2010年3月24日

全国銀行協会
会長 永易 克典

郵政改革の方向性について

 平成22年2月23日公表「郵政改革に関する私どもの考え方」において表明のとおり、わたくしども銀行界は、今般の郵政改革により、郵便貯金事業は、従来の「完全民営化を前提として、移行期間中に業務範囲を制限」とのあり方から、「政府関与の残存を前提として、業務範囲の自由度を拡大」へ大きく方向転換されたと認識しております。銀行界としては、「完全民営化」ではなく郵便貯金事業に「政府の関与が残る」のであれば、「公正な競争条件の確保」および「官業は民業の補完に徹する」との観点から、郵便貯金事業に民間金融機関と同等の業務範囲を認めることは断じて許容できません。

 この流れの中、本日、郵政改革担当大臣および総務大臣より、郵便貯金事業に対する政府関与を残したうえで、郵便貯金の預入限度額を現行の1,000万円から2,000万円に引き上げる方針が示されました。

 お客様からお預かりする預金は、銀行業務の全ての源泉で、中小企業等への金融円滑化を通じた地域経済発展・成長のための大切な原資です。政府関与が残る郵便貯金事業に預入限度額拡大の措置がなされると、特に金融危機等の「有事」の際には、民間金融機関から政府の信用力を背景とする郵便貯金へと大きく資金シフトする可能性があります。この場合、民間金融機関が本来果たすべき金融仲介機能を著しく低下させ、地域経済に甚大な影響を及ぼすなど、国民経済的に負の結果を招くことになり兼ねません。

 今後、具体的な政府方針決定や法制化の段階においては、こうした観点に十分配意いただくとともに、「郵政改革素案」(2月8日)に明記された基本理念「競争条件の公平性に配慮」「中小地域金融機関等の立場にも十分な配意」等の観点を踏まえ、業務範囲等も含め、慎重かつ十分な検討が進められることを強く希望いたします。