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2009年9月25日
各 位
金融調査研究会
金融調査研究会第1研究グループ報告書「金融市場の活性化に向けた総合金融サービス」について(金融調査研究会)
金融調査研究会(座長:貝塚啓明東京大学名誉教授・金融教育研究センター長)の第1研究グループ(主査:清水啓典一橋大学教授)は、今般、標記報告書を取りまとめました。
本研究会では、平成20年度において、「金融市場の活性化に向けた総合金融サービス」を研究テーマとして取りあげ、この課題に向けた取組みについて検討を行いました。その成果は、「金融市場の活性化に向けた総合金融サービス」と題する提言として取りまとめ、平成21年3月31日に事務局である全国銀行協会のウェブサイトにおいて公表しています。
本報告書は、同提言に加え、研究会の各メンバーが執筆した研究論文を収録し、金融機関における今後の総合金融サービスの提供のあり方やその課題等を理論面から論じたものとなっています。本報告書に所収された論文は、研究グループのメンバー各人の責任で執筆されたものであり、執筆者の所属する機関の意見を反映したものでも、また、全国銀行協会の意見を表明したものでもありません。
本研究会としては、この報告書が、金融機関の取組みを後押しするとともに、本分野に関心を持つ企業関係者、研究者等、多くの方々にご活用いただけることを期待しています。
- 【本件に関するご照会先】
- 金融調査研究会事務局
全国銀行協会 金融調査部 石井(誉)、福田
〒100-8216 東京都千代田区丸の内1-3-1
Tel.03-5252-3741
Fax.03-3214-3429
別紙
「金融市場の活性化に向けた総合金融サービス」の概要
提言 「金融市場の活性化に向けた総合金融サービス」
当研究会の提言として、平成21年3月31日に事務局である全国銀行協会ウェブサイトで公表したものを再録している。
本提言は、平成19年10月に公表した「わが国金融産業の国際競争力強化に向けたロードマップ」に沿って、信頼に足る、安定的な総合金融サービスの提供により、これまで以上に利用者が安心して多様な金融商品・サービスを享受できる市場環境が実現されるよう、着実な歩みを続けることが重要と考えることの意義を認識したうえで、今後の課題について取りまとめたものである。
第1章 ベター・レギュレーションと米国金融危機
(清水 啓典 一橋大学大学院商学研究科教授)
世界的な金融危機を念頭に置きつつも、単に現時点での短期的な対応にのみ目を奪われることなく、今後とも変わることのないわが国の金融・資本市場の競争力強化のために、官民が協力しつつ取り組むべき課題について検討している。そのうえで、米国金融危機によって、資本市場を中心とする金融システムの弱点が明らかになり、欧米の大規模証券会社の全てが銀行の傘下に入った現在は、銀行中心の金融システムを持つわが国が、その経験を基礎に、世界的な場においてもその経験と強みを活かして、より安定的なグローバル金融市場構築のために目指すべき方向性を示している。
第2章 多角化は企業価値を高めるか?-金融機関の場合を中心に-
(金子隆 慶應義塾大学商学部教授)
金融機関の総合金融サービス化の得失を検討するという視点から、文献サーベイを基礎に金融機関の多角化の成否を決定する諸要因の分析を行っている。そこでは、多角化が成功するためには多数の条件があり、一般的に総合金融サービスが望ましいとは言えないこと、また、銀行による証券業への進出はリスクを高める可能性があり、証券業への進出が成功するためには、利益相反を防ぎつつ、顧客情報共有をいかに行うかが重要である点などを指摘している。
第3章 個人金融サービス提供の向上に向けて:行動経済学的アプローチ
(晝間文彦 早稲田大学商学学術院教授)
個人の過剰消費などの一見非合理的に見える行動も、本人の自覚しない将来効用の過小評価を想定すれば説明できる、新しい理論的アプローチの発展について概説している。そのうえで、金融機関が個人に対して、多様な金融サービスを総合的に提供する場合には、取引コストの低下だけでなく、多様な金融サービスの中から顧客が自分の金融ニーズをより明確に自覚し、その自覚にもとづいて最適な金融サービスを選択できるような形で金融サービスを開発すると同時に、正確でわかりやすい金融サービスの情報作成、およびその効果的な提供方法についても工夫に努めることが重要である点を指摘している。
第4章 総合金融サービス提供のための今後の金融機関のあり方
(柳川範之 東京大学大学院経済学研究科准教授)
金融機関が総合金融サービスを提供することの意義を述べたうえで、そのためには、組織内に知識や人的資産がどれだけ蓄積されているかが決定的に重要であり、その組織づくりが必要である、という視点からの分析を行っている。そこでは、総合金融サービスに対する環境やニーズ変化を説明したうえで、顧客ニーズに合った金融商品の製造と販売には、それを可能とする組織変革や人事ローテーションの変革を含む、人材育成システムの改革が必要である点を指摘している。
第5章 ユニバーサルバンキングの功罪
(小西大 一橋大学大学院商学研究科准教授)
銀行が証券業務を兼営する場合の功罪を整理し、情報生産機能の反復利用、範囲の経済性を通じた経営効率の向上、競争の向上をメリットとして、利益相反、コングロマリット・ディスカウント、過剰なリスク負担、タイイングを問題点として挙げている。そのうえで、証券業務を兼営する際の3つの組織(ユニバーサルバンキング方式、持株会社方式、子会社方式)を比較し、市場規律が十分に機能する環境下では、自由に組織形態を選択できることが望ましいとしている。最後に、わが国での実証分析を踏まえ、銀証兼営を許容した場合の社債の引受リスクに着目し、銀行が過剰なリスク負担を回避できていない可能性がある点を指摘している。
(※ 肩書きは平成21年3月現在)
以上