平成21年7月17日

各 位

金融調査研究会

金融調査研究会第2研究グループ報告書「公的金融の現代的役割」について(金融調査研究会)

 金融調査研究会(座長:貝塚啓明東京大学名誉教授・金融教育研究センター長)の第2研究グループ(主査:井堀利宏東京大学教授)は、今般、標記報告書を取りまとめました。

 わが国では、財政投融資の抜本的な改革に引き続き、近年、郵政民営化や政策金融改革など公的金融に係る改革が大きく進められてきました。
 わが国の公的金融機関が新しい姿へと変容する一方で、統合により発足した株式会社日本政策金融公庫が内包する経営上の課題や業務運営上の課題、株式会社日本政策投資銀行など民営化金融機関の移行期におけるあり方、その他の政策金融を実施している機関に求められる役割など、現在においてもなお、議論されるべき論点が残されております。
 また、サブプライム問題に端を発する世界的な金融危機に対応すべく、公的金融を活用する動きが見られるように、公的金融の役割に係る新たな論点も惹起しうるものと考えられます。

 上記のような問題意識に立ち、金融調査研究会第2研究グループでは、平成20年度のテーマとして「公的金融の現代的役割」を取り上げて研究を行い、今般、その成果を報告書として取りまとめました。本報告書に所収された論文は、研究グループのメンバー各人の責任で執筆されたものであり、執筆者の所属する機関の意見を反映したものでも、また、全国銀行協会の意見を表明したものでもありません。
 本研究会としては、この報告書が学術面だけでなく、今後の公的金融の役割のあり方についての議論に対しても、有益な示唆を与えるものと期待しています。

【本件に関するご照会先】
金融調査研究会事務局
全国銀行協会 金融調査部 遠藤、飯島、石井(良)
〒100-8216 東京都千代田区丸の内1-3-1
Tel.03-5252-3789
Fax.03-3214-3429

 

別紙

 

「公的金融の現代的役割」の概要

 

第1章 公的金融の現代的役割(提言)

 本年3月に取りまとめた当研究会の提言を再録している。具体的には、公的金融の使命や中小企業に対する金融支援のあり方、金融危機への対応など、公的金融に係る改革の基本的な考え方を示したうえで、(1)株式会社日本政策金融公庫、(2)移行期における民営化金融機関(株式会社日本政策投資銀行、株式会社商工組合中央金庫、株式会社ゆうちょ銀行)、(3)その他の政策金融(地方公営企業等金融機構、独立行政法人住宅金融支援機構等)、といった個別機関ごとに公的金融のあり方を提言している。

 

第2章 公的金融の現代的役割に関する諸論点

(國枝繁樹 一橋大学国際・公共政策大学院准教授)

 現在の経済危機により政策金融改革を巡る環境は大きく変化しており、望ましい政策金融の中長期的なあり方について、改めて経済学や現代コーポレート・ガバナンス理論に基づいた考察を行うことが強く求められている。
 本稿では、公的金融改革を議論する上で十分考慮されてこなかった政府のリスク負担能力の問題について考察した後、中小企業に対する公的金融支援の例を取り上げ、政治経済学的な観点も含め、各支援方法の優劣について論じるとともに、政策金融機関のガバナンスの問題を現代コーポレート・ガバナンス理論の立場から論じている。

 

第3章 政策金融機関のガバナンスをいかに確保するか?

(広田真一 早稲田大学商学学術院教授)

 政策金融改革は、かつて特殊法人であった政策金融機関を株式会社化することによって、経営に規律を与えて効率的な事業運営を促すといったガバナンス強化の意図があったと考えられる。
 本稿では、コーポレート・ガバナンスの既存研究を踏まえて、日本の政策金融機関のガバナンスの有効性を理論的に検討する。より具体的には、株式会社のガバナンスが働くための条件を一般的に議論するとともに、日本政策投資銀行、商工組合中央金庫、日本政策金融公庫それぞれについて、そのガバナンスが効果的かつ適切に働くのかどうかを考察している。

 

第4章 信用保険制度のあり方に関する一考察

(土居丈朗 慶應義塾大学経済学部准教授)

 公的金融の役割のひとつとして、日本政策金融公庫が運営する信用保険制度があるが、同制度の保険収支が恒常的に赤字になっていることを放置すれば、信用保険制度、ひいては信用保証制度も含めた信用補完制度の持続可能性に支障をきたすことになる。
 本稿では、プリンシパル・エージェント理論を応用して、我が国の信用補完制度に基づいた理論モデルを構築し、日本政策金融公庫の保険収支が恒常的に赤字にならないようにする保険料率の条件を導出した。それにより、保険収支を赤字にしない保険料率は、企業の事業成功確率と債務不履行時の回収納付金の期待値に依存していることを指摘している。

 

第5章 取り残された政策金融改革

(岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授)

 政策金融改革により、2008年10月に政策金融機関が新体制に移行した。しかし、これは組織機能ではなく、銀行・公庫という組織形態に着目して改革対象を決定するものであったことから、住宅金融支援機構、福祉医療機構、日本学生支援機構、奄美群島振興開発基金の4つの公的機関が対象外とされたほか、「国民経済計算」で公的金融企業と位置付けられている特別会計も検討の対象とならなかった。
 本稿では、公的金融機関のあり方の理論的な整理を行うとともに、政策金融改革から取り残されたこれらの機関にこれを当てはめ、必要な改革の方向性を議論している。

 

(※ 肩書きは平成21年3月現在)