2010年4月20日

全国銀行協会
会長 奥 正之

郵政改革に関連する法案骨子の公表について

 本日、郵政改革に関連する法案の骨子(以下、骨子)が示されました。

 わが国における郵貯事業は、公的な金融機関として「少額貯蓄手段の提供」を目的として開始されましたが、それ以降、国際的にも類を見ない規模に肥大化しております。

 郵貯事業改革の本来の目的は、肥大化がもたらす「金融システムの不安定性」、「金融市場の歪み」等の弊害を、規模の縮小を図ることによって是正し、将来的な国民負担の発生懸念を減ずると共に、民間市場への資金還流を通じて国民経済の健全な発展を促すことに他なりません。

 私どもとしては、今般の骨子で示された政府出資のあり方では、日本郵政グループは現在のみならず将来に亘って公的な機関と見做さざるを得ないと考えており、こうした民間とは行動原理が異なる公的な機関は、本来、縮小の上、民業補完に徹するべきです。

 それにも関わらず、今般の骨子等に従って、預入限度額の引き上げ、新規業務に対する「認可制」から「届出制」への条件緩和等がなされるとすれば、上記の改革の本旨に反していると言わざるを得ず、極めて遺憾です。特に、住宅ローン等の個人向け貸出をはじめとしたリスクを伴う投融資業務への進出がなされれば、民業圧迫のほか、将来的な国民負担に繋がりかねず許容できません。

 したがって、改革の本旨を踏まえた法的な枠組み、具体的には(1)民業補完の徹底・少額貯蓄手段の提供等の目的の法定、(2)預入限度額の維持・引下げと業務範囲の限定・縮小(含む、持株会社)、(3)仮に、業務範囲の変更を図る場合にも、真に公正・中立な第三者委員会による「事前諮問」と「認可制」、並びに同委員会による実施状況に係る「モニタリング制」の採用、等の枠組みを構築することが必要と考えられます。

 今後の法案の策定・審議においては、郵貯事業の官業ゆえの弊害と巨大な規模がもたらす問題の是正に向けて、骨子で示された「同種の業務を営む事業者との競争条件の公平性」等に加え、上記観点に十分留意した慎重な議論・検討がなされ、国民経済の持続的な成長や発展に資する方向で結論が得られることを強く希望します。