の金融取引紛争をめぐる解決制度の動向と課題 -民事裁判およびADRを中心として-

(明治大学 青山善充教授)

 本章では、近年、金融取引をめぐるトラブルが増加傾向にあり、そうしたトラブルを有効適切に解決する方策が裁判制度あるいはADRの分野で機能しているかという問題意識のもとで、消費者の金融取引紛争をめぐる解決制度としての民事裁判およびADRに関する近時の動向を概観し、その課題について検討している。
 まず、消費者の金融取引分野における近時の法整備の進展を紛争解決の観点に重点をおいて概観し、特に金融商品販売法と改正消費者契約法による消費者救済システムについて詳細に考察している。次に、消費者の金融取引をめぐるトラブルの特徴を抽出し、その解決方法としての民事裁判とADRの紛争解決手続の特性を踏まえ、どのような特徴を有するトラブルがどの紛争解決手続に適合するかについて検討している。そして、金融取引紛争の解決としての民事裁判、民事調停およびADRの動向と課題を考察している。

【本報告書に関する照会先】
金融法務研究会事務局
全国銀行協会
業務部 大野 Tel.03-5252-4310
金融調査部 大山 Tel.03-5252-3741