平成20年7月18日

各 位

金融調査研究会

金融調査研究会第2研究グループ報告書「パブリック・ファイナンスの今後の方向性」について(金融調査研究会)

 金融調査研究会(座長:貝塚啓明東京大学名誉教授・金融教育研究センター長)の第2研究グループ(主査:井堀利宏東京大学教授)は、今般、標記報告書を取りまとめました。

 わが国は、中央政府の債務が約700兆円に達する一方、地方自治体の借入金も地方債を中心に累増しており、現在、約200兆円と巨額になっています。
 地方自治体の債務残高をGDP比の形で欧米主要国と比較すると、連邦制を採用していない国のなかで最も高くなっており、中央政府のみならず、地方自治体の財政改革も急がれる状況にあります。
 さらに、地方分権を進めていく上では、地方自治体の財政基盤の強化が不可欠であることから、地方自治体による外部からの資金調達(パブリック・ファイナンス)のあり方は今後ますますその重要性を増していくと考えられます。

 本報告書は、上記のような問題意識に立ち、平成19年度のテーマとして、「地方行財政を巡る最近の議論とパブリック・ファイナンスの今後の方向性」を取り上げて研究を行い、今般、その成果を取りまとめたものです。本報告書に所収された論文は、研究グループのメンバー各人の責任で執筆されたものであり、執筆者の所属する機関の意見を反映したものでも、また、全国銀行協会の意見を表明したものでもありません。
 本研究会としては、この報告書が学術面だけでなく、今後、地方分権の議論に対しても、有益な示唆を与えるものと期待しています。

【本件に関するご照会先】
金融調査研究会事務局
全国銀行協会 金融調査部 小暮、飯島
〒100-8216 東京都千代田区丸の内1-3-1
Tel.03-5252-3789
Fax.03-3214-3429

 

別紙

 

「パブリック・ファイナンスの今後の方向性」の概要

 

第1章 パブリック・ファイナンスの今後の方向性 -自治体の外部資金調達のあり方に関する提言-

 当研究会の提言として2月にとりまとめたものを再録している。具体的には、パブリック・ファイナンスの現状や制度改革の動きを概観した上で、今後の方向性として、(1)自治体の財政規律の確立、(2)自治体に求められる対応、(3)国に求められる対応、(4)自治体の規模に応じた制度設計、(5)国の関与が残る行政事務の財源のあり方、について提言するとともに、金融機関が自治体の効率的な経営などをサポートしていくことが有用、としている。

 

第2章 地方債制度のあり方-市場規律との関連で -

(持田信樹 東京大学大学院経済学研究科教授)

 わが国の近年の地方債制度の変容を概観したうえで、地方債の現状を取り上げるとともに、既存の財政ルールの限界と市場規律の役割について論じている。
 そして、わが国や米国の地方債の破綻法制に係る議論のサーベイから、(1)マクロの財源保証は必要だが、任意的地方債の新規発行分についてミクロ面での交付税措置を縮小・廃止すべき、(2)予算のソフト化を招かずに地方政府を集権体制から移行させるためには、短期的に情報開示の徹底や透明性の高いルールで地方債をコントロールするのが基本であり、市場化から取り残される弱小な自治体には「共同発行機関」の創設が不可欠、(3)短期的な市場規律強化のためにオープンな地方債市場を育成し、地方政府に説明責任・監査などの情報提供を促すインセンティブを与えるべき、といった政策的な含意をまとめている。

 

第3章 地方債の政府資金と民間等資金の役割分担

(土居丈朗 慶應義塾大学経済学部准教授)

 地方債に係る政府資金の引受状況や地方自治体への貸付状況について関連統計を用いて分析し、次に、より低利の政府資金とより高利の民間等資金が地方自治体の資金調達に与える効果について経済学的な分析を行っている。そして、以上を踏まえ、今後の地方自治体の資金調達において政府資金が果たすべき役割についてモデルをもとに検証し、政府資金と民間等資金の役割分担のあり方について、(1)政府資金を充当する事業の重点化が必要であり、その対象として外部性の強い事業が挙げられること、(2)地方債の金利機能の強化は重要であり、地方債版ペッキングオーダー理論の活用が一つの活路となるが、そのためには、民間等資金引受け地方債について、早期に元利償還金の交付税措置を撤廃することが必要であること、を指摘している。

 

第4章 地方自治体を監視するインセンティブ

(西川雅史 埼玉大学経済学部准教授)

 地方自治体監査のパフォーマンスの良否は、監査する者に付与されているインセンティブに依存することを指摘し、地方自治体を監視する仕組みについて、(1)住民による直接的な監視、(2)住民による間接的な監視(議会や専門家による監視)、という2つの視座から論点を整理し、また、監査の前提となる正確な行財政情報の重要性について述べている。そして、市場を活用した監視の強化について、金融機関には地方自治体の行財政を監視するインセンティブがあると考えられること等を指摘している。

 

第5章 日本の地方財政制度の特徴とその国際的位相

 

(林 正義 一橋大学大学院経済学研究科准教授)

 地方財政制度のあり方は、中央と地方の財政上の役割分担等によって変わるため、地方自治体のパブリック・ファイナンスのあり方について考察する場合、国と地方の役割分担やそれを取り巻く財政制度を考察することが必要であることを述べ、先進諸国における公的部門との比較において、わが国の公的部門の歳出と歳入を特徴付けている。
 その上で、地方債の起債が、地方自治体が全国的に期待されている歳出の資金を調達するものか、地方に本来期待されている以外の追加的なサービスのための資金調達をするものかによって、債券市場活用の是非も変わることを指摘している。

 

(※ 肩書きは平成20年3月現在)

以上