2010年4月30日

全国銀行協会
会長 奥 正之

郵政改革関連法案の閣議決定について

 本日、郵政改革関連法案が閣議決定されました。

 郵貯事業改革の本来の目的は、国際的に類を見ない規模に肥大化した郵貯事業を段階的に縮小し、将来的な国民負担の発生懸念を減ずると共に、民間市場への資金還流を通じて国民経済の健全な発展を促すことに他なりません。

 しかしながら、公表されている郵政改革関連法律要綱案等によれば、その内容は、上記の改革の本旨に反するものとなっております。例えば、(1)日本郵政等は、重要事項に係る拒否権を政府が恒久的に保持する公的機関であるにも関らず「民業補完の徹底」や「少額貯蓄手段の提供」等の目的・理念が法定されていないこと、(2) 金融2社及び親会社の業務範囲については、現行の「認可制」から「届出制」に条件が緩和されていること等、極めて問題が大きいと考えております。

 加えて、預入限度額については“同種の業務を行う事業者との競争条件の公平性等を 勘案して定める”こととされておりますが、実態は預金保険上限を超えて実質的な政府保証が付される部分が生じる2,000万円まで一気に引き上げる方向にあるなど、更なる肥大化に繋がる事態となっており、断じて許容できません。また、新たに設置される郵政改革推進委員会が、民間金融機関との競争条件の公平性確保等の観点から、公的機関である郵貯の行動を監視することは重要と認識しておりますが、下記の事項等が担保されなければ、監視機能の実効性は確保されないと考えます。

  • 同委員会の審議対象として、預入限度額及び業務範囲変更を明示し、事前の審議を義務付けること。(原案の届出制は許容できないが、万一これが採用される場合には、「事前」の調査・審議を確保することは不可欠。また、同委員会の設置前には業務範囲変更等を行わないこと。)
  • 同委員会は、民業補完の徹底や民間の競争秩序の攪乱防止の観点から、継続的にモニタリングを行うことが肝要であり、政府出資の状況に関らず、恒久的な存在とすること。
  • 同委員会は、利害関係の無い第三者で構成され、審議結果に加えて議事が速やかに公表される等、真に中立・公正な審議等を確保するための方策を明確化すること。

 今後の法案等に係る審議に際しては、改革の本来の目的に立ち戻り、上記の事項等について深度ある審議・検討が行われるよう強く希望します。